ところ変わってここは妖怪の山にある天狗の住処。
その奥にある一際大きなお屋敷です。
ここには天狗のエライ人が住んでおり、そのお屋敷の中にある
「……ご苦労。龍」
龍とそのエッケン相手との間には、
その声の雰囲気から、中の人物は女性であるコトだけが、かろうじて分かります。低く、いかにも威厳のありそうな声です。
「……では、はじめくれ」
「はっ……! まず、我々の現在の戦力ですが……」
龍はその御簾の中の人物に向かって、現状の報告を始めます。
……そう、この方こそが実は……。
「……報告は以上になります。総大将」
「……そういえば射名丸文の行方はどうなった」
「はっ! 秋神姉妹の姉との接触が確認されて以降、行方不明のままです」
「早めに見つけ出せ」
「はっ!」
「……それと例の姉妹は」
「姉妹いずれとも、典が常に見張っています。何か動きがあれば、すぐこちらに報告が来るようになってます」
「……そうか。下がれ」
「はっ! では、失礼いたします!」
龍は、謁見の間を出ると、思わず息をつきました。
「……やはりあのお方の前となると、緊張するものだな……。なぁ、そう思うだろう? ……典」
彼女が呼びかけると、柱のかげから典が現れます。
「あらあら……。バレてましたか。上手く気配を隠してたのに」
「お前の気配はすぐ分かるさ。特徴的だからな。で、何か報告があるのか?」
「ええ……。では、ちょっと場所を移しましょうか」
二人は屋敷の中にある庭園に腰を下ろします。
「……ふむ。そうか。秋神の姉と文は、里のレジスタンスと接触した可能性があるということか」
「はい。はっきりとは確認できていませんがね」
「そうなると……。少し厄介だな」
「ええ、万が一、二人がレジスタンスに加入するようなコトになると、また話が変わってきますからねえ」
「……それで妹の方は……?」
「それがどういうわけか、地底の妖怪二名を引き連れています。黒谷ヤマメ、それに火焔猫燐。どこでどう繋がったのかは分からないですけどね」
「……特に火焔猫燐には気をつけろ。恐らく彼女のバックには、古明地さとりがいる。彼女ら地底の勢力が、本格的に介入するようなコトになると、いよいよ収拾がつかなくなってしまうだろう」
「うーん。それはカンベン願いたいものですねえ。ただでさえ地上は暴発寸前の火薬庫状態だというのに……」
「……それじゃ引き続き、見張りを頼むぞ」
「ふふふ……。お任せくださいませ!」
そう言い残して、典はこーんこーんと、姿を消します。
龍は物憂げそうに、思わず空を見上げます。
あたりはもうすぐ、日が暮れようとしていました。
□
そのころ。とある天狗の領地……。
「状況はどうなってるんだ!? 報告しろ!」
「詳しくは分からないが、相手は上空から集中砲火を浴びせてきている! 地上を狙い撃ちだ!」
上司と部下が報告しているそばから爆発音が鳴り響き、それに叫び声も混じっています。
どうやら何者かが襲撃しているようで、あたりはアビキョウカンのジゴクエズです!
「……よし! 私が行く!」
「隊長! どうかお気を付けて!」
その更に上の上司こと犬走椛が、素早く上空へ駆け上ると、そこにいたのは……!
「……おや、誰かと思えば。イヌっころかい。アンタごときに、私の相手がつとまるかしら……?」
「レミリア・スカーレット……!? なぜこんなとこに! ……ええい! 今すぐ立ち去れ!」
椛は、弾幕を放ちながら刀を振りかざして突進しますが、レミリアは、その攻撃をいとも容易くかわし、そのまま彼女の背後に回ると、首に手刀を浴びせます。
「うわぁーーー!!」
あっけなく椛はそのまま地上へおちてしまいました。
「……ほら、やっぱり相手にならなかったじゃないか」
呆れた様子で笑みを浮かべるレミリア。そこに、何者かの弾幕が彼女に向かって襲いかかります。
「ん……?」
レミリアはそれをかわしますが、その弾幕は、方向を変えて彼女を追いかけます。
「……ふん! 誘導弾か。こざかしい!
彼女が腕を振りかざすと、その弾幕は、煙状になってかき消えました。
「……ったく、どこのどいつだ! こんなくだらない攻撃するヤツは!」
「……いやーお強いお強い。さすがは紅魔の君」
彼女の目に前に、呆れた表情の典が姿を現します。
「……まったく困りますよ。まだ、アナタの出る幕ではないはずでは……?」
「……お前らの仲間で、ちょっかいかけてきたヤツがいたんでねぇ……。ちょっとした報復よ」
「……ああ、もしかして射名丸文のコトですか? 彼女だったら、謀反を起こしまして、今は天狗側とは一切関係が……」
「うるさい!!」
レミリアは一喝すると、典の首根っこをつかみます。
「……オマエらの事情なんざ、どうでもいいのよ! 天狗が勝手にテリトリーに入ってきた! だから私はその報復にきた!! それだけのコトよ!」
典は思わず両手を掲げて、彼女に告げます。
「……ぼ、暴力反対ー……! わ、わかりました。……それでお望みは何ですか。天狗の領地ですか?……それとも彼女の首ですか?」
レミリアは典を放り投げると、吐き捨てるように言います。
「そんなものには興味ないわ! 私はただ……」
と、その時、突然、彼女の体がよろけます。
「……なんだ? 急に体の力が抜けて……」
すると、典がニヤリと笑みを浮かべます。
「……ああ、やっと効いてきたようですね」
「……オマエ、何をした……!?」
「ふふふ……。さっきの弾幕に、ちょっとした細工を施させてもらいました。まぁ、タダの麻酔薬ですけどね。ゾウも眠る強力な」
そう言って典は、試験管を取り出して見せます。
「……ちっ。こざかしいマネを……!」
「……レミリア・スカーレット。今日のところはお引き取り願います。……わかるでしょう。今は、まだそのときじゃありません」
「……フン。まあ、いい。……いずれ天狗どもも、私たちが支配してやるからな! 覚えとけ……!」
そう言い残すとレミリアは、ふらつきながら飛び去って行きます。典は、ほっとため息をつくと、苦笑を浮かべて誰にともなく呟きました。
「……ほら、だから言ったじゃないですかぁ。……この世界は暴発寸前の火薬庫状態だってねぇ……」
あたりはもうすっかり日が暮れ、山の