秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

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その11

 二人の前に涼しい顔をして現れたのは、なんと文でした。

 

「しゃ、射名丸様……!? そ、そんなどうして!」

 

 動揺する椛に文は言い放ちます。

 

「椛。刀をしまいなさい。この者とは腹を割って話し合った結果、私の判断で放したのです。あとは私にまかせてアナタは持ち場へ戻りなさい」

「……は! では、失礼します!」

 

 椛は言われるままに刀をしまうと、一礼をし、そのまま足早に去って行っていきました。

 すかさず静葉が笑みを浮かべて告げます。

 

「……文。信じてたわよ」

「……まったく。よく言うわよ? 人の心を散々かき乱しといて。あげく勝手に抜け出して。……本当、悪いヒト」

 

 そう言うと文は、思わず深くため息をつきます。

 

「……で、私を捕まえに来たのかしら」

「……まさか。今更、そんなわけないでしょう」

「……だと、思ったわ」

 

 笑みを浮かべている静葉を、文は呆れた様子でみやります。

 

「……で、文。あなたはこれからどうするつもり」

「そうね。とりあえず里に向かおうと思うわ」

「あら、里って危ないんじゃ」

「……ええ。承知の上。それでも、今の里の状態をこの目で見ておきたいのよ。……あくまでもイチ記者として」

 

 彼女の目は真剣そのもの。どうやら本気で里に行くつもりのようです。

 

「……そう。わかったわ。なら私も里に行きましょう。今の状況を確かめておきたいし」

「え。静葉さんも? 私はともかく、さすがにアナタは危ないのでは」

「あら、私はこれでも神よ」

「……ふふ。そうだったわね」

 

 静葉の言葉に思わず笑みを浮かべる文。どうやら完全に吹っ切れたようですね。

 

「でも、ごめんなさいね。ちょっとその前に寄るところがあるのよ。そこに寄ってから私も里に向かうわ」

「わかりました。では、一足先に行ってますね!」

「ええ。また後であいましょう」

「ええ、では!」

 

 そう言うと文は、さっそうと空へ飛び上がっていきました。

 

「……さて、これでやっと戻れるわね」

 

 静葉は例の草を採ると、足早に河童の住処へと戻ります。そして入り口にたたずんでいた赤髪の河童に話しかけます。

 

「取ってきたわよ。これでいいのかしら」

 

 その葉っぱを見た彼女は思わず目を見開いて告げます。

 

「……あ、ああ! 間違いない!! これだ! これがあれば万能薬が作れる! ありがとう! さっそく調合に入ることにしよう!」

 

 そう言うと彼女は、足早にどこかに行ってしまいました。

 

「ふむ……」

 

 ポツネンとなってしまった彼女でしたが、そうしているうちに、一人、二人と、河童が姿を現しはじめました。中にはハイテンションに跳ね回ってるヤツもいます。

 どうやら早くも、特効薬の効果が出てきているようです。

 

 ……いくら何でも早すぎる気がしますが、きっと、河童という種族はそれだけ体が頑丈というコトなのでしょう。ええ。きっと。

 

「さてと、にとりを探さないと……」

 

 静葉は片っ端から河童たちにたずねますが、どうやら誰もにとりの行方は知らない様子。

 

 ……まあ、彼女は穣子に連れ去られてしまいましたからね。

 

 と、そのとき、例の赤髪の河童が静葉のところへ近づいてきました。

「おーい! ここにいたか。探したよ」

「どうやら皆、元気になったみたいね」

「ああ、アナタのおかげだ! 本当にありがとう!」

「礼にはおよばないわよ」

「……お礼に何か力になってあげたいのだけど……」

「そんな。別に大丈夫よ」

「ああ、そういえば……。アナタは人探しをしているって言ってたね。それはいったい誰なんだい? もしかしたら何か力になれるかもしれない」

「ええ、そうね。河城にとりって河童なんだけど……」

 

 それを聞いた彼女は、思わず目を丸くします。

 

「なんと! アナタが探していた河童ってのは、にとりのコトだったのか!」

「あら、知ってるの」

「知ってるも何も……。アイツは私の妹だよ!」

「あらまあ。と、いうことは……」

「……ああ、私は河城みとり。河城にとりの姉さ」

 

 まさかまさか、彼女がにとりの姉だったとは。どおりで誰かに似てると思ったワケです。

 

「生憎だが、にとりはここにいないよ。どうやら誰かと一緒に出かけてしまったみたいなんだ」

「……あら、そうなのね」

「ああ、すまないね。力になれなくて……」

「大丈夫。十分過ぎる手がかりよ」

「そうか。……頼み事ばかりで申し訳ないが、もし、アイツにあったら私が心配してたと伝えておいてくれないか?」

「ええ、わかったわ」

「すまない。本当にありがとう。……ああ、そうだ。まだアナタのお名前をうかがってなかったね」

「私は秋静葉。紅葉を司る神よ」

「秋……!  なんと!? アナタは秋神さまだったか! これは失礼しました! 今までの無礼な発言の数々、どうかお許しを……」

「そんな気にしなくていいわよ」

「ああ、なんて寛大なお方なんだ……」

 

 どうやら、みとりは静葉が恩人であるコトも相まって、すっかり彼女の神としてのオーラに魅了されてしまったようです。

 

「……ふむ、そうね。みとり。もしかしたら今後、あなたの力を借りることがあるかもしれないわ。その時は助けてくれるかしら」

「もちろんですとも。アナタは河童の恩人。その時は喜んで、手となり足となりましょう!」

「そう。頼もしいわ。じゃあ、その時はぜひ頼むわね。それじゃ、そろそろ私は行くとするわ」

「静葉さま! どうぞ道中、お気をつけて……!」

 

 みとりに見送られながら静葉は、河童の住処をあとにしました。

 河童の住処の遠景を眺めながら彼女はふと、つぶやきます。

 

「……ふむ。この河童の住処の風景。あの、はたてとかいう天狗の写したカメラとほぼ同じ風景ね。つまり彼女の能力は、一応信頼性はあるということになる。となると、恐らく天狗の総大将の正体に関しても真実の可能性が高いということ……。ま、いずれにせよ、この狂った世界。常にあらゆる可能性を想定しておかないとね……。ゆめゆめ気をつけましょう」

 

 そう言い残すと、彼女はうっそうとした山の中へと消えていくのでした。

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