その1
さて、二人が河童の
しまいにゃ、とうとう疲れて二人ともその場に座り込んでしまいました。
「もう、どうなってんのよこれ!? さっきから全然先に進めそうもないんだけど!?」
「もしかしたら、
と、そのとき二人の目の前に、突然何かが姿を現しました。
あ、妖精です! モブ妖精が現れました!
そのモブ妖精は右手に一升ビン、左手に花見団子を持って武装し、あたりに酒のにおいをまき散らしています。
……
「なんだコラ! 私の
すかさず穣子が応戦します。
「それはこっちのセリフよ! コラ! 何よアンタは!? コラ!」
「なんだコラ! やんのか? コラ! どこからどう見てもモブ妖精に決まってんだろ! タココラ!」
「あーん? コラ! 誰に向かってモノ言ってるのよ。なんだコラ! こちとら天下の秋神さまよ!? コラ! クレクレタコラ!」
無意味にコラコラ問答を繰り広げる二人。しかも妖精がしゃべるたびに息がふりかかるので、あたりはすごく酒クサいです。
このままではラチがあかないので、仕方なく二人の間に静葉が割って入ります。
「……どうやらあなたが、この森にイタズラしているようね。妖精さん」
「そうだよ。それがどうかしたか? コラ! 言っておくけど、そう簡単にはこの森からは出さないぞ。タココラ! これでも食らえ! コラ!」
うわ。この妖精すごく危険です! そして酒クサいです!
「ギャー!? 何よコイツ!?」
「穣子、こっちよ」
二人はあわてて木のカゲに隠れました。
泥酔モブ妖精は、飛び回って静葉たちを探し回っています。このままでは見つかってしまうのは時間の問題。それにしても酒クサいです。
「姉さん。どうしよう?」
「そうね。どっちにしてもあいつを倒さないと、この森からは抜けられそうもないわね」
「面倒ねぇ。仕方ないけど戦う?」
「いえ、妖精ごときとはいえ、下手に力を消耗するのは得策じゃないわね。この先何があるかわからないし」
と、そのとき、近くを博麗の巫女が通りかかりました。どうやら彼女も森から出られなくなっている様子。
しかも相当怒っているようで、隠しきれないすさまじい殺気が、全身からこれでもかというほどにじみ出ています。
とはいえ、ここで頼れそうなのは彼女だけ。これは声をかけるしかないってモンでは?
「と、いうわけで、さあ、穣子。あなたの出番よ。あの巫女に交渉してきなさい」
「何が、と、いうわけなのよ!? 何で私なの! 姉さんが行ってきてよ!?」
「いやよ。私、あの巫女と仲良くないもの」
「私だって関わりたくないわよ!? 第一、今すごく機嫌悪そうだし……」
「大丈夫よ。私にいい考えがあるわ」
と、言って親指を立てる静葉。
「いい考えって……?」
「気軽にフランクな感じで声をかければ、きっと彼女も心を開いてくれるはずよ」
「……本当に?」
「ええ、大丈夫よ。私を信じなさい」
姉の自信たっぷりな様子を見て穣子は思い切って、うろついている巫女の前に飛び出すと、彼女を呼び止めました。
「……は、ハ~イ! そこのボロ巫女さぁん? もしかしてユーもあわれなストレイシーブなのかしら~? よかったらミーの手助けに……」
「誰がボロ巫女よ! 気持ち悪い口調でしゃべんな!」
ドカッ! バシッ!
彼女の怒りの
その様子を見届けると、さっそうと静葉が巫女の前に姿を現します。
「さて、少しは気が済んだかしら。巫女さん」
「気が済んだかしら……って。アンタねぇ。妹を
「あら、犠牲になんて人聞きが悪いわね。勝手に襲ってきたのはそっちでしょう」
「うっさいわよ! ところで、その様子だと、もしかしてアンタたちも森から出れなくなってるみたいじゃない?」
「ええ、そうよ。そしてその犯人に追いかけられてるのよ。なんか酒くさい妖精なんだけど」
「あ、そう。それは都合良いわ。じゃあ、その酒くさい妖精を私がぶっ倒して来てあげる。ちょうどムシャクシャしていたところだしね」
と、言うと、
ほどなくして、無数の弾幕が
――それはまるで、あたかも戦争のようでした。
やがて妖精の
気がつくと、あんなに薄気味悪かった森も、普通の森に戻っています。
そう、世界に平和がおとずれたのです……!
「ほら、終わったわよ」
彼女の声を聞き、静葉が木の陰から出てみると、そこにはボロぞうきんぞうきん》のような姿になった妖精が地面にへばりついていました。あわれ。
「さすがね。助かったわ」
「……ところでアンタたちはどこにいくつもりなの?」
「河童の住処よ」
「……ふーん? ……ま、別にどうでもいいけど……」
巫女は、こっちを不思議そうに見つめながら、妖精が持っていた
きっと神社に帰ったら、ヤケ酒でもあおるつもりなのでしょう。
「ほら、穣子ったらいつまで寝てるの。起きなさい」
「……う、うーん。あれ? あの妖精は?」
「さっきの巫女がやっつけてくれたわ」
ふと見ると、周りに空のビンやら団子の串やらがたくさん転がっています。
どうやらあの妖精は、本当に酒盛りしていたようです。
おや? 酒にまじって何やら書簡のようなものが……。
「あら、何かしらこれ」
静葉が中身を取り出すと、何やら設計図のようなモノが出てきました。
「ふむ。何だかよくわからないけど戦利品としてもらっておきましょう」
「え、いいの……? 勝手に」
「いきなり襲われたんだもの。その代償としてもらっておく権利くらいあるわよ」
などと言いながら静葉は、書簡をフトコロにしまい込みます。
「さて、こんなとこで油売ってる場合じゃないわね。そろそろ行きましょう」
「……はぁ、ヒドい目にあったわ。もー。まったくブッソウなトコねー。さっさと抜けましょ」
二人は再び河童の住処を目指して歩き始めるのでした。