秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

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その19

 

 その少し前の刻。

 静葉とにとりと文は、夕暮れに差し掛かった妖怪の山道をひたすら登っていました。

 目的地は守矢(もりや)神社です。

 なんでも、静葉がどうしても確かめたいコトがあるとか。

 

「……それにしても」

「どうしたの。にとり」

「……本当にいいのかなあ。穣子たちが迎えに来る予定だったんだけど、勝手に出てきちゃったりして」

「いいのよ。竹藪の医者さんも言っていたでしょう。お弟子さんには私が話しておくって。それに、私にはあなたの力が必要なの」

「いや、それはありがたいんだけど……。なんか申し訳ないなぁって」

「……にとりったら気にしすぎじゃないですか? それに、アナタ言ってたでしょう。もう穣子さんに、こき使われるのは嫌だーって」

「そうね。そこは安心して。私はこきを使うことなんかしないから」

「え、ほんとう!?」

「ほんとうよ。そのかわり、協力はしてもらうけどね」

「……それって、言い方を変えただけじゃ……」

「……さて、そろそろつくわよ」

 

 三人の目の前に、神社の鳥居が見えてきました。

 そこをくぐると神社の境内にたどり着きます。

 

「……ふむ、やはり人の気配はないわね」

「……でも、案外庭はキレイですよ? どうやら管理はされてるようですね」

 

 三人は本殿へと進みます。中は真っ暗です。

 

「もしもーし! 清く正しい射名丸でーす! 誰かいますかー!?」

 

 返事はありません。

 

「……留守みたいだね」

「まぁ、噂だと逃げだしたという話ですしねえ」

「ふむ、逃げだしたと言っても、一体どこへ逃げたのかしら」

「さあ? でも、彼女らの力なら、結界の外へ逃げることも不可能ではないかと……」

「……結界の外へ逃げたというのなら、なぜ、ここの庭はこんなにキレイなのかしら」

「……あや。確かに?」

「ここに誰かがいるのは、間違いないのよ」

 

 と、その時。にとりが怪しい機械を、リュックから取り出します。

 

「よし! こんな時はコイツを使うに限る!」

「なによそれ」

「ふふん。この装置は妖怪、人間問わず生き物の気配を察知するコトができるんだ!」

「大丈夫なの。また爆発したりしないわよね」

「ダイジョーブ! ダイジョーブ! ……多分」

 

 そう言いながら彼女が、装置にスイッチを入れると、ピコンピコンと音が鳴り始めます。

 

「ん? すぐ近くに何かいるぞ!? 目の前だ!」

「……え?」

「ふむ……」

 

 三人がよーく目をこらすと、なんと目の前に帽子をかぶった緑の髪の少女が!

 

「あれー! うそー! 見つかっちゃったー!?」

 

 少女は驚いた様子でこちらを見ています。

 

「あなたは! ……古明地こいしさん!?」

 

 そう! そこにいたのは、さとりの妹である古明地こいしだったのです!

 

「こいし。あなたこんなところで何やってるのよ」

「あーうん。実はお留守番を頼まれててさー」

「留守番って、誰にですか?」

「ここの人たちだよー」

「っていうと……。あの二柱の神さまと早苗のコトか!」

「そーそー」

「……ねえ、教えてちょうだい。三人ともどこへ行ってしまったの」

「うーん。わかんないなー」

「じゃあ、いつ帰ってくるのか教えてくれないかしら」

「それもわかんなーい」

 

 頭をフリフリと揺らしながら、こいしは質問に答えています。

 

 ……あるいは、無意識に答えてるだけなのかもしれませんね。これは。

 

「うーん。これじゃ何もわかんないじゃないか!」

「ごめんねー。こんな辺境の地に、はるばるやってきてもらったけど、残念ながらここには何もないよー」

「あやや、どうやらムダ足だったみたいですね……」

「……いえ、そんなことはないわよ」

 

 そう言って静葉は、ニヤリと笑みを浮かべると、こいしにたずねます。

 

「……ねえ、こいし。一晩ここに泊まらせてもらってもいいかしら」

「うん。いーよー」

 

 静葉の問いにこいしは、あっさりオーケーを出します。

 そんなわけで三人は、神社で一晩を明かすのでした。

 

 □

 

  さて、戻って穣子一行は……。

 

「おいおい、穣子ー。ホイホイとあんな約束しちゃったけど、本当に家なんかあると思うのかよ?」

「あるに決まってるわ! なんとしても見つけるのよ!」

「……やれやれ、もう、すっかり真っ暗になってしまったけどねえ?」

 

 紫苑の新しい家を探すために、夜の山の中を歩き回っていますが、一向に見つかりません。ほーら、言わんこっちゃない。

 

「何言ってるのよ! 夜はアンタたちの時間でしょ!?」

「いや、それはそうだけど……。それと家が見つかるかどうかは別問題だろうよ?」

「意地でも見つけるのよ! そうしないと私の家が、アイツのせいで崩壊してしまうわ!」

「……って言ってもねえ」

 

 息巻いて探し回る穣子を、半ば呆れ気味にヤマメとお燐は追いか

けます。

 と、そのとき。前方に何やら建物らしきものが見えてきます。

 

「あ! ほら! あったでしょ! 私の言うとおりだったわね!」

 

 あぜんとする二人に、胸を張ってドヤ顔で言い放つ穣子。

 

 近づいてみると、その建物は家と言うのもはばかれるほど簡素で粗雑なつくりでした。

 どうやらほったて小屋のようです。

 

 ……あれ? この展開、前もあったような……。

 

 穣子は小屋の入り口に近づくと、おもむろにドアを叩きます。

 

「もしもーし! たのもー! たのもー!」

 

 しかし、ガチャンという音が響き、どうやら中からカギをかけられてしまったようです。

 

「くそー。閉められちゃったわ!」

「そりゃあ、あんないきなりドア叩いたら、誰だって警戒するよ」

「……しかし、ドアのカギを閉めたってコトは、中に誰か住んでるのは間違いないね」

「そう! つまり、住めるってコト……!」

「……で、どうすんだい。一応あたいが、交渉するだけしてみるかい? 望みは薄いけど」

「大丈夫! 私にいい考えがあるわ!」

 

 そう言って穣子は、ニヤリと笑みを浮かべます。

 

 ……いったい何をするつもりなんでしょう。嫌な予感しかしませんが。

 

「ねえ、お燐! あの貧乏神を、ここに連れてきてくれない?」

「ほいきた」

 

 言われるままにお燐は、家から紫苑を台車に乗せて連れてきます。

 

「なになにー? いいトコあったのー?」

「ほら、どうよ。見なさいよ! あの小屋、アンタにぴったりだと思わない?」

 

 紫苑は、品定めをするようにじーっと小屋を見て一言。

 

「うん、確かに悪くないねー。絶妙にせまそうだし。でも、中に誰かいるみたいだけどー?」

「そんなの、追い出しちゃえばいいのよ」

「それもそうだねー。わかったー」

 

 紫苑は小屋の中にスッと入っていきます。

 ほどなくして小屋から「ギャーーー!」と言う叫び声が聞こえ、中から、鴉天狗――はたてが飛び出してきました!

 

「だ、誰か助けてー!? 家の中に突然貧乏神が!! どうしよう!? ボンビラス星に連れて行かれちゃうわー!」

 

 どうやら彼女は少し、錯乱(さくらん)しているようです。

 

「どうかしたの? 天狗のお嬢さん」

 

 穣子がシラジラしく話しかけると、はたては困った様子でワケを話します。

 

 「……ふむふむ。なに、家に突然、貧乏神がやってきたの? あらそう、それは災難だったわね。それじゃあ、私がかわりに、いい家を案内してあげるわ」

 

 と、言って穣子は、はたてを自分の家に案内します。

 

「……うわっ。なにここ!? カビ臭っ!?」

「しばらく使われてなかったから、ちょっと傷んでるけど、掃除すれば住めるようになるわよ!」

「……確かにそうね! それにけっこー大きいし、掃除さえすれば、あの小屋より住み心地良さそうだわ! ここに住んでいいの?」

「いいわよ! 私たちが帰ってくるまで自由に使ってよ」

「本当に!? ありがとう! 神さま!」

 

 はたては、目をキラキラさせています。

 

 まさか、その目の前の神が元凶とも知らずに……。

 

「いえいえ、どういたしましてー困ったときはお互い様よー! それじゃ、留守番よろしくねー!」

「オッケー! オッケー! まかせてー!」

 

 穣子は、二人の冷たい視線を無視して、はたてと別れて家を出ました。

 

「あー!いいことした後は、気持ちいいわねー!」

「……オマエさん。本気でそう思ってるのかい?」

「細かいコトは気にしない! 貧乏神のヤツはもっと狭い家に住みたかった。そしてあの天狗は、住む場所に困ってた。これこそウインウインってヤツでしょ!」

「ウインウインどころか、完全に自作自演だろ!?」

「いいのよヤマメ! 結果オーライ結果オーライ!」

「……やれやれ。とんだ神さまだね。……それで、これからどうするつもりだい?」

「とりあえず、にとりのヤツを迎えに病院行かないといけないわよね」

「と、言ってもまだ、夜明けまでは時間あるけど……?」

 

 ヤマメの言うとおり、あたりはまだ真っ暗です。

 

「……じゃあ、どこかでヒマつぶしましょ」

「ヒマつぶすったって……。どこで?」

「ねえ、お燐。なんかいいトコない?」

「……あたいに振るのかい。うーん。そうだねぇ……。あぁ! そうだ!」

「え、なになに、アテあんの?」

「ま、あたいについといで」

 

お燐はウインクをすると、二人をある場所に案内しはじめるのでした。

 

 

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