苦難を共にした者を守る為、己を捨てるか。
立場や使命により戦い、自分が救わせるか。
どちらもあり得るが、信じる旗印を括り付
けた槍を心に突き刺し、歩き出した者は・・・
いかなる未来も立ち向かうことができる。
BATTLE0 1 十年後
【陽春 昼過ぎ】
[荒涼高校 校門]
「ほう、ここが兼一たちの学校か」
原作通りならば、梁山泊に入門しているはずの
兼一がすっごく心配だからオレはサポートのため
荒涼高校の転校するため手続きに来た。
そういえば、この時期って空手部の番長を倒し
て龍斗の組織に追い回されているんだよな。
「あいつのことだ。現状は最悪なんだろうな・・・」
そう、不良どもに真正面からぶつかった結果・・・
どんどんと最悪の方向へと爆走してるな。
サポートならば、風林寺に任せようと思ったが
過酷な人生を経験しているのに脳内お花畑のとこ
ろがあるから不安なんだよ・・・。
「風林寺は超優秀だが、ド天然だからなー」
一応計画的に物事を進められるけど、イレギュ
ラーには弱いもんなー、風林寺って。
「まぁ、そのイレギュラーも文字通り撃破の一手
のみで解決するからな」
さすが、あの『無敵超人』の孫娘か・・・。
やることが大雑把というか豪快というか・・・。
「そんなんだから、進学校で孤立するんだよ」
兼一も言っていたが、行動と性格の差に恐ろし
くアンバランス、いやギャップが大きすぎるのか
ぶっちゃけ、ここみたいな底辺のマンモス校だ
と細かいことを気にしないで済むから風林寺の性
に合うのか?
「もしかしたら、風林寺とはそりが合わないかも
しれないな・・・オレ」
今から考えても仕方ないか。
さてと、とりあえず職員室に向かおうと歩き出
したら・・・。
“ガチャン!!!?”
いきなり、頭上からメッシュフェンスが落ちて
きたので屋上を見上げたら・・・。
「あぶねぇー、って?け、兼一!?」
屋上で落ちそうなヤツを片腕で掴んでいる兼一
まで引きずられながら落ちそうになっている!
「なんであんなことに、あれは色黒ボクサーか!
そうか、屋上の決闘か!?」
今日は利き腕負傷のボクサーとの・・・。
ちっ!?どうする?
今から屋上まで登っても・・・。
「仕方ないっ!!」
オレは封印を解錠し、霊気を解放して兼一のと
ころまでジャンプした。
その頃、兼一は・・・。
「うおぉぉぉぉぉぉおおああっ~~~!!?」
「な、なんてこったい!!?」
片腕でボクを持ち上げた!なんて力だ!?
白浜、君ってヤツは!!
「・・・・・・・・・あっ」
「お、おい!」
なんとかボクが屋上のヘリにしがみついたが
白浜が力尽きた!?
マ、マズイ!彼が落ちる!!
く、くそっ!しがみつくだけで精一杯だ!
「兼一!!」
「えっ!?」
下から声が聞こえたと思ったら、いきなり横か
ら影が通り過ぎた瞬間、白浜の襟を掴み、彼を持
ち上げた男がいた。
「たくっ、気絶するまで頑張んな!アホ!」
白浜の安全を確認したら、今度は僕の腕を掴み
引き上げた。
「アンタ、大丈夫か?」
「ああっ!ありがとう」
窮地に立っていたボクたちは助かったが、目の
前の彼は何者だ〜い?
「き、きみは誰だ〜い?一体どこから?何よりも
白浜を助けたんだ〜い?」
「オレは黒崎相介。白浜とは親戚だよ。今日は
転校手続きの為、ここに来た。
んで、落ちそうになっていたアンタらを見つけ
たから助ける為に屋上までジャンプして助けた
んだよ」
「・・・・・・最後がとんでもないじゃな〜い?」
ボクは彼が淡々としゃべっている中、チラッと
さっきまでしがみついていたところを見たが・・・
この高さをジャンプ〜?
いやいや、アニメのヒーローじゃな〜いんだか
ら、どこぞの某巨人マンガで出てく〜る機械でも
さ、一発で来れな〜いって!!
ボクが混乱中、先程白浜の膝蹴りでヤラれ、横
たわっていた宇喜田が目を覚ました。
「い、いててっ!!」
「宇喜田!」
「武田?お、おれは?一体?どうなった?」
「アンタ見た限り、白浜にヤラれたか?」
「なっ!?そ、そういや、いきなり、あの野郎!
俺の顔面に膝蹴りを!!?」
宇喜田がとりあえず、予備のサングラスをかけ
て立ち上がった時、突然屋上のドアが開いた。
「兼一さんっ!!?」
ドアから現れたのは白浜と一緒にいる編入生か
たしか、名前は風林寺だったかな?
「ーーっ!!?」
風林寺が倒れている白浜を見た瞬間、猛獣の眼
に変わり、ボクたちに襲いかかった。
「えっ!!おい、待っ!ぐはっ!!!」
「宇喜田!?えっ!?ちょっ!落ちっ!!?
があっ!!!?」
ボクたちは目にも止まらないスピードで攻撃を
する風林寺に何をさせたか分からないままに蹂躙
された。
「兼一まで巻き込むな」
オレは精魂尽きて気絶した兼一を巻き込まない
ように先輩たちから離れた安全な場所に兼一を置
き、風林寺の暴走を見て、ため息をついた。
「たくっ・・・。虎か熊かよアイツは?」
「・・・・・・い、いててっ?・・・えっ?君・・・誰?」
・・・相変わらずの能天気だ、こいつは〜。
「ハァァァァアアア〜!!?」
しかし、一度スイッチが切り替わると容赦ねぇ
なー 風林寺のヤツ・・・。
人のこと言えねぇが、戦場で磨いた戦闘本能は
凄まじく恐ろしいわ〜!
「とりあえず、あの猛獣を止めるか」
「えっ!?と、止める?み、美羽さんを!!」
兼一、言いたいことはわかるけどよ。
惚れてるんならよ、そのリアクションは・・・・・・
ヒデェぞ。
「安心しろ。戦うんじゃない。ショック療法で目
を覚まさせるんだよ」
「ど、どうやって?」
「まぁ、見てろ」
オレはゆっくりと前に歩き出した。
風林寺はあの『無敵超人』のおかげでパーソナ
ルエリアに気配を感じると攻撃する条件反射を身
に着けているんだよ。っんで、対処方は・・・。
「すごい!あの美羽さんに近づいた!!」
精孔を閉じる。某冒険マンガの定番である念の
『絶』で風林寺の条件反射を一瞬鈍らせる。
そして、風林寺の前にギリギリ接近し、これを
やれば、少なくとも冷静さだけは取り戻すはずだ
・・・多分。
「エロ仙人式ショック療法!!?」
「フニャヤヤヤアアア〜〜!!??」
そうして、風林寺の耳にふうっと息を吹きかけ
ると猫ようなしなやかな身体の動きで膝から崩れ
落ち、その場にへたり込んだ風林寺。
「よし、堕ちたか?」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」
一見バカバカしいが、暗殺術の初歩だ。
意識の外からの攻撃はどんな反射神経を持って
も対処できない。
これは全て暗殺者が教えられる古典的技法だ。
けど、条件が難しいから一流でもなかなか使わ
ないんだ。
さて、気絶した風林寺は放置だ。起こせば再度
さっきとように所構わず襲いかかるしな。
被害者2人の怪我の治療が優先だから、オレは
兼一に声をかけた。
「兼一」
「は、はい!」
「とりあえず、風林寺により重症を負った2人を
病院まで運ぶぞ」
「え?美羽さんは?このまま放置!?」
「起こしてもいいが、こいつに指一本触れた瞬間
お前ボコボコに殴られるぞ」
「・・・・・・・・・・・・」
オレの言葉を否定できない兼一は武田に肩を貸
し、オレは宇喜田に肩を貸して屋上から降りてい
ったが、兼一はチラチラと上の方を見ていた。
「・・・美羽さん、後で拗ねそう」
「彼氏ならよ、なぐさめろ」
オレがそう言うと顔面が真っ赤に変わってテン
パって恥ずかしそうに呟った。
「えっ!?いやだな、か、彼氏じゃ・・・」
「まぁ、置いてけぼりにさせた程度だから顔半分
をボコボコするぐらいで許すと思うぞ?」
オレがそう断言すると今度はさぁーっと顔面蒼
白に切り替わり、全身をブルブルと震え始めた兼
一と重症者2名は苦笑いしながら、オレたちは病
院へと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【陽春 夕方】
[梁山泊 岬越寺接骨院]
「おやおや、今日は人数が多いね」
「いや〜、美羽さんが勘違いして少々暴れまし
て・・・」
「・・・あの子、ものすごく強〜いじゃな〜い?
ボク、惚れそう〜」
「わたくし・・・ちっとも悪くありませんわ」
風林寺・・・。あれを受けて素早く復活し、追い
ついてくるとは、よほど置いてけぼりにさせるが
嫌だったのか?
お、なんか治療の手伝っている中、時々オレに
向けてキッと威嚇を仕掛けてきたな。
まぁ、あんなせこい技でヤラれたんだじゃな〜
やっぱ恥ずかしいのか?
けど、重症の被害者3人と勘違い加害者の風林
寺、そして何食わぬ顔をして堂々といるオレを見
ても微動だにせず、淡々と治療するとは・・・
流石は哲学する柔術家だな。
岬越寺先生は治療の最中にオレの方をチラッと
見て尋ねてきた。
「それで君は誰だい?学校の同級生かい?」
「あ、そうだ。君は一体?」
「・・・・・・・・・」
こいつは・・・・・・。風林寺は仕方ないが、オレや
龍斗を忘れるなよ。
そんなやりとりを見て、武田は兼一に尋ねる。
「え?白浜くんの親戚と言ってだけど?」
「?僕の親戚・・・・・・?」
「後、うちの学校に転校して来たって?」
「えっ!!?」
「・・・風林寺が天然なら、兼一は能天気だな」
「え〜と、君は誰?」
呆れ果てたオレは思い出すまで放置することに
した。
「ハァ〜〜、もういい。それよりも先生」
「うむ、何かね?」
「そっちの武田、いや武田先輩の治療を」
オレが親指で先輩を指し、例の負傷を治すよう
に促した。
「ボクはいい、この程度のケガは慣れっこさ」
「そっちじゃない。左腕の麻痺ッスよ」
「な、なぜだい?話してないのに!?」
「ほぉ〜、君も気づいてたのかい?」
岬越寺先生が先輩の左腕の麻痺を気づいていた
オレに興味を持ったようで無言で“君が説明した
まえ”と圧をかけてきた。
仕方ないのでオレは先生の代わりに説明した。
「先輩、さっきから左腕を動かしてないからね。
けどさ、兼一も不幸体質だけど、先輩も相当
運がないッスね・・・その程度の怪我も治せな
いヤブ医者に当たるなんて」
「えっ!?そ、それはどういっ!い、いだ!?」
岬越寺先生はいつの間にか先輩の後頭部の首を
掴み、独自の治療を始めたが、オレは気にせずに
説明を続けた。
「アンタの麻痺は骨折とかの怪我が原因じゃない
後頭部強打により脊髄がゆがんでしまったんだ
つまり、頸椎椎間板ヘルニアだ」
「正解!だから、ここをこういう風にすると」
先生・・・涼しい顔で治療しているけど、後頭部
の強打による頸椎椎間板ヘルニアを外科手術もせ
ず、接骨の術式で治すなんて離れ技・・・・・・・・・
医学界の常識をぶっ飛ばす気なの?
「あ、あだだっ!?な、何をする!?」
「おいおい、まだ治療の途中だよ?」
先輩が痛みに耐えられず、“左腕”を上げた。
そう、“左腕”を。
「ーっ!!?」
今まで動かなかった左腕が上がったので先輩は
驚愕した。
「あっ!?あだっ!?う、動いた?今?なあ?」
「えぇ、動きました!」
「よかったですわ」
先輩は先生に完治するのと聞くと後何回か根拠
よく治療すればいいと言い、ボクシングに関して
も普通にできるどころか世界チャンピオンにも挑
戦できると断言され、大粒の涙を流した。
「なら、治療の続きを」
「・・・は・・・はい、ちなみに後何回治療すれば?」
「なぁに・・・後たった七百三十二回だよ」
「えっ?ちょっ?待て!ぎゃあ〜〜ッ!!」
一見すると無茶苦茶だが、おそらく普通に手術
する場合、全治に1、2年かかるはずだ。
それをあの術式だと多分3ヶ月ぐらいで治るか
岬越寺先生マジパネェってか?
オレは先輩の悲鳴を叫ぶ姿に合唱し、憐れみの
念を送った。
「武田先輩ガンバ!」
ーto be continuedー
次回 能天気