GX次元の環境を破壊します。チェーンはありますか? 作:青いカンテラ
【前回までのあらすじ】
オレの精霊たちが自己主張が激しい。
◆◇◆◇
「カードを1枚伏せてターンエンドだぜ!」
【遊城 十代】
LP2700
手札0
モンスター2(『E・HEROサンライザー』『E・HEROエッジマン』)
魔法罠1
【小南 遊歌】
LP3000
手札4(『白の聖女エクレシア』)
モンスター0
魔法罠1(『
「わたしのターン、ドロー」
さて・・・十代の場には攻撃力2500のサンライダーと攻撃力2600のエッジマンがいて伏せカードも1枚。こっちはモンスターは無しで、今は意味がないサリークが1枚だけ。だが手札は使い切って0枚の十代に対して、オレは今引いたのも含めて5枚だ。十分捲れる盤面だな。
「手札の『白の聖女エクレシア』の効果。場に存在するモンスターの数が、相手の方が多い場合に、このカードは手札から特殊召喚できる!」
『やぁっ!』
【白き聖女エクレシア】
【星4/ATK1500/チューナー】
竜の頭蓋製の巨大なハンマーを手にした、豊かな金髪を頭の高いところでまとめている少女がオレの場に登場する。額には『
「かわいい女の子っす!」
「女の子に大きな武器の組合せはいいぞ」
「金髪ポニテ少女・・・いい・・・」
「俺・・・雷電娘々が推しだったけど、エクレシアちゃんを推すことにする」
「お、浮気か?」
エクレシアの登場に、盛り上がるギャラリーたち。それにしても雷電娘々とは、また大分時代を感じるカードだな・・・。まあいいけど。
「わたしはさらに、『ドラゴンメイド・チェイム』を召喚!」
『・・・』
【ドラゴンメイド・チェイム】
【星4/ATK500】
先端が黒くなっている白い二本の角が頭に生え、腰からは艶やかな黒い鱗の大きな尻尾が伸びている、黒いメイド服を着た半人半竜の女性がフィールドに現れる。彼女はスカートを両手ですっと持ち上げ、一礼をする。いわゆるカーテシーと呼ばれるものだ。その所作は洗練されていて、見ていて惚れ惚れしてしまいそうだ。
「今度はメイドか!」
「このモンスター、メイドで・・・ドラゴン!」
「ドラゴン娘はいいぞ」
「チェイムの効果発動! このカードが召喚または特殊召喚に成功した時、デッキから『ドラゴンメイド』魔法か罠カード1枚を手札に加えることができる! 『ドラゴンメイドのお召し替え』を手札に!」
チェイムがデッキから1枚のカードを抜き出して手渡してくれる。お召し替えは『ドラゴンメイド』名称のドラゴン族専用融合魔法カードだ。
「さてこれで、わたしの場にはレベル4のモンスターが2体揃った!」
「同じレベルのモンスターが2体ってことは、またエクシーズ召喚か!? いや、待てよ・・・エクレシアって確か・・・」
「そう、エクレシアはチューナーモンスター! レベル4のチェイムに、レベル4のエクレシアをチューニング!」
エクレシアが4つの光の輪へと姿を変える。チェイムがその輪の中へと飛び込むと4つの輝く星が生まれ、一列に並ぶ。次の瞬間には闇があふれ出し、その闇を切り裂くようにして黒いドラゴンが出現する。
「シンクロ召喚! 現れろレベル8! すべてを闇に沈める魔竜! 『ダークエンド・ドラゴン』!」
『ギュオォォォォン!』
【ダークエンド・ドラゴン】
【星8/ATK2600】
オレの場に現れたのは、闇をそのまま竜の形にしたような漆黒のドラゴン。本来の頭とは別に、胴体にも凶悪な表情をした顔がある。
「うぉぉぉ! かっけードラゴン来たー!」
ダークエンドの登場に、十代が目を輝かせる。こんなにいいリアクションを取ってもらえると、こちらとしても大型モンスターを出す甲斐があるというものだ。
「攻撃力は2600、エッジマンと互角!」
「サンライザーは倒せるが、エッジマンとは相打ちになってしまうな」
「ダークエンドの効果発動! このカードの攻守を500ポイント下げることで、相手モンスター1体を墓地へ送る! サンライザーを闇に沈めろ、ダークエンド!」
【ダークエンド・ドラゴン】
【ATK2600→2100】
ダークエンドの胴体のにある顔が大きくその口を開ける。そこから闇を凝縮したエネルギー弾が放たれ、サンライザーを包み込むと跡形もなく消滅させる。しかし、同時にダークエンドもエネルギーを消耗してしまい、攻守が下がってしまう。
「アニキのサンライザーが!」
「だが、これでエッジマンよりも攻撃力が下回ったぞ」
「小南のやつ、一体何を考えているんだ・・・?」
「手札から魔法カード『死者蘇生』を発動。墓地のキトカロスを特殊召喚する!」
『マスター、このキトをご指名くださって感激なのです! やはりマスターの頼れるモンスターはあのカッコつけではなくこのキトなのです。マスターにお呼ばれしたからにはそのご期待に応えられるようにキトも全力を出すのです!』
ふんす、と胸の前で両手を握るキトカロス。まあ、フリルのついた袖に隠れてるから創造ではあるんだが。それはそれとして、やる気があるのはいいことだ。
「・・・キトカロスが特殊召喚に成功した時、デッキから『ティアラメンツ』カード1枚を手札に加えるか墓地へ送ることができる。シェイレーンを墓地へ送る」
『はいなのです!』
「墓地へ送られたシェイレーンの効果発動! 墓地のこのカードと手札、場、墓地のカードで融合召喚を行う! 融合召喚! レベル8『ティアラメンツ・ルルカロス』!」
【ティアラメンツ・ルルカロス】
【星8/ATK3000】
シェイレーンの幻影と、キトカロスが融合の渦へと吸い込まれていく。その渦の向こう側から現れたのは、キトカロスが成長した姿。【ティアラメンツ】のエースモンスターである、ルルカロスだった。
『ふぅ・・・。融合成功、なのです・・・。この姿になったキト・・・いえ、ルルの戦闘力は比較的に高まっているのです。これならマスターに近づく不埒な輩をすべて排除できるのです・・・マスターの隣にいるのはこのルルだけで十分なのです・・・ふふふ・・・』
なんか怖いことを言っているが、触れたらやぶ蛇踏みそうだし聞かなかったことにしよう・・・。
「さらに墓地の『お片付け』を除外して効果発動! 墓地の『ドラゴンメイド・パルラ』を特殊召喚!」
『はいはーい! 呼ばれて飛び出て、パルラちゃん登場でーす!』
【ドラゴンメイド・パルラ】
【星3/DEF1700】
墓地から飛び出してきたのは、スカート丈の短いメイド服姿の半人半竜の少女。頭には二本の緑色の角が生え、腰からは鮮やかな新緑色の鱗が輝く太い尻尾が伸びている。
「パルラちゃんかわいい!」
「ボク、パルラちゃん推しになるっす!」
「俺、パルラちゃんを推しにするわ」
「お前さっきはエクレシアちゃんを推しにするって言ってたじゃねえか」
「推しは何人いてもいいんだよ!」
「ドラゴン娘はいいぞ」
『キミたちー、パルラちゃんをよろしくねー!』
ギャラリーたちの声に反応して、パルラが愛嬌を振りまく。コイツもソリッドヴィジョン干渉組なので、実際にギャラリーに向かって笑顔で手を振っている。もっとも、精霊だから声は聞こえていないだろうが。
「・・・パルラの効果発動! このカードが召喚または特殊召喚に成功した時、デッキから『ドラゴンメイド』カード1枚を墓地へ送る! 3枚目のお片付けを墓地に!」
消費した分をすぐさま補充。『お片付け』は展開タイミングのある程度決まっている『ドラゴンメイド』の貴重なフリーチェーンの展開カード。墓地に置いておくに越したことは無い。
「モンスターが何体も並んだな・・・来るか?」
「バトルフェイズに入り、パルラの効果発動! お互いのターンのバトルフェイズ開始時にこのカードを手札に戻すことで、レベル8の『ドラゴンメイド』モンスター1体を、手札か墓地から特殊召喚できる。墓地から『ドラゴンメイド・ルフト』を特殊召喚!」
『ギュア!』
【ドラゴンメイド・ルフト】
【星8/ATK2700】
パルラの姿が変化していく。尻尾と同じ新緑色の鱗が体を覆い、背中からは巨大な竜の翼が生え、両手両足は鋭い爪を備えた、強靭な竜の脚へと変化していく。ものの数秒と掛からずに、半人半竜の少女は巨大な竜へとその姿を完全に変化させた。その攻撃力は、僅かだが十代の場に残っているHEROを上回っている。
「パルラちゃんがドラゴンになったっす!」
「ドラゴン娘といえばドラゴンへの変身だな!」
「いいな、俺も組んでみたいデッキだ・・・」
「ネットで探したらあるかな・・・」
この世界に『ドラゴンメイド』のカードが流通しているかはわからないが、とりあえず上級ドラゴンメイドたちの値段はとんでもないことにはなっていそうである。主にステータス的な意味で。
「バトル! まずはルルカロスでエッジマンに攻撃!」
『マスターの敵は即両断、なのです』
空中を泳ぐかのようにしてエッジマンに高速で接近すると、手に持っている剣を一閃する。金色のHEROが破壊され、衝撃波が少しだけ十代のライフを削る。
【遊城 十代】
LP2700→2300
「くっ、やるな!」
サンライザーはダークエンドで墓地送りにし、エッジマンもルルカロスに倒された。これでもう、十代の場にモンスターはいない。
「続いてルフト! 十代くんにダイレクトアタック!」
「遊城のライフは2300、ルフトの攻撃力は2700! この攻撃が通ったら遊城の負けだ!」
「ア、アニキ・・・!」
「へへっ、罠発動! 『ガード・ブロック』! 戦闘ダメージを1度だけ0にして、カードを1枚ドローする!」
ルフトが、口腔内に風の魔力を貯め込んでブレスにして放つ。決まれば十代のライフを余裕で消し飛ばせるほどの威力のそれは、しかし、十代の前に展開された薄い膜のようなバリアーに阻まれて霧散した。
「ならダークエンド・ドラゴンでダイレクトアタック!」
「ぐぅぅぅ!」
【遊城十代】
LP2300→200
「ふぅ、なんとか耐えきったぜ!」
「・・・リーサルは取れなかったか・・・。ならメインフェイズ2に入り、手札から『ドラゴンメイドのお召し替え』を発動! 手札のパルラと、フィールドのルフト、2体のドラゴンで、融合!」
「シンクロの次は融合召喚か! いったい何が出てくるんだ!?」
ルフトの隣にパルラの幻影が現れ、2体はそのままカラフルな色をした渦へと吸い込まれていく。渦の中で、2つのドラゴンの魂は共鳴し、混ざりあい、新たな姿になってオレの場に現れる。
「融合召喚! 現れろレベル10『ドラゴンメイド・シュトラール』!」
『・・・』
【ドラゴンメイド・シュトラール】
【星10/ATK3500】
渦の向こう側から現れたのは、二本の大きな角を持った黒いドラゴン。ダークエンドが漆黒の闇ならば、シュトラールはどこか高貴さを感じさせる艶やかな黒色の鱗が映えるドラゴンだった。
「こ、攻撃力3500!?」
「あの伝説の『青眼の白龍』の攻撃力を超えた!?」
「す、すげー!」
「1ターンで攻撃力3000と3500が並ぶなんて!」
湧き上がるギャラリー。この世界の今の環境だと、攻撃力3000クラス1体出すだけでもそれなりに手間は掛かるからな。
「すげぇな、遊歌! まさか1ターンで攻撃力3000越えのモンスターを2体も出すなんて!」
「上振れれば、もう1体か2体くらいは展開できるけどね・・・。わたしはこれでターンエンドするよ!」
【小南 遊歌】
LP3000
手札2
モンスター3(『ダークエンド・ドラゴン』『ティアラメンツ・ルルカロス』『ドラゴンメイド・シュトラール』)
魔法罠1(『
「これでもまだ全力じゃないなんてな! くぅ、燃えてくるぜ! 俺のターン! ドロー・・・! よし!」
十代の顔がパッと明るくなる。反応からして、何かいいカードを引けたらしい。何にせよ1度はシュトラールで無効にできる。それよりも・・・。
「このスタンバイフェイズ、シュトラールの効果を発動!」
「また俺のターンに効果を発動だって!?」
「お互いのスタンバイフェイズに1度、自分の手札か墓地からレベル9以下の『ドラゴンメイド』モンスター1体を特殊召喚できる! 墓地から再びパルラを特殊召喚!」
【ドラゴンメイド・パルラ】
【星3/DEF1700】
『はーい! パルラちゃん、再び指名を頂きました~!』
「うぉぉぉ! パルラちゃん!」
「エクレシアちゃんもいいけど、パルラちゃんを推すっす!」
パルラ、2度目の登場。何度も墓地とフィールドと手札を行き来して半過労死枠みたいになっているが、きっと気のせいだろう。
「・・・パルラの効果はもう分かってるね? 特殊召喚に成功した時、デッキから『ドラゴンメイド』カード1枚を墓地へ送ることができる。この効果で『ドラゴンメイド・フランメ』を墓地へ送る!」
「俺のターンにもモンスターを展開してくるなんてな。よぉし、俺も負けていられないぜ! まずは『E・HEROバブルマン』を召喚!」
『ハァッ!』
【E・HEROバブルマン】
【星4/ATK800】
「バブルマンの効果発動! このカードが召喚、特殊召喚された時、場に他のカードが無ければ2枚ドローできる!」
『出たわね、強欲な泡男』
オレの前世だとドロー効果は手札も参照していたが、こっちだと自分の場に他にカードが無ければ、と緩い条件のままになっている。
ちなみにこれは効果解決時なので、例えばリクルート系のカード効果で場に出て来ても、効果処理が終わったタイミングで他にカードが無い状態なら2ドローできる。
・・・改めて見てもおかしいなコイツの効果。そして十代に手札を渡すとロクなことにならないからな。ここで止めるか。
「ならその効果に対してシュトラールの効果を発動! このカードをエクストラデッキに戻すことで、その効果の発動を無効にし破壊する!」
「え、攻撃力3500の超強力モンスターを戻しちゃうんすか!?」
「シュトラールが自身の効果でエクストラデッキに戻った時、代わりに『ドラゴンメイド・ハスキー』を特殊召喚する!」
【ドラゴンメイド・ハスキー】
【星9/ATK3000】
黒いドラゴンが光に包まれ、その姿を変化させる。徐々に小さくなり、人間大の大きさになると、そこには頭に立派な二本の黒い角を持ち、腰には艶やかな黒い鱗の尻尾が伸びている、メガネを掛けた理知的なメイドの女性が立っていた。
「ドラゴンがメイドになった!」
「今度は大人の女性って感じか・・・いいな・・・」
「メガネはバフアイテム」
「同志よ」
「ドラゴン娘はいいぞ」
「たいへんだ、こいつ語彙力が壊れた」
語彙力って壊れるものなのか・・・。
「バブルマンが止められたなら、こっちだぜ! 魔法発動! 『ホープ・オブ・フィフス』!」
「あ、やば・・・」
まさかのドローカードニレンダァ! だと!? さっきのガード・ブロックか今のドローで引いたのか!? なんて引きしてやがるんだよコイツ!
「墓地のフェザーマン、ネクロダークマン、サンライザー、スパークマン、バブルマンの5体をデッキに戻し、カードを2枚ドローする! そして、発動時に俺の手札と場に他のカードが無ければ、さらに1枚ドロー!」
「一気に3枚ドローだと!」
「さすがアニキっす!」
「へへ、来たぜ! さらに魔法カード『天使の施し』! カードを3枚ドローして2枚捨てる! よし! 『強欲な壺』でさらにカードを2枚ドロー!」
『うわぁ、ドローカードでドローカードを引くなんて、どんな強運よ。チート?』
「それも天然モノのな・・・」
たった1枚の手札から3枚に増えて、さらに『天使の施し』と『強欲な壺』まで引き当てて手札交換もしている・・・。十代、恐ろしいドロー力・・・!
「よっしゃ! 魔法カード『ミラクル・フュージョン』を発動するぜ!」
ウソでしょ・・・(震え声)。都合5枚引いてるとはいえ、ここで墓地融合ができる魔法カード引き当てるとかどんな確率だよ! そしてこれを通したらダメな気がするからもちろん止める!
「ルルカロスの効果発動! 相手がモンスターの特殊召喚を含む効果を発動した時、その発動を無効にして破壊する!」
「なら速攻魔法『禁じられた聖杯』! このターン、ルルカロスの攻撃力を400ポイントアップする代わりに効果を無効にするぜ!」
「聖杯だと!?」
【ティアラメンツ・ルルカロス】
【ATK3000→3400】
ルルカロスが十代の『ミラクル・フュージョン』を切り裂こうと動き出す瞬間、黄金の杯に入った聖杯がルルカロスの顔にめがけてぶちまけられる。それによって狙いが逸れてしまい、剣は『ミラクル・フュージョン』の真横の空間を通り過ぎた。
『マ、マスター、ごめんなさいなのです・・・』
「・・・いや、気にするな。まさか十代が聖杯持ってるなんて予想外過ぎたし」
本当に予想外が過ぎる。『融合募兵』や『サンライザー』はまだ融合関係のカードだから分かるが、まさかの『禁じられた聖杯』を持ってるなんて思わなかったぞ。
「これで問題なく効果は通るぜ! 墓地のバブルマンとエッジマンを除外して融合召喚! 来い! すべてを凍てつかせる氷のHERO! 『E・HEROアブソルートZero』!」
『ハァッ!』
【E・HEROアブソルートZero】
【星8/ATK2500】
十代の場に、透き通った氷のようなアーマーを身に着け、白いマントを靡かせるHEROが出現する。アブソルートZeroは、融合素材が決まっている『E・HERO』融合モンスターとは違い、特定の属性と『HERO』モンスターとで融合できる素材指定の比較的緩い『属性HERO』と呼ばれる融合モンスターだ。
この分だと他の属性HEROも入ってそうだが・・・この時代って融合デッキの上限が無いから、どれを入れるかで頭を悩ませることも無いし、十代のデッキの融合デッキは凄いことになっていそうだな・・・。
「さらにフィールド魔法『フュージョン・ゲート』を発動! これで俺は、『融合』のカードを使わずに融合召喚が可能!」
十代がデュエルディスクのフィールドゾーンにカードをセットする。すると上空に暗雲が立ち込め、静かに渦を巻き始めた。
「フィールドのアブソルートZeroと手札のスパークマンを融合!」
氷のHEROと、幻影として現れた電気を操るHEROが、上空の渦へと吸い込まれていく。渦を巻く暗雲の中心から一筋の光が差し、眩い光を放ちながらHEROが1体、場に降り立つ。
「現れろ! 光り輝くHERO! 『E・HERO THEシャイニング』!」
【E・HERO THE シャイニング】
【星8/ATK2600】
「そしてアブソルートZeroがフィールドから離れたことで、効果発動! 相手の場のモンスターをすべて破壊する! パーフェクト・フリーズ!」
「くっ・・・サリークの効果発動! ルルカロスを墓地へ送り、シャイニングの効果を無効にする!」
どこからか噴出してきた極寒の冷気が、オレの場にいるモンスターたちを凍り付かせていく。ルルカロスだけはサリークの効果で難を逃れさせたが、ハスキーとダークエンドとパルラは芯まで凍り付き、氷の彫像になって砕け散ってしまった。
「あぁー!」
「パルラちゃんが、俺たちのパルラちゃんがぁぁぁ!」
「おのれ遊城! お前に人の心はねえのか!」
「いくらアニキでも許せないっすよー!」
「えぇー!? これはデュエルなんだからしょうがないだろー!?」
ギャラリーから巻き起こる大ブーイング。まあ、推しだの何だのと言っていたモンスターが氷漬けにされて破壊されれば、文句の一つもつけたくなるのだろう。
「・・・ルルカロスは融合召喚されていれば、1度だけ復活できる! 戻ってこい、ルルカロス!」
『ルル危機一髪、なのです!』
【ティアラメンツ・ルルカロス】
【ATK3000】
「シャイニングは、除外されている『HERO』1体につき攻撃力が300アップする効果がある・・・けど」
「サリークで無効化したから、攻撃力の上昇は、しない・・・」
「氷漬けになる瞬間にフィールドから離れて、また戻って来ることで破壊されるのを避けてこっちのカードも無力化なんて、やっぱすげぇな・・・」
オレの場にはルルカロス。そして十代の場には効果が無効化されているシャイニングが1体。手札も伏せカードも無い。それでも、にっ、と不敵に笑う十代。こんな状況でもまだ打つ手があるというのか。
「けど、俺だってまだ終わりじゃないぜ! 俺は墓地の『シャッフル・リボーン』の効果を発動する!」
「あんなカードいつの間に!」
「『施し』を使った時だろうな。他にタイミングがないし」
つくづくどんなドロー力してるんだと言いたくなるな・・・。
「墓地からこのカードを除外し、フィールドの『フュージョン・ゲート』をデッキに戻すことで、1枚ドローできる!」
上空に立ち込めていた暗雲が消え、代わりに十代の手には1枚のカードが握られる。ドローしたのはたった1枚のカード。だが、その1枚を見た時、カン☆コーンという音がどこからか聞こえた・・・ような気がする。
「いくぜ、バトル! シャイニングでルルカロスに攻撃!」
「な、攻撃力の低いモンスターで攻撃だって!?」
「自棄になったのか遊城のやつ!」
「手札から速攻魔法『決闘融合-バトル・フュージョン』を発動! 俺の融合モンスターが相手モンスターとバトルする時、その攻撃力は相手のモンスターの攻撃力分アップするぜ!」
【E・HERO THEシャイニング】
【ATK2600→5600】
「こ、攻撃力5600!?」
「とんでもない数値っす!」
「いっけー、シャイニング! スパークル・ブラスター!」
『ハァァァ・・・ハァッ!』
シャイニングが構えを取ると、その胸部に光が収束していく。それは高密度の光のエネルギーとなり、ルルカロスに向かって発射される。剣を前にして少しの間だけ耐えていたが、圧倒的なまでの攻撃力の差には抗えず、光の奔流に飲み込まれて消えていく。
『せっかくの出番なのに、こんなにあっさりと退場なんて、あんまりなのですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!』
【小南 遊歌】
LP3000→400
「くっ・・・! ルルカロス・・・!」
「これで遊歌のモンスターはすべて倒したぜ!」
「・・・まさか、1ターンでまくり返されるとはね・・・」
万能無効1回、特殊召喚無効1回、モンスター無効1回、そしてハスキーが健在でバトルフェイズに入っていれば、パルラをルフトにしてのモンスター除去。中々の布陣だったと思うんだが、それでもこうして突破されると、つくづく十代のドロー力のおかしさがよくわかるというものだ。
「『シャッフル・リボーン』の効果でドローしたターンのエンドフェイズ、手札を1枚除外するデメリットがあるけど、俺の手札は0枚! よってデメリットは関係ない!」
「エンドフェイズに墓地のエクレシアの効果。このターンに融合モンスター、ハスキーが墓地へ送られているため、このカードを手札に戻す!」
「またチューナーモンスターがお前の手札に戻ったな。今度は何を見せてくれるのか、ワクワクするぜ! ターン終了!」
【遊城 十代】
LP200
手札0
モンスター1(『E・HERO THEシャイニング』)
魔法罠0
「わたしのターン、ドロー!」
引いたカードを見る。この状況でこのカードを引くか・・・。なら、見せるしかないな。このデッキの『アイドルカード』を。
「・・・まずは墓地の『お片付け』を除外して効果発動! ルフトを特殊召喚!」
『ギュオ!』
【ドラゴンメイド・ルフト】
【DEF1700】
「大型モンスターを出した!」
「けど、攻撃表示ならともかく守備表示じゃあ、シャイニングは倒せないぞ」
「確かに・・・。万全を期すならパルラちゃんだよな・・・?」
シャイニングを倒すだけなら、確かにパルラを『お片付け』で出して、バトルフェイズにルフトにすればいい。だが、それでは十代のライフを削り切れない。だから、このターンで勝つためにこうする。
「ルフトを対象にして墓地の『お召し替え』の効果を発動する! 対象のモンスターとこのカードを手札に戻し・・・そのまま発動!」
「またあの黒いドラゴンを融合召喚するのか!?」
「わたしは手札のルフトと・・・『ブラック・マジシャン・ガール』を融合する!」
融合素材となる2枚のカードを、掲げて見せる。片方は何の変哲もないドラゴン族のカード。そしてもう片方は・・・この世界では最も有名な伝説級のレアカードに数えられる1枚・・・。
「ぶ、『ブラック・マジシャン」
「ガール』!?」
「っすか!?」
ルフトの幻影と『ブラック・マジシャン・ガール』の幻影が出現し、渦へと吸い込まれていく。煌めく融合の渦の向こう側から現れたのは、杖の代わりに剣と盾を持ち、堅牢な鎧姿になってルフトの背に乗っている『ブラック・マジシャン・ガール』だった。乗るだけ融合組・・・とか言ってはいけない。
「融合召喚! 現れろレベル7『竜騎士ブラック・マジシャン・ガール』!」
『やぁっ!』
【竜騎士ブラック・マジシャン・ガール】
【星7/ATK2600】
「『ブラック・マジシャン・ガール』! 本物!? 本物っすか!?」
「す、すげぇ、あの伝説の
「俺、デュエルアカデミアに入ってよかった・・・」
「地元のダチに自慢できるなこれは」
「写真、写真取っとこう!」
「オシリスレッドになってちょっと気分が落ち込んでたけど、ブラマジガール拝めたからもう全部チャラだ」
にわかにざわめき立つギャラリー。オレはこのカード何枚も持ってるけど、この世界においては、あの武藤遊戯くらいしか持ってないとされるほどのカード。少しサービスが過ぎる気もするが、まあ、ドローして竜騎士も出せるってなったら、それはもう出すしかないだろう。
「おぉ! なんかすげーモンスターが出たな! けどよ、攻撃力は2600、シャイニングと互角だぜ?」
「ふっ、ご心配なく。『竜騎士ブラック・マジシャン・ガール』の効果発動! 1ターンに1度、手札を1枚捨てることで、フィールドの表側表示のカード1枚を破壊する!」
『はぁぁぁ・・・はぁっ!』
『竜騎士ブラック・マジシャン・ガール』が、剣に魔力を込める。輝く剣を振るうと魔力の刃が空気を切り裂きながら飛び、シャイニングを両断し爆散する。
「シャイニングが破壊されたことで、除外されている『E・HERO』2体を手札に加える・・・」
「けれど、これでもう十代くんを守るモンスターはいない。竜騎士ブラック・マジシャン・ガールで、ダイレクトアタック!」
【遊城 十代】
LP200→0
「・・・俺の、負けか・・・」
デュエルが終了し、ソリッドヴィジョンで現れていた『竜騎士ブラック・マジシャン・ガール』も、最初からそこには存在していなかったかのように、空気に溶けて消えていく。
「ああ・・・ブラマジガールが消えちゃう・・・」
「まるで、一夜の夢のようだった・・・」
「また、会えるよな・・・」
「ああ、きっとまた会えるさ・・・。ガン〇ムもそう言ってる」
「誰だよガンダ〇」
しみじみとした空気感をしているオシリスレッドの生徒たち。・・・放っておこう。
「十代くん、いいデュエルでした」
「俺もだぜ! 今回は負けちまったけど、次は勝つ!」
「・・・次も負けませんよ?」
(震え声)である。いや思った以上に十代が強化されているというか、なんかオレの知らない魔法カードだと!? 何かもあったし、次にデュエルしたらどうなるか本当にわからない・・・。
◆◇◆◇
「やっぱりオシリスレッドだと、十代が頭3つ、いや5つくらいはずば抜けてるな」
『というか、あの十代以外がへっぽこなだけなんじゃないの?』
ユウカはハッキリと言うな・・・。遊城十代、確か最速で月一試験の時だったかにラーイエローへの昇格を一度は認められているから、本来ならオシリスレッドに収まってていい実力者じゃないんだよな・・・。本人が赤い制服を気に入ってるからオシリスレッドにいるだけで。
『そういえばあんた、ブラック・マジシャン・ガールなんて伝説のレアカードなんてよく持ってたわね。武藤遊戯のデッキにしか入ってない、なんて言われてるくらいのカードなのに』
「それは、まあ・・・あのカードなら十何枚もあるからな」
『・・・なんだかもう、驚くという感情すらマヒして来ちゃうわね、あんたといると』
「それほどでもない」
『褒めてないっての! はあ、それで? テスター候補、だっけ? 見つかったわけ?』
急に話を変えてくるユウカ。彼女の言ってるのは、校長室でも話した、シンクロやエクシーズを、収録されるパックが出る前に渡してテストする生徒について、だ。最初はオシリスレッドから・・・と考え、オシリスレッドの寮生たちともデュエルしてきたが、やはり最有力としては十代だろうな。デュエルの実力はずば抜けてるし。
「それ何だが、十代にシンクロかエクシーズを渡してみようかなとは思っている。実際のところ、あいつのデッキにシンクロやエクシーズを組み込んで回せるかは、あいつ次第なところはあるが・・・。まあ、場合によってはデッキごと渡せばいいかとも思っているけどな」
『そっちに関しては、アタシはなんにも言えないけど、とりあえず目標には一歩前進ってところかしらね。・・・あ、ねえ。デッキを渡すなら、他のオシリスレッドの生徒たちにも一度試しで渡してみたら? デッキによって、その人の適性があるって、この前テレビで見たわよ』
ふむ・・・。
「デッキの適性、ね・・・。なるほど、試してみてもいいか」
十代に渡すならどのカードがいいか、デッキごとならどんなデッキがいいか。それをゆるゆると考えながらも、デュエルアカデミアの夜は静かに更けていく。
【→To Be continued...】
ユウカ『今日の最強カード! それは『竜騎士ブラック・マジシャン・ガール』ね!』
遊歌「このカードはドラゴン族モンスターと、ブラック・マジシャン・ガールとで融合するか、『ティマイオスの眼』の効果でのみ特殊召喚できるレベル7の融合モンスターだな。ステータスはそこそこだが、手札1枚をコストにフィールドの表側表示カード1枚を破壊することができるぞ。ちなみにこれは相手ターンにも使えるから、地味に1妨害としても機能する」
ユウカ『ブラック・マジシャン・ガールといえば、あの伝説級の決闘者、武藤遊戯のデッキにしか入っていないと言われてるほどのレアカードよ。そんなカードを融合素材に指定しているなんて、なんて贅沢なカードなのかしら。けどあれよね、融合素材が片方は名前で指定されてるってことは、融合素材の代わりになるモンスターでも出せるのよね?』
遊歌「いいや、このカードは指定されている融合素材モンスターを使った正規の融合召喚か、特定の魔法カードの効果でしか出せないんだ。だから、融合召喚するには正規の融合素材・・・つまりドラゴン族モンスターとブラック・マジシャン・ガールが必要になる」
ユウカ『それじゃあ、このカードだけあっても無意味ってことじゃない!』
遊歌「まあそうだな。ただ、このカードは一般に流通しているようなものでもないから、このカードだけ引き当てて、ブラマジガールは持ってないから観賞用に・・・なんてことにはならないだろう。そこだけは安心してくれ」
ユウカ『一般流通してないって・・・もうツッコまないわよ、あたしは・・・』