梁山泊の同門者 黒崎相介   作:rOOd

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人の世は“力”より存在する。
ある時は“才”、ある時は“身体”、ある時は“心”
これらが人の世の流れを生み出す。
ゆえに、“力”が全てを可能にするが、“力”は独
立している。
なぜなら“力”の形はない。
形なき“力”を手中に収めることができる“技”・・・
それが“武”である。
“武”こそ“力”を制する。
そして、“武”を極めるには“己”を制すること。
すなわち、“己”を制する者が世界を制する。


BATTLE 04 梁山泊入門 下編

       【陽春 昼過ぎ】

 

       [梁山泊 道場]

 

「・・・・・・・・・なぜ?なんで、こうなったんだ〜?」

 

 僕がそうちゃんに対するとてつもなくキレてい

た長老の気当たりにより気絶し、ついさっき目を

覚ますと道場にいた。

 しかも、なぜか美羽さんとそうちゃんが腕試し

をすると岬越寺先生から耳打ちで説明させ、困惑

気味の僕をよそ目に二人は試合の準備をしていた

 美羽さんは普段着のボディスーツの上に道場着

を、そうちゃんは上着を脱いでTシャツ姿となり

お互い向かい立ち一礼をした。

 

「では、胸をお借りします、黒崎さん」

「お手やわらかに、風林寺」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 なぜ?なぜ、あの美羽さんはそうちゃんを格上

相手のように挨拶するの?

 なぜ?なぜ、そうちゃんは美羽さんを稽古をつ

けてやるみたいな言い方するの?

 謎がどんどんと増えるが、うちの先生たちは酒

のつまみだなぁと騒き、楽しんでいた。

 

「美羽!やっちまえぇ〜!!」

「フフフフフフフフフ、天は善良なおいちゃんに

 チャンスを与えた!そう、あの至福の谷間への

 シャッターチャンスを〜〜!!」

「アパッ!美羽、ガンダム〜!」

「違う、がん・・・ばれ」

「・・・・・・この人たちは〜」 

 

 そして、岬越寺先生が審判するようだけど・・・

そうちゃん大丈夫かな?

 昔、再会したら勝負をする約束・・・もし覚えて

いるなら、そうちゃんって相当鍛えて強くなって

いると思うけど、相手はあの美羽さん。

 屋上のケンカの時はそうちゃんが暴走した美羽

さんを止める為にセコい手で悶絶させた。

 けど、あれは美羽さんが油断しただけだし。

 今回は本気モードの美羽さんが勝つと僕が思っ

ていると審判の岬越寺先生が二人に声をかけた。

 

「黒崎くん、美羽」

「「はい」」

「それでは試合を始める前にルールを説明する」

 

 岬越寺先生は今回の試合のルールは主に三つ。

 

●戦闘不能・継続は審判が判断する。

●反則技が見られたら、即試合中止。

●試合は道場内とし、時間は無制限。道場の外に

 出たら負けとする。

 

「以上だ」

「「わかりました」」

 

 ルールを聞き終わった二人は向き合い、基本の

中段の構えで岬越寺先生の試合の合図を待ってい

た次の瞬間!!

 

“シュッ!”

 

 いきなり、しぐれさんがそうちゃんに刃物を投

げつけた。

 そうちゃんは間一髪避けて刃物の柄を右手で掴

み取った。

 

「うおぉ!あ、あぶねー!!?」

「えっ!!?」

「ほぇ!?」

「アパッ!!?」

「し、しぐれどん!?」

「バ、バカ!な、なに考えてやがる!?」

 

 しぐれさんはみんなの言葉を無視し、そうちゃ

んに疑問をぶつけた。

 

「・・・黒崎・・・相介」

「は、はい!?」

「お前・・・手抜きで・・・・・・美羽と戦る気か?」

「「っ!!!?」」

 

 しぐれさんの言葉で僕と美羽さんは目を点にし

たけど、長老と他の先生たちは神妙な顔に変わり

そうちゃんに力強い目線を向けたが、僕は何を言

っているのかわからず、しぐれさんに尋ねた。

 

「えっ?どういう意味ですか、しぐれさん?」

「・・・・・・こいつ・・・・・・徒手空拳ではない」

「「えっ!?」」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「黒崎相助は・・・・・・武器の使い手だ」

 

 僕はしぐれさんの指摘した後、そうちゃんの方

を見ると頭を掻きながら、こう呟いた。

 

「あちゃ〜、やっぱ見抜かれていたか・・・・・・」

「お前・・・ボクたちを・・・・・・舐めすぎだ」

 

 そう言ったしぐれさんは右手の人さし指でそう

ちゃんの手を指して褒めた。

 

「その手は武器を・・・使い込まなければ・・・・・・で

 きない。武具を制する為・・・・・・魂をすり減らし

 ・・・鍛え抜いた・・・・・・鍛錬の結晶だ」

 

 僕もそうちゃんの手にチラッと視線を向けた。

 両手をよく見るとボロボロの切り傷だらけで手

のひらは遠目でも厚みがあることがわかる。

 あれって、テレビでインタビューをさせている

プロ野球やMAJORで場外ホームランを打つ長打者

の手と同じだったと僕は思っているとそうちゃん

が笑顔でしぐれさんに褒めた。

 

「流石です、香坂さん。あなたの前では武具にお

 いて誤魔化しは効かない」

「・・・・・・・・・ふん」

 

 褒め言葉で照れくさい表情で威張ったしぐれさ

んにそうちゃんがこう答えた。

 

「確かにオレは武器の使い手です。風林寺の実力

 を試す為、敢えて無手に偽ってました」

「・・・・・・うん」

「しかし、あなたは手加減すれば風林寺の矜持を

 傷つけてしまうとお考えで?」

「・・・・・・そう・・・いうこと」

「わかりました。では、オレの“武道”で風林寺と

 闘います」

 

 そうちゃんはそう言うと道場のすみに置いた自

分のショルダーバックの横にしぐれさんの短刀を

置き、カバンの中から取り出したのは・・・・・・

竹刀袋だった。

 

「え?あれって竹刀袋?」

 

 そうちゃんが袋から出した竹刀に違和感を感じ

た僕は不思議がる。

 

「なんか、あの竹刀の全長短いような?」

 

 長老や他の先生たち、特にしぐれさんは目を光

らせ、珍しがった。

 

「ホッホ〜」

「ホォ〜」

「へぇ~」

「こりゃ、面白くなってきたネ」

「ワァー、サムライ、ナマハゲ、フジヤマ」

「・・・・・・・・・・・・ふ〜ん」

 

 対戦相手の美羽さんもそうちゃんが竹刀を見た

途端、神妙な顔に変わってこう呟いた。

 

「なるほど、あなたの“武道”は・・・・・・短剣道」

「短剣道?」

 

 僕は美羽の言葉がわからず、岬越寺先生に目線

を向け、質問をした。

 

「岬越寺先生、短剣道って何ですか?」

「・・・短剣道は剣道と同じ競技武道だが、違いと  

 して“制体技”を用いることだ」

「制体技?」

「少し説明しよう」

 

 岬越寺先生は剣道と短剣道、二つの武道の違い

の説明を始めた。

 剣道とは竹刀で面、胴、小手など身体の部分を

一足一刀の間合いで打つのが基本である。

 それに対して短剣道とは基本のルールは剣道と

同じだが、短竹刀という竹刀を片手で持ち、相手

の接近と同時に相手の腕を残させた手で掴み、そ

の動きを止める守りを“制体技”と言い、その隙を

突き技を中心とした攻めを繰り出す、すなわち攻

防一体の動きができるだと。

 

「つまり、近接戦を得意とする剣道だよ」

「けど、剣道の絶対領域たる間合いを縮めると不

 利になるのでは?」

「いや必ずしもそう言い切れない。剣道のみなら

 ず、全ての“武”において勝敗を分けるのは・・・

 “絶対”ではなく幾千幾万の鍛錬と各流派の日進

 月歩の技、己の魂より紡いできた信念だよ」

「・・・・・・・・・・・・」

「それに制体技においても、古今東西のあらゆる

 “武”に存在する。別に珍しいものではない」

「そうなんですか?」

 

 岬越寺先生は僕がピンとこないので、僕が梁山

泊にて修行している岬越寺先生の柔術や逆鬼先生

の実戦空手、剣星先生の中国拳法も接近の戦法が

あり、アパチャイさんのムエタイも首相撲という

密着する技も制体技だと言われて僕は納得した。

 

 そもそも、短剣道は脇差しや小太刀などの短寸

の刀剣の技を集約した武道である。

 短剣道も発展することにより制体技などを取り

込んできたと説明が終わると兼一くんは私に疑問

をぶつけた。

 

「岬越寺先生、短剣道で美羽さんと互角に渡り合

 えることができるんですか?」

「それはわからないよ。とどのつまり、短剣道の

 みならず、全て“武”は己を制した者こそ・・・・・・

 真の使い手だよ」

「・・・・・・・・・・・・」

「おほん、兼一くんの説明が長くなったが、美羽

 それに黒崎くん。そろそろ始めようか」

「「はい!」」

 

 岬越寺先生の言葉で二人は向き合い、美羽さん

は中段の右構え、そうちゃんは剣道の下段の右構

えで試合の開始の合図を待った。

 

「それでは梁山泊の親善試合・・・・・・始め!!」

 

 美羽さんが先に打って出た。

 

“ドシュッ!!!”

 

「ハァッ!!」

 

 美羽さんは目にも止まらぬ右の正拳突きをそう

ちゃんの顔面に目掛けて撃ったが、そうちゃんは

右足を一歩下げ、顔面スレスレで回避。

 それと同時に美羽さんの右腕を“右手”で流しな

がら、竹刀を持っている“左手”で美羽さんの右下

の脇腹あたりに突き技を入れた。

 

「くっ!?」

 

 避けきれないと察した美羽さんは身体を強引に

捻り、そうちゃんのカウンターを背中で無理矢理

受け止めた。

 

“ドカッ!!”

 

「がぁ!ハァ!?」

「美羽さん!?」

 

 僕は戦慄が走った!

 あの美羽さんの攻撃をいとも容易く躱し、さら

にカウンターなんて・・・。

 それに確か・・・・・・そうちゃんは最初、竹刀を

“右手”に持っていた!

 けど、気づいたら、いつの間にか“左手“に持ち

替えた!いつだ!?いつ持ち替えたんだ!!

 僕は理解が追いつかなかったが、試合は継続中

背中にダメージを負った美羽さんは深く息を荒げ

てよろめきながら、なんとか立っていた。

 しかし、かなりダメージをもらったのは僕でも

判り、僕は美羽を応援した。

 

「美羽さん!がんばれ!」

「ハァッハァッ・・・・・・、ハァッハァッ・・・・・・」

 

 そうちゃんは長老に顔を向けて尋ねた。

 

「・・・・・・長老」

「何かね、黒崎くん」

「試合は続行ですか?」

 

 長老はそうちゃんの質問に頷き、そうちゃんは

長老の答えに応じる。

 

「・・・・・・風林寺」

「ハァッハァッ、ハァッハァッ」

「次で終わりだ」

 

 そうちゃんは試合を終わらせると宣言した。

 それを聞いた美羽さんはそうちゃんをギラッと

睨みつけて叫んだ。

 

「ま、まだですわ!まだ勝敗は「勝敗は決したよ

 オレの勝ちだ」」

 

 美羽さんの言葉を遮り、そう断言したそうちゃ

んはさっきのように構えるのではなく直立歩行で

美羽さんへ歩き出し、こう呟いた。

 

「これが“己”を制した者の力だ」

「っ!?」

「弥勒流古剣術 綺の太刀・・・・・・“鏡花水月”」

 

 そうちゃんの威圧を感じた次の瞬間!?

 そうちゃんの姿が消えた!!?

 

「「えっ!!?」」

「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」

 

 僕は道場内を見回すが、そうちゃんを見つけら

れなかった。

 美羽さんも同様にそうちゃんの姿をさがしたが

見つけることがきず、動揺していた。

 

「ハァッハァッー!?、ハァッハァッー!?」

「み、美羽さん!?」

 

 混乱する僕たちはある音に気づいた。足音だ。

 僕たちの目の前には誰もいないはず。

 それなのに、足音が聞こえる。

 

“スタッ、スタッ、スタッ、スタッ”

 

「ーーっ!!?」

 

“スタッ、スタッ、スタッ、スタッ”

 

「ハァッハァッ!!?ハァッハァッ!!?」

 

“スタッ、スタッ、スタッ、スタッ”

 

「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

 な、なにが起きてるんだ!?

 足音が聞こえるのに・・・なぜ姿が見えない!

 

“スタッ、スタッ、スタッ、スタッ”

 

 美羽さんも敵の姿が見えず、足音のみが近いて

くるので後退りをした。

 

“スタッ、スタッ、スタッ、スタッ”

 

「あの美羽さんが後退りをした!?」

 

 その時の美羽さんの顔を見ると・・・得体の知れ

ない何かを畏れた表情だった。

 美羽さんはそれからも足音が聞こえるたびに後

退りを続け、とうとう開いていたふすまのあたり

まで追い詰められた時、足音が消えた。

 そして、そうちゃんの声がどこからか聞こえた

 

「風林寺、終わりにしよう」

「っーー!!?」

 

 そう、それは突然だった。美羽さんの目の前に

そうちゃんが姿を現した!!?

 驚愕した美羽さんは咄嗟に人間離れした反射神

経で右の蹴りを繰り出した!!

 美羽さんの攻撃に臆することなく、そうちゃん

は彼女の眼前に竹刀を投げた。

 

「えっ!?」

「なっ!?」

 

 美羽さんの視界を竹刀で奪ったそうちゃんが

蹴りを躱したと同時に相手の顔付近で“猫だまし”

を喰らわせた!

 

“パッッッツンーーーー!!!”

 

「ーーーっ!!?」

 

 完全に意表を突かれた。

 美羽さんの意識の波長を見抜いて彼女に合わせ

た猫だましで意識をぶっ飛ばした。

 

「美羽さん!?」

 

 意識が無い美羽さんは後ろによろめた。

 そこから、そうちゃんは美羽さんの道場着の腰

のあたりを右手で持ち上げ、両足が浮いた勢いで

後ろにひっくり返し、尻もちをつかせた。

 さらに、そうちゃんは呆然とした美羽さんの両

肩を両手で押して後ろへ転がし、さらに両足も持

ち上げ、彼女を後転させた。

 美羽さんは抵抗することなく道場のふすまを出

て廊下までコロコロと二度三度後転して最後には

廊下から落ちた。

 

「そ、そんな!み、美羽さんが・・・・・・」

 

 僕は目の前の出来事が受け入れなかった。

 しかし、審判の岬越寺先生はここで試合の終了

を叫んだ。

 

「それまで! 勝者 黒崎相介!!」

 

ーto be continuedー

 




次回 兼一の過去
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