秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

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その20

 

 お燐の案内で、穣子たちが森の中に入ると、何やらボンヤリと灯りが。近づいてみると、そこでは夜雀が屋台を開いてました。

 

 屋台のそばには机と椅子も広げられており、屋台というよりちょっとした居酒屋のような雰囲気です。

 

 甘いタレのようなイイにおいがあたりに漂います。うう、おもわずヨダレが……。

 

「やっ! 来たよ!」

「あら、久しぶりじゃない。お燐」

 

 お燐があいさつすると店主の夜雀(よすずめ)は、営業スマイルで迎えてくれます。どうやらお燐は、ここの常連客のようです。

 

「今日はツレもいるんだ。何かテキトーにみつくろっておくれ!」

「わかったわ!」

 

 ほどなくして三人の前に、お通しのおひたしと、アツカンが出され、さっそく酒盛りの始まりです。

 

「今、フナの煮付けも出るからまっててね」

「お、いいねえ。あたいの好物じゃないか! さすがわかってるね!」

「はぁー。お酒って本当、美味しいなぁー。生き返るや……」

「おっほー! この、おひたしうまー!!」

「そうだろう? 穣子。このほんのり甘塩っぱいのが、また酒に合うんだよねえ」

 

 ふと、穣子が屋台を見回すと、既に先客がいたようで、どうやらヨッパラって机に突っ伏して寝てしまっています。

 まわりにトックリが、たくさん転がっているので、相当飲んでいるようです。

 

「……ねえ。あっちの人だいじょうぶ? なんか泥酔してるみたいだけど」

 

 穣子の言葉に夜雀は苦笑しながら、そのヨッパライに話しかけます。

「……ちょっとリグル。もう起きてよ」

 

 夜雀が名を呼ぶと、ようやくそのヨッパライは顔を上げます。

 

「うん……?」

「……深酒は体に毒よ。何があったか知らないけどさあ……。そろそろヤメといたらどうなの?」

「うーん。……これは夢だよね。夢ならさめないでくれ……」

「……もう。何、寝ぼけてんのよ!」

 

 すると、トックリ片手にヤマメが、ヨッパライに近づきます。

 

「……あれ? なーんだ。誰かと思ったらリグルじゃん。何してんのオマエ」

「……え? その声……」

 

 ヤマメの声に気づいたヨッパライは、ヤマメの顔をまじまじと見ると……。

 

「ヤマメー! あいたかったよー!」

 

 などと言いながら、突然彼女に抱きつきます。

 ……あー、ヨッパライって、こういう行動しますよねー。困るんですよ。本当……。

 

「ちょっ!? こら! やめろっての!?」

「ヤマメぇーーーーー!!」

「分かったから落ち着けっての!?」

「おー! ひゅーひゅー!」

「お、こりゃスキャンダルだね! 誰かカメラもってないかい?」

「やめろっての!? 皆、チャカしてないで助けてよー!?」

 

 その後、穣子たちが二人を無理矢理引きはがすと、リグルは、ようやく我に返った様子であたりを見回します。

 

「あれ……? 私なにを……」

「……おい、バカヤロウ。目覚めたか?」

「……あれ? ヤマメ? なぜここにオマエが……!?」

「オマエこそ、地底に戻らないで何してんだよ!」

「え。あ……。それはその……」

 

 ビミョウな空気になる二人に、すかさずお燐が割り込みます。空気の読める子です。

 

「なあなあちょっと聞かせてくれよ。お二人は、知り合いなのかい……?」

「……ああ。そうだよ。こいつはリグルって言って、地底に住んでる虫の妖怪さ」

 

 するとリグルが、すかさず告げます。

 

「……いや。ヤマメ。実は違うんだよ。私はもともと、地底の妖怪じゃないんだ。ずっと地上で過ごしていたんだけど、『あの日』以降、地底に潜ったんだよ。地上が住みにくくなってさ……」

「ちょっと、それ、初耳なんだけど?」

「そりゃそうだよ。誰にも言ってないし……」

「……コイツは私と一緒に、地上侵攻に繰り出したんだけど、途中で行方不明になっちゃったんだよ」

「……うん。怖くなっちゃってさ。地上のヤツらの強さ知ってるから……」

「まったく弱虫め。……オマエが、もっとしっかりしてたら、また結果は違ってたかもしれなかったんだぞ!? このフヌケヤローの弱虫王が!」

「はいはい。その辺にしときなって」

 

 酔いも手伝って、思わず声を荒げそうになるヤマメを、すかさずお燐がなだめると、しょんぼりしているリグルに言います。

 

「ふーん。そうなのかい。お前さんなかなか賢いじゃないか?」

「え……?」

「結局、コイツの侵攻は失敗に終わったんだよ」

「……ああ、そうなんだ……。ゴメン。私が……。逃げたりしなければ」

「……いや、あたいは失敗して良かったと思うよ? 下手に侵攻が成功していたら、今ごろこの世界はもっとグチャグチャになっていただろうよ。……今のオマエさんならわかるだろ? ヤマメ」

「……悔しいけど、お燐の言うとおりさ。地上は私が思っていたより、はるかにややこしい状況になっていた……。正直、私の見通しが甘かったよ」

「……そういうワケさ。なあ、虫妖怪さんや。臆病ってのは勇気なんだよ。躊躇(ちゅうちょ)するのも、また勇気ある行動なんだ。オマエさんは、賢い選択をした。……と、あたいは思うけどね?」

「……うう。ありがとう。お燐さん!」

 

 そう言うとリグルは、涙を流しながらお燐に頭を下げました。

 

「まあ、いいじゃないか。今夜は二人仲直りってことで、飲み直そう。それでいいだろう? ヤマメ」

「……ま、それでいいけど」

 

 その後、すっかり意気投合した三人は、朝まで飲み明かすのでした。

 ちなみに、話にまったく入れなかった穣子は……。

 

「あー! このおひたしうまー! 魚の煮付けもさいこー! ……もう、私一人でこれ全部食べちゃうんだからねー!」

 

 と、一人ふてくされて、ミスティアの料理を食べまくっていましたとさ。

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