GX次元の環境を破壊します。チェーンはありますか?   作:青いカンテラ

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前のものはしっくりと来なかったので、書き直しです。前回のものをお気に入り登録、評価、感想、アンケにお答えくださった方々、申し訳ありません。


TURN-01シンクロとエクシーズと芝刈りと

 ◆◇◆◇

 

 

 

 ―――アナタは転生しまシタ。

 

 ポーン! という軽快な効果音と共に、ある日突然『私』は『オレ』になった。まるでスイッチのオンオフが切り替わるように、バチッと入れ替わったのだ。そして思い出すのは前世のこと、遊☆戯☆王のこと、テレビの中で見ていたこの世界のこと。

 

 何が何やらわからないが、とにかく転生をしたのは確かなようだった。見知らぬ部屋に見知らぬ両親。そして鏡に映る見知らぬ自分。平々凡々な成人男性だったオレは、小さな女の子になっていた。青混じりの銀髪に、青い瞳。肌は白く、背も低い。

 

 最初は困惑した。何でこんなことになったのか。若返るにしても何で女なんだとか。わからないことだらけで、しかし、その疑問に答えが返ってくるはずなど無かった。そうなればあとはもう、諦めと慣れの境地というもので。しばらくは前世との常識面や体の感覚のズレなどで四苦八苦することもあったが、徐々に適応して慣れていった。

 

 ベッドの下には黒いトランクケースが1つあった。どうやらそれがオレに与えられた転生特典というものらしく、中には前世に存在していたカードが入っていた。この世界でも馴染み深い融合、儀式はもちろん、他はシンクロにエクシーズにペンデュラム・・・。そしてリンク。前者はともかく、後者はこの世界だとまだ存在していないカードだ。あるのを見られると困る、本来なら存在しないはずのカードたち。

 

 この時代ではまだ使うことができないそのカードたちを前に、オレは思った。もったいない・・・と。理由は定かではないが転生して、こうして前世にあったカードがここにあるというのに、使うことができないのはもったいない。これらのカードが世に解き放たれれば、この時代の環境が破壊されることは明白だ。それでもオレはこのカードたちを使いたいと思ったのだ・・・。とんだ転生者のエゴというものである。後ろ指差されて糾弾されても文句は言えまい。

 

 だがデュエリストならわかるはずだ。カードがあるのだから実戦で使いたい、と思うことは。その時に丁度、KCとI2社の共同企画として子供たちの発想による新たなカードを作る! という企画がおあつらえ向きに宣伝されていたのが目に留まった。オレはシンクロとエクシーズの中からカードを選び、子どもの描く絵と効果テキストを添えて送ってみた。

 

 まあ、その後は何の音沙汰も無かったから忘れかけていたんだが、その忘れかけていた時に、急にKC(海馬コーポレーション)の本社に呼び出された。内容は例の企画についてだろうとアタリは付けていたが、それでも恐る恐る行ってみれば、そこには案の定と言うべきかKCの社長である海馬瀬人と、この世界に流通しているカードのデザインや生産をしているI2(インダストリアル・イリュージョン)社のペガサス・J・クロフォードの二人が待ち構えていた。

 

 まさかの本物2人を前にしてさすがに緊張していたら、あのシンクロとエクシーズについてを聞かれた。なんでも子どもの突飛な発想で片付けるには惜しいほどに既存の召喚法からはかけ離れていたために、目に留まったらしい。そこでこの召喚法を思いついた子どもに話を聞くべく、こうして呼び出した・・・とのことだった。

 

 最初こそ緊張していたが、ここで上手くすればシンクロとエクシーズが無いこの世界でにその2つの召喚法を使えるようになるかもと思い、話をした。シンクロとは何か、エクシーズとは何か、子どもらしい舌っ足らずな言葉で、たどたどしく、しかし熱意を込めて説明をした。そんなオレの熱意が伝わったのか、2人はシンクロ召喚とエクシーズ召喚という、世界に新たな風を吹き込む全く新しい2つの召喚法を打ち出す合意に至る。今すぐには無理でも、いずれは・・・と。

 

 それから数年経ち・・・。オレはKCとI2社の『シンクロ召喚およびエクシーズ召喚のテスター』として、デュエルアカデミアに入学することになった。正式な発表、流通はまだ先として、その先駆けとしてまずはデュエルアカデミアでシンクロ召喚とエクシーズ召喚を広めてデュエル環境の変化などのデータを取るとのことだった。オレは言わば、その先駆けの先駆けである。

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 

 海馬ランド、その会場。そこではデュエルアカデミアの実技試験のデュエルが行われていた。試験はつつがなく行われていたが、一桁台の受験生の実技試験が終わる間際に遅刻してきた110番の受験生がおり、急遽ねじ込む形で試験デュエルが行われることになった。

 

「先生に教えてやるぜ! HEROには相応しい、戦う舞台ってものがあるんだ!」

 

 対戦者である少年が、デュエルディスクのフィールド魔法ゾーンに1枚のカードをセットする。するとデュエルフィールド内の景色が、ネオン輝く夜景の街並みへと一瞬で変化した。中央には天をも貫く摩天楼が聳え立ち、その摩天楼の天辺には赤と緑のツートンカラーな、左手が竜の頭になっている人型のモンスターが悠然と構えている。

 

「スカイスクレイパーは、HEROが自分より攻撃力の高いモンスターとバトルをする場合に、その攻撃力を1000ポイントアップさせる!」

「マンマミーヤ!?」

「いっけぇ! スカイスクレイパーシュート!」

 

 炎を纏ったそのモンスター・・・フレイム・ウィングマンが、鋼鉄の巨人へと突撃する。両者の攻撃力の差は僅か。しかしその僅かな差が、勝敗を分けた。

 

「フレイム・ウィングマンの効果で、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを受けてもらうぜ!」

「ぐぬぅ・・・」

 

 決着が着き、ソリッドヴィジョンが投影していたモンスターも街並みも、空間に溶けるようにして消えていく。後に残されたのは、デュエルに勝った少年・・・遊城十代と、敗北した青いコートの男・・・クロノス・デ・メディチだけ。

 

「クロノス教諭が、負けた・・・?」

「あいつ一体何者なんだ・・・」

「いいぞー、110ばーん!」

 

 観客席からやいのやいのと声が飛ぶ。そのデュエルを見ていた者たちは困惑か、あるいは賞賛の声をあげている。

 

『さっきのデュエル、凄かったわね! 特に追い詰められてからの逆転の流れが手に汗握ったもの!』

「・・・そうだな」

『何よ、冷めてるわね』

「ほっとけ。こういう性分なの」

 

 観客席の隅っこで、何もない空間に向かって小声で喋っているオレの姿を見たら、なんだこいつ? と思うだろう。しかし、実際にはオレの目には隣にふよふよと浮いている半透明の少女が見えている。オレと瓜二つな顔立ちで髪型はツインテールなその少女は、聞けば元はこの体の持ち主だという。オレという存在が『目覚めた』のと同時に、体からはじき出されたらしい。名前はユウカ。オレの今の名前と同じだが、元々はこの体の持ち主なのだから、むしろ名前を被せてるのはオレの方だ。

 

 ・・・オレのような転生は、前世の記憶を思い出したとしてその前からその世界で生きていた元の体の持ち主はどうなるのか? という問題がある。上書きされて消えるのか、それでも統合されてしまうのか、オレの場合は一つ分のひだまりから弾き出した形になったというわけだ。こうして実体のない姿でふよふよ浮いてるだけというのが幸運なのかどうかは分からないが、消えたりするよりかはいいんじゃないか。たぶん。

 

 ただ、オレがコイツを見れるようになったのは最近のことだ。アイツらが見えるようになったのと同じくらいに・・・。

 

<<続いて、KC(海馬コーポレーション)推薦の小南 遊歌(コミナミ ユウカ)さんの実技試験を行います>>

 

『次はあんたの番よね? あの先生強そうだったけど、勝てるの?』

「・・・ああ。パワーだけならこっちのが上だからな・・・」

『そうそう、人前ではあんたのその話し方、やめてよね。アタシに変なイメージ付いたら困るんだから』

「はいはい、わかってるよ・・・」

 

 呼ばれたのでデュエルフィールドへと降りる。ついさっきまで110番くんこと遊城十代がデュエルをしていた場所である。オレはKCの推薦枠、ということですべての受験生が実技試験を終えた後にデュエルすることになっていた。十代が滑り込んできたことで一戦分余分に待つことにはなったが、むしろいいものを見れたのでよしとしよう。

 

 そしてKCの推薦ということで、観客席がまた別の意味でざわつき出す。それもそうだろう。KCはデュエルをするものなら誰しもが知っている大企業。他にもエンタメやアミューズメントパークなどでその名前を聞かないなんてことはない。そこからの推薦となれば気になるのが人情というものだろう。

 

「KCの推薦! そういうのもあるのか!」

「110番に続いて、KCに推薦されたやつのデュエルも見れるのか。残っといて正解だったー」

「KCの推薦か・・・これはまた見物かもしれんぞ」

「そうね・・・。それだけの実力がある、ということだもの」

「わあ、かわいい女の子っす・・・」

「お、よくわかんないけどデュエルするのか? 楽しみだぜ!」

 

 ざわめきの声を聞き流しながら、デュエルフィールドに立つ。向かい側にいるのは、さっき十代とデュエルしていた青いコートの男、クロノス・デ・メディチ。デュエルアカデミアの実技最高責任者であり、今日の実技試験にも出張って来ていた。

 

『なんだか緊張して来たわ・・・』

 

 デュエルするのはオレなのに、何でオマエが緊張してんだ。

 

「ボンジョールノ! ワタクシはクロノス・デ・メディチ。アナタの実技試験の相手を務めさせて頂きまスーノ!」

「・・・小南遊歌です。クロノス先生、対戦よろしくお願いします」

「うむ、礼儀正しい受験者は好ましいノーネ。シニョーラはあのKCから推薦を受けていると聞いていまスーガ、手加減はしないノーネ!」

「はい、もちろんです」

「デュエルアカデミアの鉄の扉ーハ、相応の実力がある者にのみ開かれるーのデース! それデハー・・・」

 

「「デュエル!」」

 

【小南 遊歌】

LP4000

 

【クロノス・デ・メディチ】

LP4000

 

「先行は受験生からなノーネ」

「それでは、先行を頂きますね。オレ・・・わたしのターン、ドロー」

 

 この時代はまだ先行ドローがあるから、忘れずに引いておく。・・・さて、()()()()()()()()、とは言われたが・・・。

 

『ドラゴンメイド・フランメ』

『ドラゴンメイド・フルス』

『ホルスの栄光-イムセティ』

『王墓の石壁』

『亡龍の戦慄-デストルドー』

『壱世壊に澄み渡る残響』

 

 手札事故一歩手前・・・というか、ほぼ事故と言ってもいいなこれは。イムセティがあるから動けはするが・・・相手の手札にうららがなければ・・・って、まだうららは無いんだったな。なら大丈夫か。

 

『ちょっと、何よこの手札! さすがにアタシでも分かるわよ! 手札事故って言うんでしょ! 本当に大丈夫なのこれ!』

 

 隣の似非アストラルみたいな女がうるさいが、無視してイムセティを手に取る。まずはコイツを通さないと話にならない。

 

「まずは手札の『ホルスの栄光-イムセティ』の効果を発動します。手札の他のカード1枚と一緒に墓地へ送ることで、デッキから『王の棺』1枚を手札に加え、さらに1枚ドローできます・・・。クロノス先生、この効果に対して何かありますか?」

「へっ? な、無いノーネ」

「・・・そうですか。それでは、イムセティと『王墓の石壁』を墓地へ送り、デッキから『王の棺』を手札に加えてさらに1枚ドロー」

 

 確認は一応、念のためだ。クロノス先生は「なんでそんなことを聞くノーネ?」とでも言いたげな顔をしているが。この分だと増Gなんかも無いだろうな。

 

 ・・・まあ、あったとしてもソリッドヴィジョンの都合、わざわざ使おうと思う人が何人いるかって話になるが・・・。

 

「なんだあのカード、見たことも聞いたことも無いぞ」

「手札から捨てることで特定のカードをサーチするカードか・・・。『サンダードラゴン』や『E・HEROキャプテンゴールド』などなら知っているが・・・」

 

 また観客席がざわめき立つ。見たことが無いのも無理はない。なぜならこのカードは未来のカードだからな。正直このカードたちだけでも、今の環境のパワーバランスを破壊できるだけのパワーがある。

 

「永続魔法『王の棺』を発動し、効果を使います。手札のデストルドーを墓地へ送り、デッキから『ホルスの祝福-ドゥアムテフ』を墓地へ。さらにフルスを墓地へ送って『ホルスの先導-ハーピ』を墓地へ送ります」

「モンスターを何体も墓地へ送って何の意味があるノーネ?」

 

 この時代にも大型モンスターをいったん墓地へ送ってから『死者蘇生』なりで特殊召喚するコンボはあると思うんだが・・・。

 

 まあそれでも特殊召喚できるのは精々1体か2体くらいで、こんなに何体もモンスターを墓地へ送っていれば疑問に思うのもやむなしか。・・・オレの場合は1、2体じゃすまないくらい墓地から特殊召喚するけど。

 

「・・・わたしの場に『王の棺』があることで、墓地のイムセティ、ドゥアムテフ、ハーピの効果を発動。このカードを墓地から特殊召喚します」

 

【ホルスの栄光-イムセティ】

【星8/ATK3000】

 

【ホルスの祝福-ドゥアムテフ】

【星8/ATK3600】

 

【ホルスの先導-ハーピ】

【星8/ATK2400】

 

「な、ナヌー!? 攻撃力3000以上のモンスター2体と、攻撃力2400のモンスターを1ターンで特殊召喚でスート!?」

「な、なんだこの展開力は!?」

「星8のモンスター3体を一気に特殊召喚!?」

「なんだかわかんねーけどスゲー!」

「しかも1体はあの青眼の白龍と同じ攻撃力に、もう1体は越えてるって・・・」

「なんなんだあのカードは・・・!」

 

 ざわめきがさらに大きくなる。星8の大型モンスター3体を墓地から特殊召喚したのだから無理もない。この時代では考えられないほどの展開力に、1体1体のステータスも高いと来ている。しかしオレはコイツらを長く場に残しておくつもりは無い。あくまで『ギミック』の1つだからな。

 

「わたしは、3体のホルスを素材に、エクシーズ召喚!」

「エクシーズ・・・召喚・・・?」

「エクシーズ召喚だって!?」

「知っているのか!」

「いや、知らん」

「今度は一体なにをするつもりなんだ・・・?」

「召喚条件はレベル8モンスター3体! エクシーズ召喚! 現れろ、ランク8『熱血指導王ジャイアントレーナー』!」

『ン熱血指導!』

 

【熱血指導王ジャイアントレーナー】

【ランク8/ATK2800/X3】

 

 フィールドに黒い渦が現れ、3体のホルスたちがその中心部に吸い込まれていく。閃光が爆ぜると、金属のバットや棒を手に持ち、背中にも無数の竹刀やバット、鉄の棒を背負ったモンスターが現れる。何気に初エクシーズ召喚、か? 最初のエクシーズがコイツでいいかは要審議ってところだが・・・。

 

『ちょっと、なんで超強力モンスターを3体もなんとか召喚? ってやつに使っちゃうのよ! あのモンスターたちがいれば相手の動きだって牽制できたじゃない!』

 

 隣に浮いてるユウカが、銀髪のツインテールを逆立ててそう怒鳴る。ステータスだけ見るとそうかもしれないが、それだと意味がないんだよ。・・・まあそこで見てな。

 

「な、なんなノーネこのモンスターは!? 見たこともないノーヨ!」

「・・・ジャイアントレーナーのモンスター効果! このカードのエクシーズ素材を1つ取り除くことで、デッキからカードを1枚ドローできる。そのカードがモンスターカードなら相手に800ポイントのダメージを与える! ・・・先生、この効果の発動に対して何かありますか?」

「へっ!? なにも無いノーネ!?」

 

 一応の確認は癖のようなものだ・・・。デュエルディスクは高性能ではあるが、ラグの誘発確認とかはできないからな。

 

「ありがとうございます。それでは3つの素材すべてを取り除き、効果を発動。3枚ドローします」

 

 1枚目・・・『白の聖女エクレシア』・・・モンスターカード。2枚目・・・『おろかな副葬』・・・魔法カード。3枚目・・・『隣の芝刈り』・・・魔法カード。まずまずの引きか。

 

「ドローしたモンスターは1体! よって、相手に800ポイントのダメージを与える!」

『ン熱血指導!』

「あいたぁっ!?」 痛いノーネー!」

 

【熱血指導王ジャイアントレーナー】

【X3→0】

 

【クロノス・デ・メディチ】

LP4000→3200

 

 ジャイアントレーナーのノック攻撃がクロノス先生を襲う。ソリッドヴィジョンなので実際に痛みは無いはずだが、クロノス先生のオーバーなリアクションもあって、見ていると本当に痛みがあるように思えてくる。

 

「・・・わたしはこれでターンを終了します」

 

【小南 遊歌】

LP4000

手札6(『白の聖女エクレシア』『おろかな副葬』『隣の芝刈り』)

モンスター1(熱血指導王ジャイアントレーナー(X0))

魔法・罠1(王の棺)

 

「エクシーズ召喚とやらで、モンスターの総攻撃力は下がったが、手札を回復したか」

「あのエクシーズ召喚というのは見たことも無いけれど、何なのかしら」

「わからない。だが、他では見られないようなものを見れていることは確かだ」

「3体の高レベルモンスターを使うエクシーズ召喚か・・・。興味深いな・・・」

「攻撃力2800のモンスターを出して手札も3枚増やすなんて、とんでもないっす・・・」

「なぜあんなチビがこの俺も知らないカードを・・・!?」

 

 エクシーズ召喚について考えを巡らせているのもいれば、カードを4枚も使ってなお手札が減っていないことに驚いているのもいる・・・。初めて見るエクシーズ召喚に対する反応は様々だ。・・・って、最後。誰がチビだ。この体の成長期がまだ来てないたけだっつーの。

 

『誰がチビよ、誰が! アタシのことをチビっていったやつ、顔を覚えたわよ!』

 

 ほら、ツインテールを逆立ててガー、と怒っているのもいるし。それにしてもよく重力に逆らうツインテールだ。感情に連動するアホ毛みたいなものなのだろうか。

 

「ワタシのターン、ドロー! ふっ、エクシーズ召喚だかエクシード召喚だか知りまセーンが、せっかくの高攻撃力モンスターを使ってまで攻撃力2800トーハ、大したことないノーネ」

 

 大したことないって・・・。まあ、ホルスモンスターがいないとあまり意味がない永続魔法と素材を使い切った攻撃力2800のエクシーズモンスター棒立ちだし、そう言いたくもなる・・・のか?

 

「世界の広さを、ワタクシが教えてあげルーノ! 『古代の機械像(アンティーク・ギアスタチュー)』を召喚!」

「・・・あのカードは・・・!」

 

【古代の機械像】

【星2/ATK500】

 

 クロノス先生の場に、鋼鉄で出来た胸像が出現した。レベルもステータスもよくある低級モンスターといったところだ。いやそれよりも・・・あのカードは本来まだこの時代には存在していないカードだ。出てくるのはもっと後、童実野町がネオ童実野シティと呼ばれるくらいの未来に出てくるカードのはずだ。・・・オレという転生者がいることの歪みってやつか・・・?

 

『どうしたのよ、あのモンスターを見て考えこんじゃって。あ、もしかしてとんでもない効果があったりするの!?』

「・・・ある意味では、とんでもないと言えばとんでもないな・・・」

 

 この時代では破格とも言える。

 

「古代の機械像の効果。このカードを生贄にするこトーデ、手札またはデッキから『古代の機械巨人』1体を、召喚条件を無視して特殊召喚することができルーノ! さあ、現れなサーイ! 『古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)』!」

 

【古代の機械巨人】

【星8/ATK3000】

 

 機械像が光の粒子になり、代わりに地面を突き破って出てきたのは、鋼鉄と歯車で出来た機械仕掛けの巨人。その偉容はスラリと長身なクロノス先生の背丈をも優に超えて目測4~5mくらいはありそうだ。実体のないソリッドヴィジョンではあるが、上から見下ろされると威圧感があるな・・・。

 

「出た! クロノス教諭のエース!」

「最上級モンスターをこんなにあっさり出すなんて、さすがはクロノス教諭!」

「うぉー! やっぱりかっけー!」

「ワタシはさらに、永続魔法『古代の機械城(アンティークギア・キャッスル)』を発動! この効果により、我が古代の機械巨人の攻撃力は300ポイントアップ!」

 

【古代の機械巨人】

【ATK3000→3300】

 

 ゴゴゴゴゴ・・・。と地響きをさせながら、クロノス先生の背後に巨大な機械仕掛けの城が出現する。攻撃力3300・・・ついさっき3100の僅差で負けたから、そのラインを警戒してのことだろうか。

 

『攻撃力3300!? こっちのモンスターじゃ太刀打ちできないわよ! どうするのよ!』

「どうするっても、ライフで受けるしかねぇだろ」

 

 伏せカードも無いし。最も、あったとしても攻撃反応系は効かないんだが。

 

「それデーハ、バトル! 古代の機械巨人で攻撃! アルティメット・パウンド!」

 

【小南 遊歌】

LP4000→3500

 

 機械巨人がジャイアントレーナーを殴り飛ばし、機械城からも支援砲撃が放たれる。攻撃力の差は500ポイント。その数値分だけオレのライフが削られる。

 

「ニョホホ。さらに魔法カード『サイクロン』! その厄介な永続魔法カードを破壊しまスーノ!」

 

 小規模な竜巻が、オレの場に表側で存在していた『王の棺』を巻き上げて細切れに破壊する。これでホルスモンスターの特殊召喚はできなくなったか・・・。

 

「ワタシはカードを2枚伏セー、ターンエンドなノーネ!」

 

【クロノス・デ・メディチ】

LP4000

手札2

モンスター1(古代の機械巨人)

魔法罠3(古代の機械城)

 

「わたしのターン、ドロー・・・」

 

 さて、相手の場には攻撃力3300の古代の機械巨人と、伏せカードがある。対してこっちの場はガラ空き。手札はあるが、状況的には不利と言ってもいい。・・・ま、これくらいなら巻き返せる。

 

「手札から魔法カード『隣の芝刈り』を発動・・・。ところでクロノス先生、デッキは今何枚ですか?」

「ニョ? ひーふーみー・・・34枚なノーネ。こんなこと聞いてどうすルーノ?」

『そうよ、相手のデッキ枚数なんて聞いてもしょうがないじゃない』

 

 普通はそうだろうな。相手のデッキ枚数を指折り数えるのなんて、デッキ破壊戦術とかくらいだろうよ。だがこのカードは、その『相手のデッキの枚数』が重要になるんだ。

 

「・・・隣の芝刈りは、自分のデッキの枚数が相手のデッキの枚数よりも多い場合、その差だけ自分のデッキの上からカードを墓地へ送るカード・・・この効果で12枚のカードを墓地へ送ります」

「じゅ、12枚!?」

「おいおい、そんなにデッキのカードを減らしてどうするんだよ」

「お互いのデッキの枚数を同じにするということは・・・60枚デッキか。それだけの重量級のデッキ、回せるというのか・・・?」

 

 大量のカードがオレの墓地へと送られる。芝刈り通してデッキのカードがザッと落ちていくのは気持ちがいい。そして落ちも・・・上々と言える。

 

『・・・墓地のカードを増やしただけ? 他には何かないの?』

「無いよ。これはこういうカードだからな」

『なにそれ、わけわかんない。大体墓地のカードだけ増やしたって意味ないじゃない。アンタの手札、墓地のカードを使えるようなカードないし』

「まあまあ、すぐにわかる」

 

 それに芝刈りはこのデッキだと最強カードと言ってもいいんだぜ?

 

「一人ーデ、何を言ってるノーネ?」

「あ、こほん・・・。何でもありません。続けます。効果で墓地へ送られた『壱世壊を劈く弦声(ティアラメンツ・スクリーム)』『ティアラメンツ・レイノハート』『シャドール・ビースト』『壱世壊を揺るがす鼓動(ティアラメンツ・ハートビーツ)』の効果をそれぞれ発動します」

「墓地で発動する効果でスート!?」

「まずはスクリームの効果でデッキから『壱世壊に奏でる哀唱(ティアラメンツ・サリーク)』を手札に加え、そしてハートビーツの効果で墓地の『壱世壊に軋む爪音(ティアラメンツ・メタノイズ)』を手札に戻します。そしてレイノハートを特殊して手札のサリークを墓地に送って、最後にビーストの効果で1枚ドロー・・・」

 

 引いたのは・・・おっ、2枚目の棺か。

 

「レイノハートとサリークの効果を発動。まずはレイノハートの効果でデッキから『ティアラメンツ』モンスター1体を墓地へ送る・・・。ハゥフニスを墓地へ。そしてサリークの効果で『ティアラメンツ・シェイレーン』を手札に加える。ハゥフニスが効果で墓地へ送られたので効果。墓地のこのカードと、手札、フィールド、墓地のモンスターとで融合召喚を行う。墓地の『沼地の魔神王』とハゥフニスをデッキの一番下に戻し、融合召喚『ティアラメンツ・キトカロス』・・・」

 

【ティアラメンツ・キトカロス】

【星5/ATK2300】

 

「そして、キトカロスが特殊召喚に成功したので効果発動。デッキから『ティアラメンツ』カード1枚を手札に加える。ハゥフニスを手札に」

 

 ふぅ、これで一連の効果処理は終わったな。【ティアラメンツ】は一度連鎖するとチェーンが積み重なるからなあ。

 

『・・・はっ、今のなに!? 墓地で効果を発動するカード!? ちゃんとしたカードの効果の処理なの!? ズルしてるとかじゃなくて!?』

 

 宇宙猫になっていたユウカが再起動を果たす。ズル・・・はまあ、転生者って時点でしてるようなものだが。カードの効果は正常なものだ。大体、デュエルディスクは不正防止のシステムがあるからイカサマはできないぞ。ただまあ【ティアラメンツ】の連鎖に関してはオレからしてもやっぱおかしいよコイツら・・・とは思うが。

 

「これはこういうデッキだから、な・・・。永続魔法『王の棺』を発動します」

「ヌグゥ!? そのカードーハ!?」

「効果は・・・もうお分かりですよね? 墓地のイムセティ、ハーピ、ドゥアムテフの3体を、墓地から特殊召喚」

『こんな何度も8つ星モンスターを墓地から出せるなんて、インチキ効果もいい加減にしなさいよ』

 

 ・・・ごもっとも。

 

「レベル8のモンスターが3体・・・もしかしテー、もしかすルーノ・・・?」

「ふっ・・・。わたしは、ドゥアムテフとハーピの2体を素材に、エクシーズ召喚! 現れろNo.38! 『希望魁竜タイタニック・ギャラクシー』!」

 

【No.38希望魁竜タイタニック・ギャラクシー】

【ランク8/ATK3000/X2】

 

「に、2体目のエクシーズなノーネ!?」

「まだですよ。墓地のデストルドーの効果を、キトカロスを対象にして発動。ライフを半分払うことでこのカードを特殊召喚。自身の効果で特殊召喚されたデストルドーは、対象にしたモンスターのレベル分、自分のレベルを下げる」

 

【小南 遊歌】

LP3500→1750

 

【亡龍の戦慄-デストルドー】

【星7→2/ATK1000】

 

 ・・・よし。これでレベルが揃った。

 

「レベル8のイムセティに、レベル2となったデストルドーをチューニング!」

「チューニング!? 新ワードなノーネ!?」

 

 デストルドーが2つの光輪に姿を変え、その中にイムセティが飛び込む。光の輪を潜り抜けると8つの星になり、次の瞬間には閃光が爆ぜた。

 

「シンクロ召喚! 現れろレベル10『フルール・ド・バロネス』!」

『ハァッ!』

 

【フルール・ド・バロネス】

【星10/ATK3000】

 

 オレの場に現れたのは、鎧をつけた軍馬に乗った、これまた全身鎧で固めた女騎士。展開系デッキでは親の顔よりよく見る、大型シンクロモンスターである。召喚条件に縛りが無いのが悪いよ、縛りが無いのが。

 

「シ、シンクロ召喚!?」

「融合ともエクシーズとやらとも違うのか!?」

「あいつ、一体いくつの召喚法を持っているんだ?」

 

 バロネスの登場で、再び騒がしくなる観客席。いくつの召喚法か・・・。一応はまだペンデュラムとリンク(こっちはルール上使えないが)も残ってるんだよな。

 

「さらにわたしはこのターン、通常召喚をしていません。チューナーモンスター、『白の聖女エクレシア』を召喚。・・・行きます。レベル4のレイノハートに、レベル4のエクレシアをチューニング!」

 

 エクレシアが4つの光の輪へと姿を変える。レイノハートがその輪の中へと飛び込むと4つの輝く星が生まれ、閃光が爆ぜた。その光を切り裂くようにして現れるのは、白銀のドラゴン。

 

「シンクロ召喚! 現れろレベル8! 『閃珖竜スターダスト』!」

『ギュォォォォォ!』

 

【閃珖竜スターダスト】

【星8/ATK2500】

 

「2体目のシンクロだと!?」

「シンクロ召喚はモンスターだけで行える・・・? レベルを合わせる以外にも何か条件があるのか・・・?」

「ふつくしい・・・」

 

 いま社長いなかった?

 

『このターンだけで攻撃力3000のモンスター2体に攻撃力2000以上のモンスター2体・・・? なにがなにやらでもうわけがわからないわよ・・・』

 

 再び宇宙猫になりかけているユウカ。コイツは元々この世界の生まれだしな。未来のカードのパワーについて来れないのも無理はない。

 

「バロネスの効果発動! 1ターンに1度、フィールドのカード1枚を破壊できる。クロノス先生の伏せカードを破壊!」

『無条件でカードを破壊ですって!?』

「ヌヌヌ・・・」

 

 バロネスが駆け、クロノス先生の場の伏せカードを切り裂く。破壊したのは・・・ミラーフォースか。仕事せずに破壊されることに定評があるな、この攻撃反応罠。

 

「それでは、バトル! バロネスで古代の機械巨人に攻撃!」

「相打ち覚悟の攻撃なのでショーガ、そうはいきまセーンヌ! 速攻魔法『リミッター解除』を発動! 古代の機械巨人の攻撃力を2倍にするノーネ!」

 

 出たな、機械族限定の時限強化カード! 効果を受けた機械族モンスターはエンドフェイズに破壊されるデメリットこそあるが、その代わりに攻撃力を倍加させる。デメリットもそのターンのうちに決着を付ければ関係ないという脳筋カードである。

 

『攻撃力3000の倍ってことは・・・攻撃力6000!? 返り討ちされて負けちゃうわよ!』

「そう焦るな。・・・タイタニック・ギャラクシーの効果発動! 1ターンに1度、魔法カードの効果を無効にし、そのカードをこのカードのエクシーズ素材にする!」

「なんでストー!?」

 

【No.38希望魁竜タイタニック・ギャラクシー】

【X素材2→3】

 

 タイタニック・ギャラクシーが、リミッター解除のカードを吸収する。これで伏せはもうない。バロネスが、フィールドを駆ける。馬の分も含めて結構デカいバロネスだが、それ以上に古代の機械巨人がデカい。絵面はまるで、ドンキホーテのそれだ。あれとは違って突撃するのは風車ではないが。

 

『お互いの攻撃力は3000同士、このままだと破壊されちゃうわよ』

「それも大丈夫。閃珖竜スターダストの効果! 1ターンに1度、自分のカード1枚は破壊されない! この効果で、バロネスの戦闘破壊を無効!」

「なんと!?」

 

 スターダストのブーストを受け、バロネスの持つ剣に光が宿る。繰り出された拳を盾でいなし、返す刃で鋼鉄の巨人を両断して破壊した。

 

「ノー!? 我が古代の機械巨人が、2度も敗れるナーンテ!?」

「タイタニック・ギャラクシーとキトカロスでダイレクトアタック!」

「ペペロンチーノ!」

 

【クロノス・デ・メディチ】

LP3200→0

 

「よし、オレの勝ち。・・・クロノス先生、対戦ありがとうございました」

『うわー、ほとんど危なげもなく勝っちゃった。ところであの人放心状態だけど放っといていいの?』

 

 今日だけで受験生2人(うち一人は推薦だが)に立て続けに負けたのがショックらしく、クロノス先生は真っ白になっていた。よく見たら口からエクトプラズマが出ている。・・・まあ、この人も大概図太いしそのうち立ち直るだろう。

 

 あ、そういえば結局『ドラゴンメイド』のカード使わなかったな・・・。過剰だと思って出さなかったけど、出しといてもよかったか・・・?

 

「あのクロノス教諭が負けた・・・? それも2回も・・・」

「今年の受験生、とんでもないのがいやがるぜ」

「あのシンクロとかエクシーズとかって何なんだ。聞いたことも見たことも無いぞ」

「ティアラメンツとかいうのも変な動きしてなかったか」

 

 ざわざわ、ざわざわ。デュエルが終わり、騒がしさが一層増してくる。先ほどのデュエルのことだったり、オレが行ったエクシーズ召喚、シンクロ召喚についてだったり。あまり長くいると絡まれそうだし、脳内でGet〇ildでも流しながら帰るとしよう。

 

 

 

 ・・・後日送られてきたのは、合格通知書と、入学後の所属がオシリスレッドであることを示す赤い制服。・・・おかしいな、デュエルアカデミアでは女子はオベリスクブルー配属になるはずなんだが。

 

 何故にオシリスレッド? と思っていたら、手紙が同封されていた。内容としては、デュエルアカデミアでシンクロ召喚、エクシーズ召喚を広めるにあたっては、オベリスクブルーだけでは偏りが生じる可能性がある。そこで、より多く広め浸透させるためにオシリスレッドからスタートさせることになった・・・ということらしい。精々足掻き、昇格を目指せ・・・と。あの高笑いが聞こえてきそうだ。

 

 ・・・なってしまったものはしょうがない。シンクロ召喚とエクシーズ召喚を広めるためにデュエルしながら、昇格を目指すしかないな。

 

 ちなみにユウカだが、送られてきたオシリスレッドカラーの女子用制服の袖無しミニスカに『誰よこんなデザインにしたのは! こんなの着てたら痴女みたいじゃないの!』と現在進行形でその制服を着ているであろう、在校女子生徒に喧嘩売るようなことを言いながらキレていた。

 

 

 

 

 

 

【→To Be continued...】




ユウカ『今日の最強カード! それは『隣の芝刈り』よ!』

遊歌「このカードは、自分のデッキの枚数が相手よりも多い場合、その差だけ自分のデッキの上からカードを墓地へと送るカードだな。・・・たまに相手もデッキを分厚くしていて不発なんてこともあるが、基本的には通せば強い」

ユウカ『墓地を増やしても使えなければ意味が無いし、どんなデッキにも採用できるわけではないのよね』

遊歌「そうだな。だが、逆に言えばこれを採用してるデッキは墓地に大量のカードを送り込んでアドを得るデッキってことだ。どうしても通したい場合、相手の誘発を釣る動きをすることもある。マストカウンターの見極めは慎重にな」

ユウカ『誘発って?』

遊歌「ああ! それって灰流(はる)うらら?」

ユウカ『だから誘発ってなによ』

遊歌「オマエもそのうち分かるさ。そのうちな」
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