ならば、平和とは何だ?
争いがない世界・・・・・・。
飢えがない世界・・・・・・。
人殺しがない世界・・・・・・。
否、それらは人の世に必ず存在する。
人は些細なきっかけに戦い合う。
それを上の者は見て楽しむ。
すなわち、戦争とは権力者同士のゲーム。
そして、人は他人に願う。
平和であろうと戦争であろうと・・・・・・
自分にとばっちりがないこと。
そう、平和と戦争は表裏一体。
どちらも人の営みにいる限り逃れられない。
【陽春 昼過ぎ】
[裏新宿 Honky Tonk]
「・・・・・・・・・・・・・・・」
転生者?神様特典?
こいつ、やっぱイカれたのか?
まぁ、夏彦や他の兄弟と違って復讐とか人生の
目的もなく生きたから・・・・・・もう疲れたのか?
生きていくのに・・・・・・・・・。
「なぜ、憐れの目で僕を見るんですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「僕は正常です。イカれてはいません」
そう言い返すメガネに俺は疑問をぶつけた。
「しかし、わかんねえな。なんでわざわざ弥勒流
に入門したんだぁ?」
俺の問いにメガネは黒崎相介の固有能力が弥勒
流に相性がいいと答えるが、いまいち納得できな
い俺にこう言った。
「うーん、実際に会えばわかりますよ」
「おい、俺らがいつ依頼を承諾した?」
「・・・・・・興味を持ったって顔に書いてますよ」
メガネの言葉に否定できない俺は銀次を叩き起
こす。
「いつまで寝てんだ!銀次!!」
バゴッ!
「いって〜!?」
「行くぞ銀次!」
「行くってどこに?」
蛮ちゃんは店のドアに開けてオレを待っていた
「無限城だ」
「えっ?無限城?」
「あそこ以外異世界転移できねぇだろ」
「えっ?蛮ちゃん依頼を受けるの?」
「なんか、面白そうだからよ。行くぞ」
蛮ちゃんの言葉に頷くオレは歩き出した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【陽春 早朝】
[都内 松竹林高校]
「ファ〜〜!?眠ぃ〜〜!」
「夜通しでゲームをしているからですよ」
俺は一晩中オンラインゲームに熱中し、一睡も
していない。
目をゴシゴシとこすりながら手が入るほど口を
開けながら大きなあくびをかく俺は生真面目なガ
ルムくんと一緒に登校(強制連行)中だ。
「だってよ、昨日は超限定イベン「そんな理由
で学業をおろそかにするな!」」
俺の言い分を遮断してガルムくんのお約束の説
教が始まる。
「いいですか、フェンリル。そもそも組織の長と
してあなたはね〜」
「・・・・・・お前ホントに真面目だね。いっそのこと
生徒会に戻れば?」
「・・・・・・・・・それは嫌味ですか?それとも本気で
すか?」
「だって、不良とは思えないセリフのオンパレー
ドだよ」
「不良になっても性分は変わりません」
「性分ですか」
「性分です」
俺たちの通う松竹林高校はこの辺じゃ一番の偏
差値の高い進学校だ。
だから、不良(俺ら)がいるとすげえ目立つ。
俺らが登校すれば他の生徒たちから遠目でヒソ
ヒソと見られるが日常。
元から不良の俺はともかくガルムくんこと雪峰
総司は元生徒会長。
そんなガルムくんが今不良やってるのは冤罪で
学校のみんなから犯罪者扱いさせたからだ。
融通がきかない石頭が原因で身に覚えがない恨
みや妬みを買って冤罪事件に巻き込まれて生徒会
を追われた。
その後、クラスメイトや同級生から嫌がらせや
イジメにあって不登校となって留年した。
俺はガルムくんをハメた小悪党のやり方がなん
となく気に入らなかったので冤罪を晴らして首謀
者たちを成敗した。
それからはガルムくんは俺の右腕だ。
それはありがたいことだ。
けど、俺は前々から聞きたかったことを尋ねた
「ガルムくん」
「何ですか、フェンリル」
「ホントに優等生に戻る気ないの?」
「ありません」
即答するガルムくんの目には一点の曇りもない
ので“なんて清々しいなヤツだ”と思った。
「しかし、あらぬ疑いをかけられたガルムくんに
だって反省する点はある」
「それは重々承知です」
「なら、そこまで頑固になる理由は何?」
ガルムくんはさっきまでの生真面目な顔から薄
笑いに変わり、こう言った。
「あの時、フェンリルに言われました。好きに生
きてみろと」
「・・・・・・・・・・・・」
「だから今、好き勝手に生きています」
「好き勝手か」
「えぇ、私の生き様は自分の心で決めます」
俺は頭を掻きながら“なら、勝手にして”と言い
ガルムは頷いて歩き出した。
下駄箱で靴を履き替え、教室に向かう途中、ガ
ルムが俺に質問してきた。
「それはそうとフェンリル、あの一件をラグナレ
クに言って良かったのですか?」
「あの一件?」
「ルシフェルの件です」
俺はアアッと返事をして少し考えてから答えた
「まあ、いいんじゃない?」
「また、いい加減な」
「だってよ、拳聖に報告するとそこでストップさ
れるかもしれないし」
「拳聖様が?」
「ルシフェルは拳聖のお気に入りなんだよ」
私が拳聖様と拮抗する力を持っているからと聴
くとフェンリルはウ~ンと声を出しながら考え込
み、こう尋ねた。
「ガルムくん、黒崎相介がなぜ『ルシフェル』と
呼ばれているか知ってる?」
「?拳聖様が名付けたのでは?」
「違う・・・・・・名付け、いや畏怖の念を込めた二つ
名をつけたのはメキシコの麻薬カルテルさ」
「メキシコ!?麻薬カルテル!!」
俺は『ルシフェル』に関する、戦慄の逸話を語
り始めた。
「なんでも7年前の話だ」
黒崎の家族は父親の仕事の都合でアメリカに移
住したそうだ。
ある日、黒崎の妹がメキシコの麻薬カルテルに
より誘拐された。
黒崎は妹を取り返すため、ヤツラのシマである
メキシコの地方都市に単身乗り込んだ。
そんで、人以外の全てを瓦礫に還したらしいと
「・・・・・・人以外?」
「そう、人以外の全て破壊したんだと」
「その・・・・・・何を言っているかわかりません」
たしかにな、俺もだよ。
結構苦労して入手した情報だったけど信じられ
なかったよ。
そう、黒崎が襲撃した都市の人口は約10万人
その全住民を無傷のまま、武器や乗り物、建物
を全て破壊したと言う。
その破壊行為の姿を見たチンピラたちが神に反
逆した最高位の天使『ルシフェル』にそのものだ
と畏敬と絶望の念を込めて呼び称えたと。
ガルムくんはとんでもない話に思考停止した。
「・・・・・・・・・・・・フェンリル」
「俺も半信半疑、というか絶対ウソだーと叫びた
いマユツバモンと思っているよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「けど、黒崎相介は強い。これだけは事実だ」
「そうですね」
「とりあえず、巡り合わせを楽しもうや」
「フッ、あなたらしいですね」
俺はそう締めて自分たちの教室に歩き出した
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【陽春 深夜】
[都心 廃屋敷]
「〜〜〜〜〜っ!?」
す、すごい!?これほどの力を隠し持っていた
か!想定外だ。
町のあちこちから犬や猫の遠吠えが聞こえる。
おそらく、室内飼いペットが自己防衛本能で家
いや町から遠くへと逃げ出そうとしているんだろ
当然だ。まるで周囲の大気を支配したような威
圧感・・・・・・このボクが恐怖、いや畏怖により気圧
されている。
これはもう“達人”の超えている。
超人。そう、この気迫は超人だ。
こいつは本当に何者だ?
そんなことを思っていると相介に問われた。
「どうです。オレの全力は?」
「・・・・・・バケ・・・・・・モノか」
「いえ、本来ならしぐれさんの方が上ですよ」
「・・・・・・嫌味か?」
「違います。“気功”、いや“念”の使い方を覚えれ
ば、しぐれさんなら簡単にできるますよ」
「“念”の・・・・・・使い方?」
うーむ、やっぱり“気功”の概念、いや解釈が違
うのか?
緒方さんもオレの“念”に驚いていたもんな。
こっちでも陰陽術とかを調べたけど、基礎しか
なかったからな。しかも結構いい加減な感じで。
けど、本来しぐれさんの実力はオレを凌駕して
いるのは間違いないし。
よし、これをエサで本気になってもらうか。
「もし、オレに勝てたら、技法を教えますよ」
「ずいぶん・・・・・・上から目線の・・・・・・挑発だな」
「さぁ~、なんのことやら?」
あら、しぐれさんの額に青筋を浮かんでいる。
この人って冷静沈着なのでは?
もしかして案外ノリがいい、いや沸点が高い?
ヨシ、怒りを鎮めてもらうため、そろそろ戦い
ますか。
「では、約束通り決闘を開始します。先ずはオレ
の太刀をお見せします」
「・・・・・・来い」
オレは右手の人差し指と中指の間に空月を挟み
“瞬歩”でしぐれさんの間合いにすんなりと侵入し
左側から神速の居合一閃を放つ。
ザシュッ!!
「っ!?」
しぐれさんギリギリで上半身を反らしながらバ
ックステップして回避するが・・・・・・・・・。
ドガッ!!
着物の一部を破った斬撃波はそのまま壁を大き
く抉った。
「ーッ!?」
オレから距離を取ったしぐれさんは言葉を失い
何が起きた理解できない表情をしていた。
その反応は当然か。斬撃の跡が幅3メートル以
上の地割れみたいだし。
「流石ですね。この程度の居合では難なく退ける
ますか」
「・・・・・・・・・・・・」
しぐれさんは戸惑いながらオレに質問した。
「その剣は・・・・・・何だ?」
「空月は超重量の奇形剣です」
「・・・・・・超重量?」
うーむ、“刄金の真実”を知るしぐれさんでも理
解が追いつかないようだ・・・・・・。
オレはしぐれさんの動揺を無くすため、弥勒流
の武器の特性を簡単に説明をした。
「弥勒流の武器は飛鳥三輪山から発掘した隕石鉱
の混合合金により作られています」
「・・・・・・隕石鉱?」
「はい、簡単に言えば超重量物質です」
この鉱石は1立方マイクロメートル、つまり細
菌サイズで約100キロ以上の質量を持ち、弥勒
流の武器は10トンを超えると。
「ここまで言えば理解が追いつくでしょ」
「・・・超重量から・・・・・・生み出せる・・・破壊力」
しぐれさんの顔が腑に落ちないと表情に変わり
ブツブツと呟いた。
「ふ・・・・・・不可能だ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「人間が・・・・・・そんな武器を・・・・・・使えるなんて
・・・・・・ありえない」
ホォ~、あの香坂しぐれがパニックか。
まぁ、そうなるよな。
これほどの超常の技を見せられたら。
「やはり・・・・・・きさま・・・・・・バケモノか?」
「・・・剣の一つの究極は刀を己の体の一部」
「ーッ!?」
「さらなる至高は己の刀が一つとなる境地」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「弥勒の技はあなたの師の言葉そのものですよ」
オレがそう言うとしぐれさんは気持ちが落ち着
いたのか剣を前に構えた。
「み、見苦しい・・・・・・ところを見せた」
「いえいえ、では決闘の続きを」
「うん」
「弥勒流古剣術 綺の太刀・・・・・・“鏡花水月”」
オレは風林寺戦と同じように認識阻害の技によ
り姿を消した。
しかし、目の前にいるのは特Aクラスの達人だ
仮に何も見えなくても攻めればそれ相当の技で
対応される。
さあ、お手並み拝見としますか。
最強の剣士 香坂しぐれ。
ーto be continuedー
次回 月花