「……ヤマメ! まさかコイツは……!?」
「……そのまさかのまさかだよ。……
「ええ……!? それって……!」
「……なんとかしてやり過ごさないと……」
「おい。何を、こそこそ話してるんだ? 私も、まぜてくれないか」
「ひええ!!? お助けぇ!!?」
にとりは、よほど鬼が怖かったのか、お空を背負ったまま、その場にうずくまってしまいました。
……そういえば河童にとって鬼は天敵でしたっけ。
「ふーん。お前らか。パルスィが言ってた怪しいヤツらってのは……」
「……イエイエ。ワタシタチ、怪シイ者ジャアリマセンヨー? チョット迷イ込ンダ、タダノ通行人デース。ソレジャ、失礼シマース……」
と、穣子たちは、とっさに謎の通行人を装って、その場を逃げようとしますが、そうは問屋がおろすわけがない!
すかさず勇儀が目の前に立ちふさがります。
「待ちな。ここを通りたかったら、私の屍を超えていけ!」
そう言って勇儀は杯の酒に口をつけると、ニヤリと笑みを浮かべ、こちらを見下ろしています。
この余裕っぷり。こいつぁ間違いなく強敵です!
「ぐぬぬー! 鬼がなんだってのよ!? 私は神よ!? いいわよ! やってやろうじゃない! ほら、これでも食らいなさいよ!」
ヤケになった穣子が弾幕を放ちますが、勇儀は、いともたやすく手でプイッと払いのけてしまいました。
「ぬぬぬぅ! これならどうよーー!? 神ナメんな!」
懲りもせず穣子が弾幕を放ちますが、勇儀は、いともたやすく足でプイッと払いのけてしまいました。
「……おいおい。こんなモンなのか、オマエの力は。前にあった神さまはもう少し強かったもんだけどな?」
勇儀はあきれた様子で、盃に口を付けます。
「……よし。それじゃ、私のターンと行こうか!」
勇儀が人差し指を立てると、指の先に、バチバチと音を立てて光の輪っかが現れます。そして彼女は、それを穣子の方に向かって投げつけました。
「ギャーー! みんなよけてーーー!?」
四人はなんとかその場で伏せて攻撃をよけましたが、その代償として後ろにあった家に命中し、爆発四散して壊れてしまいました。なんという威力!?
こんなの食らったらひとたまりもありませんよ!?
「ほほう。よけたか。だが、これはどうかな?」
勇儀はすぐに、さっきの光弾を構築します。しかもさっきより大きいヤツを。
「ひえぇ!? おたすけーー!?」
穣子たちは思わずその場に伏せてしまいます。と、そのとき!
「うにゅーーー!! 穣子たちをいじめるなーーーー!!」
お空の胸の赤い目が光ったと思った次の瞬間、そこから極太の光線が発射されます。そして……
「ぬおおおおっーーー!?」
不意を突かれた勇儀は、そのまま吹っ飛ばされ、奥の家屋に吹っ飛んでいきました。
「お空……! オマエそんな力が……!?」
「ヤマメ。ボーっとしてる場合じゃないわ。今のうち逃げるわよ!」
「ほい来た!」
「おっけー!」
「うにゅーん……。もう、うごけないよぉ……」
「大丈夫。私が背負ってやるよ!!」
「にとりー。ありがとうー」
と、穣子たちが、その場から逃げようとしたその時です。
「ったく……。なんなんだよ。人が気持ちよく眠ってたら、いきなり家ぶっこわれるし……」
声に気づいた穣子たちが、振り返るとそこにはいかにも不機嫌そうな顔した幼女が。しかし、その頭には二本の大きな角。と、いうコトは彼女も……
「ね、ねえ、ヤマメ……?」
「……ああ。察しの通り。
「そりゃこっちのセリフだよ!? 久々に地底に帰って、いい宿に泊まって、いい酒のんで、いい気分だったのによぉ……!」
「ひっぇええ!? ごめんなさい! どうか命だけは勘弁をー!」
しかし、萃香はおびえる穣子たちには目もくれず、ひっくり返っている勇儀に近づくと、いきなり彼女を蹴っ飛ばします。
「おい!! 勇儀! お前の仕業だな! ノンキに寝てんじゃねーよ! このボケナス!」
「いでっ!? ……おいおい乱暴しないでくれ。お前の蹴りけっこう痛いんだぞ」
「うるせえ! こちとら気ぃ立ってんだよ! さっさとワケを説明しろ!」
「……ああ、わかったから、そんな怒鳴るな。……パルスィのヤツに頼まれたんだよ。ほら、アイツら……」
勇儀が、腰が抜けてしまってへたり込んでいる穣子たちの方を指さすと、萃香は、ニヤっとして言い放ちます。
「……ふーん、そうか。おい! オマエら! この落とし前はつけさせてもらうからな! 覚悟しなよ?」
そう言って彼女が四股を踏むと、まるで地震のようにあたりがズンと揺れます。
さすが鬼だけあって、見た目が幼女でもかなりパワーがありそうです。
「……ねえ? ヤマメ。これってもしかしなくても、ヤバいよね……?」
「うん、絶体絶命ってヤツ。……ああ、今日が私の命日だったのか……。思えば短い人生だったなぁ」
「い、イヤだぁー。まだ死にたくないよぉー! わ、私にはまだやりたいコトが残ってるんだぁー!」
「うにゅーーん! うえーーんー!!」
「うるせぇ! 泣くな! わめくな! 鬱陶しい!」
そう言い放って、萃香が拳を振り上げたそのときです。
「まったく、いったい何の騒ぎですか……?」
その場に突然、現れたのは、紫色のくせっ毛の髪の女性。
「げっ……!?」
「おおっと……。コイツぁ、ちょっくら暴れすぎちまったか?」
その姿を見るなり鬼たちは、思わず顔を引きつらせます。
逆にお空は目を輝かせます。と、いうコトは……。
「……勇儀さん。アナタの仕業ですね。この壊れた家、どう弁償するつもりですか。そうでなくともアナタには数々の負債があるというのに……」
と、女性がジト目で勇儀を見ると、さっきまでの威勢の良さはどこへやら。彼女は目を泳がせ、あからさまに動揺します。
「あ、いや、それはだな……」
「ちっ……。メンドウなのが来ちまった。興ざめだよ。勇儀、ここはひとまず退散するぞ!」
「お、おう。そんじゃ、今日はこの辺でカンベンしておいてやるよ! あばよ!」
典型的な捨てゼリフとともに二人は、そそくさと、去っていってしまいました。
鬼たちがいなくなると、お空は泣きながらその紫髪の女性に抱きつきます。
「ふぇーーん! さとりさまー!!」
……そう、彼女こそが穣子たちの探していた、
「あ、どうもこんにちは。ええと……。私たちはアナタを探して……」
と、穣子が話そうとすると、すかさずさとりは手で制止します。
「あ、話さなくても大丈夫です。私は人の心が読めるので。……ふむふむ、なるほど。この子を助けて、私の所へ連れてこようとしていたのですね。それはありがとうございます」
「あ、いえいえどういたしまして……?」
「お礼に私の家に案内しますよ。どうぞ、ついてきて下さい」
と、いうわけで無事にさとりとあえた穣子一行は、彼女の住処である地霊殿へと案内されるのでした。めでたしめでたし。