秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

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第一章 奇妙な世界
その1


 

 さて、二人が河童の住処(すみか)へ行くにはまず、この森を抜けて山を越える必要があります。しかし、歩けど歩けど、この気持ちの悪い森から出ることができません。

 しまいにゃ、とうとう疲れて二人ともその場に座り込んでしまいました。

 

「もう、どうなってんのよこれ!? さっきから全然先に進めそうもないんだけど!?」

「もしかしたら、妖精(ようせい)か何かがイタズラをしてるのかもしれないわね」

 

 と、そのとき二人の目の前に、突然何かが姿を現しました。

 あ、妖精です! モブ妖精が現れました!

 そのモブ妖精は右手に一升ビン、左手に花見団子を持って武装し、あたりに酒のにおいをまき散らしています。

 ……酒盛(さかも)りでもしていたんでしょか?

 

「なんだコラ! 私の縄張(なわば)りに入ってくるとは不届きモノ! コラ!」

 

 すかさず穣子が応戦します。

 

「それはこっちのセリフよ! コラ! 何よアンタは!? コラ!」

「なんだコラ! やんのか? コラ! どこからどう見てもモブ妖精に決まってんだろ! タココラ!」

「あーん? コラ! 誰に向かってモノ言ってるのよ。なんだコラ! こちとら天下の秋神さまよ!? コラ! クレクレタコラ!」

 

 無意味にコラコラ問答を繰り広げる二人。しかも妖精がしゃべるたびに息がふりかかるので、あたりはすごく酒クサいです。

 このままではラチがあかないので、仕方なく二人の間に静葉が割って入ります。

 

「……どうやらあなたが、この森にイタズラしているようね。妖精さん」

「そうだよ。それがどうかしたか? コラ! 言っておくけど、そう簡単にはこの森からは出さないぞ。タココラ! これでも食らえ! コラ!」

 

 泥酔(でいすい)したモブ妖精は弾幕をバラバラとあたりに()き散らし始めました。

 うわ。この妖精すごく危険です! そして酒クサいです!

 

「ギャー!? 何よコイツ!?」

「穣子、こっちよ」

 

 二人はあわてて木のカゲに隠れました。

 泥酔モブ妖精は、飛び回って静葉たちを探し回っています。このままでは見つかってしまうのは時間の問題。それにしても酒クサいです。

 

「姉さん。どうしよう?」

「そうね。どっちにしてもあいつを倒さないと、この森からは抜けられそうもないわね」

「面倒ねぇ。仕方ないけど戦う?」

「いえ、妖精ごときとはいえ、下手に力を消耗するのは得策じゃないわね。この先何があるかわからないし」

 

 と、そのとき、近くを博麗の巫女が通りかかりました。どうやら彼女も森から出られなくなっている様子。

 しかも相当怒っているようで、隠しきれないすさまじい殺気が、全身からこれでもかというほどにじみ出ています。

 とはいえ、ここで頼れそうなのは彼女だけ。これは声をかけるしかないってモンでは?

 

「と、いうわけで、さあ、穣子。あなたの出番よ。あの巫女に交渉してきなさい」

「何が、と、いうわけなのよ!? 何で私なの! 姉さんが行ってきてよ!?」

「いやよ。私、あの巫女と仲良くないもの」

「私だって関わりたくないわよ!? 第一、今すごく機嫌悪そうだし……」

「大丈夫よ。私にいい考えがあるわ」

 

 と、言って親指を立てる静葉。

 

「いい考えって……?」

「気軽にフランクな感じで声をかければ、きっと彼女も心を開いてくれるはずよ」

「……本当に?」

「ええ、大丈夫よ。私を信じなさい」

 

 姉の自信たっぷりな様子を見て穣子は思い切って、うろついている巫女の前に飛び出すと、彼女を呼び止めました。

 

「……は、ハ~イ! そこのボロ巫女さぁん? もしかしてユーもあわれなストレイシーブなのかしら~? よかったらミーの手助けに……」

「誰がボロ巫女よ! 気持ち悪い口調でしゃべんな!」

 

ドカッ! バシッ!

 

 彼女の怒りの()()りを食らってしまった穣子は、そのまま近くの木に激突して気を失ってしまいました。あわれ。

 その様子を見届けると、さっそうと静葉が巫女の前に姿を現します。

 

「さて、少しは気が済んだかしら。巫女さん」

「気が済んだかしら……って。アンタねぇ。妹を犠牲(ぎせい)にする姉がどこにいんのよ」

「あら、犠牲になんて人聞きが悪いわね。勝手に襲ってきたのはそっちでしょう」

「うっさいわよ! ところで、その様子だと、もしかしてアンタたちも森から出れなくなってるみたいじゃない?」

「ええ、そうよ。そしてその犯人に追いかけられてるのよ。なんか酒くさい妖精なんだけど」

「あ、そう。それは都合良いわ。じゃあ、その酒くさい妖精を私がぶっ倒して来てあげる。ちょうどムシャクシャしていたところだしね」

 

 と、言うと、邪悪(じゃあく)な笑みを浮かべながら彼女は妖精の方へと出て行きます。

 

 ほどなくして、無数の弾幕が炸裂(さくれつ)する音と、恐ろしい爆音が辺りに響き渡り始めました。

 

 ――それはまるで、あたかも戦争のようでした。

 

 やがて妖精の断末魔(だんまつま)があたりに響き渡り、戦いに終止符が打たれました。

 気がつくと、あんなに薄気味悪かった森も、普通の森に戻っています。

 そう、世界に平和がおとずれたのです……!

 

「ほら、終わったわよ」

 

 彼女の声を聞き、静葉が木の陰から出てみると、そこにはボロぞうきんぞうきん》のような姿になった妖精が地面にへばりついていました。あわれ。

 

「さすがね。助かったわ」

「……ところでアンタたちはどこにいくつもりなの?」

「河童の住処よ」

「……ふーん? ……ま、別にどうでもいいけど……」

 

 巫女は、こっちを不思議そうに見つめながら、妖精が持っていた一升(いっしょう)ビンを拾うと、さっさと飛び去っていってしまいました。

 きっと神社に帰ったら、ヤケ酒でもあおるつもりなのでしょう。

 

「ほら、穣子ったらいつまで寝てるの。起きなさい」

「……う、うーん。あれ? あの妖精は?」

「さっきの巫女がやっつけてくれたわ」

 

 ふと見ると、周りに空のビンやら団子の串やらがたくさん転がっています。

 どうやらあの妖精は、本当に酒盛りしていたようです。

 

 おや? 酒にまじって何やら書簡のようなものが……。

 

「あら、何かしらこれ」

 

 静葉が中身を取り出すと、何やら設計図のようなモノが出てきました。

 

「ふむ。何だかよくわからないけど戦利品としてもらっておきましょう」

「え、いいの……? 勝手に」

「いきなり襲われたんだもの。その代償としてもらっておく権利くらいあるわよ」

 

 などと言いながら静葉は、書簡をフトコロにしまい込みます。

 

「さて、こんなとこで油売ってる場合じゃないわね。そろそろ行きましょう」

「……はぁ、ヒドい目にあったわ。もー。まったくブッソウなトコねー。さっさと抜けましょ」

 

 二人は再び河童の住処を目指して歩き始めるのでした。

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