秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

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その17

 

 そのころ、穣子とヤマメとお燐は、穣子の家へと向かっていました。しかし、さっきから三人に対して野良妖怪が、何度も何度も襲いかかってきています。

 三人は、その度に撃退しているのですが……。

 

「やれやれ……。今日はどうなってるんだ。キリがないよ」

「まったくだね。……そんなにあたいたち、目立ってるのかねえ?」

 

 お燐は、やっつけた下等妖怪を、人目につかないように草むらの方へと寄せています。律儀な子です。

 

「……いやー。アンタらって、本当に強いのねー」

 

 感心した様子で穣子が言うと、自慢げにヤマメが返します。

 

「まあね。こっちもダテに支配するために地上へ乗り込んだわけじゃないんだよ」

「そうは言っても、オマエさん失敗してしまったじゃないかい」

「チャカさないでくれよ。お燐。そりゃそうなんだけど……」

 

 と、その時です。三人の背後に何やら怪しい気配が……。

 

「……おやおや、またやっこさんのお出ましのようだよ?」

「……またか。もう何度目だよ? ……ま、やるけどね!」

 

 ヤマメが振り向きざまに、弾幕をドーンと放つと、何かにズーンと命中します。手応えあり!

 確認すると、そこには、黒焦げになった蛇の妖怪が転がっていました。

 

「ほーら! 蛇の丸焼きいっちょう上がりだ! どうだ。お燐。香ばしいだろ?」

「……いや、あたいは別に食べたいとは思わないよ……?」

「穣子。どう? きっと滋養にイイよ」

「いらないわよ! せめてイモにしてよ!?」

「イモの妖怪なんかいるかよ!?」

「さがせばいるかもしれないわよ?」

 

 と、その時です。

 

「いやーお強いお強い! さすがですねぇ」

 

 三人が振り向くと、木の上で狐の妖怪が手を叩いてました。

 

「誰よアンタ……」

「どうも初めまして。私は菅牧典。しがない管狐です。すいませんね。アナタたちの力ちょっと試させてもらいました」

 

 そう言って典は、三人の目の前に飛び降ります。

 

「力を試したですって……?」

「……ああ、そうか。さっきからあたいたちに襲いかかってきた妖怪は、全部オマエさんが仕向けていたんだね?」

「ええ。そのとおり」

「はぁ!? なんでそんなコトすんのよ!?」

 

 典はニヤリと、笑みを浮かべて告げます。

 

「言ったでしょう。アナタたちの力を試したって」

「何のためによ!?」

「アナタたちに、価値があるか品定めをするためですよ」

「品定めなんかしてどうするのよ!?」

「まぁ。ちょっとアナタたちに興味があったので……」

 

 そこにヤマメが、会話に割り込みます。

 

「……オマエ、話が回りくどいんだよ! いったい目的は何なんだ!」

「……おやおや? ……なんだ。誰かと思えば。アナタは確かツチグモ妖怪の黒谷ヤマメですか。威勢良く地上に攻め込んだはいいものの、あっけなく壊滅した挙げ句、仲間を河童に誘拐されてしまったという……」

「うるさい!! オマエ、私にケンカ売ってんのか!?」

「ヤマメ。落ち着きなさいって!」

 

 穣子はヤマメを制止すると、典に言い放ちます。

 

「あのさぁ! アンタが何者かとか、別にどーでもいいし興味もないんだけど、ジャマしないでくれる!? 私たち急いでんのよ!」

「狭い幻想郷、そんなに急いでどこ行くつもりで?」

「そんなのアンタには関係ないわ!」

「……ふふふ。ずいぶん威勢がいい。……まぁ、いいでしょう。アナタたちの力は大体分かりましたし、今日のところは引き下がるとしましょう。……それでは」

 

 そう言うと典は、こーんこーんと姿を消してしまいました。

 

「まったく! なんなのよ。アイツは!?」

 

 プンスカ怒っている穣子に、お燐が言います。

 

「……アイツは菅牧典。一応、天狗側についている管狐さ。まあ何かと、イイ噂を聞かないヤツでねえ……。文字通りの要注意人物ってところさ」

「ふーん。なんか厄介そうなヤツに目をつけられちゃったみたいね……」

「あのヤロウ! 今度あったら絶対ぶん殴ってやる!」

 

 さて、思わぬ横槍が入りましたが、一行は無事に秋ハウスにたどり着きました。

 

「ああ、懐かしの我が家……。って、なんじゃこりゃあ……!?」

 

 当然、家はボロボロです。

 

「うーん。こりゃまたずいぶん年期入ってるねえ……」

「へーそうか。神さまは、こんなボロ家に住んでたのかー。ふーん」

「そんなわけないでしょ!? 確かに少し年期は入ってたけど、もっとキレイで趣があって、こんなに、どんよりとなんかしてなかったわよ!?」

 

 穣子は家の中に入ろうとしますが、入り口の引き戸が開きません。

 

「うわ、なにこれ!? 立て付けまで悪くなってるし……」

 

 彼女が何度か戸をガタガタしていると、やがて戸が外れてしまいました。すかさずヤマメが言います。

 

「あー。穣子、壊したーいけないんだー!」

「うっさい! 別に後で直せばいいでしょ!?」

 

 穣子は壊れた戸を放置して中に入ります。

 中は薄暗く、壊れた窓の隙間から、日の光がかろうじて入ってきている状態です。

 

「何これ!? カビくさっ! 早く換気しないと……!」

「これはまた空気がずいぶんと、よどんでるねえ……」

「まるで地底の中みたいだね。私には居心地いいけど」

「ジョーダンじゃないわよ! こんなところにいたら五分で肺がクサるわ!」

 

 穣子は納戸を開けようとしますが、押しても引いても叩いても開きません。

 

「ちょっと、なんか開かないんだけど……?」

「どれどれ。あたいに貸してみ。……ああ、どうやら、さんの部分がダメになっちまってるみたいだ。こりゃ開けるのはムリそうだよ」

「なんですって……!? なんか部屋を明るくする方法はないかしら?」

 

 穣子は、ないアタマを使ってしばらく考えてましたが、ふと、目の前の囲炉裏に目が行きます。

 

「そうだ! 囲炉裏に火をつけましょう! 火をつければ少しは明るくなるし、湿気が飛んで、居心地が良くなるかもしれない!」

 

 よせばいいのにさっそく穣子は囲炉裏に火をつけます。すると、あっという間にあたりは煙で充満してしまいます。……もう、ちゃんと換気しないから。

 

「うわーっ! 煙がーっ……!?」

「ゲホッゲホッ! 穣子のバーガー! 何やってんだよー!?」

「こりゃたまらんね! いったん外へ出よう!」

 

 三人は慌てて家の外へ出ます。

 

 すると……。おや? 何やら家の中から、誰がせき込んでいる声がするような……?

 

「おっと、中に誰かいるみたいだね……?」

「宿無しでもいるのかもよ……?」

「冗談じゃないわ!? ここは私の家よ!? よそ者に住み着かれてたまりますかってのよ!」

 

 急いで穣子は家の中に戻って様子を見ます。すると……。

 

「ゲホッ! ゲホッ! なによこれー!?」

 

 家の中には、目に涙を浮かべた青い髪のみすぼらしい格好の女性の姿。

 

「何よ! アンタは!?」

「アナタこそ何よ! ここは私の家よ!?」

「私の家だっつーの!?」

 

 声を聞きつけたヤマメたちも、家の中にやってきます。そしてその女性の姿を見るなりヤマメが言い放ちます。

 

「あ、オマエは貧乏神の紫苑(しおん)じゃないか! そうか。わかったぞ! コイツが住み着いたから、家がボロっちくなってしまったんだ!」

「なんですってー!? おい、こら! アンタ、出て行きなさいよ!」

「嫌よー。せっかくいいトコロ見つけたのにー」

 

 どうやら、紫苑は出て行く気なさそうです。

 

「ここは、元々は私の家だったのよ!?」

「じゃあ、一緒に住んでもいーい?」

「嫌よ! なんで貧乏神なんかと一緒に住まなきゃいけないのよ!? 辛気くさいから近寄らないでよ!」

 

 その後も穣子と紫苑は、出て行け! 嫌だ! の押し問答を繰り返していましたが、そのうち、とうとう紫苑の方が根負けした様子で折れました。穣子の粘り勝ちといったところでしょうか。

 

「……んー。わかったわよー。そこまで言うなら、出て行くよー……。でも、そのかわり、この家より住み心地のいいトコ見つけてきてくれないかな?」

「ここよりいいとこですって……?」

「うん。個人的に言うと、本当はもう少し狭いトコが好みなんだよねー。ここはちょっと広すぎてさー」

「勝手に住み着いたくせに、人の家の文句言ってんじゃないわよ……。よーし! 言ったわね? やってやろうじゃないの! アンタにぴったりの家、探してきてやるわよ! そしたら約束通り出て行きなさいよ!」

「ま、見つけられるものならねー?」

 

 と、いうわけで三人は、紫苑の新しい住処を探すコトになりました。

 ……って、こんな山奥で手ごろな家なんて、そう簡単に見つかるモノなのでしょうかね……?

 

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