平和を知らない老兵は奪うのが最善。
戦争を知らない子どもは分け与える
のが良きこと。
ゆえに他の地に足を運ぶ際、心得て
おきたいのは全てが異なることこそ
・・・・・・それが世界だ。
疑うべきは自分自身の常識のみ。
世界はアンバランスが正常なのだ。
【陽春 夕方】
[裏新宿 無限城]
「お久しぶりです、銀次さん。美堂くん」
オレと蛮ちゃんは無限城のMAKUBEXのアジト
に足を運んだ。
なんでも、雪彦くんは今回の仕事のサポートをMAKUBEXにお願いしたらしい。
「MAKUBEX、ホントに久しぶり〜」
「へっ、相変わらず引きこもりか?」
「蛮ちゃん、MAKUBEXたちは協力してくれたの
にひどいよ〜」
「そうですよ、美堂くん」
蛮ちゃんはケッと舌打ちしてタバコに火をつけ
て一服しながら状況を聴いた。
「そんで、メガネの弟子の世界に行けるのか?」
「ええ、異世界転移は可能です」
「うあ〜、さすがMAKUBEX」
「今回は無限城の神も協力がありましたから」
蛮ちゃんは未だに信じられないという表情で雪
彦くんをチラッとみて呟いた。
「・・・・・・本当にあのオンボロ時計が手を貸すなん
てな」
「それだけ非常事態ということですよ」
MAKUBEXは今回の異世界転移の説明を始める
「まず、異世界転移の注意点からです」
「注意点?」
「えぇ、銀次さん。今回、異世界転移にはいくつ
かの制限があります」
「へぇ~、そうなんだ」
「まぁ、ノーリスクじゃ無理だな」
「その通りです。美堂くん」
蛮ちゃんがタバコのケムリを吐くとMAKUBEX
に質問した。
「つーか、異世界に何日居られるんだ?」
「・・・・・・最低3ヶ月以内です」
「3ヶ月!?」
「それが限界なんです、銀次さん」
「その辺が妥当か。その日数を過ぎると俺たちは
どうなるんだよ?」
「こちらに強制送還させます」
この辺までは俺の予想通りか。
っで、その後はお決まりのか?
「そんで、俺たちは二度と黒崎相介の世界には行
けないと?」
「・・・・・・その通りです」
「えぇっ?ど、どうして?」
オレは蛮ちゃんの言葉に驚くとこう言われた。
「あのオンボロ時計がそこまで規則を破るんだ。
それくらいのペナルティは当然だろ、銀次」
「ウ~ン、言われてみればそうだけど」
「美堂くんの言う通りです。最大の譲渡です」
雪彦くんがそう断言するとその場の全員が頷く
蛮ちゃんが他の制限を尋ねた。
「残りの制限は?」
「異世界滞在の人数です」
「滞在?人数?」
「今回の異世界にて長期滞在できるは5人までな
んです、銀次さん」
MAKUBEXの説明の途中で雪彦くんが口を挟む
「実はチームで仕事をしてもらいます」
「えぇっ!?」
「・・・・・・・・・」
「今回はかなり大規模の事件なのでチームを組ん
だ方が効率がいいのです」
「確かに」
「大丈夫ですよ、銀次くん。メンバーは僕たちの
知り合いです」
雪彦くんがそう言うとアジトの奥から三人の人
影がオレたちに近づいてきた。
「お久しぶりです、銀次さん」
「カヅッちゃん!?」
タレ銀モードになった銀次はイト巻きの頭に乗
り、じゃれ合った。
「ホント久しぶり〜」
「ちょっ、銀次さん」
そのじゃれ合いにため息を吐くのは・・・・・・。
「アンタさ、嫌ならいっそ地面に叩きつけな」
「卑弥呼ちゃん、だんだん蛮に似てきたわね」
蛮ちゃん似を指摘させてブスッとする卑弥呼ち
ゃんを茶化すマリーアさんに蛮ちゃんが声をかけ
た。
「なんで、お前らもメガネに声かけられたのか」
「まぁ、“アレ”の厄介さをわかっているからね」
「今回の一件、私無しではヤバいでしょ?」
「ゴホン」
MAKUBEXは咳払いをし、『神の記述』に関
する情報と任務を話し始めた。
「それでは事の経緯を説明します」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【陽春 深夜】
[梁山泊 母屋]
「さて、これより緊急梁山泊会議を始める」
長老の言葉に頷く岬越寺たち。
まず、黒崎相介のプロフィールを岬越寺が説明
を始める。
「黒崎相介の入手した経歴は恐ろしいものでした
正直、味方についてくれたのが幸いと言える」
缶ビールをグィッと一口飲んで笑う逆鬼。
「ガハハハハッ!?なんだ、秋雨。ずいぶんと気
弱なセリフだな。らしくねえ〜ぞ!」
「逆鬼どんの言う通りネ。らしくないよ」
「アパパッ!?秋雨、あしたアメダマがふるよ」
「それを言うなら雨が降るじゃ。アパチャイ」
煽られている岬越寺は不敵な笑みで話の続きを
語り出す。
「ふっ、彼の戦慄した通り名を聞けばその態度を
180度変えるさ、逆鬼」
私の意味深の言い方に逆鬼から聞き返した。
「黒崎相介の通り名?」
「あぁ、その名は聞けば全員驚くはずだ!」
「秋雨どん、もったいぶらずに教えてネ」
「・・・・・・『ルシフェル』」
「「「「ッ!!!!?」」」」
長老たちは驚愕の表情に変わり、逆鬼は私に聞
き返す。
「おい、そりゃマジか?」
「入念に調べた結果だ」
「秋雨どん、とんでもない事実ネ。それは!!」
「・・・・・・うむ、厄介じゃの〜」
その場の全員が事の深刻さを理解した中でアパ
チャイだけが何もわかっていない。
「アパッ!?『ルシフン』ってなによ?」
頭を掻きながらため息を吐いた逆鬼はアパチャ
イをドヤした。
「アホッ!?『ルシフェル』だ!!」
「だから、それなによ?」
「ああ〜、てめぇな「逆鬼どん、ストップネ」」
逆鬼をなだめる剣星はアパチャイの方を向いて
『ルシフェル』のことを一から教え始める。
「アパチャイ、『ルシフェル』にはいろんな意味で
伝説があるネ」
「アパッ、でんせつ?」
「そうネ、『ルシフェル』の伝説はメキシコが始ま
りと言われているネ」
おいちゃんは『ルシフェル』の伝説を語り出す
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〜7年前〜
これはメキシコの地方都市で起きた奇跡。
『な、なんだアレは!?』
『く、くるな!くるな〜〜!?』
『うああああ〜〜!?た、助け〜〜!!』
『し、死にたくない!?死にたくない〜!?』
地元を牛耳るチンピラどもが阿鼻叫喚の渦。
『あぁ・・・・・・オレらは終わりだ』
『ワタシたちに神の裁きが・・・・・・』
『なら、あの方は・・・・・・ルシフェル』
信仰心を持つ者たちは自分たちが天の裁きを受
けるのだと確信した。
地面にへたり込んで神に許しを請うための祈り
を乞い、祈りを捧げる者の一人が呟く。
『・・・・・・しかし、なんと美しい』
幾数千の光の矢が降り注ぐ天使。
『あぁ、オレたちの命を消すとわかっても・・・』
『そうだ、なんとも美しい光景・・・・・・神に感謝せ
ねば・・・・・・』
天使の矢は己の命を消すために射られたとわか
っていても心には感謝の念しかない。
そうして、神の裁きが人以外の全てを破壊して
いく。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「これが『ルシフェル』ネ」
「おぉ〜〜、てんしスゴイよ!」
アパチャイに自作のビデオを見せて説明を終え
る剣星に半分呆れている長老たち。
「・・・・・・そんな目で見ないでネ。仕方ないネ、ア
パチャイに理解させるにはこれが一番ヨ」
長老が“確かに”と呟く。
逆鬼どんが“そんなに神秘的なモンなのか?”と
問われたのでおいちゃんはこう答えた。
「これはアメリカの動画サイドで偶然見つけたネ
それを編集して後でみんなに見せるつもりだっ
ただけネ」
「うーむ、オレの耳に入れた噂と酷似しているが
・・・・・・」
「逆鬼、私もこの程度の情報しか知らぬ」
「秋雨・・・・・・」
「その通りじゃ。『ルシフェル』の情報に関しては
まるでおとぎ話のようなものじゃ」
「長老・・・・・・」
「真実は後でそうちゃん自身に聞けばよい」
長老がとりあえず、アパチャイの説明はこれく
らいにしておいて黒崎相介の話の続きを岬越
寺に求めた。
「岬越寺くん、そうちゃんが『ルシフェル』。
そして、ワシら・・・いやケンちゃんの味方なので
こちらと敵対はせぬと?」
「現時点では相介くんが我々に害をなすことはな
いでしょう」
私は相介くんが兼一くんの気持ちを汲んで行動
すると断言し、これからの彼に対する印象を話す
「彼はまだ私たちに腹の底を見せない」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
「だが、私は相介くんを悪ではないと思います」
「確かにな、初対面じゃ本心こそ見せなかったが
ウソもついていなかった」
「そうネ、逆鬼どん」
「アパッ!?そうすけはいいヤツよ。それだけは
アパチャイでもわかるよ!」
梁山泊全員が相介くんの印象を話している中で
長老だけが黙り込み、みんなにこう尋ねた。
「みなもの、黒崎相介の強さをどう感じた?」
「・・・・・・アイツはオレたちと同等だ」
「同感だ。おそらく特Aクラスの達人でしょう」
「そうネ、秋雨どん。未だに信じられないが・・・
・・・強さは本物ネ」
「アパッ!そうすけはアパチャイとごらくにたた
かえるよ」
「アパチャイ。娯楽ではなく互角ネ」
ひと通りみんなの意見を聞き終えた長老が今後
の黒崎相介に関する対処を話す。
「こちらの味方につき、ワシらの信念を汲んでく
れるのならばありがたい」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
「じゃが、もし我々に牙を剥いた時は・・・・・・」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
「ちょっとだけイジメちゃおうぜ!」
「「「異議なしっ!」」」
「アパッ!?」
ワシの言葉で岬越寺くんたちは納得し、岬越寺
くんが会議を締めた。
「では、今回の会議。これにて終了とする」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【陽春 深夜】
[都心 廃屋敷]
ボクは全身集中し、ヤツの出方を待つ・・・・・・。
正直、まだ理解が追いついていない・・・・・・。
しかし、弥勒流は超重量の武器により人智を超
えた破壊力の技を有するならば、他の流派よりも
技の隙が大きいはず。そこが狙い目だ。
シュッ!
闇の中から投擲させた円月剣二刀が!
「ッ!?」
ボクは回転した円月剣を間一髪で右側へジャン
プして回避。
ドガッ!!
また斬撃により壁が直径20メートルの穴を穿
った。
「〜〜ッ!!?」
「あなたが武器に気を取られるとは・・・・・・ずいぶ
んお粗末ですね」
「ッ!?」
突然闇から現れた相介はボクの左側にいて居合
の構えで腕を振り抜き、咄嗟に刀で受け止めたボ
クは目を疑った。
カキーンッ!!
斬撃!?
なぜ?円月剣は先ほど投げたはず。
相介の手元を見ると短刀が・・・・・・。
「この程度では奇襲にもなりませんね」
「な・・・なんだそれは!?」
ボクは夢でも見ているのか?
相介の手には小説や漫画で出てくるような光の
小太刀を握っていた。
「弥勒流古剣術 綺の太刀・・・・・・“無量新月”」
「刀?・・・・・・剣?」
「これは具現化した“気”の刀剣です」
「なんでも・・・・・・ありか」
「呆然としない方がいい。戦いは続いてますよ」
相介がそう言うと先ほど躱した円月剣がボクに
向かってくる。
右側に回避したが、いつの間にか、相介がボク
の右横にいて円月剣を掴み、居合一閃を放った。
シュッ!!
「ーーッ!?」
ボクは身体をねじって強引に転倒し、地面に身
体を転がして回避した。
ドガッ!?
くっ!?斬撃の破壊力の余波でも危険だ。
すぐさま起き上がり、剣を構えた。
「ハァッ!ハァッ!?」
「あなたが息を切らしているとは」
「うるさい!?」
激昂したボクは右上段の構えで相介に斬りかか
った。
シュッ!!
「ハッ!?」
相介ほどの破壊力はないが、ボクは神速の袈裟
斬りを放つ。
だが、相介はピタッと身体の動きを止めた。
「なっ!?」
避ける気配がない。
こいつ正気か!
「くっ!バカッ!?」
止まらない剣が相介の右肩に触れた・・・・・・次の
瞬間、剣が弾かれた!
ガギッ!!
「グッ!?」
ボクは見えない壁にぶつかったみたいな衝撃の
反動で吹き飛び、地面に身体を叩きつけられた。
「ハァッハァッ!?」
「大丈夫ですか、しぐれさん?」
さっきの吹き飛ばさせたダメージで身体がいう
ことを効かない。
まるでトラックに衝突させたような・・・・・・。
あ、ありえない。
この男は一体、なんなんだ!
流石、しぐれさんだ。
起き上がれないほどの衝撃波を喰らったはず。
たぶん、直撃寸前で後ろに逃げてダメージを軽
減したな。
おっ、立ち上がったか。
しぐれさんはオレを睨見つけて怒号を上げた。
「き、貴様は・・・・・・なんだ!!?」
「あなたと同じ“達人”です」
「ふ、ふざけるな!?」
へぇ~!あのしぐれさんがこんなに感情を表に
出すとは!
やっぱ、避けるべきだったか?
でも、手を抜けば失礼だし。
・・・・・・ん?邪気が地面から?
ちっ!悪霊の親玉が縄張りで喧嘩するオレたち
に腹を立ててやがる。
まぁ、至極当然か。
んで、我慢できなくなってオレたちを殺しに地
上に向かってると。
仕方ない。決闘はここまでにするか。
「しぐれさん」
「ハァッハァッ・・・・・・なんだ?」
「決闘は終わりです」
「・・・・・・なんの・・・・・・冗談だ!」
オレは空月二刀を浮遊させ、横軸に高速回転を
させた。
「もう一度言います。決闘は終わりだ」
オレはとてつもない剣気を放ち、空月の回転に
縦軸にも高速回転を加えた。
「しぐれさん。これが弥勒流の奥義です」
「〜〜〜ッ!?」
超重量の空月は二方向の回転軸が異なる高速の
乱回転運動にて直径50メートル以上の重力の渦
を形成させた。
「弥勒流古剣術 綺の太刀・・・・・・“有量円月”」
とりあえず、これだけオレの実力を見せれば納
得してくれるか。
さてと、ここからは今日の仕事のフィニッシュ
といきますか。
ーto be continuedー
次回 決着