梁山泊の同門者 黒崎相介   作:rOOd

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成功とは強者の言葉ではない。
成功とは鈍足でも困難に足掻いた者
が歩み続けてきたほんの先の結果だ。

道に瓦礫が散乱してようとも
絶壁な崖にあろうとも一歩一歩を
歩くことでほんの先に進む。

それこそほんの一歩が明日に繋がって
いく証なのだ。



BATTLE 12 梁山泊での修行 上編 

       【陽春 夜中】 

 

      [都内 廃ビル]

 

 私たちは今回のアジトである廃ビルに不法侵入

して薄暗い廊下を進み、一階の会議室に入室した

 室内は数台のハリケーンランタンの光に照らさ

れて先に到着し、各々暇つぶしをする“六星狼”。

 フェンリルは幹部たちに簡単なあいさつをするが・・・・・・・・・。

 

「おー、よくぞ集まった皆の衆」

「何故、大河ドラマ風なんですか!?」

 

 このお調子者は時代劇の大名に成り切り、芝居

コントを始めた。

 

「苦しゅうない、苦しゅうない」

「止めて下さい!場が締まらないでしょ!」

「ホッホッホッ、スケさんや。そう気を立てず」

「誰がスケさんですか!?」

 

 幹部たちは口元を手で押さえて笑いを堪える。

 

「よきかな、よきかな」

「フェンリル、おふざけはそれぐらいで!」

「余は「いい加減にしないと本当に怒りますよ〜

 フェンリル!!?」」

 

 私はフェンリルのおふざけの声をかき消すほど

の大声で怒鳴った。

 

「ジョークだってジョーク。そう叫ばないでよ〜

 ガルムくん!」

「あ〜な〜た〜は〜ね〜〜!」

 

 私はフェンリルの胸ぐらを両手で掴み上げ、睨

見つけるとスコルがなだめた。

 

「まあまあ、ガルム落ち着いて」

「止めるな、スコル!今日という今日は!!」

「どうどう、ガルム〜。いつものことだろ?」

「たくっ!フェンリルといい君といい、どうして

 こう「落ち着けガルム」」

 

 パイプイスに座り、クロスワードを解きながら

私を止める幹部の紅一点『マーナガルム』。

 

「趣味に没頭してないで注意して下さい!!」

「今に始まったことではないだろ?」

「あははっ!そうそう、相変わらず岩石のごとく

 マジメだよねガルムは!なあ、フレーキ」

「うんうん、頭が白髪一色になる日が近いね〜。

 ゲリ」

 

 旧式のコンパクトゲームで対戦しながら私をか

らかう双子の留学生『ゲリ』と『フレーキ』。

 

「君たちも注意しろ!」

「「無理っ!?」」

「なぜっ!?」

「「こいつに勝つのが優先だから!」」

 

 そう言ってゲームに夢中となるので私は二人に

頭を抱えてよろめいた。

 

「ここにはまともな人間はいないのか?」

「不良がそのセリフを言うか?ガルム・・・」

 

 壁に背中をつけてお気に入りの18禁小説を読

むハティの指摘に私は頷いた。

 

「・・・・・・確かに。おかしいのは私か」

「まあ、気を落とすな。組織内の風通し良いとこ

 ろがうちの長所だろ」

 

 パンッ!!と手を鳴らしたフェンリルがこう言

った。

 

「さぁて、今日の会合を始めますか!」

「・・・・・・急に真面目ですね」

「固いこと言うなや、ガルム。オレたちには早急

 にやるべきことがあるだろ」

 

 俺の言葉でガルムが神妙な顔に変わり、他の連

中も俺が意味深に言うのでハティが聞き返した。

 

「やるべきこと?一体何が起こるって言うんだ

 フェンリル?」

「・・・・・・拳聖の宿敵がラグナレクを壊滅させるか

 もしれない」

「「「「「っ!!?」」」」」

 

 ガルム以外は驚愕した顔で察したスコルが最初

に口を開いた。

 

「ルシフェルが日本にいると?」

「あぁ、確定情報だ」

 

 しばらくざわついた後、俺が事の経緯を話すと

マーナガルムが聞き返した。

 

「うむ、その高校が引き金か?」

「たぶんな」

 

 ハティがオーディンについて俺に尋ねた。

 

「フェンリル、オーディンはどう動く?」

「俺の予想だとオーディンはルシフェルを味方に

 つけようとするな。ハティ」

 

 俺の答えにハティは“そうか”と頷くとゲリとフ

レーキがハモって質問していた。

 

「「フェンリル、僕らはどうするの?」」

 

 双子に高みの見物だと答えたら、“なんで?”っ

て顔に書いていたので俺はこう締める。

 

「簡単だ。俺たちがしゃしゃり出ればオーディン 

 はともかく、あっちの幹部たちは俺たちを快く

 思わない」

 

 俺の考えに双子以外の連中がうんうんと頷く。

 

「でもさ、フェンリルならルシフェルに勝てるで

 しょ?」

「ゲリ、ムリムリ!」

 

 フレーキが手を振りながら否定する。

 

「フレーキ、どうしてムリなの?」

「ルシフェルは拳聖と同じぐらい強いってウワサ

 だよ、ゲリ」

「そうなの?ならラグナレクは終わりじゃ〜ん。

 かわいそうだね、ゲリ」

「そうだね、フレーキ」

「うんうん、かわいそうなオーディン」

 

 ガルムがスコルに耳打ちで声をかける。

 

「あの二人、フェンリルの説明を理解しているん

 ですよね、スコル?」

「そう見えるかガルム?」

 

 ガルムはあのバカ兄弟まったく理解していない

ので盛大にため息をつく。

 

「まったくも〜」

「ガルム思い詰めるなよ。胃に穴が空くぞ」

「うるさい、ハティ!」 

 

 フェンリルは私の肩を叩き、こう言った。

 

「とりあえず、みんなビビッてねえから安心だ」

「緊張感を持ってほしいですよ」

 

 フェンリルは会合をこう締めた。

 

「とりあえず、俺たちは現状維持だ。それともし

 『ルシフェル』と関わったら、独自の判断で対

 応しろ。俺の命令はそれだけだ」 

 

 フェンリルの命令にその場の全員が頷く。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー          

      【陽春 登校時間】

 

      [荒涼高校 校内]

 

「ふぁ~〜〜っ!ねみぃ〜〜!!」

 

 ろくに寝てないオレは拳が入るほどの大あくび

をしながら登校中だ。

 

「あ〜〜、疲れがとれねえ〜〜!」

 

 悪霊退治の件としぐれさんの決闘の後、なんと

か睡眠時間を一時間だけとれたけど、やっぱ全然

回復してねえ。

 つーか、悪霊退散の後であやまり続けるしぐれ

さんが非常に怖くて眠れなかった〜!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

〜回想〜

 

「う~む、やり過ぎた!」

 

 必殺技により屋敷を消し飛ばし、悪霊のボスの

巣穴を破壊した跡は巨大なクレーター。

 

「正直ここまでする気はなかったが・・・・・・」

 

 一応全壊の許可はとっていたが、本当にやって

しまったよ。

 

「・・・・・・とりあえず裏工作は施してあるから大丈

 夫か?」

 

 この辺一帯に認識阻害と防音防塵の結界をかけ

てあるし、役人たちと大地主にも今回の件で発生

するかもしれない異変は全て伝えてあるしな。

 

「まあ、後は依頼者に任せるか」

 

 そう呟いているとしぐれさんが声をかけてきた

 

「相介」

「は、はい!?」 

 

 オレは憤怒中のしぐれさんにビクッとした。

 けど、申し訳なさそうな表情のしぐれさんは頭

を下げた。

 

「・・・・・・大変ご迷惑を・・・・・・かけて・・・・・・申し訳

 ・・・・・・ございません」

「へ?」

 

 いきなり謝罪をするしぐれさんにオレは戸惑っ

たので理由を聞いた。

 

「あの〜、なぜあやまるんですか?」

「相介が・・・・・・仕事なのに・・・・・・ボクが・・・・・・

 邪魔をしていた・・・・・・ことに気づいた・・・・・・

 すみませんでした」

「えっ?あ〜!!だ、大丈夫ですよ。仕事はもう

 終わりました」

 

 オレがそう言うとしぐれさんが頭を上げた。

 なんつーか恋する乙女の顔でモジモジとしなが

ら、オレの目をジーッと見つめて敗北宣言をした

 

「決闘は・・・・・・相介の・・・・・・勝ちだ」

「へ?」

「ボクは・・・・・・完全に・・・・・・負けた。本当に・・・

 ・・・ごめんなさい」

 

 再び頭を下げて謝罪したしぐれさんはすぐさま

頭を上げて後ろを振り向き、颯爽と駆け出した。

 困惑したオレはただ呆然と立ち尽くした・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 下駄箱で内靴に履き替えながらあのしぐれさん

のペコペコとあやまる姿を思い出す・・・・・・・・・

本当に恐ろしかった!

 あ〜、今日は学校サボった方がよかったか?

 でも、それだと兼一がうるさいからな〜。

 あいつ、自分がピンチの時は腹黒いクセに他人

が悪事を働くと正義感を貫くんだよな〜。

 

 悪事か・・・・・・。悪と言えば・・・・・・悪魔総督。

 そういや、あのインチキ魔王がつっかかってこ

ねえな〜。

 転校してきたら、真っ先に目をつけられると思

っていたのに。

 

「なんで、絡んでこねえんだ?「誰が絡んでこな

 いってー!」」

 

 考え込みながら廊下を歩いていたら、突然横か

ら声をかけられたので反射的に“敵”に腹パンチを

食らわした。

 

ドスッ!

 

「ゴボーーッ!?」

「あっ!?」

 

 廊下の床で腹を押さえながら横たわりジタバタ

と悶絶している悪魔・・・・・・いや新島春男。

 

「あ、え~と。わ、悪い!」

「ゲボッゲボッ!?てめーっ!?いきなりゲボッ

 初対面!ゲボッ!!腹パンチ一発とは〜!!」

 

 う~む、こいつ意識を保っていやがる・・・・・・。

 結構強めの一撃だったはずなのに。

 

「ハァハァ!?やっぱ兼一の親戚!ハァハァ!

 大胆不敵だなぁ〜!!」

 

 こいつ耐久性が無駄に高いな。

 これで逃げ足は天下一品か。

 まさしくゴ◯ブ◯だな・・・・・・。

 

「え~と、確か新島だったか?」

「ケケケ〜〜ッ!?よくご存じで黒崎相介くん!

 そうとも!おれ様こそ兼一の大親友の新島春男

 だアァァ〜!?」

 

 う~む、ここまで堂々と自己紹介するヤツは見

たことがない・・・・・・。

 しかし、考えごとをしてたとはいえオレのパー

ソナルエリアに侵入するとは・・・・・・新島春男侮り

がたし。

 

「悪友の間違いだろ?」

「ケケケッ!?その物事をはっきり言うところも

 兼一と同じか〜。『ルシフェル』さんよ〜〜!」

 

 ほぉ〜、もうそこまで調べあげているのか。

 情報処理能力の高さと悪魔を超える悪知恵のみ

に働く頭の回転の速さ・・・・・・某スポ根漫画の悪魔

司令塔ヒ◯魔と同等か。

 だが、原作では向こう知らずで殺されかけたこ

とも結構あったよな〜。

 

 

「・・・・・・新島、一つ忠告する」

「あぁん、なんだよ〜!?」 

 

 ・・・・・・ずる賢く危なかしいこいつに一応警告し

とおくか。

 

「オレの通り名を言いふらすな!」

 

 とてつもない圧をかけてくるオレがそう言うと

新島は黙り込んだ。

 

「オレ、これでも結構恨まれているんだよ」

「・・・・・・もし言いふらしたらどうなる?」

「世界中からマフィアや麻薬カルテルがこの街に

 わんさかなだれ込んでくるわ」

 

 オレに“そんなバカな!?”って視線を向ける新

島だが、オレの目が本気だと察したのか頷いた。

 

「・・・・・・思った以上に危険人物なんだな」

「身に降り掛かった火の粉を払い続けたら、いつ

 の間にか名を挙げた・・・・・・ただそれだけだ」

 

 流石の新島も顔をこわばらせたが、オレは新島

にお願いをした。

 

「まあ、兼一をサポートしてくれや」

「おいおい、黒崎くんよ!おれ様がそんなお人好 

 しに見えるのか?」

「・・・・・・あいつはバカだから新島みたいな卑怯者

 が横にいてちょうど良いのさ」

 

 オレはそう言って教室に向かった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

〜教室〜

 

「おはよう、黒崎」

「おはようございます、黒崎さん」

「おはよう」

 

 教室に入ったら、クラスメイトと朝のあいさつ

を交わして自分の席に座る。

 そんで、浮かない顔をした兼一が風林寺ととも

にオレに近づいて朝のあいさつをする。

 

「おはよう、そうちゃん」

「おはようございます」

「おはよう」

 

 兼一はモジモジとしながらオレに問いてきた。

 

「あのさ、そうちゃん。少し聞きたいことがある

 んだけど・・・・・・いいかな?」

「?なんかあったのか?」

 

 オレが聞き返したら、風林寺がこう呟く。

 

「実はしぐれさんが・・・・・・」

「??しぐれさんがどうかしたのか?」

「・・・・・・鬼の形相で旅に出たんですの」

「はい?」

 

 風林寺によると昨晩傷だらけで帰ってきた鬼の

形相のしぐれさんは手当てをせず旅支度して梁山

泊のみんなに“究極の武器を作り出すために飛鳥

三輪山に行く”と言い残し旅立ったと。

 

 兼一が“心当たりない?”と聴いてきたのでオレ

は“ノーコメント”と答えた。

 オレの様子で察した兼一は“あるんだ・・・・・・”と

ため息をつく。

 オレたちは沈黙したが、風林寺が口を開いた。

 

「あんな追い詰められたしぐれさん初めて見まし

 たわ。心配ですわ」

「まあ、しぐれさんは特Aクラスの達人。心配な

 いと思うが・・・・・・」

「いや、僕たちが心配してるのはしぐれさんがと

 ころ構わず暴れるかもしれないから」

「・・・・・・そっちかよ」

 

 あり得るけど、しぐれさんに対して心外だ。

 なんだか、梁山泊に行きづらくなっていると思

いつつ、今日から本格的に修行できると胸が躍る

な。

 

「ウ~ン、まあ何とかなるか?」

 

 あっ!そういえば梁山泊はまだ正式に入門して

なかったな。

 事前に入門の手続きに関しては言っておいたし

今日の放課後に入門の許可と入門費を支払うか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

       【陽春 夕方】    

 

      [梁山泊 母屋客間]

 

「それでは黒崎相介の梁山泊の入門を許可する」

 

 オレは梁山泊で正式に入門を許させた。

 

「長老、ありがとうございます」

 

 オレは正座の姿勢から深々と頭を下げたが・・・

・・・頭が上げづらかった。

 ・・・・・・長老、というか梁山泊の皆さんからジト

ーッと見られてる〜!

 めちゃくちゃ居心地が悪〜い!!

 確かにオレとしぐれさんは昨日いろいろとあっ

たけど、しぐれさんがいなくなったのはオレのせ

いじゃないよ〜。

 そんな時、岬越寺先生が頭を上げないオレに声

をかけた。

 

「黒崎くん」

「は、はい!岬越寺先生!?」

 

 ビクッと頭を上げて岬越寺先生の方を向くと優

しい表情の先生はこう聴いてきた。

 

「しぐれの件は知ってるね?」

「は、はい!兼一から聞いています!!」

 

 オレがそう言うと先生は笑い声を出した。

 

「ハハハッ、しぐれを心配してありがとう」

「あ、いえ!その・・・・・・」

「心配はいらぬよ。すぐに帰ってくるさ」

 

 そう言ってオレの緊張をほぐした岬越寺先生。

 オレがホッとしたのを見計らって今度は馬さん

が声をかけてきた。

 

「それでは入門料をいただくネ」

 

 馬さんにそう言われたのでオレはジュラルミン

ケースを座卓に置いた。

 

「こちらが入門料です。お納めください」

 

 ケースを開けたら、札束がギッシリと敷き詰め

られていたのでその場の全員が言葉を失った。

 

ーto be continuedー

 




次回 相介の鍛錬
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