秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

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毎日暑いですね。


その10

さてそのころ、静葉は河童の住処へと来ていました。

 

「……おそらくここに、にとりがいるはず。早く探し出さないと」

 

 静葉が足を踏み入れると、中は驚くほど静まりかえっています。

 

「……ふむ。なんか様子がおかしいわね。もう少し活気があってもいいものだけど」

 

 静葉が、無人の街中をしばらく歩き回ってみると、路地に座り込んでいる赤い髪の河童の姿が。

 静葉は、その河童に話しかけてみます。

 

「もしもし。そこの河童さん。ずいぶん静かだけど、他の河童はどうしたものかしら」

 

 静葉が話しかけると、その河童はうつろな目で答えました。

 

「……ああ、みんな流行病にやられちゃったのさ。ああ、私が地底に行っている間にこんなコトになってるとは……」

「流行病ですって。河童は頑丈さが取り柄なものじゃないの」

「ああ、私もびっくりしたよ。少し調べてみたけど、どうやら河童に感染する特殊なウィルスが原因らしい」

「あなたは平気なの」

「ああ、まだ今のところはね。でもこのあとも無事でいられるかはわからない」

「ふむ……。困ったわね。私はある河童を探してるんだけど」

「そうだったのか。でも今は、たとえ会えたとしても、まともに会話できる状態じゃないだろう」

 

 どうやらとても人さがしが出来る状況ではない様子です。

 

「ふむ。何か特効薬みたいのはないのかしら。そうね。例えば永遠亭の薬とか」

「あいにくだが、永遠亭の者は人間側についてるそうだ。知ってると思うが、今、人間の里は吸血鬼たちに支配されてしまっている。接触するのは不可能に近い」

「ふむ……。たしかにそうね」

「……そう、一つ方法があるとすれば、河童秘伝の万能薬をつくることだけど……」

「あら、そんなものがあるの」

「ああ。河童に代々伝わっている薬で、文字通り、あらゆる病や怪我に効くと言われている。でも残念なことに、その材料となる薬草は天狗の領地に生えているんだよ」

「それは、なかなか厄介ね」

「ああ。下手に侵入して見つかったりでもしたら、向こうも黙ってはいないだろう」

「ふむ……。八方手塞がりってわけなのね」

「ああ……。私はいったいどうすれば……」

 

 それっきりその赤髪の河童は、うつむいてしまいました。さてはて、いったいどうしたものか。

 静葉はしばらく何かを考えていましたが、やがて意を決した様子で彼女に告げます。

 

「よし。わかったわ。私がその薬草を採ってきましょう」

「えっ?」

 

 彼女は思わず驚いて静葉の方に目を向けます。

 

 ……そういや、この河童誰かに似ているような……。

 

「河童じゃない私なら、天狗の領地に侵入しても問題ないでしょう」

「ああ。確かにそうかもしれないけど……。でも」

「いいのよ。私はどうしてもある河童を探し出す必要があるの。そのためには、この状況が解決してくれないと困るのよ」

「……そうか。わかった。ありがとう。それじゃ途中まで場所を案内するよ」

「ええ。ぜひ、お願いするわ」

 

 静葉は彼女の案内で沢の先へと向かいました。そして沢の先の山中へ入ると、突然、彼女が立ち止まります。

 

「この先は天狗の領地だ。すまんが、私が案内できるのはここまでになる」

「そう。わかったわ。じゃあ、ここからは私一人で行くわね」

「ああ、すまない。この先に大きな岩の壁があって、その壁の根元に生えている草が、くだんの薬草さ」

「ええ。わかったわ」

「くれぐれも気をつけてくれ。常に白狼天狗達がウロついてるから、危なくなったらすぐ引き返してくるんだよ」

「ありがとう。じゃあ、行ってくるわね」

 

 赤髪の河童とわかれた静葉は、一人、山奥を進みはじめます。

 しばらく進むと彼女が言ったとおり、岩の壁が見えてきました。

 どうやら崖の真下のようです。そしてそのそばに、緑のハッパが生い茂っているのが見えます。

 

「ふむ、あれが例の草ね」

 

 静葉がその緑のハッパを取ろうと近づいたその時です!

 

「そこで何をしている!」

 

 静葉が振り向くと、そこには白狼天狗の姿が。

 天狗は険しい表情で静葉に問い詰めます。

 

「こんなところで何をしている! ここをドコだと思っているんだ!」

「あら、天狗さんごめんなさいね。私はあの草を取りたかっただけなのよ」

 

 静葉は、やんわりとかわそうとしますが、白狼天狗は険しい表情のまま静葉に言い放ちます。

 

「いかなる事情であろうと、何人たりとも我が天狗の領地に勝手に入るのは禁じられている。すまないが、ついてきてもらおうか」

 

 なかなかのカタブツなようです。以前であった椛といい、どうやら白狼天狗というのは、頭の固い種族のようです。

 

 渋々静葉が天狗について行くと、詰め所のようなところにたどり着きます。そしてそこにいたのは……。

 

「ぬぅ、オマエは……!?」

「あら……」

 

 なんと、そこには椛の姿が。どうやら彼女がこのチームのまとめ役のようです。……これはメンドウなコトになりそうな予感。

 

「キサマ! どうやってあそこから抜け出した!?」

「文が出してくれたのよ」

「嘘をつくな! さては脱走したな!?」

「文が出してくれたって言ってるでしょ」

「オマエは我々を襲撃した土蜘蛛をかくまおうとしたヤツだ! そんなヤツが言うことなど信じられるか!」

「……相変わらず頭が固いわね。……では、仕方ないわ」

 

 静葉は目くらましに、ふわっと紅葉をまき散らして、その場から逃げ出します。

 

「追え! アイツは河童側についてる可能性がある! なんとしてもつかまえろ!」

 

 椛の号令で下っ端の白狼天狗が、ワラワラと詰め所から出てきます

 静葉は急いで逃げますが、曲がりなりにも相手は天狗。あっという間に取り囲まれてしまいます。

 

「さあ、観念しろ! 二度と脱走できないように天狗の住処に送り込んでやる!」

 

 静葉は、縄でぐるぐる巻きにされてしまいました。

 

「まったく乱暴なことね。天狗ってのはそんなに品のない種族だったかしら」

「……大人しくしていれば、これ以上痛い目にあわせはしない」

「ふーん。その言葉、信用していいのかしら」

「……白狼天狗に二言はない。それに我々は上からの命令に従っているだけだ。こうするのは本心ではないことを、どうか分かってもらいたい」

「……ふむ。難儀なことね。あなたたちの事情や苦労、もちろん分からないわけではないわ」

「……そう言ってもらえると助かる」

「……でも、ごめんなさいね。私は、どうしてもあの草を手に入れなくてはいけないのよ」

 

 そう言うと静葉は、一瞬で縄から逃れます。

 

「あ、キサマ……!?」

「一応、私も神さまの端くれ。その程度の束縛は意味をなさないわ」

「……なるほど。ならば実力を行使するまで!」

 

 椛が刀を構えると、すぐに他の天狗達もいっせいに刀を構えます。よく統率が取れています。

 

(……やれやれ、出来れば力は温存しておきたいところだけど、そうも言ってられないわね)

 

 静葉は紅葉をまき散らすと、彼女らにまとわりつかせます。

 

「ぐっ! 何のつもりだ!?」

「その紅葉は、あなたたちの力をゆっくりと確実に奪い取るわ。悪く思わないでね」

「ええい、こしゃくな……!」

 

 静葉は天狗達が紅葉に対して手こずっているうちに、その場から逃げ出すと、そのままなんとか崖のふもとまで、戻ってくることができました。

 

「……さてと、あの草を取ってはやく戻らないと」

「待て! キサマ……!」

 

 再び彼女の前に椛が立ちはだかります。どうやら紅葉攻撃を振り払ってきたようです。

 さすがチームのまとめ役だけあって、他の白狼天狗たちよりも実力がある様子。

 それにしてもしつこいヤツです。

 

「キサマがその草にこだわる理由は何だ!? その草は河童達の秘薬の材料と聞くぞ! やはりキサマは河童と繋がっているんだな?」

「もし、そうだと言ったらどうするのかしら」

「我々の住処まで連行だ!」

「ふむ、なるほどね」

「で、どっちなんだ!?」

 

 椛の問いに対し静葉は、何も答えません。

 

「なぜ黙っている。黙っているというコトは、認めているというコトか?」

 

 静葉は、無言を貫きます。

 

「……ああ、そうか。わかったぞ。キサマ! そうやって時間稼ぎをしようってわけか。そんなのムダだ。誰もキサマを助けになんか来やしない。ムダな抵抗はやめて白状しろ!」

 

 それでも静葉は答えません。

 

「ええい。もういい! 疑わしきものは罰せよと上からの命令が出ている! このまま力づくでも連行して、詳しい話はあとでじっくり聞かせてもらうとしよう!」

 

 そう言って椛が弾幕を構築した、そのときです。

 

 突如、上空からヒューンと弾幕が降り注ぎ、椛の弾幕をかき消してしまいました。

 

「……なっ!?」

 

 思わずうろたえる椛。すると、どこからともなく聞き覚えのある声がこだまします。

 

「椛。誰がいつそんな命令しましたか?」

「そ、その声は……!?」

 

 いったい何者なのでしょう!?

 

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