私より背が高くて、私より要領が良くて、私より社交的で、私のことを愛してくる義妹   作:的形みずき

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16.妹の本音を引き出してみた。

「居場所は突き止めたし、会ってきた。けどお姉にその場所は教えない。お姉が知りたくなったらあたしに頼み込んで」

 

 不安な気持ちいっぱいで帰った私を待っていたのはそんな言葉だった。

 ──正直。

 ほっとした。強制的に……引き合わせられるんじゃないか、って。そう思っていたから。

 

「安堵、なんだ。これを聞いて浮かべる感情」

「……いのりちゃんが会ったのに、私に会わせない選択肢が取れる時点で……お母さんは、少なくとも自分の意思では私に会いにきたくない、ってことでしょ。それが……どういう理由でかはわからないけど、そう思っているお母さんと会うのは……多分、私もお母さんも、どっちもつらいから」

「……」

「どういう意図があってとか、いのりちゃん自身にどんな得があってとか……色々気にはなるけど」

 

 でも。

 

「悪ぶらなくていいよ。私を心配する気持ちが伝わってきてる。いのりちゃんは……やり方が乱暴っていうか、知らない方法がいくつかあるって感じはするけど、でも、優しいからさ」

「なにそれ。……結局不透明」

「不透明?」

「なんでもない」

 

 ぷい、と顔を背け、明らかに拗ねてしまういのりちゃん。

 う、うーん。私なにかまた変なことを……いやまたもなにもそこまで多く言ってないはずだけど。

 

 それより。

 

「お母さんとあってみて、どうだった? 何か思った?」

「……。……不思議な雰囲気の人だった。落ち着いた空気を感じるのに……言葉は鋭利っていうか、トゲトゲはしてないけど、こっちが必死に守ってるもの全部通り抜けてくるみたいな」

「あ~、やっぱり初対面だとそう感じるんだ」

「お姉は違うの?」

「鋭い所は私もそう思うけど、落ち着いた雰囲気っていうのはうーん。お母さんはなんていうか、結構おちゃめだし、お転婆だし……」

 

 かわいい女の子になるための目標その六。……えーと、由佳はそう、こういう、海とか山とか、人がだーれもいないと判断した場所であっても、テンション上げて叫んじゃったりしないようにね? 大抵誰か居て、結果的に恥ずかしい思いをするのは由佳になるから……。

 

 以前家族で海に行った時、視認できる限りでは確かに誰もいなかったからだろう、お母さんは車から出るなり砂浜へ走って、そして「海だー!!」と叫んだ。

 お父さんは慣れたこととして頬を掻くだけだったし、私もまぁ日常生活でたびたびお母さんの子供っぽいところを目にするからノーリアクションだったんだけど、駐車場の車の中で涼んでいたらしい別の家族がウィンドウを開けて何事かってびっくりした目をお母さんに向けていた……そんなワンシーンがあった。

 彼女はそれはもう赤面しながら帰ってきて、上述の目標を私に諭したのである。うん。

 

「……」

「そんな感じだったから、落ち着いた雰囲気って言われると……誰? ってなる。でも浅野も他の友達も、初めて会ったあとは〝落ち着いた雰囲気の人だな〟とか言うから……猫を被るのが上手いというか」

「……」

「あ……あれ、いのりちゃん?」

「いや……初めて、お姉……茜さんのこと話してくれたな、って。それも……楽しそうに」

 

 ああ。

 そ……っか。そうだ、私、お母さんの思い出すら……話したがらなかったんだっけ。

 

 もしかしたら。

 私の中で、少しだけ……いのりちゃんが、身内のラインへ近付いてきた、のかも。

 勝手なことだし、きっかけも上手く掴めないけど。

 

 前に聞かれた「浅野と打ち解けた理由」も曖昧だったし、私ってやっぱりこうなんだろうな。

 出来事を境にパキっと変わるんじゃなくて。

 少しずつ絆されて、ぬるっと変わるんだ。

 

「お母さんとの思い出は、嫌なこととして封印しておく必要がないから……かな」

 

 口に出して。それが脳を通らない言葉で……だから、反芻して。

 自分の言葉に自分で納得する。

 そうかもしれない、と。

 

「意固地になっててさ。……お母さんのことを話すと、それが、風船の空気みたいに、どんどん漏れていって……小さくなっちゃう気がして、話すの嫌だった。でも……違ったみたい」

 

 今、話してみて。

 そして……お母さんが近くにいると知って。

 

 会いたくなった。

 心が、温かいものに侵食されて……思い出が溢れてくる。

 

「……いのりちゃん」

「う……うん。なに、お姉」

「お母さんは……私に会いたくないって、言ったんだよね?」

「いや……その」

「何か事情があって……だよね。だって、いのりちゃんが落ち着いた雰囲気、なんて言うんだもん」

 

 お母さんだって人間だ。

 もしお父さんと喧嘩別れをしたのなら、再婚相手の娘、なんてものが訪れてきた暁には、落ち着いてなんかいられないだろう。

 それが……いのりちゃんみたいな、他人の敵意に敏感な子でも、落ち着いた雰囲気、なんて言えるくらいなら。

 

「お父さんも、いのりちゃんも……私のためを想って、お母さんの居場所を隠してる。……なら私は、待つべき、だよね。お母さんが……私に会いたくなるまで」

「……」

「そんな日が来るかはわからないけど、……そっか。それなら」

 

 いつまでもいつまでも……お母さんがいなくなったことを引き摺って、新しい家族との蟠りを抱えたままじゃ、「かわいい女の子になるための目標」なんて達成できない。

 いつか……いつかお母さんと再会した時に、笑って今の近況を話せるくらいにはなりたい。

 その時はまた大泣きしてしまうだろうし、会えなかった恨み言をぶつけてしまうかもしれないけれど。

 

「もう少し頑張って──」

「違う」

「え?」

 

 頑張って歩み寄ってみる。

 そう伝えようとしたら、いのりちゃんは……苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 

「なに……なんで? お姉は……お姉のこと、よくわかんない。わかってないの? あたしがやってることってサイテーだよ。お姉がずっとずっと会いたがってて、でもまだ心の準備ができてない、って言ってて、それ全部知ってて……全部知ってて、その上で勝手に会いにいって、あんな恐怖を煽るメッセいれておいて、帰ってきたら会わせないとか言って」

 

 今まで表面張力で保っていた水が溢れるように。

 いのりちゃんの口から、とめどない言葉が滴り落ちる。

 

「意地悪してるんだよ? わかんないの? お姉の邪魔して、お姉の日常壊して、お姉が嫌がること全部やって……今回なんかライン越えじゃん! お姉の絶対に踏み込んでほしくないとこじゃん!」

「それは……私が幼稚だっただけだし」

「幼稚? 何言ってんの? 家族のことでしょ? あたしはお父さんのことほとんど覚えてないから……今更なに言われたってそこまで傷つかないけど、たった七か月前のことで、まだ傷が癒えてなくて、だったらもっと怒ってよ! 最初の時くらい怒りなよ! おかしいよお姉!」

「でも……これから家族になるわけだし、いつまでもいつまでも、っていうのは」

「そだよ、これからなの! まだなの! まだ二週間くらいしか一緒にいない新しい家族で、まだ……ママとパパの仲がどっかで破綻したら、なれないかもしれない家族なの!!」

 

 ──……それは、そうだ。

 まだ二人は籍を入れていない。

 二人の仲に亀裂が入ったら。あるいは……最後の最後まで、私が拒否し続ければ。

 

 壊れてしまう、家族。

 

「嫌ってほしいの、いのりちゃん」

「っ!」

「いのりちゃんのことを、私が嫌ったら……それで満足? 愛されたくてこういうことやってたんじゃないの?」

「……それはそうだけど、お姉には対しては、違う。……あたしはお姉の本音がみたい。お姉の感情は……他の人と違って、不透明で、怖い。何を言われても、優しくされても拒絶されても……底が見えないから、怖いの」

 

 う。

 え、そんなことを思われていたんですか私。

 一気に現実に引き戻されたというか。……こ、これでも友達の間では「振原はわかりやすい」「由佳ちってわかりやすいよねー」で通ってるんだけど……いやそれも嫌なんだけど。

 

「お姉の感情には、理由が無い」

「そ……そんなものじゃない? 人って」

「そんなことない。みんな理由があるから感情を出す。あたしだってそうだし、パパもママも、浅野先輩も、学校の先生も友達も、みんなそう。でもお姉だけは……何もないところから感情が発生してるみたい。上辺だけ……っていうと違うけど、中層が見えなくて……やっぱり怖い」

 

 ど……どうしよう。

 嫌ってほしいって言われたら、それは嫌だって返すつもりだった。

 嫌ってほしいわけじゃないって言ってきたら、じゃあ何も問題ないねって言うつもりだった。

 

 感情に理由が無い、は……なんて言えば良いんだ。

 お、怒るべき?

 

「えっと……じゃあ、私はどうしたらいいのかな。いのりちゃんのお姉ちゃんになるために頑張ろうって思ったけど……それも嫌?」

「……嫌ってことは、ないけど」

 

 ん、んー。

 それは嫌じゃないんだ。……わからないなぁ、年下の子。

 

 まぁこれを面倒臭いじゃなくて可愛らしいと思えるあたり、少しは私も姉である、のかな?

 ……世の中の姉妹はどうなんだろう。よく聞くのはめちゃくちゃ喧嘩するって話だけど、それは距離が近すぎるから、とかじゃないのかな。

 

「じゃあ、色々試してみようよ。私も頑張るからさ。二人の理想の姉妹がどこなのかはわからないし、私も……えーと、感情の理由? っていうのをつけられるよう努力するからさ。……あ、そうだ。だったらいのりちゃんにも……私から要求があります」

「なに」

「それ。演技のさ、私を愛して愛して、だから愛してくれるよね? ないのりちゃんは、今後一切、家の中では禁止! ……お父さんにはまだ無理かもしれないけどさ。私には素のいのりちゃんになること」

「今でも充分素だけど」

「嘘だ。だったら嫌がらせと称して抱き着いてきたり、大好きとか言ってきたりしないでしょ」

「……れは。……けど」

「なに?」

「なんでもない。……わかった。お姉の前でだけは、ふつーのあたしでいる」

 

 よし。

 そうしてくれたら、私も色々やりやすい。

 

 なら早速。

 

「いのりちゃん。──嫌いな食べ物は、なに」

「……ベリー系と、柑橘系の酸っぱいやつ。ていうか、フルーツの酸味全部無理」

 

 おお。しおりさんから聞いたもの以外にも。

 

「酢の物とかは平気?」

「それは平気。あ、でも……もずくみたいに酸っぱいだけのやつは苦手かも」

「成程ね……。逆に甘いものはどう? 好き?」

「人並みには? スイーツ食べにいきた~い、みたいなのは、実はあんまり好きじゃない。友達との付き合いでよく行くけど……太るし」

「好きな食べ物は?」

「……。ハンバーグ、カレー、ラーメン、焼きそば、揚げ物……あとは、和菓子」

 

 なるほど見事に男の子が好きなもの。

 揚げ物とかの方がよっぽど太ると思うよ、なんて言葉は絶対に出さないとして、しかし和菓子か。

 

 いくつかソラで作れるのはあるけど……レパートリーを増やすのは、有りだな。

 

「お姉は?」

「ん?」

「お姉の好きなもの、苦手なもの」

「……んー」

 

 これだけ聞いておいて、なんだけど。

 私には食べ物の好き嫌いとかほとんどない。あ、でも。

 

「激辛はちょっと苦手」

「ちょっとなんだ」

「うん。カレーなら五辛くらいまでなら普通に食べられるよ」

「あの五辛?」

「あの五辛」

 

 多少ひきつった頬になるいのりちゃん。六以上がとんでもないことを知らないからそういう反応になるんだ。

 

「好きな……食べ物は?」

「特別これ、っていうのはないけど、お菓子作りが趣味だったから、スイーツは一通り好きかも」

「……前も言ってたけど、お姉ってどれくらいお菓子作れるの? お店に出せるレベル?」

「スイーツって理科の実験と同じだから、レシピから外れなければ誰だって商品レベルのは作れるよ。その先の創作性がプロじゃないと厳しいだけ。今はどんなレシピもネットにあるからね。だから……まぁ、売れはしないけど、美味しいっていってもらえる自信はある」

 

 あとはまぁ、どれだけ見た目を気にできるかの話。

 パティシエと呼ばれる人たちは技術の鬼だけど、素人の作ったケーキとパティシエの作ったケーキでそこまで味が変わるかっていったらそんなことない。

 それでも優劣があるというのなら、それは劣の方が低いだけだと思う。なんだかんだ言って「完全にレシピを模倣する」って結構難しいので。

 

 ご飯になってくるとまた色々違う。どっちが優れているとかどっちが劣っているとかの話じゃなくて、調理器具が違うのが一番大きいと思う。

 スイーツに使う器具は基本誰が使っても大きく道を逸れることができない器具ばかりだからね。

 

「和菓子も今度作ってあげる」

「……ん」

 

 あとは……そうだな。

 

「好きな色とか、キャラクターとか、ない?」

「ある……けど、なにお姉。プレゼントでもしようとしてるの?」

「いつかしようって思った時に知らないと困るし、直前直後に聞いたら怪しいじゃん」

「別にサプライズにしなければ良い話だと思うけど……。……好きな色は、まぁ、パステルカラーかな。主張が激しいのはあんまり好きじゃない。キャラは……そういうのは自分で買うからいい」

「ふむふむ。あ、そうだ。誕生日はいつ?」

「九月二十日。……お姉は五月だよね」

「え、なんで知ってるの」

「そこのカレンダーに書いてあった」

「え、なんで勝手に見てるの」

「この前圧し潰した時ついでに物色した」

 

 ん……ん?

 もしかしてこの子、愛し愛され以前に……倫理観がちょっと?

 

「お姉は記念日とか大切にするタイプ。友達の誕生日全部に○してあったし、その他の記念日も全部書いてあった。どーせスマホにも入れてるだろうに、マメだよね」

「いやぁ……スマホだと特別感が薄れるっていうか。……じゃなくて、人の私物を勝手に見るな」

「はぁい。……お姉は見かけによらず、実はフリフリの服を何着か持ってて、友達に会わないような遠出をする時だけ着る……みたいなのも知ってるよ」

「いやそんなことはないけど……?」

「ちぇ。カマかけだったのに本当にそんなことはなかったか。動揺してボロを出してくれるかと思ったのに」

「ふむ? やけに具体的なカマかけだけど、心当たり……ううん、実体験かな? 実はそれ、いのりちゃんだったりして」

「……。……違うし」

 

 わかりやすい。

 へー。

 へぇ~!

 

「うわ、その顔ちょっとどころじゃなくウザい。写真撮っていい? お姉煽る時にこれ使う」

「まず煽るな」

 

 しかし、フリフリ系の服か。

 へぇ~~~! ギャルっぽいのは演技の一環だったりするのかなぁ~~~!!

 

「てい」

「にゅぐっ!?」

 

 顔を掴まれた。パーで。

 そのまま抱き寄せられて、持ち上げられる。ちょ、ちょーい?

 愛し愛されの演技は禁止ですよー?

 

「ご飯作るまであと三十分くらいだよね。──じゃあ、その間反省して」

「なに──へぶ!?」

 

 ようやく放されたと思ったら寝転がされて、さらに何かを被せられる。

 

 物凄い密着感。ぴったりとくっついてくる布。

 あと……その、後頭部や首筋にあたる……ふくらみ。

 

「お姉、捕獲完了」

「あの、えっと、これって」

「ん、暴れないでお姉。あたしの服破けちゃう」

 

 二人羽織りならぬ二人羽檻ですか。

 いやあのこれ、服を伸ばさないようにって思うと抜けられない。足は完全にホールドされてるし、抱きしめられていて思うように動けないし。

 

「演技禁止、演技禁止ー!」

「演技してないからいいでしょ。ああお姉、だから暴れないでって。服伸びちゃうし、くすぐったい。……まぁ猫が頭擦りつけてきてるみたいでカワイーけど」

 

 演技禁止って、言葉だけが演技じゃありませんよ。

 言動がですよいのりさん。

 

「お姉ちゃんになってくれるんでしょ? 妹からの抱擁くらいなんなく受け止めないと。世の中の姉妹はこれくらいくっつくし、妹に抱きしめられて暴れるとかあり得ないから」

「絶対嘘絶対嘘」

「ウソじゃないって。あたしの友達にもお姉ちゃんいるコいるけど、高校上がった今でも一緒にお風呂入るらしいよ」

「そ……それはその子の家が特別なだけじゃ」

「なんでそうだって言えるの? じゃあお姉は他の家の姉妹のこと把握してるの?」

「そんなことはない……けど」

「それに、あたしたちだって充分特別じゃん。仮にあの子の家が特別だったとして、じゃあ特別な関係のあたしたちのお手本がその家でもいいでしょ」

 

 とんでもないすり替え論法だ。

 けど、私が通常の姉妹を知らないのも事実……だけど! やっぱりこれはおかしい……おかしいはず。

 浅野に聞いてみる? なんて? ……お兄さんの服の中に入ることある? って? ……流石に殺されるんじゃないだろうか。

 

「それに、さ」

 

 ぎゅう、と。

 さらに強く抱きしめられ……っていうか。

 

「初めて会ったとき、お姉あたしの胸凝視してたよね。えへへ、お姉はちっちゃいけど、あたしのすごいでしょ。着痩せするから学校の男子にはそこまで気付かれてなくてさ。……揉んでくる友達にはバレてるんだけど」

「ちっちゃいって、別に高校生なら普通サイズだし!」

「ほら……あたしの胸に押し当ててあげる。どう? 満たされる?」

「怒りが湧く」

「そんなこと言って、さっきまで暴れてたのに力抜けてんじゃん。リラックスしてる」

「……胸とか関係なく、人肌に抱きしめられたら誰だってリラックスしますぅー」

「ああ、暖かいの好きだもんねお姉。じゃあ今日からさ、勉強終わったあと、一緒に寝ない? 抱きしめたまま寝てあげる」

「大好き大好き言って本音隠すの禁止って言ったはずだけどー?」

「大好きだよ、お姉。愛してる。ずくずくに溶かしたいくらい」

 

 それは愛しているに対して正しいオノマトペなんですか?

 

 あと……まぁ暴れるのをやめたのは、どうしようもないくらいがっちりホールドされているからだ。

 最近の経験則で理解した。私じゃいのりちゃんの腕力に勝てない。腕力のためだけに部活に入ろうかと思うほどには勝てない。

 

 ──その時振原由佳に天啓走る。

 

 ぐるり。

 

「あ、ちょっと服の中で回ったら──ひゃ!?」

 

 掌と同じだ。

 どうだ──嫌だろう、お腹を舐められるのは!!

 

「ちょちょ、お姉、それはまだ早いって!」

「……? まだってなに?」

「はぁ!? ……じゃあ何を思ってそれやったの?」

「なにって……驚いて放してくれるかなーって。それ以外にある?」

「……。……こういうこと、他の子にしてたりしないよね。友達とか」

「友達はこういうことしてこないからね。一部除いてみんな大人だし」

 

 除いたのはもちろんここののだけど。

 

「にしては……浅野先輩、ちょっと過保護気味だったけど。まさかお姉が気にも留めてないだけで……」

「それで、どうするいのりちゃん。放してくれないならもっと舐めるぞ」

「勝手にすれば? 舐められても別に……嫌じゃないし」

「ふ──今間があった! 本当は嫌なんだろう!」

「……お姉ってなんで時々死ぬほど馬鹿になるの?」

「なにをう!?」

 

 勉強は……まぁ頑張らないとできないけど、馬鹿って言われる程じゃないが!?

 というか馬鹿はそっちだろ! ヘンな生き方しかできないくせに! もっと本当の馬鹿になって幸せに生きろ!

 

「ああ……舐めるならおっぱい吸う? ママが恋しいんだもんね。いいよ、ばぶちゃん」

「そういう弄りなら嫌われるかも? とか思って挟んだでしょ、それ。お見通しだから」

「……」

 

 ふん、言ったでしょ、操り人形にはなれない、って。

 ライン越えならいのりちゃん自らが言った通りもうされてる。だから今更だよ。

 それで君を嫌うのなら、もう、会話なんてしてないから。

 

「……お姉。そういうところが無ければ、大好きなのに」

「はいはい聞き飽きたよそれ」

「ホントだから。……今は形だけでいいけどさ」

 

 ぶちゅ、と。

 舌を突き出し、どこを舐めてやろうかと思っていた私の頭が強く抱きしめられ……えー、舌をですね、肌と歯の間にですね。

 

 因果応報って、はい。その通りでございます。

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