その奇跡が何回も起きたらそれは奇跡と呼べるだろうか 作:トモットモ
俺の名前は青沢鳥男(あおさわとりお)。20代のしがないフリーターだ。今俺はコンビニ帰りでレジ袋片手に道を歩いている。
時刻は夜9時を過ぎている。人通りも少ない。さて、と明日は休みだな。家帰って、食って、風呂入って、寝るか。いつものルーティーンだ、と思っていたら
「ん?」
道端の街灯の傍に3人の儚げな少女たちがいた。こんな時間に何してるんだ? まあ、いいか。
俺が気にせず通り過ぎようとすると、少女たちの真ん中の1人が俺にか細く声を掛けてきた。金髪ツインテールだ。
「もしもしそこのお兄さん」
「ん? 俺?」
一応確認を取ると、少女の1人はコクンと頷いた。
「はい、あなたです」
「そ、そうか。えっと、俺に何か用か?」
すると俺から見て左の少女が答えた。黒のセミロングだ。
「はい、私たちにパンとお水を恵んでくださいです」
なぬ? 俺はちらっと片手のレジ袋を見やる。なぜ中身を知っている? 偶然か?
「ま、まあ別にいいけど」
まあまあ買ったしな。するとまた今度は俺から見て右の少女が言う。茶髪ショートボブだ。
「はい、さすればあなたに奇跡を授けるです」
え? 奇跡? 俺がポカンとしていると、少女たちはゆらゆら~っと俺に近付いてきた。
「お、おい……」
俺が突然の事態に戸惑っていると、金髪ツインテ少女が真下から俺を覗き込む。
「私たちは奇跡を起こせるのです。マジモンのマジですよ?」
黒髪セミロングの少女がコクンと頷く。
「それな、です」
茶髪ショートボブの少女が親指を立てる。
「ですです。いいね、です」
いや、話進めすぎだろ。まず奇跡ってなんだよ。ったく。疲れてるってのに。でもなんだかな。不思議と居心地はいいな。
「はあ~~~~~~」
俺は長い溜息をつくと、レジ袋の中から、バターロール6個入りの袋とミネラルウォーターのペットボトル3本を取り出した。
「ほらよ」
少女たちにそれらを差し出すと、我先にと言わんばかりにワラワラと群がってきた。おいおい、慌てんなって。
「感謝しますです」
金髪ツインテ少女が顔を綻ばせる。
「優しいですね」
黒髪セミロングの少女が俺の腰をポンポンする。
「チョロいですね」
茶髪ショートボブの少女が余計な一言を言う。
「はあ……やれやれだ」
俺は力なく首を振る。これで満足か?
少女達はバターロールをモグモグして、ミネラルウォーターをクピクピした後に、俺に告げてきた。
「ではあなたに」
「奇跡を授けるです」
「どんな奇跡を望みますですか?」
イタい子トライアングル来ちゃったかぁ~~~~~~。
俺は、はあと息をついた。しゃーねえ。テキトーに合わせてさっさと帰るとすっか。ん? なんかこの娘たち……奇跡か。よし、決めた!
「奇跡、授けてくれるんだよな」
俺がその場のノリに合わせるように言うと3人のおにゃのこたちは一斉に頷く。
「はい」
「ですです」
「あなたの奇跡をお聞かせくださいです」
俺は一回コクリと頷くと、ゆっくりと口を開いて言った。
「じゃあお前ら、……生きろ」
「「「!?」」」
3人は、俺の言葉に驚きの表情を浮かべた。俺ははあ、と息をつく。
「そんな今にも力使い果たしますみたいなシケた面してんなや。毎日少しずつでいいから、楽しく生き延びてみせろ」
現に俺がそうだしな。
俺の〖奇跡〗を聞いて3人は互いに顔を見合わせる。そして輪になって、ひそひそと話し始めた。
「……びっくりしたです」
「ですです」
「まさかそんな奇跡の使い方が……」
俺もう帰っていいか? 眠ーんだけど。
俺がふわわんと欠伸をしちょると、金髪ツインテールのおにゃのこがクルッと俺の方を向いた。
「お待たせしましたです。協議の結果……可能と判断したのです」
「そいつあ、よかった」
俺はパチパチと軽く拍手。もう帰っていいか?
「それではあなたに奇跡を授けるです」
「準備はいいですか?」
「いきますですよ」
「へーへー」
少女たちが順に、念を押すように俺に言う。俺はそれを軽く聞いてお返事お返事。
「「「せーのっ」」」
カッ!!!!!!!!!!
眩い閃光。のわーっ! と俺は慌てて目を塞ぐ。
そして――
「き、消えた……」
3人の儚げな少女たちは忽然とその場から姿を消した。俺は、暫くぼーっとその場に立ち尽くしていた。
とある奇跡を呼び起こす少女たちとの出会い。これからどんな奇跡が起きるのか。次回に続きます。