私より背が高くて、私より要領が良くて、私より社交的で、私のことを愛してくる義妹   作:的形みずき

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14.春に夏らしいことしてみた。

 四月十九日。

 つい先日まで「新学期が始まった」という認識だったのに、気付けば四月中旬も終わり頃。時が経つのは早いものだ……なんて感想はちょっぴりババ臭いか。

 とにかく、ほとんど授業をこなすだけだった一週間が終わって日曜日がきた。

 ……いのりちゃんは「待っててね、お姉」のあと、ちゃんと家で泣くこと以外、ほとんど関わってこなくなった。

 当然心配はある……けど、「お姉は待ってるだけで良いから」の一点張り。相談もしてくれない。

 やっぱり私には姉力が足りないのかなぁ、なんて云云悩みつつも、それを見せるとまた友達に心配されてしまうので、申し訳なく思いつつも今日のBBQを思いっきり楽しむ所存である。

 

 で。

 

「けーっきょく。けーっきょくなんだよね……」

「まぁまぁ。焼きそばは割と腕の見せ所みたいなとこあるじゃん?」

「ないよ……専門店以外誰が作ったって同じ味になるよ……」

 

 鉄板の上で焼きそばを躍らせる。

 けーっきょく私が料理担当になった。わかってたけどさ。しかも思ったより人数集まったからとんでもない量必要だし。わかってたけどさ!

 肉と魚も控えているから結構な火力でやっていて、それがめちゃくちゃ暑くて。

 

 アキと真美が両側から扇いでくれているけど、全然足りなくて。

 

 川の方ではここののが思いっきり飛び込んでいるのが見えるし、あれだけ嫌がっていた那奈が競泳水着を着てきていて──予備らしいけど──みんなに弄られているのが見えているし、さらに上流の方では浅野が釣りしているのが見えているし……。

 ぬああああ!

 なぜ私はいつもとやっていることが変わらないんだ! いや料理は好きだけど、それとこれとは!

 

「ユカ、はいあーん」

「ん……ほふ。……いや美味しいけど、ごはん食べる前に焼かないでよマシュマロ」

「えー? だってお腹空いたし」

「空きっぱらが一番のスパイスなんだってば」

「そんなのなくてもユカの料理は美味しいでしょ」

 

 ぐ。そ、そんなことはべつにべつに。

 ……いやだから、焼きそばなんて誰が作っても変わんないって。騙されるな私。

 

 まぁ。

 もうできるからいいけど。

 

 普通に作った焼きそばに、隠し味でウスターソースをひと回し。

 火から外した鉄板の上でもう一回混ぜて、はい完成。

 トングで豪快に一人分を掴んで紙皿に移し、青のりをまぶして。

 

「おーいできたよーみんなー」

 

 と声をかける。

 が。

 

「来やん」

「何弁? それ」

「若者関西弁」

 

 遊びに夢中で来ない皆。

 マスタード大量にいれといてやろうか。

 

「みんなー焼きそばできたよー! 早くしないとあきぱちが由佳ちのお腹舐めちゃうってー!」

「真美何言って──」

「なんですと!? あっきーそれは流石に不味いですぞ!」

「秋葉ちゃん、由佳ちゃんは渡さないよ」

「面白いから今やれ」

「大声で叫ぶのがそれなのもどうかと思うし、みんなが集まる言葉がそれなのもどうかと思うし……」

「ウチも由佳ちんのお腹舐めたい舐めたい」

「半分こしよー」

「それは怖くないか……?」

 

 ……いやホント、なんでみんな集まってきたのその文句で。

 声量でいったら私の方が大きかったのに。

 

 まぁ……冷める前に食べてもらえるならいいけどさ。

 で、じゃあ私も焼きそばへ……とはならない。

 このお腹空き魔人たちはあの量の焼きそばだけじゃ絶対に足りないので、肉と魚も焼いていく。

 

「はいユカあーん」

「流石に焼きそば?」

「もちろん」

「あーん」

 

 口に突っ込まれる焼きそば。うむ、美味い。

 

 さて、今回の肉と魚は未調理。当然ちゃんとした危険があるので結構じっくり目に焼く。

 たとえ──。

 

「母さん肉はまだか!!」

「肉ー! 肉ー!」

「もう焼けてるじゃんそれー!」

 

 みたいな喚く子供が出てきたとしても。

 

「ああ、小さくなっちゃった……」

「振原そろそろウチも限界」

「肉汁もったいなー!」

 

 みたいな何もわかってないやつらが出てきたとしても、私は手を止めてはいけない。

 全部みんなの胃を守るためだから。アタったら大変なんだから。

 

「そだ、かすみんなんか釣れた?」

「アユ、フナ、ウグイだな」

「占って付けて利用して」

「鮎と鮒と鯏の話してる?」

 

 アユとフナ、ウグイか。まぁアユは出すもの出した後なら王道に丸焼きでよくて、フナとウグイは死ぬほど泥臭いからちゃんと下処理しないとなぁ。

 お醤油どれくらい余ってたっけ。フナに関してはほぼ骨だから期待するだけ無駄という話もあるけど。

 

 と、肉が良い感じになってきた。

 念のため菜箸で掴んだ肉を食用ばさみでぶっつり切って、中身の色を確認。

 ……OKだね。

 

「肉が焼けたよー」

「来たー!」

「にくにくにくにくにくにく」

「アンタたちね……由佳にお礼言いなさいよ、一人で頑張ってくれてるんだから」

「ありがと由佳っち!」

「サンクス振原」

「由佳ちゃん愛してるー!」

 

 調子の良い奴らめ、なんて思いながら、にやけている私がいる。

 ……まぁその、私が好きでやっている料理でこうも喜んでくれる面子というのは……かけがえのないものっていうか。いや別に。なんていうか。は?

 

「振原、アユ四フナ二ウグイ二。調理」

「日本語喋れせめて。そこ、バケツかなんかに入れといて。持ってきた魚焼いたら焼いてあげるから」

「おう」

「あと想像してるより美味しくないと思うから、そこで文句言わないでね」

「楽しみにしてる」

 

 すんなっつの。

 

「由佳ち、タレと塩どっちがいい?」

「塩ー」

「はーい。あーん」

「あー」

 

 焼きそばではなく肉が運ばれる。んまい。

 

「二人もちゃんと食べなよー」

「食べてるから大丈夫」

「美味しいよ由佳ちー」

「ならいいけど」

 

 二人ともこのメンバーになると一歩引いて全体を見がちだからなぁ。

 いつもはそのポジションにいる浅野がああやって全体に混ざっているのも面白ポイントではあるんだけど。

 

「あきぱちー。はいあーん」

「ん。あーん。……じゃあマミ、あーん」

「わー」

 

 あの、私の目の前でなんかやめてもらえますかそういうの。

 いいじゃん自分たちで自分の食べれば。なんで食べさせ合いっこなんか……。

 

 ま、まさか二人はデキて……!?

 

「おい浅野、見ろ。振原がいつもの馬鹿な思い込みをしている顔をしているぞ」

「最近ずっとそうだよ。なにを思い込んでるか知らねーけどそろそろ自分が馬鹿だって気付いた方が良いよな」

「出たー。あさのんの正妻アピール! ふりはらんはあさのんのだけのものじゃないぞー!」

「そうだそうだー! かすみんは由佳っちを独占し過ぎだー!」

「金瀬、ののかB。覚悟は良いんだろうな」

「怒ったー!」

「半年後に新聞部で掲載されるテニス部怖い先輩ランキング堂々の一位を飾る予測が建てられてるあさのんの怒り顔だー!」

 

 ……ま、ないか。

 この二人に限ってそれはない。あとなんか余計なこと言ってるののかとあゆみの肉は小さめにしてやる。

 ああそうそう、今回のBBQに付き合ってくれた別クラスの友達。大野愛璃、金瀬あゆみ、小池准がここにはいる。愛璃ちゃんとあゆみは中学からの付き合いで、小池は浅野と同じく高校から。ついでに言うとこの大野愛璃がバイト三昧戦士……部活もやらずにバイト三昧をしている女子だ。自分のお金で東京へ上京したいのだとか。

 立派なことだ。進学校ではちょっと珍しいけど。

 

 とりあえず魚は焼けた。鮭だ。ホイル焼きにしたからホイルごと皿へ。

 で、次の魚に移って、それが終わったら川魚のターン。ミを出さないと臭いし危ないからね、焦らずしっかりやろう。

 

 

 フロートのウォーターベッドの上でうつ伏せになり、ぷかぷか浮く。

 

「お疲れ様だよ由佳ちゃん」

「愛璃……私をもっと労って……」

「あとで肩とか揉んであげようか」

「嬉しい……けど、肩に関しては愛璃の方が疲れてそうだしいいや……」

「なんで? 胸の話?」

「……普通にバイト頑張ってるからって意味だったんだけど気を遣うのやめた。揉めー」

「はいはい」

 

 四月に水着になる、というのもヘンな話だけど、まぁ他に誰もいないし、結構日差しあって暑いし、構わないだろう。

 泳げない……じゃない、犬かきしかできない私だけど、水の上にいることに関しては特に抵抗がない。小池なんかは泳げないからキャンピングチェアに座ってこっちを眺めているけど、特に退屈している様子はない。彼女には彼女のヒミツの趣味があるからだ。

 他はみんな泳いだりくつろいだりして……って、あれ。

 

「あれ、浅野は?」

「霞ちゃんは……釣りはやめてたはずだけど、どこだろ」

「まさか溺れてないよね」

「霞ちゃんに限ってそういうことは無いと思うけど」

 

 それは……まぁ、そうか。

 あいつ、ちゃんと泳げるはずだし。いやでも足攣ってとかならどれだけ泳げたって関係な──。

 

「よっこいせ」

「ひょぁぁあああっ!?」

「あ、いた霞ちゃんー」

 

 突如背中に落とされたぬるぬるしたもの。あまりに意識外過ぎておかしな声が出てしまう。

 

「ななな、なにやって! なにやっ!!! っていうかなに背中なに背中動いてる動いてる!!」

「落ち着け落ち着け。脅かしたのは悪かったって。でもほれ、小さいけどウナギだぞ」

「え、ウナギ? 食べれる? 売れる?」

「いやー、こいつは多分カニクイだから売れないし美味しくない。ただぬるぬるを楽しむもの」

「変なもの乗せるなぁ!」

 

 ひぃぃ、背中でぬたぬたがのたうち回ってる……。

 

「霞ちゃん取ってあげてー。あたしこういうの無理ー」

「意外だな。金瀬はこういう系平気だと思ってた」

「力込めたら死んじゃいそう系苦手ー」

「ああ……んじゃ取るから動くなよ振原」

「動いてないよ最初から……」

 

 ぺちゃ、ぺちゃ、ぺちゃ。

 私の背中でウナギが踊り、その所々に浅野の掌が当たる。

 あの?

 

「く……すばしっこいくせに、振原の背中から降りようとしねえ……!」

「気に入られたねー由佳ちゃん」

「嬉しくないー」

 

 別に「取って取って取ってー!!」みたいにはならないけど、普通に不快です。あのはやくしてくださいませんか。

 

「かくなる上は……!」

 

 あ、この浅野調子乗ってるな。

 そんな感じを気取った瞬間、太ももと首根っこを掴まれ──何を言う前に持ち上げられた。

 

 とぅるんと滑り落ちていくウナギ。いやいや全然それどころじゃないです。

 

「浅野。持ち上げたあとのこととか考えてた?」

「いや全然。──倒れるよ」

「警告が遅い!!」

 

 ざぶーん。

 浅野が倒れると同時に私も着水する。……いやあの割と痛かったよ? 水面に叩きつけられたみたいなもんだし。

 綺麗な川だからゴーグルとかつけなくていいのはありがたいけど、流石に目は開けられない。

 

「ぷは!」

「由佳ー助けにきたわー。秋葉から〝ナナ、ユカが邪知暴虐のスミに襲われてるからお願い〟って言われて」

「那奈ママー!!」

「ちょ、危ないから抱き着かないの!」

 

 競泳水着那奈に抱き着く。抱き着いてよじよじして背中に回る。

 

「……あなたなんかベタベタしてない?」

「浅野にウナギのまな板にされた」

「意味わかんないけど……ひゃあ!?」

 

 突然可愛らしい声をあげる那奈。何事かと水面を見ると、そこには見知ったシルエットが。

 

「気を付けて二人ともー。さっきのウナギ持った霞ちゃんが近付いてるー」

「愛璃ちょっと遅い!!」

「ちょ、な、いや! 足にぬるぬるしたのが……っていうか危ないから掴むのやめなさい! 蹴っちゃうでしょ!」

「聞こえてないと思うよー」

 

 浅野ってこういう時ほんとちょけるんだよなぁ、なんて他人事の感想を一つまみ。

 

 流石に息が保たなかったのだろう、魚影……もとい浅野が息継ぎのために浮き上がってくると、わなわな震える那奈が。

 

「っぷ、ふぅ。相変わらず鍛え上げられた良い脚を……ん?」

「霞。あなたっていつも安全圏にいるけれど、自分がやる以上はやられる覚悟も持っているのよね」

 

 浅野の腕を掴んで……反対の手で、なにやら水底の方を弄っているらしい那奈。

 その腕の拘束が一切動かせないことに気付いたのだろう、久しぶりに浅野が焦った顔をする。

 

「井俣、冗談じゃんか。冗談。な?」

「ええ、今から行うのも冗談だから、許してくれる。そうでしょ」

「もち……だけど、何をするつも──」

 

 どちゅ、と。

 ……那奈の手が、浅野の胸に突き刺さった。いや実際に貫通しているわけじゃないけど、明らかに揉みに行くルート。

 そしてそれは少し上の方へ辿り着いて……拳の握っていたものがリリースされる。

 ふつーに泥。泥が、浅野の胸元……水着の隙間へ入り込んでいくのがわかった。

 

「あー……井俣?」

「どうよ! 気持ち悪いでしょ!!」

「いやまぁ、気持ち悪いことは気持ち悪いけど……」

 

 一つ当然の話をするなら、ここは浅野の庭のようなものである。

 ロケーションもBBQセットも浅野が用意していて、彼女はこの近辺で十六年ちょっとを過ごしていて。

 だから。

 

「初めての経験じゃないからなぁ。過去もっと悲惨な場所に入ったこともあるし」

「……戦略的撤退!!」

「勿論逃がさない」

「あぅっ!」

 

 腕を掴まれ拘束される那奈。あの那奈さん、私を背負っているって忘れていませんか。あなた救世主ですよね。

 

「さて──井俣。振原を置いていけ。置いていかないと、お前の水着の中にウナギ入れる」

「献上するわ!」

「裏切り者!!」

 

 受け渡される。ぬあー。

 薄情者はそのまま離れていった。なんだよー水着の中にウナギくらいいいだろー。

 

「死ぬほどヤだと思うー。だからあたしも距離取るねー」

「愛璃まで!!」

 

 マズい、このままではすーぱーぷりちーきゅーとな振原由佳ちゃんが邪知暴虐の魔王浅野霞に取って食われてしまう。

 みんな、ペンライトを振って由佳ちゃんを応援しよう!!

 

 べちょ、と。

 再度持ち上げられて、さっきまでひっくり返っていたウォーターベッドの上に戻された。

 

「たすけてーたべられるー」

「食べる身がないから食べないよ」

「殴るぞこら」

「なんて冗談は措いて擱いて……な、振原」

「なに」

 

 優しい笑みを浮かべる浅野。……え、ほんとなに。

 

「今なんも考えずに笑えてるけど、的形関連はちっと進展したって見ていいのか?」

「……私の方からは何も。でも的形さんが……なんか一念発起したみたいで、気になるほど絡んでくることはなくなったかな」

「そっか。そりゃよかった」

 

 よせやい。

 そういうのは後でメッセで聞けよ。

 

 顔熱いなぁもう。

 

「愛璃と那奈追い払ったのはそのため?」

「そ。気に入らなかった?」

「別にいいけど、あとでなんか埋め合わせしなよ。気付いてるよあの二人絶対」

「ウチがすんの?」

「私もするから」

 

 そんな。

 得難い親友との一幕──。

 

 

 で終わればどれほど良かったか。

 

「それじゃあ振原。泳ぎの練習をするぞ」

「へ?」

「もちろん今のままでもいいという意見は数多くあったけど、ウチとしては高校生にもなって犬かきオンリーなのはどうかと思う」

「本音は?」

「わたわたしてる振原が観たい。これは小池からのリクエストでもある」

「……浅野。手で作る水鉄砲あるじゃん」

「ああ」

「小池のとこまで飛ばせる? それやってくれたら練習する」

「よしきた」

 

 拳を丸めた浅野。その手の隙間から飛び出た一条が、キャンピングチェアで私達全員をニヤニヤ見ていたアホ眼鏡を本体ごと濡らす。

 

「なにしてくれ──おい浅野ォ!!」

「すまーん手が滑ったー」

「どう手が滑ったら……出会えい出会えい皆の者! 浅野の水着奪ってきたやつにアイス一本奢る!!」

「ちょ、馬鹿やりす──緊急回避!!」

 

 ウォーターベッドの横から浅野が消える。代わりに現れたのはここのの姉妹。

 

「ののちゃん! 私はぱんつやる!」

「おうけぃここちゃん、オパーイは任せろ」

 

 おかしい。この二人が遊んでいた場所、少なくとも五メートルは離れていたはずだけど、今の一瞬で詰められるものなのか。

 さらに続々と集まってくる皆。おー。

 

 泳ぎの練習は有耶無耶になったけど、こうやって浅野が責められてる図、いいな。

 いけー。やれー。

 

「わぶっ!?」

 

 とかって観戦してたら私と小池にそれぞれ一射ずつ水鉄砲が飛ぶ。

 ……よかろう。犬かきの速さを見くびったことを後悔するがいい──。

 

 

 十人で円形になって、浅野の家の大広間でぐでーっとなる。

 ち、ちかれた……。

 

「じゅんじゅんこれは全員分にアイスね……」

「結局誰も取ってこれなかったんだ、誰にもやらん」

「覚えておけよ小池……必ず恥かかせてやるからな……」

 

 ここまで疲れる予定ではなかったから、超グロッキー。

 バスが来るまでの待ち時間を浅野の家で過ごさせてもらうことになったけど、みんな指一本動かせない様子。小池だけは大丈夫そうだけど暑さにやられたとかなんとか。

 

 けど。

 

「楽しかったぁ」

「ねー。これはゴールデンウイークと夏休みが楽しみ」

「キャンセルになったけどカラオケもいきたいー」

「流れるプールとかもよくない?」

「この時期やってんのかな……」

「ふりはらんケーキ作ってーホールでー」

「材料費出してくれるなら良いよ」

「まじでー! やったー!」

「まみもみー。まみもみのまみもみもみもみしていいー?」

「いいよー」

 

 雑談の中に当然のように混じるセクハラ。一切動じない真美。

 

 ぴろん、と。

 ケータイの通知音が鳴った。私のスマホだ。

 

「浅野ー。スマホとってー」

「はいはい……。……」

「浅野ー?」

 

 荷物に一番近い浅野に声をかける……も、なぜか途中で止まってしまう浅野。何事かと思って首だけそっちを向けば、何やら真剣な顔をして画面を見つめる彼女の姿が。

 

「ヒトのケータイ勝手に見んなー」

「……メッセ公式から、新しい水着の宣伝のお知らせ。この夏はオトコのコの目線をぐっと集めるV字水着はいかがでしょうか」

「ならぬ!! 由佳っちにそんな大人っぽいのは似合わぬ!」

「スミ、公式だろうと関係ないから、ブロックしちゃって」

「あさのんやれー!」

 

 酷い。別に男子の視線は要らないしV字なんて着ないけど、少しくらい大人っぽくしたっていいのに。

 というか、絶対そんな内容じゃなかったよね。

 

 ……なにか隠したな。

 

「ってか、そろそろバスくるぞお前ら。ほら起き上がれ。これ逃すと二時間後だぞ」

「へーい」

 

 のそのそと起き上がっていく皆と、ずっと顔の硬い浅野。

 彼女は誰にも見えないよう、こっそりとスマホを渡してきた。

 そこまですること……? なんて思いつつ、メッセを開いて最新のものを見れば。

 

 ──〝お姉。茜さんの居場所わかったよ〟

 

 という、簡素な一文が。

 思わずケータイを取り落としそうになるのをなんとか堪える。

 

「由佳ち?」

「あ、ううん。びっくりするほどえっちな水着で固まっちゃっただけ」

「そんなに!? 見せて見せて!!」

「もうブロックしちゃったから見えないよ。さ、行こ」

「気になるならあとでメッセ送ってやるよ中曽根」

「もらうもらう!!」

 

 助け舟ありがとう。

 

 ……心臓がどくどく鳴っている。

 いのりちゃん……「待っててね」って……そういう意味だったんだ。

 

 やめて……ほしかったかな。

 怖いよ……。

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