権力の頂点に立つ者が・・・・・・
必ず思い知らせる世界の真理。
下々の者は善悪で生きるのに対し
上の方々は大きな流れ・・・・・・世界
のうねりに従い、行動する。
ゆえに人生とは自分自身で定める
こそ価値がある。
【陽春 昼過ぎ】
[裏新宿 Honky Tonk]
“ガラッン!!”
「おーす、波児ッ〜!依頼がきたんだって〜?」
「なつみちゃん、レナちゃん。おひさ〜」
「あら、いらっしゃい蛮さんに銀ちゃん、ホント
久しぶり!」
「いらっしゃい!お久しぶりです!」
俺と銀次は波児から依頼がきたと連絡があった
ので久々にHonky Tonkを足を運んだ。
「お〜、奥に依頼人いるよ。後よろしく〜」
俺たちは波児の言葉でいつも依頼を受ける奥の
テーブルに目線を向けると以外なヤツがコーヒー
を飲みながら座っていた。
「お久しぶりです。GetBackers」
「えっ?ゆ、雪彦くん?」
「・・・・・・・・・・・・」
依頼人が雪彦くんだったから呆然としたオレは
となりの蛮ちゃんの横顔をチラッと見て思わず息
を呑んだ。
敵だと認識した険しい表情に変わり、臨戦態勢
の蛮ちゃんは雪彦くんに冷たい目線を向けながら
ドスの効いた声で疑問をぶつけた。
「・・・・・・てめぇが依頼人か?」
「えぇ、そうです」
「ねぇ、雪彦くん。どうしてオレたちに?」
「簡単ですよ、銀次くん。君たちの力が必要だか
らです」
「ええぇ〜〜!!?」
オレは雪彦くんの以外な言葉で驚いた。
「・・・・・・優等生くんが笑えねぇ冗談をヌカすとは
なぁ。まさに世も末か?“弥勒”のてめぇができ
ねぇだぁ〜?」
蛮ちゃんの言う通りだ。
オレたちは雪彦くんの実力を誰よりも知ってる
「そうだよ。君ができないことなんて・・・・・・」
雪彦くんならばどんな難度高い仕事でも彼一人
で難なくやって退けるもの。
「・・・・・・二人とも、僕のことを神様とか思ってる
んですか?」
「あ、いや。ゆ、雪彦くんは最強だし」
「・・・・・・そう言われると嬉しいんだけど、今回の
件は君たちGetBackersでなければできないん
ですよ」
「「??」」
オレたちは雪彦くんのセリフの意味が理解でき
ず首を傾げた。
雪彦くんはとりあえず今回の依頼内容について
話すと言われてオレたちは奥のテーブルのイスに
互い向かい合って座り、雪彦くんの話を聴いた。
「実はある場所からある秘宝を奪還してほしいの
です」
「ある場所?ある秘宝?」
「おいっ!回りくどく言い方しねぇで本題をさっ
さと話せや!!」
こいつ、夏彦や他の兄弟連中と違って弱腰だか
ら、見てて無駄にイライラさせやがる!
「ちょっ!ば、蛮ちゃん!?」
「・・・・・・わかりました。ある秘宝とは君たちが過
去に関わった『神の記述』です」
「「っ!!!?」」
『神の記述』だと?どうゆうことだ!?
アレはもう使えねぇはずだ!?
「アレがまた何かやらかすというのか?」
「はい、その可能性があるのです」
「えぇ〜と、ならさ、ある場所っていうのは?」
「それは僕の弟子 黒崎相介がいる世界です」
「えっ?雪彦くんの弟子?」
なになに雪彦くん、弟子っていたの〜?
まぁ、雪彦くんって自分ん家の剣術を継承した
けどさ・・・・・・うん?あれ今?
「雪彦くん、“弟子がいる世界”って言ったよね?
それってどういう意味?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
雪彦くんはコーヒーを一口飲んだ後、オレたち
に目線を合わせてオレの疑問に答えた。
「黒崎相介はパラレルワールドから僕の弟子とな
った変わり者なんです」
オレと蛮ちゃんは雪彦くんの言葉で声を失った
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【陽春 早朝】
[闇ヶ谷 拳聖の隠れ家]
朝に弱い私は朝早く、私が所属する組織の関係
者しか知らない特別な周波数の無線で連絡がきた
無線相手は直弟子の一人である龍斗だった。
目をこすりながら、龍斗に用件を尋ねると眠気
が吹き飛んでしまった。
「・・・・・・・・・・・・『ルシフェル』」
「はい、ヤツがラグナレクと敵対する可能性があ
ると先日の会合にてフェンリルから報告を受け
ました!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
龍斗が淡々と説明を黙って聴く私はため息を吐
いて確認をした。
「・・・・・・確かなのかい?」
「あのフェンリルの情報です。間違いないと思い
ます」
「・・・・・・そうか。う〜む、しかしアレだな」
「・・・・・・?」
「そういう情報は私にも早く伝えてほしいな」
「えっ!?あっ!?も、申し訳ありません!」
私は遊矢の過ちを代わりに謝罪する龍斗に“君の
せいじゃないよ”と優しくなだめて彼が朝早く連絡
してきた理由を聞いた。
「拳聖様。実はお願いがあります」
「だいたい察しはつくけど、数段上の修行を課し
てほしいのかい?」
「はい、お察しの通りです!」
「君が望むならば、それ相当に応じるけどね。
その前にオーディン、一つだけ忠告・・・・・・いや
これは命令だ!」
僕はあの穏やかな拳聖様が今まで聞いたことが
ない荒々しい声の強い口調で命令された。
「オーディン、はっきり言うよ。『ルシフェル』
とは何があっても戦うな!」
「・・・・・・・・・・・・」
「聡明な君ならばわかっているだろ?弟子クラス
の君では『ルシフェル』の足元にも及ばないど
ころか、影を踏むことすら許されない!!」
「・・・・・・・・・・・・」
「この命令は絶対だ。いいね!」
「・・・・・・それは『ルシフェル』・・・・・・黒崎相介が
拳聖様と同じ達人の域だからですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
相介の実力をある程度予想していたが、対戦し
た当の本人が口を閉じるのは認めたも同然だった
僕はそんな重い沈黙の中で一番聞きたかった質
問をぶつけた。
「拳聖様、黒崎相介との勝敗はどうなったのです
か?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
『ルシフェル』の一件は今まではぐらかされてき
たが、もうこれは僕にとっても重要なこと!
絶対に食い下がれない!なんとしても知らなけ
ればならない!
「『ルシフェル』を!黒崎相介を!教えて下さい!
お願いいたします!」
「・・・・・・いいだろ。君たちも関わってくるならば
私が持つ『ルシフェル』の情報を教えるよ」
そう言うと拳聖様は楽しげな声で黒崎相介の戦
いを語り始めた。
「今から数年前の話だ。私は名を馳せる武術家と
戦うために日本各地を放浪をしていた・・・」
私はその旅で京都の高名な道場に訪れた。
私の武術の源流である天地無真流古武術の師範
御堂 戒との親善試合の日に彼と出会った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〜数年前〜
激しい戦いの末に崩壊寸前の道場・・・・・・。
あちこちから火の手が上がる・・・・・・。
その火中の場で私は一人の武術家の命を奪った
「ゴフッ!!!」
「・・・・・・フフフフ・・・・・・フハハハハハハッ!!」
私は敬意込めて手向けの言葉をかけた。
「御堂 戒。あなたの技!確かにこの身体にきざみ
こみました!!」
病で先がないと噂に聞いていたが、勝負を受け
たのならば、それは些細なことに過ぎない。
「あなたの死はのちの武術に多大な影響をもたら
す!!大義であった!!!」
私はそう言い、その場を立ち去ろうとした時だ
御堂 戒の娘 田中真結が父の亡骸の前で涙を流
して立ちすくむ。
鬼の形相に変わった彼女は殺意を宿した眼で私
を睨見つけ、父の仇を討つために私へ牙を剥けた
「父の敵ぃぃいいいっ〜〜〜〜!!!!」
憤怒と怨恨のオーラを全身に纏った彼女は私に
対して鋭く、正確無比な抜き手を突き立てた。
「忠告する。私は武において男女差別しない!」
彼女の実力はマスタークラスだと気迫から察し
たが、怒りと憎しみのせいで攻撃が単調だ。
「もう一度言う。拳を引け」
私のみならず他の達人でも簡単に避けられるお
粗末な動きで私の命を取ろうと躍起になっていた
「・・・・・・これが最後通告だ」
一向に攻撃を止めない彼女に対して私は反撃の
言葉を呟く。
「これ以上やるならば・・・・・・こちらも武をもって
応戦する!」
私は回避と防御から一転して彼女の連続攻撃を
打ち砕く秘技で応戦した。
「緒方流 “数え抜き手”!!」
「っ!!?」
「4!・・・3!!・・・2!!!・・・1!!!!」
私は両手の“数え抜き手”が左肩、右腕、左胸囲
右脇腹を順に貫通し、最後は技の威力により彼女
が吹き飛び、壁に衝突して床にへたり込んだ。
“ドガッ!!!”
「ガァハッ!!!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
私は殺す気で技を繰り出したが、倒れた彼女は
まだ息があり、よろめきながら立ち上がった。
私はその姿を見て確信した。
「やはり、マスタークラスか・・・・・・」
私の秘技が刺さる直前、急所をわずかに外して
生き延びたか。
しかし、先ほど秘技のダメージで立っているの
が精一杯のようだな。
それでも瀕死の状態の彼女は私に対しての殺意
をやめなかった。
私は彼女に武術家としての敬意を払い、最後の
言葉をかけた。
「・・・・・・感服する。貴殿の腕はまさしく極限まで
鍛錬を積み上げた武術の真髄である」
「・・・・・・ハァハァ・・・・・・ハァハァ」
「ゆえに武術家の敬意として私は貴殿を殺す!」
私は胸の内に秘めていた殺気を解放した。
「っ!!!!!」
「これが貴殿の手向けだ!・・・“静動轟一!!”」
私は禁じ手を発動し、彼女の息の根をとめるた
め、両腕に殺気を集めて最強の絶技を放った!
「緒方流 “双対穿貫抜き手っ!!!”」
この技は人越拳神の“ねじり貫手”と私の“熊手
抜き手”を組み合わせたものだ。
“熊手抜き手”を左手、“ねじり貫手”を右手とし
左手で身体の外部破壊したのち、右手による一点
集中の貫通による内部破壊での二段抜き手の荒技
二つの絶技を使用するので動作が大きく、達人
には必ず避けられる・・・・・・実戦向きではない。
だが、瀕死の状態の相手を確実に殺す時、この
技が最適である。
「これで終わりだ!!」
私の左手が彼女の心臓部へと直撃しようとした
次の瞬間!!
「おっと、あぶねぇ!?」
どこからともなく現した少年が右手で私の左腕
で反らし、目標からズレた抜き手は壁を貫いた。
“ドンッ!!”
「・・・・・・・・・・・・」
私は壁から左腕を引き抜き、あたりを見渡せた
ら、左側に彼女を抱きかかえる少年の姿が安堵の
声を出した。
「ふぃ〜っ。間にあってよかった!」
私の抜き手をいとも簡単に反らされた彼に背筋
が凍った私は疑問を口に出した。
「・・・・・・・・・君は誰だい?」
「オレッスか?オレは黒崎相介。死神代行だ!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【陽春 深夜】
[都心 廃屋敷]
つい、勢いよく叫んだが・・・・・・。
「・・・・・・あらためて見るとキモッ〜!」
グロい大量の悪霊どもが蜂の巣をつついたよう
に壁からすり抜けてさらに増員され、蚊虻牛羊を
走らすように襲いかかってくる。
オレはその光景に嫌悪を感じながら、居合の構
えで飛翔する斬撃波を放った。
「よし、最初はアイツだ!」
手始めに正面から襲いかかるデカブツ悪霊を一
刀両断にした。
「“無量新月”・・・・・・“弓張月”!!」
オレの一閃で斬られたデカブツは苦しそうな悲
鳴を叫びながら消えた。
バシュ!!
グゥア〜〜!! ギャア〜〜!! アァァ〜〜!
うむ、斬れ味は上々か。しかし、煙みたい消え
るな〜、悪霊よ少しふんばれや。
え~と、さっき把握した数は50匹以上!
“よし!そんじゃ〜次は手当たり次第に斬りまく
りますか”と意気込んだオレは“弓張月”を全方位に
放った。
「“弓張月 乱舞”!!」
バシュッ!!
グァ〜〜!! アァァ〜〜!! ギィ゙ァァ〜〜!
斬られた悪霊どもは次々と霧が風で拡散するよ
うに消えていく・・・・・・と思ったら。
バシュッ!!バシュッ!!バシュッ!!
グゥア〜〜!! ギャア〜〜!! アァァ〜〜!
バシュッ!!バシュッ!!バシュッ!!
グゥア〜〜!! ギャア〜〜!!
オレの足元から無数の腕が現した。
アァァ〜〜!ウアァァ〜〜!ワアァァ〜〜!
ウアァァ〜〜!アァァ〜〜!ガアァァ〜〜!
「今どきコントやギャグでもやんねぇぞ・・・」
ハアァァ〜〜!ウアァァ〜〜!アァァ〜〜!
ガアァァ〜〜!アァァ〜〜!うアァァ〜〜!
足元の悪霊どもがオレの足を掴まえようとする
から空中に霊気でいくつもの足場を作り、床を蹴
り上げて足場に飛んで悪霊ども目掛けて斬りまっ
くた。
「“弓張月” 落月!!」
バシュッ!!バシュッ!!バシュッ!!
グゥア〜〜!! ギャア〜〜!! アァァ〜〜!
バシュッ!!バシュッ!!バシュッ!!
グゥア〜〜!! ギャア〜〜!!
わずか数分で玄関ホールにいた悪霊どもを全て
かき消したが・・・・・・。
「・・・・・・所詮ザコを片付けたにすぎない」
床へと着地をしたオレは霊刀を消し、すぐさま
“制空圏”による建物の詮索を始めた。
「さて、肝心の親玉はどこだ?」
オレの“制空圏”は半径5キロメートル。
広大な豪邸全体が俺の圏内に入る。
探索を始めて数分・・・・・・感知できるのはザコの
みでボスの強力な邪気を感知できない。
「・・・・・・チッ、そうやすやすと正体を見せないか
別の場所に雲隠れか?」
いや、資料から推測するに地縛霊のはずだ。
それにあれだけ大量の亡者ども別のところから
従えさせるのは無理がある。
けど、ボスはどこであぐらをかいている?
「・・・・・・まず、固定概念を捨てるか」
この屋敷にいるならば地上以外の隠れそうな場
所のは・・・・・・・・・地下!?そうか、屋敷の地下には
秘密の施設がある!!
「それなら行方不明者も下水道管の管路も説明が
つく!」
失踪事件の被害者たちが誰一人見つからず、警
察と行政関係者による解体工事前の建物調査でも
結果は同じ。
下水道管の問題も不可解な点がある。
行政が入手した豪邸の資料の管路と今回発見さ
れた破損の下水道管の管路の間取り図が違うと調
査で判明した。
つまり、悪徳資産家は豪邸を建てる時、建設屋
に多額の賄賂を渡して市役所に提出する書類を偽
造させ、誰も知らない地下施設を作った。
「しかし、自殺した悪徳資産家。地下で宗教活動
していたのか?悪趣味〜〜」
よっしゃ、さっきは制空圏を建物のみに使った
が、次は地下に集中させるか。
オレは制空圏の位置を地下にズラし、探索する
と・・・・・・・・・。
「ビンゴッ!?」
居た〜。地上から約12メートル下にとんでも
ない邪気が!!?
しかし、地下四階ぐらいか?ずいぶんと深い巣
穴で引きこもってるな〜。
「さてどうするか〜」
たぶん、どこかに地下階段はあるはずだけど。
「絶対罠があるよな〜」
そういや、依頼人たちには建物が崩壊しても問
題ないと事前に言質をとっておいたな。
「・・・・・・やっちまうか?どうせ壊す予定のボロ豪
邸だし・・・・・・よし、やっちまおう!!」
オレがそう判断した瞬間、背後からひとの気配
を感じ、玄関の方を見ると・・・・・・・・・。
「・・・・・・ここで・・・・・・何をしている?」
「・・・・・・こ、香坂さん?」
さっき撒いたのに!?なぜここへ?
「「・・・・・・・・・・・・」」
無言のまま、数分が過ぎたのでオレはとりあえ
ず質問をした。
「なぜ、ここに「発信機!」」
オレの言葉を遮り、香坂さんの呟いたのでオレ
は上着の襟あたりを指で探るとボタン型の発信機
を発見した。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・お前・・・・・・ボクたちを・・・・・・舐めすぎ」
チッ!ヤラれた。なるほどね、相棒の闘忠丸か
オレと風林寺の試合の最中に仕込んだな。
「迂闊でした」
「ふん!?」
・・・・・・ふんぞりかえったよ。
さっきのお返しだと言いたいのか?
しかし、流石は梁山泊か・・・・・・。
もう少し警戒するべきだったな。
うーむ、さてどうするか。
この人相手に誤魔化すのは無理だな。
ならば、武術家の誇りを利用するか。
「香坂さん」
「・・・なんだ?」
「オレと決闘してもらえませんか?」
早まったかもしれないが、この方法がベストだ
と思うんだよな。
さて、この問いにどう答える・・・・・・・・・
剣と兵器の申し子 香坂しぐれ。
ーto be continuedー
次回 香坂しぐれ