私より背が高くて、私より要領が良くて、私より社交的で、私のことを愛してくる義妹   作:的形みずき

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29.告白の返事をした。

 ここ『星ふるお宿』はその名の冠す通り、満天の星が美しいホテルだ。

 各階層にあるラウンジから見上げることのできる全天は、町中にはない透き通った空気が星々の光をまっすぐに届ける天幕となっている。

 ……というわけで、大浴場上がりにラウンジへと移動したみんな……と。

 

 非常口の手前にいる浅野。そして私。

 

「話……ってのは、なんだよ」

「うん。旅行中に言うのはどうかとも思ったんだけど、引き摺るのもあれだなって」

「……っつーのは、そりゃ」

 

 告白された。

 告白を受けて、私は……混乱した。でも、ちゃんと整理して。

 ……正確には昨日。夜闇に怯える浅野に抱き着く、なんて行為をして……自分の中での整理をつけたのだ。

 

 言える。

 

「ごめんなさい」

 

 頭を下げる。

 ──それは、拒絶の言葉。

 

「……そうか」

「私にとって浅野は親友。付き合いは短いけど、那奈を含めた友達の中でも、多分一番ってくらい仲良くなったって思ってる。……だからこそ、私が浅野に向けるのは、友情だけ。これをどうにかして恋愛感情に結び付けられないかって試行錯誤してみたんだけどね。……無理だった」

 

 私が持っている、私が浅野に向けているこの感情。

 昨日までは……あるいは今朝までは名前を持たなかったとりとめのないその感情。

 でも、整理して、起きて、もう一度整理し直して……認識した。

 私は浅野霞という少女を親友だと思っている。それは決して恋人だとは思っていないということで、発生する感情は恋愛感情ではないということになる。

 

 振原由佳は、浅野霞を「愛する」という視線で見ることはできない。

 

「……そうかよ」

「うん、そうだよ」

 

 怖いとは思わない。友達を続けてほしいなんて言葉も吐かない。

 だってそれは、彼女に失礼だから。

 

「……あー、クソ。……初恋は失恋か」

「じゃ、一緒にラウンジ行こ」

「お前本気か? ウチは……今お前にフラれて、流石のウチだって気持ちの整理とかあるぞ」

「だからさ、泣くなら星を見ながらにしようよ。それで誤魔化せる」

「……っとに性格悪いよなお前」

「えーっ、気遣いなのに」

「じゃあ方向性間違ってんよ」

 

 お母さんのこと、いのりちゃんのこと、私自身のこと。

 そういうことでいっぱいいっぱいだから、なんて横道へ逸れた理由じゃなくて。

 私は浅野霞と、親友でいたいから。

 恋人は、ごめんなさい。

 

 ……身勝手で、ごめんね。

 

 

 

 四月二十七日。ゴールデンウイーク三日目。

 今日で旅行は終わり。そんな日の午前四時半。

 

 私は一人、朝風呂をしていた。……いやね、折角部屋付き露天風呂があるのに使わないの勿体なかったな、って思って。

 

 朝日の光は差せど、お日様自体はまだ昇っていない水平線。

 それを眺めて浸かるお湯は……ううむ、日本人の心だ。

 

 しかし、昨日は、私にしては──。

 

「邪魔するぞ」

「へ?」

 

 私だけしかいなかった空間。そこに、なんでもないことかのような顔をした浅野が入ってくる。

 え、いや、あの。

 まぁいつものことといえばいつものことなんだけど、色々思い返すこととかさ。そのさ。

 

「なんだよ」

「……なんでもない」

 

 さらっとかけ湯をして汗を流した彼女は、そのままお風呂へ……しかも私の隣に座ってくる。部屋付きとはいえ結構広いんだから距離開ければいいのに。

 

「一晩中さ。考えた」

「え? あ……うん。ごめんね、旅行中なのに複雑な気持ちにさせて」

「いや……まぁ、すっきりしたからいいよ。つか……告ってからのウチ、舞い上がり過ぎてて……思い返して自分で引いてた」

「そんなにだっけ? そんな印象ないけど」

「井俣に聞きゃわかるさ。あいつは話さねえだろうけど」

 

 じゃあわかんないじゃん。

 そうツッコもうとして浅野を見ると、なんだか……その、メイクしてないからかな。少しだけ大人びて見える彼女が海を眺めていて。

 

「諦めきれねーわすまん」

「へ?」

「……この先でさ。多分……お前はもっかい告られる。言ったろ、取り合いしてる奴がいる、って」

「あ、そういえば」

「そいつの幸せはさ、応援したいけど……素直に指くわえて見てるの、性に合わねえ。普段は一歩引きがちなウチだけどさ、なんか負けたくねーみたいでさ」

 

 こてん、と。

 頭を預けてくる浅野。

 

「一回断ったのにウザいかもしんないけど、ウチこれからもアピール続けるわ。……そいつとくっつくにせよくっつかないにせよ、お前の気がこっち向く可能性はゼロじゃないだろ」

「いや……ゼロだよ。私、浅野とは友達でいたいもん」

「う゛……シームレスに刺すのやめろよ。ちゃんと傷つくんだぞウチだって」

「ワンチャンあるかも、って思わせる方が酷くない?」

「無かったら作り出す。お前脇甘いからな。いつの間にかウチがお前のパーソナルスペースに入り込んでることはあるだろ」

「パーソナルスペースで言ったら頬っぺたくっつけてるくらいの距離にいると思ってるけどね」

「井俣は?」

「背中合わせ?」

「じゃあウチのが近いな」

「え、私を取り合ってる相手って那奈なの?」

「全然。アイツ彼氏いるだろそもそも」

「話の流れがそうだったじゃん」

「気になっただけだよ。聞き流せ」

 

 適当だなぁ。

 

 ……モテる……って表現するのは違う気がするけど、複数人に好かれていると聞かされて嬉しくないことはない。

 でも……浅野もだけど、できれば友達は友達のままがいいなぁ。恋人……っていうと、……私の中にまだ愛情っていうコンテンツがないから、相手を愛せるかどうか不安だし。

 

「な……なぁ、振原。頼みがあるんだけど」

「キ……キスはしないよ? そういうのは恋人がやることでしょ」

「あ? そりゃいいよ、もうファーストキスもらったし。そうじゃなくて……ちょっとさ、ウチの足のとこに座ってほしくてさ」

 

 ここ、と。

 胡坐をかいた足を指差す浅野。……えーっと?

 というかファーストキスの話そんなさらっと……。

 

「わ、私の知らないいやらしいこと、じゃないよね」

「お前ちょっと脳内ピンクに染まりすぎじゃね」

「だって浅野この前脱がせたいとかお腹舐めたいとか保険体育とか……」

「あー。……ま、そういうのはしねーから、ほれ」

 

 こいこい、と。

 まるで……娘にやる、みたいに。

 

 ……警戒しつつ近付くと、ざばぁと持ち上げられてそのまま座らされた。……座った姿勢でそれできるの腕力すごくない?

 

 ゴチ、と頭の上に乗っかる顎。

 

「いたいんだけど」

「朝日といい湯と振原。極楽だぁ」

「私はぬいぐるみかなんかか」

「風呂にぬいぐるみ持って入らねえだろ」

「いやそうだけど」

 

 そうなんだけども。

 

 っていうか……背中に膨らみ当たるんですけど。

 あとお腹に回ってる手がさわさわ動いててちょっとヤなんですけど。

 

「正直なこと言うとさ。……ゴールデンウイーク終わっても返事貰えなくて、自然消滅もあるかなーとか思ってた。振原って臆病だし」

「それが嫌だったから昨日勇気を出したってのは大きいよ。……お母さんの件で、私はずっと考えないことにしてた。電話もしなかった。怖かったから。……でも、お母さんに会ってきて……そういうのが全部杞憂だって知ってさ。じゃあもっと早くに連絡しておけば、ってさ。……そうしてたら、勿論お母さんとお母さんの気遣いを無駄にしちゃってたし、もしかしたら浅野とかみんなとか……今ほど仲良くなれてなかったのかもしれないけどさ。でも」

 

 でも。

 

「いつでも確認できること、いつでも表明できることを……怖がって先延ばしにして、見ないふりをするのってさ。……なにより私のためにならないんだなって」

「……成長、か?」

「多分ね」

 

 先送りにすることが悪いこととは思えない。人間、どうやったって受け止める時間というものは必要で、考えを整理する時間も必要だ。

 でも……それが必ずしも利益や意義を生むかと問われたら、首を横に振る。

 充分な時間立ち止まったら、前と上を見る。かわいい女の子になるための目標を、私はちゃんとできていなかったんだ、って。

 

「だからウチもいつまでも振原のこと見てないで先へ進めって? 流石だな振原。ねじ曲がってる」

「ちょっと、流石にその曲解は浅野の方がひん曲がってるでしょ」

「かもな。……なんか、今の言葉聞いて、余計諦めきれなくなった。ウチもお前に感化されてひん曲がり始めたらしい」

 

 首筋へ顔をうずめ、抱き着く力も強めてくる浅野。

 ……後ろから鼻息が鎖骨に当たるの……かなりくすぐったいんだけど。

 

「あークソ。……好きだ、振原」

「泣く?」

「馬鹿にしやがるコイツ。……なに、泣いたら慰めてくれんの」

「頭ぽんぽんくらいはしてあげるけど」

「──こういうことは?」

「ひ……ゃ!?」

 

 え。え、え。

 いまなにを。

 

「ささやかな膨らみだが、あるにはあるなー」

「ちょ……当たり前でしょ、私だって女なんだから……」

「こういうのって普通カップルしかやんねーわけじゃん。つまり今これやってるウチらは」

「調子乗んな!」

 

 肩口にある浅野の顔へお湯をかける。

 へぶ、なんて潰されたカエルみたいな声と共に拘束が緩んだので脱兎。

 

 もうノー警戒で浅野に近付いてはならない。由佳学んだ。由佳、にんげんになる。

 

「けほ……あー、ひっで」

「こっちの台詞だって。っていうか騒ぐとみんな起きちゃうよ」

「だなー。……なぁ振原」

「もう乗らないから」

「おしゃぶりか哺乳瓶買ったら咥えてくれるか?」

「……はい?」

「今抱きしめてわかったけどさ。ウチなんか子供欲しいっぽいんだよね。でも男にキョーミないし、高校生のうちから育児ってのも無理がある。となると振原を幼児にしてかわいがるのが一番かなーって」

「逆上せてる?」

「恋愛感情とか一回抜きにして、赤ちゃんのコスプレしてくねぇ? ……ずりーよな井俣は。ノリで振原にママ呼びされんだもん。ウチもされてー。……ああ姉でもいいけど」

 

 壊れた。まずい、これは完全に壊れた。

 やっぱり刺激が強すぎたんだ。もう少し緩衝材挟んだ言葉で断るべきだった。

 

 お風呂の縁へ腕と首をべたーっとやって、仰向けになる浅野。

 隠れ巨乳がぷかぷか浮かぶ。……なんだ見せつけか。

 と思ったら……一筋。

 

「……くそ、やっぱ泣けんな」

「……先上がるよ。しばらく誰も来ないよう見張っててあげるから」

「おう。助かる」

 

 わかってる。

 今の今までにやってきた様々は、自分の涙を誤魔化すための行動だ、って。

 だから──。

 

 

「ありがとうございました~」

 

 十時にホテルをチェックアウトする。

 全員いることを確認。忘れ物に関してもみんながみんなの分を……特にここのの姉妹の分を確認したから大丈夫なはず。

 

「お昼どうする?」

「肉!」

「寿司!」

「パスタ!」

「ラザニア!」

「またピンポイントな……」

「このまま解散で各自でもいいけどねー。流石に二泊三日は一緒に居すぎだし」

 

 確かに。あと疲れてるし。

 うーむ。

 

「私も解散に賛成かな。思ったより疲れてる」

「だな。……ウチらは明日から普通に部活あるし」

「うげ、忘れてた」

「この疲れで走るのキビシ~!」

 

 部活組は大変だぁ。

 あ、それでいうと。

 

「愛璃は? 今日バイトとか」

「いや流石にみんなと旅行いく日に入れないってー」

「流石にか。……あー、こっからだと最寄りまで別れるねこれ」

「ああ、確かに。別々の駅へ行った方がいいな」

「んじゃ解散でー」

 

 ということになった。

 

 私と同じ列車に乗るのは、那奈、アキ、真美、愛璃の四人。一緒の方面組。

 

 みんな疲れているから雑談もそこそこに歩いて列車へ乗って。

 

 

「は」

「あ、起きた」

 

 ……寝ていたらしい。

 ここは。

 

「ウチ~」

「……真美'sハウスとな」

「来るの初めてだっけ?」

「うん。……もしかしてここまで負ぶってくれたの?」

「頬っぺたつねっても起きなかったから、これは爆睡、と思ってね。この前の弓届けてくれたお礼~」

 

 寝過ごすにも程があるし、重さでも釣り合ってないし。

 いや悪いことをした。

 

「──ね、由佳ち」

「なに?」

「かすみんに告られてたんだね」

「いやそんなことないけど」

「いいよ隠さなくて。朝風呂しよーって思ったら聞こえてきちゃった話だし」

 

 ……迂闊ではあったか。私も浅野も。

 

「まぁ、ね。……あんまりからかわないでもらえると」

「からかったりしないって。でも……ほら、私が浅野に告ったことあるって話、覚えてる?」

「う、あ、そういえば」

「いやだから告ったこともフったこともとやかく言うつもりないから安心してよ」

 

 で、でも切り口が。

 

「私ってさ、結構惚れっぽい? 優しいって思ったりかっこいいって思ったらすぐに好きになっちゃうタイプっぽくてね。告るまでの感情に育つかどうかはその時次第なんだけど」

「あ……うん。なんか言動からそんな気はしてた」

「えマジ? それは知らなかった……。で……浅野に惚れて告ってフラれて、私はすぐ次の恋を探してさ。──実はなななんとあきぱちにも告白してたりする」

「惚れっぽいにも程が無い?」

「いやぁ、多分私くらい背の高いかっこいい系の女子みんな好きなんだろうなって」

「あーね。傾向的にね」

 

 だとすると愛璃、あゆみも危険だ。……危険とは。

 

「ちなみにどっちからもフラれててさ。あー……で、その」

「ん。……まさか私」

「それはナイね。由佳ち背低いしカッコいい系でもないし」

「ばっさりが過ぎる」

「……そのさ。……諦めない、って言ってたの聞いちゃったんだけどさ」

「うん」

「私もなんだよなーって。……惚れっぽいって言っても決して軽い感情じゃなくてさ。フラれてもずっと……今まで告ってきた相手全員に想いが残ってるっていうかさ」

「うん」

「だから……。……もしさ、私が、もっかいかすみんにさ、告ってさ。……由佳ち、怒らない?」

 

 遠慮がちにそんなことを聞いてくる真美。

 

「怒る、とは?」

「だ、だってなんか弱ってるとこにつけ込むみたいなさ。由佳ちにフラれて傷心中のかすみんに告るの、なんか……ずるい気がして」

「仮にそうだとして、なんで私が怒るの?」

「……由佳ちってそういう……純情じゃないこととか、ずるいこととか、嫌いかなーって」

「私が嫌ってるとやらないの?」

「……。……ううん、私達は……関係ないよね、そういうの」

「うん」

 

 誰が嫌がるからやらないとか、逆に誰かに好かれるためにやるとか。

 そういうのがないグループだ、私達は。

 

「……正直なこと言うね」

「ん」

「なんか……かすみんの心が、由佳ちのものになってる、みたいな印象を受けちゃったんだよね。あはは……何言ってんだって思うだろうけど、いや自分でも何言ってるかわかんないんだけどさ。……かすみんのこと、由佳ちが支配してる……っていうと言葉が強いんだけど、由佳ちの一挙手一投足でかすみんが一喜一憂して、……それがなんか、かすみんの心は全部由佳ちが持ってる気がして……」

「うん」

「……意味、わかんないこと言うね。……。……返して。解放してほしい。かすみんのこと」

 

 ……うん。

 うん。

 

「捕まえた覚えはないし、とらえた覚えもないんだけど……そう見えるのなら、少なくとも真美の中ではそうなっちゃってるのかもしれない」

「ごめんね、勝手に……」

「だから、私は鍵を持っていないんだよ。真美の世界にある籠の中に浅野って鳥がいるなら、どうにかして鍵を開けるのは真美だよ。私じゃない」

「う……」

「奪っていきなよ。私にはどうすることもできないからさ。……あ、暴力はやめてください」

「しないよそんなこと!」

「けど……もしかしてそれ言うために連れてきたの? 睡眠薬盛った?」

「電車においてくればよかった……」

「冗談冗談。感謝してる」

「……なんか一気に私の扱いが雑になったよーな」

 

 雑になった、っていうか。

 親しみを覚えた、が正しいかもしれない。

 

「実を言うとさ。それこそこの前浅野に告った話を聞いてから……どっか思うところあったんだよね」

「ぅ。それはやっぱり……かすみんのこと」

「ああそうじゃなくて。なんでこの子普通にしてられるんだろう、って。……私恋愛したことないけどさ、フラれるってちゃんとキツいことじゃん。それを……笑い話にできるっていうのが……ちょっと理解できなかった」

「あ、でもそれは時間経ってるからで」

「その後も那奈とアキに告ってふられてるってことはさ、友達で過ごしてた時もそういう感情抱えてたんでしょ?」

「まぁ……ね」

「よくそんなことできるな、って思ってたし、思った。私とは違う世界にいるのかも、って」

 

 私自身が感情に振り回される人だから、余計に理解できなかった。

 宇宙人でも見てる気分だった。

 

 でも、だ。

 

「今のさ、私が浅野を捕えてる? みたいなのさ。……正直ちんぷんかんぷんだし意味わかんないけど……それ嫉妬だよね、要は」

「ぬぐ」

「浅野の心が私に向いてるのがズルい、ってことでしょ?」

「ぬぐぐぐ」

「なんかそれがわかって……一気に近くなった。真美っていつもにこにこしてて元気でのほほんとしてるイメージあったからさ、恋愛とどうしても結びつかなかったんだけど……そっか、そんなにすごい嫉妬抱えて生きてたんだ」

「改めて言葉にされると……私死ぬほど嫉妬深いのかな」

「悪いって思ってないよ。……なんていうか、人間らしい? んー……ちゃんと女の子してる、っていうか。この子と友達で良かったなって思ったっていうか」

「……嫉妬深いのの友達で良かったの? それなんかヘンじゃない?」

「ヘンな私はおかしいかな」

「……ああ、確かに由佳ちってデフォルトがヘンだから合ってるのか」

 

 ヘンな人を自称する気はないけど、ヘンであることやおかしいことが間違っていることだとは思わなくなった。

 正しいかどうかは知らないけど、合ってるんだよそれで。

 

「じゃ、そろそろ私帰るね。連れてきてくれてありがと」

「……うん。あ、……でさ、一個だけ聞きたくて」

「なに?」

 

 もじもじし始める真美。

 なんだろう。

 

「え──えっちなことはしたの!?」

「してません」

 

 帰る。

 ……脳内ピンクというのはこういうののことを言うんだ。私は当てはまりません。

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