梁山泊の同門者 黒崎相介   作:rOOd

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行動の果てには結果が存在する。
そして、人間の結果を成した時
必ず責任が付きまとう。
結果の責任を背負う為、立場や環境は
望まぬ形で現れる。
これこそ人間の生き様である。
大切なのはそこで自分の役目をやり遂げる
為、どうなりたいか・・・どうあるべきかを
己の心で考え、決めるのが・・・
自分が人であると定められる唯一の志しだ。


BATTLE02 梁山泊入門 上編

       【陽春 昼過ぎ】 

       

       [梁山泊 母屋]

 

 屋上での決闘から数日が過ぎた。

 美羽さんの勘違い襲撃の後、岬越寺先生の接骨

院に直行となった僕たちは武田さんの利き腕の麻

痺を先生が独自の治療で完治ができると言われた

時、交戦をした身ながら、心からホッと安心して

嬉しかった。

 

 宇喜田さんと武田さんとは和解・・・と言うべき

か、多分雨降って地固まるの感じになり、それは

それでよかったんだが・・・・・・。

 この一件で一つのモヤモヤが残った。

 

「うーん、誰だろ?」

 

 屋上から落ちそうになる僕を助けてくれた転校

生について謎なのだ。

 武田さんはこの人が僕の親戚だと言ったが・・・

“この人誰だっけ?”が第一印象だった。

 そこで、岬越寺先生は次の休日に梁山泊で話を

聞こうと提案してきた。

 

「えっ?ど、どうして梁山泊で?」

「兼一くん、彼と出会ったのはケンカの最中だっ

 たと言っていたね」

「いや、正確にはケンカの後で「もし!もしもだ

 !!君の家で彼の素性を聞くとなると学校での

 ケンカを親御さんに話さなければならない。

 それは流石にマズいだろ?いろいろと」」

「うっ!?」

 

 僕の言葉を遮り、岬越寺先生が人をひっくり返

すほどの勢いで僕に詰め寄り、正論で強引に説得

させ、僕はその気迫にただ首を縦に振った。

 岬越寺先生はくるりとあの転校生の方を向けて

尋ねた。

 

「君もそれで構わないかね?」

「・・・問題ありません。そちらの提案でいいです」

「そうか、ありがとう。そうそう自己紹介がまだ

 だったね。私は岬越寺秋雨だ。しがない接骨院

 を経営している」

「オレの名前は黒崎相介と言います。しかし

 簡単に“しがない”って・・・先輩に対して見事な

 治療を見ていたオレによく堂々と言えますね」

「ははははっ〜、別に大したことではないよ」

 

 岬越寺先生は笑って何の問題もないと断言する

んだから、恐ろしいな・・・。

 

 そして、休日の昼過ぎに彼を招くということで

その日は解散した。

 武田さんの言う通り、彼はうちの学校に転校し 

うちの制服を着て登校した。

 学級もクラスも僕たちと同じだ。

 

 転校初日から優しい笑顔と気さくな言葉使いに

よりほとんどのクラスメイトと友好な関係を築き

転校数日でクラスの中心人物にいた。

 僕は離れた席で彼を見ながら、思わず本音をボ

ロッと口に出したら・・・・・・。

 

「ウ~ン、美羽さんの時とは反対ですね」

「・・・それはどういう意味ですの、兼一さん?」

「あっ!いえ、その〜!」

 

 僕の肩をがっしりと掴む美羽さんから震え上が

るほどの怒気が伝わってきた。

 

 つ、爪がめり込んでる〜!すごく痛い〜!!

 ジトッ目で睨みつけないで〜!

 こ、こわい!すごくこわい〜!!

 誰か〜!お助け〜!!

 な、なんとか誤魔化さなければ〜!

 

「ほら、美羽さん少しズレ・・・いや天然ですし」

「・・・それはバカと言いたいんですの?」

「いえ、美羽さんは猪突猛進、いや獅子奮迅。

 違う違う!虎視眈々・・・え~と」

 

 僕がなぐさめにならない言葉を連発するから・・・

美羽さんは僕の肩を掴むのをやめ、今度は壁に身

体を向けてブツブツといじけ始めた。

 

「どうせ、わたくしは見境ない乱暴者ですよ〜。

 どうせ、人見知りで空気読めませんよ〜」

「あっ、み、美羽さん!え~と、そ、それは〜

 大丈夫ですよ、世の中、美羽さんみたいのが

 多いですし〜」

「・・・兼一さん、それってなぐさめているつもり

 ですの?」

 

 その日は美羽さんのご機嫌を取り戻そうと必死

に宥めている僕と遠くから可哀想な目線を僕に向

ける黒崎くんであった。

 

 そして、約束の日、彼の話を聞く為、彼が梁山

泊に訪れた。

 僕は母屋の客間に彼を案内したが・・・。

 

「・・・・・・岬越寺先生」

「なんだい、兼一くん?」

「一つ質問があります」

「うむ、何かね?」

 

 僕はチラッと部屋内を見て尋ねた。

 

「なぜ、長老や他の先生たちも同席しているので

 すか?」

「不都合でもあるのかい?」

 

 そう、なぜか長老と逆鬼先生と馬先生、アパチ

ャイさん、しぐれさんがドーンと座っていた。

 

「いや、チンピラやヤクザどころか、地獄の鬼も

 逃げ出す達人たちがいたら、息ができないほど

 話しづらくなるなぁと思って・・・」

「兼一くん。時々、失礼なことを悪気なく口に出

 すね、君は」

 

 いや、本当のことを言っただけだい。

 アンタら、自分から最強の達人集団と言ったろ

 だから、アンタらよりも彼の身を心配するんだ

 そんな心の声を呟きながら、僕は客間で向かい

合うように正座して彼に質問した。

 

「改めて聞くけど、君は誰ですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「あの〜なぜ、そんなカワイソーな目で僕を見る

 んですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「何か言って下さいよ。無言を貫かないで〜」

 

 ・・・ダメだ〜、こいつ。

 能天気もここまでいくと清々しいな〜。

 仕方ない、かつて龍斗と競ったあの秘技をやる

かと思い、オレはショルダーバックからあるもの

を取り出した。

 

「・・・えっ?うまい棒?」

 

 オレは困惑する兼一を無視してうまい棒を握っ

た右手を額まで上げ、左ひじを胸のあたりで固定

するポーズになる。

 

「えっ?そのポーズは!?」

 

 そうして、うまい棒の先を左ひじにぶつけた。

その衝撃でうまい棒を見事に袋から出した瞬間

その場の全員が喝采した。

 

「ほほぉ〜っ!お見事!」

「おやおや、無駄で器用な開け方だ!」

「へぇ~、中国雑技団と同じか、馬?」

「あれは一発芸ネ、逆鬼どん」

「わぁーおー、ゲイシャ、セップク、ドゲザ」

「お・・・おも・・・しろ・・・い」

 

 梁山泊の先生たちは楽しんでいるが、僕はビリ

っと電気が走ったように思い出した。

 

「そ、そのうまい棒の開け方は・・・・・・

 そ、そうちゃん?再従兄弟の黒崎相介くん?」

「だから、再会した時に名乗ったろ!どうして

 気づかないんだよ!アホ兼一!!」

「い、いや!えぁぇーーと!アハハハ〜!?」

「たくっ!相変わらず能天気だな」

 

 オレはうまい棒をかじりながら、呆れた表情で

憐れみの視線を向けた。

 くねくねしながら笑うしぐさで誤魔化すところ 

はオジさんに似てきたな。  

 そんな気まずい兼一は言い訳を言ってきた。

 

「だって、10年ぶりだし、お互い子どもの頃の

 顔しか知らないしー」

「あっ!?何言ってんだよ?毎年お前の家にうち

 の家族写真を送ってるぞ」 

「えっ?」

「こっちもお前の家族写真をもらってるぞ」

「ええっ!!?」

 

 こいつ、寝耳に水ってか?とことんアホだ。

 原作で龍斗のヤツが再会した時、ケンカふっか

けた気持ちもわかるわ〜。

 オレから自分の知らないことを言われた兼一は

ブツブツと小さい声で呟く。

 

「そ、そんな!?なぜ、僕だけ知らないんだ?

 父さんも、母さんも、ほのかも・・・なぜ何も

 教えてくれなかった!?」

「お前、ずっと筋トレばっかりに無我夢中でその

 辺の話を家族から聞かされてもスルーだったん

 じゃねぇか」

「うっ!!?」

 

 図星か?こいつ、集中すると視野が狭くなると

ころは変わってないな〜。

 ツッコミを入れられた兼一はオレにツッコミ返

した。

 

「って?どうして知ってるの?確か、そうちゃん

 の家族って外国に引っ越したんだよね?」

「みちるがほのかの愚痴を教えてくれたんだよ」

「えっ?ほのかの愚痴?」

「お前なー、今どき外国に連絡する手段は無いな

 んて言う方が異常だぞ」

「あっ!」

「“あっ!”じゃねえよ。オレも何度かお前のケー

 タイに電話したり、メールを送ったぞ」

「えっ?ちょ、ちょっと待って!?」

 

 慌ててケータイをチェックするな。

 こっちは一体何年電話とメールしたと思ってる

んだよ。

 何百回やっても、返事なしだし。

 なんか、無性に腹が立ったオレは立ち上がって

庭に置いてあったホウキを持ち上げ、あのアホが

振り向くのを待った。

 

「あっ、あったよ!」

「“あったよ”じゃねぇよ!ドアホッ!!」

 

“バッシッ!!”

 

「い、いつたっ〜!!?な、なにするの!?」

「お前がバカ過ぎなんだよ!」

「ホウキで頭を叩くことないだろ!?」

「バカは死んでも治らないからな!いっぺん死ん

 でこい!」

「ひ、ひどい!」

 

 オレらのじゃれ合いに梁山泊全員が苦笑いで見

てるが、このやりとりも流石に飽きてきたな。

 とりあえず、この辺で区切りをつけてもう一つ

の用件も進めるか。

 

「あ〜、もうこれ以上兼一に何言っても無駄か」

「悪かったね」

「さてと、こちらの用件は済んだから」

 

 オレは梁山泊の長老こと風林寺隼人の方を見た

 

「えーと。あなたがこの道場の責任者ですか?」

「うむ、わしがここの道場主じゃ。黒崎相助くん

 と言ったか?わしに何かようかね?」

 

 このじいさん・・・。オレを試してやがる。

 オレのみに凄まじい威圧・・・いや気当たりを放

ってるけど、対象者限定に圧をかけるなんて・・・。

 流石は『無敵超人』か?とんでもねぇな!

 まあいい。本題に入るか。

 

「実はお願いがあります」

「何かね、相助くん?」

「オレ、梁山泊に入門したいんです」

 

 さぁ、オレの願いにどう対処するよ?

 『無敵超人』?そして梁山泊の豪傑の方々?

 まさしく虎穴に入らずんば虎子を得ず・・・・・・

オレは虎の尾を踏みつけた。

 あなたかたの信念はオレに何を与える?

 そして、何を拒む?ここから先は神・・・いや

超人のみぞ知るか?

 

ーto be continuedー

 




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