月日がユニコーンを平手打ちした直後、ユニコーンが虹色に光り出す。
「何!?」
「分からん……が、汚れた少女に叩かれると、なんか力が湧いて来るのだ。この光はなんなのだ」
「いや私に言われても知らない。怖い。あと汚れたとか言うな」
「でも今ならなんかやれそうな気がするのだ!」
ユニコーンは虹色に光る立髪を靡かせながら立ち上がり、更にその光を強く放った。
「本当に何?」
「汚れた少女よ、我の力を最大限に引き出して欲しい。皆を守る為に」
「皆を……」
月日が振り向くと、レジ子とミヒロとヒラケンと未鳩が口を開けたまま固まっている。
「な、なんか知らんがお前の汚れた力が必要らしい」
「なんかこう、汚れた力が反発して力を作り出すとか……そういうのなんじゃない? あたしは知らんけど」
「……救わなくても良いかもしれない」
「つっきー……助けて」
「くそ……! レジ子がいなければ全員道連れにしたのに!」
月日は非常に不満そうな顔でユニコーンに振り向き、大きく手を振りかぶった。
「さぁ、我のお尻を叩くのだ!!」
「もうどうとでもなれコナクソー!」
軽快かつ、豪快なお尻を叩く音が山に響く。
ユニコーンは眩い程の虹色の光を全身から放ち「痛い!」と悲鳴を上げた。
そして、彼は言う。
「汚れた少女よ、そなたの波動……しかと受け取ったぞ」
「良いから黙って行けや」
「ウフッ。よし、分かった! 任せるが良い!」
「なんで今笑った?」
ユニコーンは走り出した。その身体から発する光でまるで虹を描くように、化け物に突進する。
「じゃマヲ、スルなよ。けダモノがァ!!」
「うぉぉおおお!! なんか今の我、超凄いぞぉぉおおお!!」
そして、化け物を押し出し、その身体を浮かせ、ユニコーンは化け物を連れて空へと登り始めた。
「あのユニコーン……月日に叩かれて喜んで強くなったのか?」
「つっきー凄い……!」
「写真撮ろっと」
「ヒラケンあんた何してんのよ……」
ユニコーンはそのまま化け物を連れ、虹の彼方へと連れて行く。
空で何かが光って、暖かいのか冷たいのか分からないなんか温い空気が山に広がった。
「アイツ……」
月日は両手を握り、空を見る。
なんだかんだノリが最悪だったが、あの恐ろしい化け物を倒す為、ユニコーンは何度もダメージを受けていた。
「そんな──」
ソレに無理をさせて、あれ程の力を出したユニコーンは──
「──見てたか! 我の力! ガハハハハハ! これぞ聖なる神獣の力である」
──普通に帰ってきて、ドヤ顔を見せる。
「帰ってくんなあっち行けぇ!!」
「アーンッ」
月日の爽快な一撃が、山に響いた。
☆ ☆ ☆
「……で、アレは何だったの? 後アンタはなんなの?」
一同は牧場だった場所に馬車を返して、ユニコーンに問い掛ける。
化け物はどうやらユニコーンが消し飛ばしたらしい。
今この場所は安全だとか。
「よく分からんが、そこら辺どこにでもいる悪霊の類であるな」
「で、お前は」
「聖獣ユニコーンである」
ミヒロの質問にドヤ顔でそう答えるユニコーン。
隣でレジ子とヒラケンがスマホで写真を撮りまくっているが、どうもちゃんと写真に収まらないらしい。
ツチノコと同じUMAだとでもいうのだろうか。しかし、ツチノコは可愛かった。喋らないし。
「レジ子ねーちゃんの家で飼おうよ。で、今度ツチノコも捕まえてきてUMAパークを作る」
「ヒラケン……天才かも!」
「バカいうな。こんなの家に置いておけるか」
ツチノコはともかく、馬は馬の時点で難しい。しかも喋る。
「我輩は聖獣……故に、個人に付く事はないのである。まぁ……その、何だ? 汚れた少女がどうしてもというのなら、しばらく共に歩んでもやらんが」
「結構です。こっち見んな」
「ヒヒンッ、フ、フフ……」
「まぁ……月日の事は良いとして」
何故か懐かれている月日の事は一旦置いておき、ミヒロは未鳩に視線を向けた。
巻き込まれた側ではあるが、どちらかというと、そういう事に巻き込まれていたのは自分達である。
「お前……とりあえず、助かった。……けど、なんというか、その、アレだ」
「な、何?」
「もう遅いかもしれんが、俺達には関わらない方が良いぞ」
目を逸らしながら、ミヒロは未鳩にそんな事を言った。
夏祭りで生霊に出会ってから
勿論それは姫ともう一度出会う為、自分達が選んだ道だ。
けれど、それが分かっていて態々巻き込むのは違う気がする。
「まぁ……なんかよく分かんないけど。あたしを先に助けてくれたのは、佳ちゃんだし。……友達、だしね」
「みーちゃん……?」
「いや、だから、友達なんだから! そんなん気にしないって事! 別に毎日こんな目に遭ってる訳じゃないでしょ? そんな関わんない方がいいとか、寂しい事言わないでよ」
レジ子に抱き付きながら、未鳩はそう言った。
ミヒロとしては、特に気を遣った訳ではない。
けれど、友達が本当に少ないレジ子の事を、こんな事に巻き込まれているのが自分達のせいだと分かっても友達だと言う。ミヒロはソレが少しだけ嬉しかった。
「……未鳩、だったか。ほら、帰るぞ。レジ子、あとヒラケンも」
ミヒロはユニコーンに向けてスマホのカメラを向け続けるヒラケンを引っ張り、レジ子の手を引いて未鳩の名前を呼ぶ。
月日はそんな彼を見て、ミヒロが他人の名前を覚えるなんて珍しいと思いながら自分が放置されている事に気が付いた。
「ちょっと、置いてかないで」
「あ? ユニコーンとよろしくやってくのかと思って」
「ざけんな」
「つっきーの口が悪い……」
「気のせいだよ〜。怖くないよ〜」
「ふふん、ところで汚れた少女よ。我輩、今夜暇なのであるが予定は空いておるのか?」
「何平然と着いてこようとしてんのこの駄馬! 野に帰れ!」
「アッ……! なんだこの感覚は。我輩をこうも邪険に扱う者が居るとは! ゾクゾクする!」
「キモっ」
「おい月日、着いてくんな。変なのが寄ってくる」
「私が悪いってのかぁ!?」
騒ぎながら、月日はユニコーンを蹴飛ばして野に返す。
そういえば何をしにここに来たんだっけか。
そんな事を思いながら、騒いでいるミヒロ達の背後で、不思議と未鳩は笑顔が溢れた。
「変な奴ら」
なんだか、これから騒がしくなりそうである。
ちなみにユニコーンは涙を流しながら寂しそうな顔で森に歩いて行った。また会う事も、あるのかもしれない。