梁山泊の同門者 黒崎相介   作:rOOd

5 / 17
人の世は常に仮面を被っている。
商いをする時、はらわたを見せない微笑みを。
裁きをする時、法の名の下に公平である厳格を。
罪を償う時、重き荷を背負う為の苦悩を。
死を受け入れる時、次の命に旅立つ悟りを。
そう、嘘という仮面がなければ生きられないのが
人間である。
なぜならば、人は求めるからだ。
ゆえに人はありのままではいられない。
人は未来を信じて変わるからだ。
そして、被る仮面が人を傷つけることものでな
ければ嘘も許させる。





BATTLE 03 梁山泊入門 中編

       【陽春 昼過ぎ】    

 

      [梁山泊 母屋客間]

 

「あ〜相介くん、今からいくつか質問を出すが

 答えられるものには答えてほしい」

「・・・・・・はい」

 

 このジィさん・・・さっきよりもオレに対する威

圧、いやこれは怒気か?

 なぜか、オレに対する敵意が増してきやがった

 最初とは比べ物にならない気当たりをオレに向

けてくるし〜。

 こんな怒気を纏った長老に怯えながら、オレは

平気なふりでなんとか質問に答えた。

 

「ここに入門したい理由は?」

「別に大したことは・・・しいて言えば兼一がいる

 からです」

「ホッホ〜、ケンちゃんが?」

「妹経由で兼一がピンチだから助けてとほのかの

 メッセージをもらったんです」

「つまり、ケンちゃんをサポートが目的で入門を

 したいと?」

「まぁ、そんなところです」

「それならば、うちの事情もある程度聞いておる

 のじゃな?」

「ええ、豪傑たちが兼一に地獄の修行を行ってい

 るとほのかから聞いてます」

 

 ・・・風林寺隼人ってこんなん感じだったっけ?

 お茶目で喰えない好好爺が第一印象なはず。

 裏の顔は人を陥れる悪戯大好きのユーモアな悪

魔だけど。

 なんで?なんでオレに対してここまで敵意むき

出しなんだ?

 ・・・悩んでいてもわからないか、直接質問した方

がいいな。

 

「あの〜・・・・・・」

「何かね?相介くん」

「長老さん、怒ってます?」

「いいや、怒っておらんよ・・・」

 

 次の瞬間、長老は溜まりに溜まった怒気を解放

した〜!

 うお〜〜〜〜っ、なんだよこれは!?

 全身から放たれるオーラがヤバいっ〜〜!?

 おいおい、これはもう殺意に等しいぞ!

 無敵超人率いる梁山泊は活人拳が売りだろ?

 なんで、ガキ一人殺す気マンマンなんだよ?

 うん?お、おい、兼一〜!気絶するな〜!!

 

「長老。どうどう」

「落ち着くネ、気当たりで人が死ぬネ!」

「ガキ相手に何やってんだ、みっともねぇ!」

「そうよ、ヒトデナシはよくないよ!」

「それ・・・を言うなら・・・人殺し」

 

 流石に他の達人たちもヤバいと思って止めに入

り、多少冷静になったのか怒りの原因を語った。

 

「ホッホ〜すまんすまん。いや相介くんがな・・・

 美羽にセクハラをしたと聞いておってのぅ

 つい〜、大人げないことを・・・」

 

 セクハラ?・・・・・・あー、屋上のアレか!?

 合点がいったオレはチラッと風林寺の方を見た

ら、あからさまに“あの時のわたくし、わ、悪くな

いもんですわ〜”ってしぐさをしているよ・・・。

 仕方ない。とりあえずオレのありのままの気持

ちをこの孫娘ラブジイさんに言うか。

 

「あ〜、長老」

「なにかね、相介くん?」

「オレ、はっきり言って風林寺を女とは見てませ

 んから」

 

 オレの言葉で客間の気温が一気に絶対零度まで

超下降したような寒気に覆われ、額に青筋を立て

てる長老の怒気・・・いやもはや完全な殺気へと切

り変わった。

 

「ホッホ〜、ずいぶんとはっきり言うのぅ」

 

 うーむ、兼一には“告ってもいいが、振られな

いように〜!!グッドラック!!”とか言うくせ

に〜、この人外ジジイが〜!。

 だいたい、風林寺を女しての魅力がないという

意味で言ったのではなくて〜、めんどくさい。

あーもー、とりあえず謝罪か?

 

「・・・スミマセン、その、言い方を間違えました。

 風林寺は兼一の彼女だからオレは手を出「わ、

 わたくしは彼女ではありません〜!!!」」

 

 オレの言葉を遮り、兼一を介抱している風林寺

が横やりを入れるように否定してきた。

 

「え?風林寺って兼一と一緒に登校してるんだろ

 ?毎朝は同じ時間帯に見かけるし」

「あ、あれは兼一さんの身を心配して〜」

「手作り弁当も一緒に食べているし」

「えっ?そ、それはその〜た、たまたまですわ!

 たまたま!」

「部活も忙しいのに放課後も一緒に帰るし」

「で、でしかれ〜。ご、ごれいのたもに〜」

 

 オレが指摘すればするほど風林寺の顔がどんど

ん赤くなり、頭上からもくもくと白煙が立ち上が

ってるよ、蒸気機関車かきみは?

 頭脳明晰のはずなのに口が回らないし、こんな

チンケな煽りでバグるとはな〜。

 だが、風林寺がここまで兼一を彼氏じゃないっ

て否定するのを目の当たりしたオレはチラッと気

絶した兼一に悲しい視線を向け、こう思った・・・

ホント、こいつ可哀想だな〜。

 

「おほんっ!あ〜、相介くん」

 

 このままでは埒が明かないと思ったのか、咳払

いをした岬越寺先生がズレていた入門の話を戻そ

うとオレに声をかけた。

 

「はい、岬越寺先生」

「君はどうしても入門したいんだね?」

「はい、ぜひお願いです」

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 

 えっ?な、なに?この沈黙は・・・?

 やっぱ、チカラを隠しているのはバレているの

か・・・流石は特Aマスタークラスの方々だな。

 岬越寺先生が梁山泊の代表としてオレに疑問を

ぶつけた。

 

「はっきり言うがね、君はかなり鍛え抜かれてい

 るのはこの場の全員が見抜いているのだよ」

「・・・・・・・・・」

「さらに君の実力は弟子クラスではなく、達人の

 手前・・・妙手だね」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「いくら兼一の親戚であり親友だとしてもおいそ 

 れと君を信じるのは危険なのだよ」

 

 この辺は想定内だな。実力は隠しても真意を隠

す気はないが・・・。

 わざと兼一を気絶させた間にオレの本音を聞き

出したいか・・・。

 なら、オレも嘘偽りない本心を話すのみ。

 

「つまり、オレを密偵と思っているんですか?」

「現時点ではね」

「・・・・・・・・・」

「さあ、答えてもらおうか」

 

 今度は岬越寺先生が気当たりを放つ。

 長老ほどではないが・・・恐ろしさは同じか?

 ともかく、オレは自分の答えを口に出した。

 

「・・・違います」

「君はあちらの人間ではないと?」

「あなた方の敵対組織とは無関係と言いたいので

 すよ。活人拳の『哲学する柔術家』殿」

 

 ・・・・・・長老の殺気を受け流し、私の気当たりに

平然とするか・・・推測した通りだな。

 私は自分の直感が正しかったと確信したので不

敵な笑みとなり、数日前の梁山泊の緊急会議を脳

裏に浮かべた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

 

〜数日前〜

 

「これより梁山泊緊急会議を始める!!」

 

 私は兼一くんたちの治療を終えた後、梁山泊の

メンバー全員を緊急に集めた。

 

「なんだ、秋雨珍しいな〜そんなに慌てるなんざ

 空から槍が降るか〜?」

「逆鬼どんの言う通りネ。らしくもないヨ」

 

 剣星と逆鬼の言葉の通りだ。

 私らしくないのはわかっている。

 しかし、この一件はそれだけ重要なのだ!

 

「うむ、聞いてくれ。私は先日私自身の目を疑う

 存在と出会った!」

「秋雨、両手でかくせばなにも見えないヨ」

「それは・・・目を覆う」

 

 私は天然のアパチャイを無視して話を続けた。

 

「実は先日、兼一くんの親戚 黒崎相介と名乗る

 転校生が私の接骨院に訪れた」

「ケンちゃんの親戚〜?」

「その者は・・・マスタークラス、すなわち我々と

 同じ達人なのだ!!」

「「「「「っ!!!?」」」」」

 

 私の言葉で長老も他のみんなも黙り込み、しば

らくして逆鬼が聞き返した。

 

「・・・確かなのか?」

「断言できない。しかし、巧妙に実力を隠してい

 たが、間違いなく達人の域だ!」

「秋雨どん。ちなみにケンちゃんの親戚はほのか

 ちゃんに似た可愛い女の子?」

「兼一くんと同じ年の男子高校生だ」

 

 剣星は私の即答に“なんネ〜、つまらな〜い”と  

という表情でぶすっと拗ねた。

 逆鬼が剣星の見境ない色欲さにため息をつきな

がら呆れ、私に再度聞き返した。

 

「そいつ、兼一と同い年で達人の域か?にわかに

 信じられねぇ〜ぞ、秋雨?」

「私も同意見だ。だが、彼は実力を弟子クラスに

 隠ぺいしていた。この私でも最初かすかな違和

 感を持つ程度の精度だった」

「ホッホ〜、じゃが、よく気づいたのぅ?」

「はい、気づいたきっかけは兼一くんたちのケン

 カの話です」

 

 兼一くんはある事情で学校中の不良から命を狙

われるハメになり、不良の刺客として蹴り技を得

意とする古賀、元柔道家の宇喜田、リーダー格で

元ボクサーの武田の“技の三人衆”が兼一くんを探

し回っていた。

 けれど、雲隠れした兼一くんを見つけれない。

 業を煮やした宇喜田くんと武田くんは兼一くん

の親しいと話していたクラスメイトたちを拉致し

ておびき寄せるエサにした。

 兼一くんは仕方なく人質となったクラスメイト

たちを解放してもらう為、宇喜田くんと武田くん

を相手に屋上での決闘を承認した。

 アパチャイに習ったムエタイの基本技で戦闘を

開始し、宇喜田戦は顔面にひざ蹴り一発KO。

 武田戦では拳闘の弱点を突く戦法により辛くも

勝利したが、ケンカの決着の攻撃の際、勢い余っ

て屋上のメッシュフェンスを突き破り、兼一くん

が屋上から落ちかけた武田くんの右腕を掴む状況

に陥った。

 武田くんを必死に掴む兼一くんは彼に“なぜ左腕

を使わない”と叫んだ。

 すると武田くんは“ボクの左腕は動かないんだ”

と呟くと彼は過去を語った。

かつてチンピラたちから親友を助けた際、乱闘で

利き腕の左腕に大怪我をして麻痺障害を負い、上

半身左側を動かせなくなり、ボクシングができな

くなったと。

 このままでは二人とも落ちるからこの手を離せ

と叫ぶ武田くんを拒否した兼一くんは最後の力を

振り絞り、彼を屋上のヘリに持ち上げた。

 だが、兼一くんはそこで精魂尽き、気絶した次

の瞬間、屋上までジャンプして二人を助けたのが

黒崎相介くんだと私が治療中の武田くんから聞い

たケンカの話だと。

 それを聞いた逆鬼は飲み干した缶ビールを片手

で握り潰してボール状にすると神妙な表情で黒崎

相助の印象を口に出した。

 

「屋上までジャンプね〜、確かに弟子クラスじゃ

 ねぇな〜。最低でも妙手、もしくは達人になり

 かけか、秋雨?」

「うむ、さらに美羽の暴走を止めたと聞く」

「ホォ〜、美羽を?どのようにして?」

「はい、ケンカの話の続けます」

 

 相介くんが兼一くんと武田くんを助け、それと

同時に気絶していた宇喜田くんが目を覚まし、立

ち上がった次の瞬間、屋上のドアを勢いよく開け

た美羽が気絶して横たわっている兼一くんとその

周りを数人の暴漢たちが囲っていると勘違いして

激怒の戦闘モードに切り替わり、野獣化した美羽

が暴れ出した。

 

「美羽も見境ないネ。このままだと第二の長老に

 なっちゃうネ」

「ずいぶん失礼じゃのぅ〜、剣星」

「けど、スゴイよ!怒った美羽にとどめを刺すな

 んて!」

「違う・・・とどめではなく・・・止める」

 

 相介くんは兼一くんだけを安全地帯まで避難さ

せ、暴走する美羽を止める為、芸術的技を披露し

目撃した武田くんは思わず、息を呑んだと。

 逆鬼は意味深なことを誇張する私に疑問をぶつ

けた。

 

「芸術的技ぁ〜?」

「ボクシングで言うならばカウンターだ」

「確かにカウンターを芸術と例えることはあるが 

 美羽にそんな小技が通用するか?」

「・・・話から察するにカウンター特有のタイミン

 グを合わせたのではなく完全に気配を消す・・・

 すなわち暗殺術だ!」

「「「「「っ!!!!?」」」」」

 

 武田くんによれば、暴れている美羽にボコボコ

にさせている中、彼は奇妙な体験をした。

 美羽が目にも止まらない攻撃中にまるで幽霊と

勘違いするほど存在感がない相介くんが現れ、い

とも簡単に美羽の間合いへ侵入した。

 そして、興奮状態の美羽の耳に息を吹きかけて

悶絶させたと。

 

「ここまで言えば答えがわかるだろう」

「無呼吸や暗歩などの身のこなしじゃねぇな〜。

 完全に精孔を閉じることで意識外からの見えな

 い攻め・・・達人だな」

「逆鬼どんの言う通りネ、その子絶対達人ヨ!

 “気の掌握”まで到達しているはずネ!」

「スゴイヨ、ベーコンと同じなんて〜」

「それを・・・言うなら・・・霊魂」

 

 みんながそれぞれの意見を言い合っている中と

長老だけが沈黙したままだったが、なぜか私、い 

やその場の全員が噴火寸前の火山の目の前にいる

気分となり、本能的に臨戦態勢へ身構えた。

 

「ホッホー、秋雨くん」

「なんですか、長老?」

「そのケンちゃんの従兄弟、いや再従兄弟は今週

 の休日にこちらへ来るのじゃな?」

「はい、そのように約束しました」

「ホッホ〜、それは楽しみじゃのぅ〜」

 

 怒りを隠すような不気味な笑顔の長老にみんな

は苦笑いするしかなかった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

〜現在〜

 

 オレの言葉により岬越寺先生はヒゲを触りなが

ら、まだ黙り込んだ。

 あの人がヒゲを触るのは思考をフル回転させて

いる時のクセだっけ?

 やっぱ、この歳でマスタークラスだと疑うか。

 みんながオレを疑う重苦しい空気の中、長老が

口を開いた。

 

「黒崎相介くん」

「はい!」

「君の入門を許可する」

「「「「「っ!!!!?」」」」」

 

 長老の言葉に他のみなさんは驚愕した。

 つ〜か、このジジイよ、さっきと雰囲気が違い

すぎだろうが〜。

 他の達人たちもパニックッてるぞ!!

 

「ち、長老!?」

「な、なに考えてるネ!?」

「おいおい、簡単に入れていいのかよ!?」

「アパッ、みんなの言う通りヨ〜、ここは冷麺に

 するべきヨ!」

「・・・・・・冷静」

 

 長老はここで以外な条件を提言した。

 

「じゃが、入門するには条件がある」

「・・・・・・条件?」

「美羽と試合をしてもらう」

 

 長老の、無敵超人の爆弾発言はその場の全員を

さらに驚かせた。

 

ーto be continuedー

 




次回 腕試し
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。