翼を閉ざした竜は、蒼天を仰いで想いを馳せる   作:竜公

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大変お待たせしました!第一話です。


第一章『翼を封じし機械仕掛けの仔竜』
第一話 謎のタマゴ


 

 

 

 3人は目の前にある大きなタマゴを見て、何故こんな所にあるのか疑問を抱きながらタマゴの外見を見る。

 

 膝ぐらいの大きさで主体の色が青と黒を混ぜ合わせた色となっている。

 

 そして何よりもタマゴに巻き付いているかのような銀色の鎖模様はまるで、自身を縛っているかのように見て取れ、何か雰囲気が違うと感じていた。

 

「見たことないタマゴだね……それにこの模様………、何だか凄く異質というか……。」

「うん…いつからここにあったのかな?苔は全くないし、ここに置かれてからまだ日は短いとは思うんだけど…」

「でも、ヒルチャールが掘った跡はなかったよな?もしかして、あの崩れてた岩壁の所でコイツの存在を感じ取ってたのか?」

「多分そうだと思う。それか、ヒルチャールがどこかから盗んできて、見つからないようにするために爆破して岩壁を作った……とかかな?」

 

 アンバーがタマゴをみて、ここに置かれた理由を考えていると蛍は何を思ったのか、異質さを放つタマゴに近付くと、表面を撫でるように触れる。

 

「蛍?」

「…………。」

 

 表面はひんやりと冷たくツルツルであり、まるで丸い石を撫でているかのような感触が蛍の手に伝わる。

 

 しかし、そのひんやりとした冷たさは、まるで誰かを求めているかのようだった。

 

(この子…寂しかったのかな…?)

 

 蛍はタマゴを撫でながらそう思い、タマゴを抱え、2人の方に振り返ってタマゴを見せると、あることをアンバーに聞いてみる。

 

「ねぇアンバー、このタマゴ………モンド城に持って帰ることって、できないかな?」

「え!?だ、大丈夫なのか、こんな…得体の知れない物を持って帰っちゃって?」

「う~ん、ジン団長にこの事を話せばモンド城に持ち出せるとは思うけど、どうして持って帰ろうと思ったの?」

 

 タマゴだからといって安全。というわけではなく、アビスが仕組んだ罠の可能性も否定できないとアンバーは考え、理由を聞いてみると、蛍はタマゴを見ながら答える。

 

「だって、もしここでこのタマゴから雛が産まれたとしても、こんな所に理由もわからず閉じ込められてて…しかもこのタマゴを産んだ親もいないんだよ?…ここから出られたとしても、周りに頼れる友達がいないから………この子は…ひとりぼっちのまま生きちゃうんじゃないか………そう思っちゃって…例え誰かの罠だとしても、これを見つけた以上…放っておけないよ…。」

 

 蛍は自分の何かを重ねたのか、少し切なそうな顔を浮かべて、タマゴをぎゅっと抱き締める。

 

「蛍………。」

 

 その様子を見て、心境を察したパイモンは、砂浜で話してくれたある出来事を思い出す。

 

 蛍は…テイワットの住人ではない。

 

 流れ星として様々な世界を旅し、テイワットに辿り着いたある日、ここから別の星に行こうとしたところで、突然見知らぬ神に遭遇。

 

 全力で抗ったが、神の力は圧倒的であり、兄である〝空〟と蛍をその神に引き離され、本来の力も封じられてしまった。

 

 神によって引き離された蛍は、パイモンに出会うまでの間、本当に孤独を感じていたと言う。

 

 だからこそ、この子にはその孤独感を味わって欲しくないし、感じて欲しくない…そこで、このタマゴをモンド城に持って帰ろうと提案したのだろう。

 

「……確かにそうかもしれないね…、分かったわ。そのタマゴから雛が孵ったら、あんたが責任持って面倒を見るんだよ?」

「………うん、ありがとう、アンバー。」

 

 タマゴをモンド城に持って帰ることを許してくれた蛍はタマゴを抱えながらこの場を去ろうとすると……パイモンがあることに気付く。

 

「……ん?ちょっと待てよ、ソレを持って帰るのは良いとしてさ、抱えながらどうやってこの洞窟から出るんだ?」

 

 その一言に反応し、蛍はその場で止まってタマゴと出口を交互に見て、考えるが……10秒経っても出てこない。つまり…どうやって出るか考えていなかったのだ。

 

「…………………………………………………………あ。」

「『あ。』じゃないだろ!?そこまで考えてなかったのかよ!」

「あははは……、このタマゴのことで頭がいっぱいで、今のことを考えてなかった…。」

 

 パイモンのツッコミに、蛍はそう答えるしかなかった。

 

 確かに考えてみると、この洞窟は道がかなり険しく、洞窟を出ようとしても両手が塞がってしまっていて上り下りができない。

 

 かといって片手で抱えながら登ろうとしてもバランスは悪いのは変わりなく、下手をすれば落ちて大怪我だけじゃ済まされないし、タマゴが割れる可能性だってある。

 

 蛍はどうしたものかと考えていると、アンバーが「あ、そうだ!」と手をポンッと叩いて何かを思いつき、懐から何かを取り出した。

 

「蛍、これならタマゴを入れられるんじゃないかな?」

「?…これって……。」

「ウサギ伯爵を入れる袋。これだったら両手が塞がらないし、安全に持つことができると思うけど、どうかな?」

 

 蛍はアンバーから貰った袋に物は試しとタマゴを入れてみると、袋との幅はちょうど良く、タマゴのてっぺんがはみ出ているが、背負って持つことに問題はない。

 

「うん、これなら抱えないでいけるね、ありがとうアンバー。」

「えへへ、どういたしまして。それじゃ、モンド城に戻ったらこのタマゴのことをジンさんに伝えましょう。」

 

 アンバーが改めてモンド城に戻ろうと言い、蛍はタマゴが入った袋を背負う。

 

「よいしょ、ってわっとっと…」

 

 重りをつけたかのような感覚に蛍は一瞬後ろに倒れそうになるも、何とか持ち堪え、既にこの空間から出たアンバーの後を追う。

 

 

 

 

 タマゴが僅かながら、優しい光りを放っていたことを……この時の蛍とパイモンは、タマゴから目を離していたため気付いていなかった。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 モンド城に繋がる道を歩いていると、カラスの鳴き声が聞こえる。

 

 太陽があるところに私は目を向けると陽はもう沈みかけてて、空や地面をオレンジ色に染め上げていた。

 

「もう夕暮れかぁ、モンド城に戻るまで時間がかかっちゃったね。」

「でも、夜になる前に戻れて良かったよ。タマゴも無事に持って帰ることができたし。」

「そうだね、今日はいろいろとありがとう、アンバー。」

「これくらいどうって事ないよ。私も、洞窟探検は新鮮な感じで楽しかったよ。」

「それだったら洞窟探検も悪くはないかもね。また機会があったら別の洞窟の探検に行こ?」

「うん!」

 

 アンバーとそんな話をしていると、アンバーに抱かれているパイモンの瞼が動き、ぼんやりとした顔をしながら起きた。

 

「…………?う…う~~ん?」

「あ、パイモンちゃん起きたかな?」

「んぅ………アンバー?…………………んえ!?こっ、ここはどこだ!?お、オイラ一体どうなったんだ!?」

 

 パイモンが大慌てで腕から飛び出したんだけど、目を覚ましたばかりで浮遊が出来ずに落ちそうになったところを、アンバーがキャッチした。

 

「っと、もうパイモンちゃん、急に暴れちゃダメだよ?」

「わ、悪ぃ……そうだ、なんでオイラは寝てたんだ……?タマゴは無事なのか……?」

 

 タマゴを心配しているパイモンを見て、タマゴが入った袋を見せて「タマゴはこの通り無事だよ。」と言うとパイモンは胸をなで下ろし、安心した顔になった。

 

「よ、良かった…なぁ、魔物とかってどうなったんだ…?オイラ全然覚えてないんだけど…。」

 

 そう聞かれて、私とアンバーはお互いに顔を合わせて、苦笑いを浮かべる。

 

「魔物はみんな倒したよ。まぁ、倒してる途中にハプニングがあったけど…。」

「うぇ?何だよそのハプニングって…それにオイラが入ってるのか?う、う~~~~~~ん………ダメだ全然思い出せないぞ…。」

 

 パイモンが腕を組みながら首を傾げて思い出そうとするも、中々に思い出せないのを見ながら先程の出来事を思い返す。

 

 洞窟から出た後、私達はモンド城に戻ってジンに今回のことを報告した後のことを話し合ってた。

 

 内容はもちろん、このタマゴのこと。ジン団長に今回のヒルチャールの集落のことを報告し終えた後、このタマゴから孵る生物を知らなくちゃいけなかった。

 

 探すとなれば、西風騎士団の本部にある図書館が良いと考えていた。あそこなら、タマゴの何かしらの事が書かれていると思う。

 

 報告し終えた後のことはひとまず決まって、来た道を戻っている途中で魔物の群れと遭遇して戦っていたら…、

 

 

 どこからか現れた風スライムがパイモンを後ろから飲み込んじゃったの。

 

 

 口が塞がっている状態でありながらもパイモンが大きく叫んでくれたおかげで救助できたんだけど、もし気付けなかった場合、その風スライムの一部になってたと思うと…考えただけでも恐ろしい…。

 

 とまぁそんなハプニングがありながらも魔物の群れを倒したあとは、何事もなく今に至る感じかな。

 

「まぁ、それ程までの激闘じゃなかったから、忘れてもしょうがないんじゃないかな?無理に思い出そうとしても、逆に疲れるだけだし。」

「う~~ん………、まぁお前がそう言うなら…良いか…。」

 

 魔物の話を終えて、モンド城正門の前の橋を渡ろうとすると、橋の真ん中で餌を食べていた鳩の群れが一斉に羽ばたいて、どこかへと飛んでいくのが見えた。

 

 飛んでいった鳩を見ながら橋を渡っていると、今さっきまで餌をあげていたティミーがこちらに気付いて、いつもの笑顔を向けてきた。

 

「栄誉騎士さんにアンバーさん、お帰りなさい!」

「ただいま。ティミーも鳩に餌をあげ終えた所なの?」

 

 アンバーがそう聞くと、ティミーは少し落ち込み気味で首を横に振った。

 

「ううん……それがね鳩さん、何だか慌てた様子で飛んで行っちゃったの……まだ餌をあげ終えてないのに…。」

「え?そうなのか、オイラはてっきり餌をあげ終えたかと思ったぞ…。でも、オイラ達は走ってもないよな…?」

 

 ティミーの発言にパイモンは首を傾げて『?』を浮かべてる。

 

 ……う~ん、やっぱりそうだよね……アンバーがこっちを見てるって事は、私と同じことを考えてるのかも。

 

「分からない、今まであんなことは無かったのに……まぁ、今日はここまでにして明日もまた餌をまこうかな。」

「そっか、それじゃあ、また明日。」

「うん!バイバ~イ!」

 

 ティミーと別れた後、門番に挨拶をして正門をくぐり、一直線に西風騎士団の本部に向かっている最中、アンバーが私とタマゴを交互に見ながら周りに聞こえない声で話す。

 

「ねぇ、さっきの鳩の群れ…」

「うん、多分そうだと思う。」

 

 やっぱり、アンバーも同じことを考えてたみたい。

 

「?何がそうなんだ?」

「実はここに戻る前にさ、さっきの鳩の様子と全く同じようなのを見たことがあるの。」

「うぇ?………もしかして、魔物と戦っていたときにか?」

「うん、魔物の群れと対峙した時もさ、さっきの鳩と同じように魔物も凄く怖がってた表情だったんだ。」

「怖がってた…?オイラは普通な感じに見えてたぞ?」

「わたしもその時はそう思ってたんだけど、さっきの鳩で、魔物が襲ってきた理由がこのタマゴにあるんじゃないかって。」

 

 アンバーがそう言うと、パイモンは顎に手を当てながら「あ~、なるほど?」と少し理解したみたいだった。…………でも、

 

「じゃあだとすると、やっぱりこのタマゴに得体の知れない何かが眠っているのかな?モンドを脅かす存在じゃなければいいけど…。」

「いやぁ、そんなこと…いや、あり得そうだなぁ…。」

 

 私達がこのタマゴにちょっとした懸念を抱き、暫くして西風騎士団の本部に着いた。

 

 本部に入って左側の扉に行くと、アンバーが前に出て、その扉を3回ノックする。

 

 扉越しから「どうぞ。」と声が聞こえてアンバーが扉を開けて部屋に入ると、西風騎士団の代理団長であるジン団長がいた。

 

「失礼します、ヒルチャールの集落調査、及び討伐から戻りました。」

「戻ったぞー。」

「旅人にアンバー、それにパイモン、お疲れ様。出発から随分遅く戻ってきたけど、それ程までに集落は大きかったのか?」

「はい、と言っても、集落はとてもと言えるほど大きくはなかったのですが…」

 

 アンバーは、今回のヒルチャールの集落についてやその後のことを報告した。

 

 報告を聞いたジン団長は顎に手を当てて少し考え込んで、ゆっくりと口を開いた。

 

「ふむ、今回のヒルチャールの集落は、その洞窟の中にあった物を守るために、次第に防衛に適した集落になったという訳か。」

「はい。あれほど防衛に特化した集落を見るのは今回が初めてでした。」

「私も。」

 

 ジン団長にヒルチャールの集落についての報告をしていると、誰かが入る音がする。

 

「あら、3人ともお帰りなさい。あなた達が中々戻ってこないから、心配して出掛けようと思ったけど…その必要はなかったみたいね。」

 

っと話しかけられて振り返ると、ここの図書館の管理者であるリサさんがいた。

 

「あっ、リサさん!今回のヒルチャールの集落について報告していたところです。」

「そうなのね、それで、どんな集落だったのかしら?」

「アンバーから聞いた話だと、洞窟を守るための集落だったそうだ。そういえば、その集落にいたヒルチャールが守っていた物が洞窟にあったと言っていたが、何を守っていたんだ?」

「えと、これを守ってたみたい。」

 

 私は背負っている袋を下ろして、その中からタマゴを取り出すと、ジン団長とリサさんは興味深そうに近くに寄ってタマゴを見つめる。

 

「これは……タマゴ?」

「変わった模様のタマゴね、これがその洞窟に置いてあったの?」

「おう、凄く綺麗な水晶群がある所の真ん中にコイツが置いてあったんだ。んで、このタマゴが寂しくないようにと、ここに持って帰ってきたんだ。」

「………なるほどね……。」

「それで、リサさんはこれが誰のタマゴかというのは分かりますか?」

 

 アンバーにそう問われて、リサさんはタマゴの特徴を見ながら顎に手を当てて、「う~~ん……」と声をうならせて少し考えた後、答えを出した。

 

「いいえ…わたくしが知っている限り、誰のものでもないと思うわ。」

「え、リサさんも分からないのか?」

「ええ、多分だけど、ここにある本にも載っていないでしょうね…………おまけに……」

 

 リサさんがタマゴに2回ノックをすると、ガンガンッっと普通のタマゴでは鳴らない重い音が響く…このタマゴ、もしかして、

 

「金属で出来ている……?」

「えぇ、どうやらそうみたいなの。ちょっと薄いけれど、かなり頑丈に出来ているわ。」

「じゃあ、タマゴが金属で出来ているって事は………。」

「恐らくそうでしょうね。或いは、何かの生物のタマゴを模した作品……って所ね。」

 

 作品かぁ…………でも、このタマゴから放たれる異様な雰囲気は、一体どう説明をつければ良いんだろう…?

 

 そう考えていると、タマゴのある変化に気が付く。

 

(………………あれ、タマゴの模様が……無くなってる……?)

 

 タマゴの模様が無くなっている(正確に言うと黒色に変色したのかな?)事に気付いて、私は逆光で色が変わっただけかと思ってタマゴの全体を見てみるけど、本当に無くなっていた。

 

 おかしいなぁ…洞窟で見たときは、明るい銀色だったのに……。

 

 それに……今のこのタマゴを見てると、あの時よりも凄く圧迫感を感じる気がする…。

 

「……蛍?」

「ねぇアンバー、パイモン。このタマゴの模様、こんな色だったっけ?」

「え?………本当だ。ここに持ってくる前は銀色だったのに。」

「ん?これが元の色では無いのか?」

 

 あ、そうだった。ジン団長とリサさんは、ここで初めて見たから分からないんだった。

 

「うん、洞窟から持ってくるときは今よりももっと明るい銀色だったんだけど、今のこれは……変色と言うのかな…?」

「本当に変わったタマゴね………ねぇ、旅人さん。そのタマゴ、わたくしが預かってもいいかしら?」

「え、いいけど……。」

 

 今の話を聞いたリサさんの一言に少し戸惑った声を上げちゃったけど、リサさんは私が何を思ってるのか分かったのか、私を安心させるように少し微笑む。

 

「大丈夫よ、独り占めするようなことはしないから。禁書エリアからこのタマゴと似たような記載がないか探ろうと思うの。正体が分かるまで何日もかかるかもしれないけど…良いかしら?」

 

なるほど…、まぁ、リサさんはそんなことをするような人じゃないし…タマゴの正体が分からない以上、預けるほかなさそうだ。

 

「……分かった、じゃあ、預けるね。」

「ええ、何か分かったときは、隊員にあなたをここに呼ぶように伝えておくわね。」

「うん。」 

 

 リサさんにタマゴを渡すと、「よし、」っと手を叩く音が聞こえて、その音がした方に顔を向けるとジン団長が両手を合わせていた。

 

 こっちに注目するように手を叩いたみたいで、みんながジン団長に注目すると、ジン団長は両手を降ろす。

 

「旅人にパイモン、それにアンバー、今回の件でかなり疲れただろう?今日はゆっくりと休んでくれ。」

「はい、それでは失礼いたします。」

「タマゴのこと、よろしくね。」

 

 私は2人に別れを言って、騎士団本部から出ると、気が緩んだパイモンが背伸びをした。

 

「ん~~~っとぉ、やっと終わったなぁ…。」

「2人ともお疲れ様。あんた達はこの後どうするの?」

「う~ん、タマゴはリサさんに渡しちゃって今やることはないから……夕食を食べて宿屋に戻るつもり。アンバーは?」

「わたしも、今日は今までより結構動いたからヘトヘトだし…一緒に夕食を食べてもいいかな?」

「おう、いいぞ。………にしても良かったのか?リサさんにタマゴを渡しちゃって?」

「うん、でもまさか、図書室にある本にも載っていないなんて思わなかったけど…。」

「まぁ、物事はそんなに上手くいくなんてことは無いから、仕方ないよ。」

 

 確かにアンバーの言うとおりだ。私も、果たしてそう簡単に進むのかなって思ってたけど、こうも上手くいかないとなぁ………。

 

「それもそうだね……あ、そうだ、アンバー。」

「うん?」

 

 ウサギ伯爵を入れる袋を借りていたことを思い出した私は、懐からその袋を取り出す。

 

「これ、ありがとうね。この袋がなかったら、タマゴをここに持って帰ることはなかったと思う。」

 

 アンバーに借りた袋を返そうとすると、アンバーはそれを手で制止した。

 

「ううん、この袋はあんたが持っててもいいよ。」

「え?……でもこの袋は………、」

「いいのいいの、この袋以外にも同じような物はあるからさ。それに、何かと使える場面がこの先きっとあるかもしれないじゃん。そうなったときは、遠慮せずこれを使ってね。」

「………分かった。じゃあ、この袋は貰うね。」

 

 私がアンバーから貰った袋をしまっていると、クウゥ~~~ゥ……っと甲高い音が鳴り響くと、パイモンが自分のお腹に両手をそえる。

 

「あ…。」

「あはは、そういえばお腹が空いてたんだったね。どこでご飯食べる?」

「そうだなぁ…、じゃあ『鹿狩り』でもいいかな?」

「全然いいよ!わたしもそこに行きたいなって考えてたんだ。」

「ん、じゃあ決まりだね。」

 

 ご飯を食べる場所が決まり、私達は鹿狩りに向かおうとすると、

 

 

 

 

 

      ────────────ッ

 

 

 

 

 

「っ?」

 

 突然どこからか声が聞こえ、私は思わず立ち止まって周辺を見てみるけど……声の主と思わしき人影は無い。

 

(今の声……どこから……?)

「お~い、蛍~!」

 

 パイモンの声が聞こえて、そっちに顔を向けると、少し離れたところにパイモンがこっちに手を振っている。

 

 私は謎の声が聞こえた場所を探るのをやめて、離れたところにいる2人に向かって歩いて行った。

 

 

 

 

 

 鹿狩りでご飯を食べ終えてアンバーと別れた後、私は予約していた宿屋の部屋に入り、時計を見ると短い針が午後七時過ぎを指していた。

 

 私は、ベッドの手前にある椅子に腰掛けて、窓からモンド城内を見る。

夜のモンド城は静まり返っていて、建物の明かりだけがモンド城を照らしていた。

 

「なぁ、蛍。」

「うん?」

 

 そんな景色を見ていると、ベッドに座っていたパイモンがふよふよと自身を浮かせ、私の膝にぽすっと座って何だか聞きたげな顔をしながらこっちを見てくる。

 

「何だかさっきから、ちょっと考え事をしてるような顔をしてるじゃんか?」

「あれ?そんな顔してた?」

「おう、思いっ切り。」

 

 うそぉ?全然気付かなかった……まぁ、そんな顔になってたのは多分あれだろうなぁと思い、私は膝に乗っているパイモンを撫でながら答えた。

 

「タマゴのことで少し…ね。タマゴを持ってくる前に、どうしてあんな所に置いてあったのか、ヒルチャールが何でタマゴを守るために洞窟を囲った集落を作ったのかまだ少し気になっちゃって…。」

「う~ん、確かにそうだよな…ヒルチャールは人と同じような社会性はあるけど、そのような知識は持ち合わせてないよなぁ…。」

「うん、それとさ、パイモンは鹿狩りに行く前に声みたいなのって聞こえなかった?」

「え、声?……………いや、聞こえなかったけど……まさか……」

「うん、私、聞こえちゃったんだ…。」

 

 そう答えると、パイモンは振り返りながら浮いて、私のほっぺたを小さな手でぺちぺちと触り始めた。

 

 ちょっとくすぐったかったけど、パイモンが少し青くなった顔をしていたから、それは直ぐに引っ込んだ。

 

「お、お前、何かに取り憑かれてないよな…!?だ、大丈夫なのかっ?」

「うん、多分だけど取り憑かれてはいないと思う。ここに来るまで、声以外に違和感っぽいのは無かったし。」

「そ、そうか………リサさん、何事も無ければ良いんだけど……。」

 

 パイモンが不安な顔でタマゴについて調べているリサさんを心配してるのを見て、私はもう一度パイモンの頭を撫でる。

 

 「きっと大丈夫だよ。例えそのようなことが起きても、リサさんはそう簡単にやられないと思うし。」

「……あぁ、そうだな!タマゴの正体が分かるまで、気長に待っていようぜ。」

「うん。」

 

 

 

 

 

 タマゴの件の話は終わった後、明日何をするか決めたりして、気が付くと短い針が10時を指していた。パイモンはもう既に鼻提灯を出して気持ちよさそうにぐっすりと眠っている。

 

 パイモンが気持ちよさそうに寝ているのを見ていると、私の方にも……睡魔がやってくる。

 

「ふわぁ……、私も、そろそろ寝ようかな…。」

 

 欠伸をしながらベッドに横たわって布団をかぶせて、今日のことを振り返っていると、鹿狩りに行こうとした時に聞こえた謎の声が頭によぎる。

 

 

     『────────────ッ』

 

 

 今となって考えると…あれは人の声とは違う別の存在の声では無いのだろうか…?

あの声はアンバーやパイモンに聞こえて無かったみたいだから、何で私にだけ聞こえたのか、余計にそれが気になるんだよなぁ…。

 

 人のじゃ無かったら、一体何の声だったんだろう?幻聴というような物じゃあ無かったし………タマゴと出会ってから、何だか変な気がする……

 

(いや…今更考えてもしょうが無いか。)

 

 私は考えるのをやめて身体を横向きにして、寝ているパイモンに「明日も頑張ろう、パイモン。」と小さな声で言って、私は睡魔に任せて目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、鳥のさえずる声が聞こえてきて、私の意識は少しずつ浮き上がり、眠気でまだ重い瞼を開ける。

 

 まだ眠気が取れていない状態でゆっくりと起き上がり、目を擦りながら時計を見ると五時を指していた。

 

「ぅ~~ん……まだ五時か…。」

 

 起き上がるのはまだ早いかと思い、〝楕円形の物体〟が一瞬視界に入ったけど、気にせずもう一度布団をかぶせて二度寝を…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………ん?〝楕円形の物体〟……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………えっ!?」ガバッ

 

 眠気が一気にどこかへと吹き飛んで、今度は物凄い速度で起き上がって枕の隣にある物体に目を向ける。

 

 その物体を見るや否や私はまだ夢の中にいると思ってほっぺたを抓ってみるけど……痛い…ってことは夢の中じゃ……………無い?………じゃあ……何で………、

 

 

 

 

 

 

 

 

     何でタマゴがここにあるの……!?

 

 

 

 

 




何故、タマゴが旅人のところに戻ってるんだ……?次回に続きます!
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