私より背が高くて、私より要領が良くて、私より社交的で、私のことを愛してくる義妹   作:的形みずき

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18.みんなの兄妹姉弟事情を聞いてみた。

 四月二十一日。

 最早習慣化している早起き。朝ご飯、今日はテイストを変えてフレンチトーストにしておいた。朝に摂取する糖分はいいぞ。

 それで、これまたいつも通りになりつつあるけど、真美と合流して。

 

「──あ、やば」

「どしたの?」

「宿題忘れた。……取りに行って間に合うかな」

「HRは間に合うと思うけど、朝練は……」

「……猛ダッシュするから、ごめん由佳ち、弓袋(コレ)重いけど」

「いいよ、持ってってあげる」

「ホントにありがと!」

「弓道場に届けるねー」

「お願い~っ!」

 

 弓の袋──筒だと思ってたけど袋なんだ──を受け取る。あ、ほんとだ結構重い。

 ぴゅーんと走っていった真美を見送って、それをしっかり背負い直す。ぶつけたり落としたりしたらコトだからね。

 

 ……間に合う間に合わないの可否は措いて擱いて、どの道弓だけ先に届けられたらお叱り対象な気がするけど。

 

 その後特に何事もなく学校へ着いて、陸上部の元気な掛け声を聞きながら歩く。

 先日ぶりの弓道場。まだ誰も来ていないらしいそこへ入るのは憚られたので、となりの運動部会議室の戸をノックする。

 中から「入っていいぞ」の声。失礼します、と一声かけて、戸を開ける。

 

「ん……ん、振原?」

「おはようございます、増田先生」

「ああ、おはよう。……今日はどうした。もう校舎の方も開いていると思うが」

「真美が忘れ物取りに一旦家へ帰ったんで、これ預かってて」

 

 会議室の戸は背が低くて弓をぶつけそうだから、そこに入ることなく袋を見せる。

 

「……弛んでいるなぁ」

「朝練に間に合うよう全力ダッシュしてるみたいなので、大目に見てあげてくれたりは……」

「中曽根の態度次第だな。百歩譲って物忘れは仕方がない。誰だってやる。特にこの時期は一番気が緩みやすい。……が、自分の弓を親友とはいえ他者に預け、運ばせる、というのが……弓道部として非常によろしくない」

 

 ああ……マイ弓は自分の命みたいに扱え、とかそういう教えがあったりするのかな。

 

「なんにせよ、重かっただろう。ありがとう。預かっておくよ」

「はい、お願いします」

 

 弓を受け渡し、それでは失礼しました、と言って会釈をして、会議室を後にした。

 ごめん真美。減刑は無理そう……。

 

 

 で? と。

 浅野しかいない教室で、問いをかけられる。……那奈は今日まだみたいだ。毎日毎日会いにいくってわけでもないんだろう。

 

「的形の件。茜さんの件。どうなったよ」

「……意外。浅野、ちゃんと踏み込んでくるんだ」

「いつもなら静観するけどさ。あんなメッセ見た後だし、ウチはお前らに結構関わってるし……ま、気になるからっての六割、心配三割かな」

「残り一割は?」

「教えない。で?」

 

 残り一割気になるんだけど。

 ……まぁ。

 

「お母さんの居場所はわかったみたい。だけど教えてくれないんだって」

「なんでだよ」

「なんでだろうね。……ただ……お母さんもいのりちゃんに協力してるみたいだから、のっぴきならない事情があるんだと思う。それこそ、いのりちゃんだけじゃどうにもならない事情が」

 

 そう考えたら、彼女を責める気になんかなれない。

 どういう事情があるのか、までの想像力は働かないけど、事情があるから教えられないんだ、はわかるからね。

 なら……あの時克己したように、いつか再会して話す土産話が、より華々しいものになるようにした方が良い。

 

「ふぅん。……ま、丸く収まったんならいいよ。ウチの杞憂か」

「心配してくれてありがとね」

「別に。……で、的形からのからかい? 好き好き大好き言ってくるのは直ったのか」

「……それが、なんか、エスカレートしてるっていうか」

 

 昨夜もすごかった。なんだか甘い声で「お姉ぇ~」とか言ってしな垂れかかってきて、勉強をしている時も後ろからお腹をもみもみしてきて、お風呂にも入ってきて、寝る時も一緒に寝ようとしてきたから虫の飾り物で無理矢理どかして安眠を得て……と。

 学ばない子だなぁ、なんて思ったり。いつもの要領の良さはどこへやったんだか。

 

「お前、それ……」

「なに?」

「いや……いや、そうか。……あー、なるほどな……。そういう……ふーん」

「え、本当になに」

 

 気のせいでなければ、ちょっとだけ不機嫌になった浅野。

 ……私の対応が悪かったりするのかな、これ。好きにさせてるのが悪いとか? でもお姉ちゃんなんだし、妹が甘えてくるのは受け入れてあげないと。

 

「振原って、なんつーか……女運無いよな」

「言うに事を欠いてそれですか」

「前に告ってきた先輩ってのもそうだし、的形もそうだし。お前を困らせるやつばっかじゃん、お前を好きになるの」

「あの先輩はともかく、いのりちゃんは好きになったっていうかそうせざるを得ないっていうか」

「……あー。そうか、お前超思い込み妄想激ヤバ女だったな」

「突然の罵倒に驚きを隠せない」

 

 え、今なんで私罵られたの。

 ……あの先輩からの告白も思い込みってこと? 実はアレ告白なんかじゃなかったってこと?

 

「あ、そうだ。浅野のそれが私達と同じとは言わないけどさ。妹ってどんな感じなの?」

「どんな、って……は?」

「いや、私達どっちも一人っ子だからさ、わかんないんだよね。姉妹のスタンダード」

「あー……。……あー。いや……ウチも別に妹妹してるワケじゃないからなぁ。兄貴があんなだし」

「でも中学まではお兄さんのこと好きだったんでしょ? 兄ラブ妹だったんでしょ?」

「時々ぶん殴られたいってアピールしてくるのなんなの?」

 

 えーだって気になるじゃーん。

 普通に世の中の兄妹のスタンダードを聞きたい半分、妹妹していたらしい浅野を知りたい半分。

 

 浅野は……はぁ、と溜息を吐いて、スマホを漁り始める。

 そして、その写真を見せてくれた。

 

 どこかの遊園地らしき場所の写真だ。

 中学校の制服だろうものに身を包んだ、満面の笑みをした幼い浅野。顔の横でピースをして、見ているだけで楽しい気分になる。

 その隣で柔和な笑みを浮かべているお兄さん。相変わらずのイケメン。撮っているのがお兄さんであるようで、けれど写真の中央にいるのは浅野で。

 

「こうやって……休日、二人で遊園地デート行くくらいには仲良かったよ。その頃からウチはギャルだったけどさ、兄貴の前では……なんか、多分、普通の女子だった……気がする」

「えこれ可愛い。ちょうだいこれデータちょうだい」

「絶対嫌」

「えー。……その頃なんて呼んでたの? 兄貴、じゃないでしょ絶対」

「人前では兄貴だったけど……まぁ、家では、……。……お兄ちゃん、って呼んでたな」

「かわいい!! ちょあ、筆箱で殴るのはナシ!!」

 

 ちょくちょくお兄さんの話を聞きはしてたけど、こういう兄妹事情を聞くのは初めてだ。

 へー。へ~~~。かわいいな~。かーわーいーいー。

 

「実際どうなの。お兄さんに恋してたの、その頃は」

「気持ち悪ぃこと聞いてくんな……。……どうなんだろうな。あの頃はそういう感情を理解していなかった気がする。兄貴のことは大好きだったけど、それが恋かどうかは……」

「今は?」

「ゴミだと思ってる」

 

 コイから随分とランクダウンしたね……。

 

「それこそ……ウチがツンケンした態度取ると、アイツしなを作って〝俺は悲しい……中学の時の霞はお兄ちゃん大好きとか言って俺に抱き着いてきてくれたのに……〟とか……〝霞、中学の制服を着てみる気はないか。そしてそのまま写真を撮らせてくれ!〟とか……くそうぜーくそきめーことを平気で言ってくるからな……」

「わ、わぁ~」

「この前なんか中学の時のスク水はないか、とか聞かれて流石に蹴った」

「それは気持ち悪いね……」

 

 しかもなんで中学の時のなんだろう。

 今のスク水じゃダメなのかな。

 

「兄貴曰く形が違うらしい」

「へ、へぇ……。百年の恋もなんとやらだね……」

「中学ん時のウチがアイツに恋をしていたとしてもしていなくても、どっちみちああなった兄貴を好きではいられなかっただろうな……」

 

 ……お兄ちゃんがかっこいい場合の妹のスタンダードがこれ、なのかな?

 いやまぁお兄ちゃんがかっこいい場合がそもそも少ないのかもしれないけど。

 

 やっぱり姉妹じゃないとわかんないなー。誰かいたかな妹いる子。

 

「他うちらのグループに誰かいないっけ姉妹兄弟いる子。真美が一人っ子で、那奈に弟がいるのはわかってるんだけど」

「んー。……あんま知らねーなそういや。金瀬が確か弟いて、小池が兄貴二人いて……あ、大野が下妹だっけな。それも結構近い」

「あゆみってお姉ちゃんだったんだ。愛璃も……」

「金瀬は意外でもないけど、大野は結構意外だよな」

「ああ、言われてみればちょっとあゆみってお姉ちゃん感あるかも。……あとそっか、ここののも一応姉妹といえば姉妹か」

「ありゃ参考になんねーだろ」

 

 一応ののかが姉でここねが妹なんだっけな。二人はどっちが姉とか妹とか考えないようにしてるらしいけど。

 

「ありがと。あとでそれとなく聞いてみる」

「……できるかお前にそれとなくとか」

「いや流石にノー情報で辿り着かれることはないでしょ……」

 

 ないよね?

 

 

 体育の授業中。

 マット運動の待ち時間の間、那奈と隣だったので、早速聞いてみることにした。

 

「ね、那奈。弟について聞きたいことがあるんだけどさ」

「また唐突ね……。で、なに? ……あげないわよ?」

「いや要らないけど……。那奈って確か弟溺愛してたよね。どんな感じなの?」

「質問が曖昧過ぎでしょう。……ま、目に入れても痛くないくらいには好きよ」

「彼ムグ」

「何か言った?」

 

 首を振る。そうだった、周囲普通に人がいるんだった。

 

 ちなみに騒がなければ私語で怒られることはない。

 なにか説明をしている時はダメだけど、待ち時間まで縛ってくることはない。

 

「……弟が欲しくなったとか、そんなところ?」

「欲しいのは妹だけど、そんなところ」

「成程ね。……うーん。どんな感じ、っていうのは曖昧過ぎるけど、そうね……。何をされても許しちゃうっていうか、全てが愛おしいっていうか。ほら、私と弟ってかなり離れてるじゃない。六つも離れてるの。だから余計に……なんか、いつまでたっても赤ちゃんに見えるっていうか」

「何をされても、というと」

 

 じ、と。

 体操服を押し上げる双丘に目を遣る。

 

「うちの弟はそんな邪なこと考えませんー。まだ小学生よ?」

「でもいずれは……」

「……。……まぁ、そうなるのかもしれないけど」

「そうなったら……何をされても許しちゃう、は……!」

「流石に限度があるって」

「ちなみに今はどこまで許してるの? 触られたり揉まれたりしてるの?」

「あのねぇ……。……おんぶしてとか抱っこしてとか、そういう可愛いことしか言わないってば」

「一緒にお風呂入ったりは?」

「それは……たまにするけど」

 

 あー。やっぱり姉妹兄弟は一緒にお風呂入るのか。

 いのりちゃんが特別ってわけじゃないんだな。多分浅野もお兄さん大好きだったころは一緒に入ってたでしょアレ。

 

「一緒に寝たりは?」

「ばっ……!? な、なんてことを、そんなはずないでしょ……!?」

「え。お風呂は良くて寝るのはダメなの? なんで? 寝相悪いから?」

「……あ、い、いえ。そうよね、由佳がそんなこと知ってるはずないか。……うわ顔熱~」

「???」

 

 とんとんとん、と、右肩を叩かれる。

 振り返れば、まぁ、特別仲がいいってわけでもないけど、話しかけられたら雑談をする程度には仲の良い子が……なんだかニヨニヨした目で。

 

「振原さんってソッチの知識全然ないんだね。教えたげる、今井俣さんは……」

 

 そっと耳打ちをしてくるその子。何かに気付いたらしい那奈が止めに来る……けど、私の耳は彼女の言葉をしっかり受け止め、理解してしまった。

 

 え。

 寝るって……え。あー。え……。

 

「えー……えっと、あー」

「それで、井俣さん実はどうなの? 小学生の弟君とヤってたり……」

「しないっつの! そ、そういう漫画の読み過ぎ!」

「ちょ、那奈声大きいよ。流石に怒られちゃう」

 

 くすくす、きゃー、と……楽しむだけ楽しんで離れていく女の子たち。

 ……マズい、顔が熱い。寝るって……い、いやー。最近の子は進んでますな!!

 

「そーいえばあの結構ショタ顔だよねあの先ドゥフッ!?」

 

 多分なんか余計な一言を零しそうになった真美のお腹に凄まじいボディブローが突き刺さる。

 う、うん。逃げた子たち、よく見ておくんだ。ああなりたくなかったら那奈をからかうのはほどほどにね……。

 

 

 昼休み。

 お弁当を早めに切り上げて、愛璃に会いに行く。予めメッセで行くことは伝えてあった。

 

 そしたら。

 

「あれ、Cクラス組全員いるじゃん」

「そらね。珍しく由佳ちゃんからガッコ内でメッセあって、何事かと思ったら姉の気持ちを教えてほしいとか……これは確定かな、って」

「か、確定?」

 

 え……それだけでバレた?

 安楽椅子探偵だったりする?

 

「──由佳ちゃん。とうとうあたしの妹になる準備ができたんだな、って」

「ふりはらんうちらのことは気にしないでいいからねー。おもろそーだったからいるだけだし」

「尾藤姉妹、よく見ておけ。あれがバイト三昧の成れの果てだ……」

「バイトこえぇ……」

「バイト怖い……」

 

 どうやらバイトで頭を灼かれてしまったらしい。

 おいたわしや。

 

「でも実際姉妹に憧れて、みんなどんな感じなのかなって聞いて回ってるんだよね」

「うちお姉ちゃんいるよ~。もう働いてる~」

「え、あゆみ妹だったんだ。……あれ? 浅野は弟いるって言ってたような」

「弟もいるよ~。真ん中だからねーうち」

 

 ああ、そういうパターンもあるのか。

 

「真ん中はいいぞ~。最初は妹だからかわいがられて、弟が生まれてからは可愛がりが減るけど代わりに放任されるから自由で~」

「准は上に二人いるんだよね?」

「ああ、そうだが……いや、浅野から聞いたのか」

「え、じゅんじゅん妹だったの?」

「准ちゃん、意外……しっかりしてるからお姉さんだとばかり」

「他に姉妹がいないから長女であるのは事実だな」

「結構甘えたりするの? 今日那奈に聞いたんだけど、那奈は弟と一緒にお風呂入るって言ってて」

「……上の兄は社会人で、下の兄は大学生。入るわけないだろ」

「えっちな目で見てくる~?」

「〝もう少し胸があればなぁ……〟とかって失礼なことを言ってくる」

「うわー」

 

 まぁ。准は私と同じくらいスレンダーだからね。

 けど、みんな結構いるんだな。家に行っても社会人とか大学生だと会わないんだなぁ。

 

「あたしにメッセしたってことは、妹が欲しいって理解でいい? ……いや欲しがったってどうにかなることじゃないんだけどさ」

「おっとあーちゃん、野暮なことは言いっこなしだぜ。由佳っちはコウノトリがベイビーを運んでくるって信じてるんだ。突然妹が生えることだってあるさ……!」

「由佳ちゃんはどんな妹が欲しいの? ののちゃんみたいな妹?」

「いやー、ここののみたいなのは煩いから要らないかなぁ」

「グサァッ!?」

「私はののちゃんほどうるさくないから妹になってもいい?」

「ちょおい!?」

 

 妹が突然生える、でちょっとドキっとしたけど。

 

「欲しいっていうか、まぁそれが無理なのは流石に分かるからさ。この前仲良し姉妹を見せつけられたことがあって……なんか妹ちゃんがお姉ちゃんに対してべーったりで、ああいうのいいなーって思って……でもお姉ちゃんの方はこう、ぶっちゃけ無関心みたいな感じでさ。世の中の姉妹ってああいうのが正解なのかなぁってなんか考えちゃって」

「あー。まぁ、べったり系の妹にはそうなるのもわかるかも。実際あたしがそうだし」

「そうなの?」

「こっこちゃんとのんのんちゃんはうちに来たことあるからわかると思うけど、うちの妹身長が低くてね。だから、来年高校生になるっていうのに、まだ私の膝の上とかに乗ってくる子で……」

「マイカちゃん、だっけ? かわいいよなあの子」

「確かにお姉ちゃんっ子かも。いつもいつも愛璃姉~、って駆け寄ってくるイメージがある」

 

 おお。これは参考になりそうな。

 

「そろそろ姉離れっていうか、ほらあたしバイト三昧じゃない? 大学は行くつもりだけど、就職したら休みとかほとんど作らずに働きたくて……そうなったらあの子との時間なんか作れないっていうか、一人暮らしする予定だから、今の内に慣れといてもらわないと困っちゃうから」

「遠方大学へ通うため&一人暮らしするための賃金稼ぎにバイトをしているのではなかったか? 大学出た後も働き三昧って、最早何のために働くんだ」

「働くのが楽しくて働くというか」

「……尾藤姉妹。よく見ておけ。あれがワーカホリックの末路だ……」

「仕事こえぇ……」

「仕事怖い……」

 

 私がいなくなったら。

 いのりちゃんは……別に何も困らなそう。

 むしろ余計なこと考えなくて良くなって、せいせいするんじゃないかな。

 

「うちは今でもお姉ちゃんにべったりだよ~? 甘やかしてくれるし~」

「家から通勤してるの、お姉さん」

「んーん。一人暮らしだし、彼氏いる~。時々帰ってきてめっちゃ可愛がってくれる~」

「へぇ。じゅんちゃんもお兄さんに」

「だからそこまでべったりじゃない。というか……兄はこぞって私に近付こうとするが、私から逃げているというべきか」

「由佳っちそろそろ私達にも聞くのだ」

「私達は姉妹ですよ双子ですけど」

「まぁそれはそうなんだけど、何の参考にもならなそうだから。それより愛璃になんでそんな姉離れさせたいのか聞きたくて」

「聞いて聞いて聞いて聞いて」

「聞ーいーてーよー!」

 

 ……だからグルチャじゃなくて個チャでメッセしたのに。

 こうなるってわかってたから。

 

「はぁ。じゃあ、ここのの。二人にとって姉妹とは」

「運命共同体!」

「一生を添い遂げる人、かな……かな……かなかなかな……」

「ヒグラシかお前は」

 

 ほら結局ふざけた回答。こっちはちゃんと悩んでるの。

 

「あはは……で、なんで姉離れさせたいかだけど、そりゃ悲しんでほしくないからだよ。いつか絶対この別離はやってくるんだから、その時にショックを受け過ぎないように」

「つまり愛、と。……そういうことだ、振原。わかるか、愛。お前には無いものだ」

「なんてことを言うんだ」

「実際ふりはらんって愛なさそー。正確には慈愛はあるけど愛情なさそーだよね」

「なんてことを言うんだ二人して」

「若干パスってるもんね由佳っち」

「時々怖いよね由佳ちゃん」

 

 え、あの、え?

 私はみんなのためを想って動いているというのに……!

 

「由佳ちゃんは感情の起こりと理由が結びつかないからそう見えるんだよねぇ」

「お゜」

 

 それ……いのりちゃんにも言われたけど。

 ……もしかして、深刻なこと、だったりするんだろうか。浅野にも聞いてみようかな。

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