この話に色々と詰め込んだからめっちゃ長くなったかも…?
ええっと、とりあえず今の状況を整理しよう。
洞窟からタマゴを持ってきて、報告してリサさんに預けて、鹿狩りでご飯食べた後に宿屋で夜を過ごして、そして今日の朝起きたらタマゴが目の前に……
いや、普通にどういう事?タマゴは確か、リサさんに預けたはず……だよね?夜、あそこに行った覚えはないし……まさか、タマゴが自分でここに来た?
でも、ここ2階だよ?窓は閉まってるし、入るとしたら、出入り口じゃないと入れない…と思う。えぇえぇ…じゃあ、どうやって…?う~~ん…、ダメだ、起きたばかりだから頭が全っ然回らない…。
とりあえず、パイモンを起こそう。このタマゴ、流石に異常だ。
そう思って私は、まだ寝ているパイモンを揺すると、膨らみきった鼻提灯が割れて、閉じていた瞼がピクピク動いた。
「ぅ~ん…、どうしたんだぁ…?」
「もうちょっとねかしてくれよぉ、」って言いながら目をこしゅこしゅ擦って起きるけど、まだ眠気が残ってるみたいで目がまだ半開きになってる。
「おはよう、パイモン。」
「おう……おはょう」
「ねぇねぇ、これ、何だとおもう?」
そんなパイモンに私がタマゴに指さすと、「ん~…?」って言って枕の隣にあるタマゴを見ると、
「なにって……そりゃあ、リサさんにあずけたタマゴ………………ってえぇ!?何でタマゴがここにあるんだ!?」
さっきの私と同じ驚き方をして、目を擦って再度確認したり、「え、えっ、えぇ?」って言いながら明らかに困惑した顔をし始める。
「な、何でコイツがあるんだ?お前まさか、寝ながら風元素でここまで運んだのか?」
「いや、寝ながらそんな芸達者なこと出来ると思う?」
「そ、そうだよなぁ…。」
「私も一応聞くけどさ、私が寝ている間にあっちに行ってきた…?」
「いやいやいやいやっ!オイラがそんなことするわけ無いだろ!?」
「そうだよねぇ。」
「本部にもう一度持ってくるって言ってもよぉ、どうやって持ってくるんだ?」
「そこなんだよなぁ………。」
タマゴを持ってくるとしても抱えて持つしかないし、抱えて持ったら周りの人がビックリすると思うし…う~~~ん……、あっそういえば、アンバーからあの袋を貰ったんだった。
「えっと、確かここに……あった。」
「ん?それって確か、アンバーから貰ったやつだよな?」
「うん。また使う日が来るかもしれないって言われたけど、まさかこんなにも早く来るなんて思わなかったよ。」
そう言いながらタマゴを袋の中に入れて片手で持ってみるけど……やっぱり重い。
「う~ん、この重さにはちょっと慣れないなぁ…」
「けど、これでタマゴをどうやって持ってくるかは解決できたな。それじゃあ、準備が終わったら出発しようぜ。」
タマゴが入った袋を一旦棚の所に置いて、ある程度準備を整えてもう一度袋を持って〝僅かに開いている扉〟を開けて部屋を…………
ってあれ?何で開けっぱなしになってたんだろう?昨日確かに閉めたはずなのに…。
「……まさか…ねぇ……。」
閉まりきっていなかった扉を見て、ある考えが頭によぎるけど、その考え事をやめて下へと降りてご飯を食べ終えた後、本部へと向かった。
本部に着いて中に入ると、何だか少し慌てた様子で隊員が何か探しているのを見掛け、どうしたのか話しかけてみる。
「ねぇ、何か探してるみたいだけど、何を探しているの?」
「あぁ栄誉騎士か、実は、君がリサさんに預けたっていうタマゴが突然消えたらしくてな、皆でそれを探してるんだけど…どこにもそれっぽい物は見つけられてないんだ…君は何か知ってるかい?」
やっぱり、タマゴを探してたみたいだ。私は「えっと、もしかしてだけど…これのこと?」と言ってタマゴが入っている袋を見せると、隊員が驚いたような表情になった。
「ん?その袋に入ってるのって、もしや………リサさん!!ありましたー!」
隊員が大声でそう叫ぶと、叫んだところにいたリサさん……と、ガイアさんがこちらに顔を向けて、こっちへと向かってきた。
「見つかったの…あら、旅人さんじゃない。」
「お、誰かと思えば、かの栄誉騎士じゃないか。また面倒ごとに巻き込まれてるようだな?」
「あれ、ガイア?お前もタマゴを探してたのか?」
「あぁ、リサに手伝ってくれって頼まれてな。………にしても聞いてたとおり、摩訶不思議なタマゴだな…どこでコイツを見つけたんだ?」
「あっいや、『見つけた』と言うよりも、『あった』って言う方が正しい…のかな?」
「…?どういうこと?」
「………という訳なんだ。」
「そうだったの…。道理でどこを見ても見つからないわけだわ…。」
部屋に入って、今朝の事を話し終えると、リサさんは指をこめかみにあてながら「タマゴがそんなところまで動けるのかしら…?」なんて呟きながら昨日と同じようにタマゴを見る。
ちなみにジン団長はバーバラの所に行ってて、今は席を外しているそうだ。
「オイラもビックリしたぞ…朝起きたら蛍の隣にあったなんて思わないじゃんか…。」
「へぇ……タマゴがねぇ……………隊員が言ってたのって、ひょっとしたらコイツのことだったのかもな…。」
「うん?何が?」
何か心当たりがあるのか、そう呟いたガイアにそう聞いてみると、「ん?あぁ」と言って組んでいた腕を解いて言った。
「実はここに来る前に、一人の隊員と会ってな、何やら物を探してるようだったから話を聞いてみたら「夜に動く謎の物体を見た」らしくてな。」
「〝動く物体〟……?いつそれを見掛けたんだ?」
「確か……………夜12時ぐらいって言ってたな。それで、ソイツを追いかけていたら突然姿を消したそうだ。物体の大きさは、そのタマゴと同じぐらい。」
見た時間や、大きさを聞いて、再度タマゴを見てますますこのタマゴの異常性に不安を抱いた私は、そういえばと思い、昨日タマゴについて調べていたリサさんに何か分かったか聞いてみる。
「リサさん、昨日このタマゴのことで、何か分かったの?」
「…いいえ、資料の一部は見たんだけど、それらしき物はなかったわ。」
「……そっかぁ…。」
一部とは言え、禁書エリアにもこれの情報がなかったとすると……このタマゴは…、一体何なんだろう…?
「ふむ…なら、別の方法で探してみても良いんじゃないか?」
そう考えていると、ガイアさんがそう提案をしてきた。
「別の方法?」
「あぁ、正体が分からない、資料にも記されてないとすりゃあコイツが作られたと言うことも考えられる。それで、お前の手元に渡るように作ったと思う奴と言えば…。」
作ったと思う奴──それを聞いて、頭の中である存在が思い浮かぶ。
「……アビス?」
「えっアビス?やっぱりアイツらがコイツを作ったのか?」
「その通り、その中でコイツを作った奴を探せばいい。まぁ、これはあくまで可能性としてだし、それ以外にタマゴの世話をして孵化させるって言う手もあるが、その直後になにかがおきたんじゃあまずいだろ?」
「…確かに、アビスならこのタマゴのことで、何か知ってるかもしれないわね…。ジンが戻ってきたら、この事を伝えるから、あなた達はアビスがいるところに行ってタマゴの正体を探ってちょうだい。」
「おう、それじゃ、気楽に行こうか。」
「うん。」
と言う訳で、タマゴのことを知っているであろうアビスを探そうと、風龍廃墟にやって来たんだけど………、
「……見つからないね、アビス。」
「まあ、それだけ数が少なくなった証じゃあ無いか?」
「それは、そうなんだけど…。」
トワリンという攻撃の要を失ったからなのか、一向にアビスと遭遇しない。
「なぁガイア、本当に此処にタマゴを知っていそうな奴がいるのか?」
「いるかもしれないし、いないかもしれない。まぁ、アビス達も知らないってなったら、また別の方法で探せばいいだけだしな。」
そう言って、前を歩くガイアさんに少し気になっていたことを聞いてみる。
「そういえばさ、どうしてアビスがタマゴを作ったんじゃないかって思ったの?」
「あ、それオイラも気になってたぞ!」
「あの時も言ったが、あくまで可能性として言っただけだ。それ以外で言うなら、そう思った理由がもう一つあってな。」
「もう一つの理由…?」
その言葉に疑問の声をかけると、珍しく慎重な表情を浮かべて口を開いた。
「旅人がそのタマゴを拾ったかどうかは分からないが、ここにいる魔物が〝何か〟に怯えているのを偶然見掛けてな。俺が外に出ていたときも、隊員がモンド城の近くに本来現れないはずの魔物まで出て来たという知らせを聞いたときは、流石の俺も驚いたよ。」
「え!?そ、そうだったのか?」
「あぁ、本来現れないはずの魔物がどうしてそこまで来たかは定かじゃないが、分かることは、その魔物もモンド城を目指していたって所だ。」
そ、そんなことがあったんだ……。もう一つの理由を聞いた私は、ふと、昨日のことを思い出す。
「………そういえば、昨日、私もそれと似たようなのと遭遇したかも。」
「え?………あっ!オイラ達を襲ってきた魔物達か!」
「お?旅人もそれに出くわしてたのか。なら話が早いかもな。」
「うん………やっぱり、このタマゴが原因……なんだよね?」
そう言って、私は背負っている袋の中にあるタマゴを見ると、ガイアさんはその通りであるかのように頷いた。
「まぁ、そう言うこった。んで、魔物が怯えるんだったら、アビスが作った物じゃあないかって予想したって訳だ。」
「魔物が怯える程………、このタマゴの中って一体何が眠ってるって言うんだ……?」
タマゴを見ながらパイモンがそう呟いていたら…………周りが急激に寒くなるのを感じ、私はパイモンを抱いて横に回避するようにその場を離れる。
「っ!」
「おわあぁ!?」
何かが突き刺さり、一瞬で凍るような音がして、振り返ってさっきまでいたところを見ると、地面が霜を張っていた。
「これって…」
「噂をすれば、だな。」
私とガイアさんは凍った地面を見て、空中に微かに残る冷気を辿ると、宙に浮く獣のような魔物がこちらに杖を向けて睨んでいた。
「チィ、当タレバイイモノヲ……、人ノ気配ガシテココニ来テミレバ、我々ノ計画ヲ台無シニシタ者達デハナイカッ!」
そう言って獣のような魔物……アビスの魔術師は杖に再び冷気を纏わせ、さっきと同じ攻撃を繰り出そうとする。
それを見て、私は剣を抜かないで両手の平をアビスの魔術師に見せて、攻撃はしないことを示す。
「待って!私達はあなた達に聞きたいことがあってここに来たの!」
「聞キタイコト?フンッ、オ前達ガ何ヲシヨウガ我々ノ計画ヲ簡単ニ教エルワケ無イダロウ!」
「ありゃ残念、あんたらが知っていそうな物を持ってきて、コイツがなんなのか聞こうと思ったんだけどなぁ…?」
ガイアさんがこっちに顔を向けながらそう言ってきて、私はタマゴが入った袋を前に出してアビスに見せて、作った物なのか聞いてみる。
「このタマゴは、あなたが作った物なの?それとも、別のアビスなの?」
「アァ?ナンダソレハ?ハァ………ドウセドッカノバカガ落トシタ物ニ………………………………………ン?」
警戒を解かないアビスがタマゴを見た瞬間、じ~~~っと見つめて硬直する。
あれ?見つめるって事は、もしかしてこのアビスが作った物なのかな?
そう考えていると、見つめていたアビスの顔がみるみるうちに青ざめて、全身を小刻みに震え始める。どうしたんだろうと思った瞬間、
「ヒッ………ヒイィイイィイアアアァア!?」
悲鳴に近い声を出して無数の氷の槍を生成して、こっちに飛ばしてきた!?
「うわわわわ!?」
「うおっとっ、」
いきなりの攻撃に驚いて、慌てて猛ダッシュで回避をするけど…、なんでいきなり……?
「ねぇ、一体どうし「ヤメロオォォ!!!」えっ?」
「ソイツヲ見セルナァッ、近付ケルナァ!!!」
私が一歩踏み出そうとすると、さっきとは打って変わって恐怖に近い声でそう言いながら杖をぶんぶん振り回してこっちを近付けさせないようにしてる…本当にどうしたの……?
「なぁお前、本当にコイツのこと知らないのか?」
「知ラナイッ」
「じゃあ何故タマゴを見た瞬間にそんなに怯えているんだ?コイツに一体何が秘められている?」
「分カラナイッ分カラナイガッ、ソイツハ……我々ニトッテソイツハ…………」
そんなアビスにお構いなしにガイアさんが問いかけるけど、アビスの様子は依然と変わらず、こっちに顔を向けないまま顔を大きく横に振りながら言ってるんだけど…
何だかアビスの様子が今さっきよりも段々と……こう、発狂って言えば良いのかな?それと似たような感じになっていくように見える。
「知ラナイッ、知ラナイ知ラナイシラナイシラナイッッッ……オマエハ……、オマエハ……、オマエハオマエハオマエハオマエハ……」
「オマエハ一体……誰ナンダアァアアア!?」
そう叫んだ瞬間に、さっきと同じように霧の中から無数の氷の槍が出て来て、こっちに飛ばしてくる。
その槍をまた猛ダッシュで回避をしながら近くにあった岩に隠れてやり過ごすと、刺さる音が止み、一度岩陰から顔を少し出すと、また無数の氷の槍が横向きの雨のように降り注いで来たので顔を引っ込ませるけど、これじゃあ前に出ることが出来ない…。
「こりゃあ、聞くどころじゃあ無くなったな。どうする、旅人?」
ガイアさんにそう聞かれて、タマゴを見つめながら考える。アビスがああなってしまった以上、倒すしかない…けどタマゴを持った状態での戦闘は良くないし……、よしっ。
「パイモン、あなたに預けるから、この岩から絶対に離れないで。」
「おう、分かったぞ!」
タマゴをパイモンに預けて、虚空から剣を取り出してガイアさんに顔を向けると、ガイアさんも剣を取り出していた。
そして、雨のように降り注いだ氷の槍が止んだ瞬間に、同時に岩陰から飛び出す。
飛び出してきた私達に気付いたアビスが、近付かせまいとまた氷の槍をこっちに飛ばしてくる。
普段なら避けるか、剣で受け流すけど、攻撃をよく見ると、恐怖のあまり精密に撃つことができていなく、乱射をしてるかのように大きな隙間が出来ているのに気付いた。
私はその隙間を縫うようにして走って近付くんだけど、一定の距離になるとアビスは一気に後ろに下がる…あぁ、もう少しだったのに…。
「クルナ、クルナクルナァ!!」
そしてまた氷の槍を乱射する……これが続くってなると、埒があかないと感じ、風元素を地面に設置し、飛び上がって氷の槍の群れの中に突っ込む。
氷の槍を足場にしながら近付いて、頭上までジャンプした私は、風元素を纏わせた剣をバリアを張っていないアビスに叩き付けると、アビスは凄まじい速度で真っ逆さまに落下して、地面に叩き付けられた衝撃で土煙が上がる。
地面に叩き付けられたアビスが浮遊しようとするけど、そこにガイアさんが剣を突き刺して氷を地面に張ると、アビスの身体が地面に拘束される。
「お前、俺のこと忘れてただろ?」
「ッ!?クソォ、クソクソクソクソクソォッ!!」
アビスは必死にもがこうとするも、完全に身動きが取れなくなった身体はびくともしない。
そこに私が落下の勢いでアビスの急所に剣を突き刺す。急所を刺されたアビスは、声を発すること無く、やがて息絶えた。
アビスが塵となって完全に消えるのを確認して、地面に刺さった剣を抜いた。
「ふぅ……危なかったぁ…。」
「流石は栄誉騎士、氷の槍の群れに自ら突っ込んだ挙げ句、地面に叩き落とすとはな。」
「私も、流石に無茶振りだと思って、全身に薄い風を纏わせてたから怪我無くいけたよ。」
氷の槍の群れに突っ込む前に風の鎧を纏ったことを明かすと「風無しでもいけるんじゃ無いか?」って言われたけど、生身で突っ込んで冷凍肉にされるよりはマシだよって言った。皆もこんな無茶はしちゃダメだよ?
「ひぃ、ひぃ………ふぅ、や……やっと追いついた…。」
そこにパイモンが息を切らしながら私の右肩に乗っ……って重!?
「わ、わ、ちょっ、パ、パイモン、重い重いっ。」
「え?……あっ!ごっごめん!」
重い事を伝えるとパイモンがバッと慌てて肩から離れると、右側が一気に軽くなって、元の体勢に戻ることが出来た。
パイモンの背中をよく見ると、タマゴが入ってある袋を背負っていて、どうやら重かった原因がタマゴだったらしい。
「おいおい大丈夫か?見るからに重たそうじゃないか。」
「おう、大丈夫だぞ。思った以上に重かったのは予想しなかったけど…。」
そう言いながら背負っている袋を降ろして、ふぃ~~っともう一度私の右肩に乗ったところで、私はタマゴに視線を向ける。
あんなリアクションをするとは思ってもいなかったなぁ…。
「まぁ、あんな反応だけじゃあ何も分からないな。」
ガイアさんがこの事を予想していたようで、アビスが消えた所を見てそう言う。
「でも、あいつはこのタマゴを何も知らないって言ってたぞ?」
「恐怖に満ちた声でそう言われても分からないことだってある、だから、別のアビスにもさっきと同じことを聞くしかない……そうだよね?」
「その通り。もし同じ反応をすると思うなら、このまま戻るのもあるが、どうする?」
ガイアさんにそう聞かれて、私は少し考える。
他のアビスも同じ反応をするならモンド城に戻るのもいいかもしれない……けど、それじゃあガイアさんがさっき言った事がまた起きるってなると、一刻も早く正体を知らなければならない。そうともなれば……、
「…………いや、このまま他のアビスにも聞いてみよう。」
「そうこなくっちゃな。」
そうして私達はここ以外の所にいるアビスにこのタマゴのことを聞いて回ることにした。
けど、結果は同じだった。
さっきのアビスみたいに攻撃をして遠ざけようとする者や、見た瞬間に異空間に繋がっていそうな裂け目を生成して、そこに飛び込んで逃げる者等々……反応は違えど、同じ結果であることに変わりは無かった…。
ならば、ヒルチャールはどうだろうと、パイモンが提案をしてきて、ヒルチャールがいそうな所に向かう。
う~ん、でも洞窟を守っていたヒルチャールとは別個体のため別の反応をすると思うんだよなぁ。
そう思いながら小規模のヒルチャールの巣を見つけ、わざとタマゴを見せびらかしてどんな反応をみせたかというと……
何と、タマゴを奪還するかのような動きを見せたの。
それが何だって話なんだけど、簡単にまとめると、あの洞窟の前に作られていた集落のヒルチャールと似た動きというか……兎に角、それと同じような感じ。
とはいえ、ヒルチャールに渡したとしても、何をしでかすか分からないため、ヒルチャールを倒した後、敵がいなくなったのを確認すると、私は武器をしまい、タマゴを前に出す。
結局、アビスでも何の情報を得ることは無かったことに、私は少し落ち込んでいると、パイモンが私の代わりにガイアさんに話す。
「結局、何も分からなかったな…。」
「そうだな……まぁ、あの時も言ったように、あくまで可能性としてだったから、そう落ち込むこともないぜ?」
「そうだね……。」
ガイアさんに肩をポンってされた私が頷いて、タマゴを見ていると…………………………
ガサガサッガサガサッ
タマゴが袋越しに小刻みに揺れる。分かったことと言えばアビスに遭遇した時に、こんな感じに揺れることだけ…である。三回目の時にこれに気付いて、アビスにだけ反応しているのだと考えてた………けど、今回は様子が違う。
さっきまでは小刻みに揺れていたタマゴは、分かりづらいけど大きく揺れていて、コンコンッって何だか内側から突っついているような感じが手に伝わってくる。それに、今回はアビスがいない………てことは…もしかして……
「産まれようとしてる?」
「えっ本当か?」
「うん、間違いないよ!」
「なら、急いで本部に戻ろう。」
孵化し始めていると分かり、私達は急いで本部へと向かって早歩きで戻っていった。
★★★★★
タマゴが孵化するとわかった3人は、急ぎ本部に戻り、戻っていたジン団長やリサにこの事を伝えた後、昨日と同じ部屋の机の上にタマゴを置く。
孵化しようとしているタマゴは、必死に殻を割ろうと未だに揺れており、タマゴから顔を出すのは、まだ少し時間がかかりそうだった。
そこに、部屋の扉が勢いよく開かれ、隊員から話を聞いたアンバーが慌てた様子で入ると、ガイアがいることに驚く。
「蛍っ、隊員から聞いたけど、タマゴが孵化するってホント……ってガイア先輩?先輩もこのタマゴのことを聞いてここに来たんですか?」
「いや、旅人と一緒にアビスとコイツの関係性を調べててな、その最中にタマゴが孵化するってことで急いでここに戻ってきたわけだ。」
アンバーにそう聞かれたガイアはそう答えていると、リサが未だに揺れ動いているタマゴに近付き、不思議そうに見つめる。
「それにしても、まさかアビスがそんな反応をするとはねぇ……アビスにとって脅威となる存在…興味が湧くばかりね。」
「となると、アビス全体の天敵である可能性はあるな。」
アビスの天敵……それを聞いた蛍は、どんな生き物が産まれるのかワクワクすると同時に、少し不安な気持ちになる。
アビスの天敵となれば、もしかしたら我々が想像していた生物とはかけ離れていて、私達人類も敵対しているのであるならば、甚大な被害を被るかも知れない……。
そう考えていると、キラキラと周りが輝いていそうな顔をしているアンバーが蛍に話しかける。
「ねぇねぇ蛍、このタマゴの中から何が出て来るのかな?」
「えっ?……う~んそうだなぁ……、金属の殻に覆われているから、全身鉄で出来た生き物……だったりして。どんな生き物も雛なら結構可愛いかも。」
「そうだね!「でも…、」うん?」
「あのタマゴの模様を見て少し思ったんだけど…もし、タマゴの中からこの世のものではない何かが産まれたとしたら…一体どうすれば良いんだろうって思って…。」
今回のことで、タマゴの中の存在は一体何なのか想像が付かなくなった蛍がそう言うと、アンバーが蛍の左肩にポンっと手を優しく置く。
「大丈夫だよ。そうなったときは、私達皆で何とかしよう。」
「……うん、そうだね…。」
アンバーの答えに蛍は頷いていると、タマゴが大きく揺れ始めた。
コンッ……ココンッ……さっきよりもリズミカルに揺れ始めたタマゴはクルクル回り、ピタッと止まった瞬間…、タマゴが意思を持ったかのように大きく跳ねるように動いた。
もう一度言おう、大きく跳ねるように動いたのだ。
「「え?」」
タマゴはそのまま床に着地し、その場で横にコロコロと転がった後、また跳ねるように動く。
その光景に、蛍とアンバーが反応できないでいると、パイモンが驚きの声を上げる。
「お、おい?タマゴっ、タマゴが動いたぞ!?」
パイモンが驚きの声を上げていると、タマゴの動きはより奇抜になっていく。
横に飛び跳ねるのを繰り返したり、時にその場で一回転したりと、この場にいる全員が、奇怪な動きをし始めたタマゴから目を離せなくなっていた。
「元気なタマゴだなぁ、殻を割ろうと必死になりやがって。」
「いや、タマゴは普通、こんなに動く物じゃないわよ。………ないわよね?」
「いや、私に聞かれても…。」
動くタマゴを見て、冗談交じりな事を言ったガイアにリサがツッコミを入れる。
そんな中、タマゴは階段を上っている途中、手すりに飛び乗り、周りを見渡すように動くと、ジン団長の頭上目掛けて高くジャンプする。
そしてそのまま、落下の衝撃を和らげるように一回転をし、ジン団長の頭の上にシュタッと乗った。
「あう!?」
衝撃はなかったものの、ジン団長は自分の頭の上に着地したことに驚き、団長らしからぬ声を上げて床に座り込んでしまった。
「ジ、ジン団長?大丈夫?」
「あ、あぁ。…………」
蛍に大丈夫であることを伝えると、頭の上で止まっているタマゴに気付かれないように、そっと両手を近付けて、パシッとタマゴを掴んだ………が、
シュカッ
「おあ?」
タマゴが直ぐに頭上から飛び跳ねて両手から逃れると、床にまた着地する。
「お、おい何をしてんだ!タマゴを捕まえるぞ!」
パイモンの声にハッとなり、蛍たちはタマゴを捕まえようとすると、タマゴはそれに気付いたのか、慌ててコロコロと転がり始める。
「あ、まてぇ!」
アンバーがタマゴを追いかけ、両手で掴もうとするも、タマゴはその外見とは思えないほどの機動力ですり抜けるように回避し、蛍がそれをカバーしようとするが、今度は右に跳ねて避ける。
「ジン団長っ、そっちに行ったよ!」
「分かっている!」
タマゴがジン団長の方に行くと、ジン団長は次にどういった動きをするのか予想し、集中した瞬間にタマゴが左斜めに動こうと全身を大きく傾ける。
(今っ!)
その一瞬の隙をつき、飛び込むような勢いでタマゴを捕まえようとする。
このままいける……そう思ったジン団長だが、何とその状態でタマゴは逆方向に飛び跳ねた。
(なっ、フェイントだと?)
そう思っている間にタマゴはジン団長の後ろにおり、タマゴはそのまま一直線に跳ねながらどこかへと向かう。タマゴの向かっている先は、先程アンバーが勢いよく開けた扉だ。
「!しまった!」
蛍はタマゴがここから逃げる気だと考えてドアの方へ向かおうとすると、それよりも先にガイアがタマゴの前に出て、行く手を阻む。
「おっと、逃がさねぇぜ?」
「……!?」キキイィィィッ
タマゴもこれは予想してなかったようで、驚いたような動きで急ブレーキを掛け、ガイアから離れようと大きく飛び跳ねた。
しかし、その飛び跳ねた先には、後ろから捕まえようとしたアンバーがおり、アンバーは突然こっちに来たタマゴに反応できず……
ゴチーンッッッ
「わぷ!?」
タマゴがそのまま、アンバーの額にぶつかってしまった。
アンバーが目を丸にして仰け反るのを尻目に、ぶつかったタマゴは、弧を描きながら一回転をし、そのまま床に着地────
「せいっ!!」
しようとしたところで蛍がタマゴの着地地点にスライディングで入り、タマゴをキャッチした。
タマゴをキャッチした蛍は、着地時やさっきの衝突での衝撃で殻にヒビが入っていないか、タマゴ全体を見てどこにもないのを確認すると、ホッと安心した。(孵化しようとしているので少しひび割れても良いかもしれないが、念のため。)
「いったた…、本当に元気なタマゴだね。あんなに機敏に動くなんて…。」
「だがまぁ、これで団員が言っていた『夜に動く謎の物体』の正体がコイツだって事が分かったな。」
「……しかし……本当に孵化する前の動きなのか…?それにしてはまるで、こちらの意図を認識していたような感じだったな。」
「確かにそうねぇ…もしかしたら、中にいる雛がさっきまで良い夢を見てたんじゃないかしら?」
リサの予想に、「そうかもね」と蛍は言いながら立ち上がり、動かなくなったタマゴを先程の机の上に置こうとする……と、
ピシッ
「っ?」
何か割れるような音が蛍の耳に入り、何の音だろうとタマゴの横を見ると、僅かにヒビが入っているではないか。
その小さなヒビは次第に広がっていき、全体まで広がると、ピクピクと動き始める…孵化が始まったのだ。
蛍は慌ててタマゴを置き、後ろに二歩、三歩と下がる。
全員がタマゴの方に視線を移すと、タマゴが横に倒れ、ヒビは目視できるところまでに大きくなっていた。
鋼鉄で出来たタマゴの殻が雛の力で大きさや形が分かれていき、次々と小さな欠片がポロポロと机の上に落ちていく。
パキンッ
「キュゥゥ……」
そして遂にはタマゴから顔と思わしきものが見え始めた…のだが、あともう少しの所でヒビが入らなくなる。あろうことか、今ので疲れたのか、休んでいるような音が聞こえる。
「がんばれっ……あともうちょっとだぞ…、がんばれ!」
「………っ!」
孵化しようとしているのを見て、パイモンが産まれようとする雛に鼓舞し、蛍は固唾を呑んで両手を前に組んで祈り、その他4人も見守る。
皆に見守られる中、中の雛が動き始め、ヒビが更に大きくなり……そして、
パキイイィィンッ──と殻が大きく割れ、タマゴから殻を被った顔が出て来た。
「キュウウゥ…」
「いやった!産まれたぞ!!」
「よ、良かったぁ。」
雛が孵ったことにより、見守っていた皆の緊張が解け、安堵の息をつく。
「ウゥ…キュイッ」
雛はキョロキョロと周囲を見渡すが、見えないことが鬱陶しかったのか、被っている殻をぽいっと後ろに投げると、邪魔だと言わんばかりに次々と殻を机に落としていくと、その姿が露わになった。
メタリックな蒼を主体とした色で、鋼に覆われた外殻……いや、装甲はどんな武器も通さなそうな雰囲気であり、それが尻尾まで続いている。尻尾は付け根から先まで段々と細くなっており、攻撃時に鞭のように使うと予想できる。
そして2本脚は強靱に発達しており、大地を蹴る力はかなり強そうで、其れ等を支える身体は、全身が機械仕掛けとなっていた。
そして…何よりも全員が目を惹いたのは…………
パキィッ「キュアアァアンッ!!」
銀色に輝く鎖により固く縛られている…………黒く変色した翼だった……………。
やっと、タマゴから雛(?)が孵った……。