秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

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その22

 一方、静葉とにとりは、河童の住処に向かっていました。

 

「……ところで静葉さん。あの時の質問なんだけど……」

「あの時の質問と、いうと……」

「永遠亭でのだよ」

「ああ……。あれね」

「今更だけど、あの質問に何の意味があったのさ?」

「どうしても知りたかったのよ」

「今の(こよみ)なんかを?」

「ええ、そうよ。私にとってとても大事なことだったの。教えてくれてありがとう。おかげで助かったわ」

「ふーん……? まぁ、いいけどさ」

 

 と、不思議そうな様子のにとりを見て、静葉はふっと笑みを浮かべます。

 

(……ふむ、今はまだ、この子には伝えないほうが良さそうね)

 

 二人が河童の住処に近づくと、何やら様子がおかしいです。あちこちから煙が上がっています。

 

「にとり、なにかあったみたいよ」

「まさか、襲撃か!?」

 

 二人が急いで入り口に行くと、中では河童たちが何者かと小競り合いをしていました。どことなく河童に似ているようですが……。

 

「あぁー! アイツらか!」

 

 と、言いながらにとりは、背中のかばんからパイナップル爆弾を取り出すと、ピンを抜いて相手に向けて放り投げます。

 ボーンと、威勢のいい音とともに爆弾は炸裂し、その爆風で何人かが吹っ飛びます。

 

「……にとり、こいつらはなんなの」

山童(やまわろ)だよ。私たち沢河童と仲違(なかたが)いをして、山で暮らしているヤツらなんだ。今までもたびたび衝突してるんだけど、何もこのタイミングで襲ってこなくても……」

 

 思わず舌打ちをするにとりに、静葉が告げます。

 

「……ふむ。にとり。いいこと考えたわ。相手さんのリーダーを捕まえて、長官に差し出しましょう」

「あ、それ、ナイスアイデアだ!」

 

 さっそく二人は、山童のリーダーを探しはじめます。

 

「で、リーダーの見当はついてるの」

「……ああ、多分アイツだよ」

 

 そう言いながら彼女が、指さした先には、部下に命令を出す緑の髪の山童の姿が。たしかに彼女がリーダーのようです。

 

「オラァ! コレでも食らえ!」

 

 にとりは、彼女に向かっていきなり弾幕を放ちます。

 

「ウワッ!?」

 

 不意を突かれた彼女は、弾幕を食らって吹っ飛びます。どうやら戦闘能力はそこまで高くない様子。

 にとりはスキを見逃さず、彼女につかみかかります。

 

「よくも性懲りもなく、また攻めてきたな! この山猿ヤロー!」

「なにをー!? 両生類無勢で生意気な!」

「今日は絶対逃がさないからな!」

「望むところだ! 決着つけてやる!」

 

 静葉が見守る中、ゴロゴロ地面を転がりながら取っ組み合う二人。

 まるで子供のケンカです。そして、はげしい取っ組み合いの末、たかねはにとりの出したワイヤーでぐるぐる巻きにされてしまいました。

 

「よーし、いっちょうあがりだ!」

「くそー! ほどけ!」

「イヤだね。ほどいたら迷彩使って逃げるだろ?」

 

 リーダーが捕まった知るや、他の山童は一目散に逃げていってしまいました。薄情なヤツらです。

 

「こいつは山城(やましろ)たかねっていう、山童のリーダーさ」

「……よし、にとり。よくやったわ。この子を連れて長官のところへ行くわよ」

 

 二人はたかねを連れて、技術局長官が住むという建物へ向かいました。

 建物は工場のようになっており、中では機械やら装置やらがガチャンガチャンと音を出して動いています。

 

「この建物自体が製造施設なんだ。でも何の製造をしてるかまでは私には分からない」

「あなたでもわからないの」

「うん。上層部のみの機密事項みたいなんだ。だからごく限られた者しかわからないんだよ」

「……ふん。相変わらずだな。オマエら両生類どもは、そうやっていつも何でもかんでも隠したがるんだ。そういう秘密主義的なところ昔から変わってないよな! いい加減、工場からの排水で汚れた沢をなんとかしたらどうだ?」

「ああもう! うるさいヤツだな! こうしてやる!」

 

 にとりはたかねの口元を布で縛り付けます。

 

「むぐむぐ? むぐむぐ? むぐーー!」

「何言ってもムダだよ! いいから歩け! 歩け!」

 

 更に奥に進むと、やがてガードマンがいるゲートが見えてきます。

 どうやらこの奥は、関係者以外立ち入り禁止のようです。

 

「なんだオマエらは。ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ!」

「ここを襲撃した山童のリーダーを捕まえてきた! 長官にあわせて欲しい!」

 

 にとりが伝えると、ガードマンは通信機で誰かと連絡を取ります。そして。

 

「……案内しよう。ついてこい!」

 

 ガードマンの案内でゲートの奥へ向かいます。ゲートの奥では何やら巨大な機械が製造中のようで、働く河童でにぎわっていました。

 

「……何をつくってるのかしら」

「見たところ、何かの兵器っぽいけど、ちょっとわからないな」

「ふむ、かなり大がかりなようね」

「むぅーぐぐ!」

 

 更に奥へ進むと、河童の皿をかたどったエンブレムの模様の入った分厚い扉が見えてきます。

 きっとあの奥が長官の部屋です。

 ガードマンは、扉の脇のパネルを操作します。するとゴゴゴゴ……っと音を立てて扉が開きました。

 

「この中で長官がお待ちだ。くれぐれも失礼のないように」

 

 そう言うと、ガードマンは去って行きます。

 

「さて。それじゃあ長官さんの御姿拝見といきましょう」

「あー。 ドキドキする……」

「むぅーぐぐぐぅ……!」

 

 静葉たちが恐る恐る部屋に入ると、中は薄暗く、なにやら無数の何かの装置が慌ただしく動いています。

 ゆっくりと奥へ進むと赤い絨毯が敷かれており、そして、その奥には玉座のような仰々しいイスが。しかし、誰も座っていません。

 その後ろの壁には、先ほどの扉にあった河童の皿マークのエンブレムが飾られています。

 

「あれ……?」

「誰もいないようね」

「留守かな?」

「わざわざ案内されて留守ってのはないでしょう」

「それもそうか。じゃ、もしかしてこのイスに何か仕掛けが……」

 

 にとりは椅子に座ってみました。すると

 

「ギャーーーーーー!?」

 

 突然イスから電流が流れ、彼女はイスから転げ落ちてしまいました。と、その時です。

 

「……そのイスはお仕置き用の電気イスだ。座ると痛い目にあうぞ」

 

 どこからともなく機械のような声が聞こえてきます。

 

「……うう、どこだ。どこにいるんだ……!?」

 

 にとりが起き上がってあたりを見回すと、なんと後ろの壁のレリーフから声が聞こえています。

 

「……私に何の用だ」

「あ、あなたが長官か!?」

「……いかにも。私が河童軍技術局長官にして最高指導者だ」

 

 長官が話すたびに、レリーフがホワンホワンと光ります。

 

 ……まるでどこぞの秘密結社のようなノリですね。

 

「……話は聞いている。山童のリーダーを捕まえてきてくれたようだな。ご苦労。さあ、ヤツを差し出せ」

 

 にとりは言われるままに、抵抗するたかねを差し出します。すると突然、たかねの足下に穴が開き、そのまま彼女は、落下してしまいました。

 

 一瞬の出来事にあぜんとする二人に、長官は告げます。

 

「……さて、他に用はあるか? ないならすぐに立ち去るが……」

「……い、いや、実は長官にお話があります……!」

「……話だと?」

 

 にとりは、勇気を振り絞って告げました。

 

「……長官! この戦争を今すぐ止めて下さい……! 今、天狗と戦争をしても何も利益はありません! お互いが戦って疲れている間に、もし吸血鬼たちが攻めてきたりでもしたら……」

「……オマエは、私にモノを申すというのか? 一河童の分際で」

「う……。いえ私は……」

「私が後先考えずに、戦争を仕掛けているとでも思ったか。オロカモノめ! ……もういい。オマエは、今日をもって河童の一族から追放だ。早々にここを立ち去るがいい!」

「そ、そんな……!?」

 

 追放を言い渡されて、うろたえるにとり。

 そのとき、成り行きを見守っていた静葉が口を開きます。

 

「……ちょっと。長官さん。それはあまりにも酷すぎるんじゃないかしら」

「静葉さん……!」

「……ほう。秋神か。オマエには確か疫病(えきびょう)が流行ったときに救ってもらった恩がある。……話を聞こうか」

「この子の言うとおりよ。今は天狗なんかと争っているときじゃないわよ。……あなたは今の里の様子を見たことあるのかしら。正直、あそこまで悲惨な状況になっているとは思わなかったわ。生き物の気配は全くない。木々は枯れ果て、常に瘴気(しょうき)が渦巻いている。このまま放っておいたら、明日は我が身よ。河童たちも里の人間からは、少なからず恩恵を受けているはずでしょう。なら、今こそその恩を返す時じゃないのかしら」

 

 長官は、しばらく間を置いてから返します。

 

「……ふむ。オマエの言いたいコトは、十分理解した。……なら、こうしよう。おい、そこの河童!」

「ひ、ひゃい!?」

「……オマエに任務を与えよう。その任務に成功したら追放を取り消しにしてやる。受けてみるか?」

「も、もちろんです! なんなりと!」

「……よし。では、天狗の総大将のところへ行って、こちらに話し合いの用意があるコトを伝えてこい!」

「はいっ! 承知しました!!」

「……オマエに河童の未来がかかっている! 吉報を待っているぞ……!」

 

 その後、書簡を受け取ると、二人は建物を後にしました。

 

「……う、うわぁー……。なんか大変なコトになってきたぞ……」

「そうね。でもやるしかないわよ」

「そうだね。なんせこっちには静葉さんもいるし! きっと大丈夫だよね?」

「……あら、それはどうかしら」

 

 そう言ってニヤっと笑みを浮かべる静葉。

 

「ちょっとカンベンしてよー! タダでさえビビってるんだから……」

「……ああ、そういえばにとり。こんな時に言うのもなんだけど」

「え、なにさ?」

「あなたのお姉さんにあったのよ」

「え!? 姉貴に……!?」

「そう。確か、みとりって言ったかしら」

「間違いない、姉貴だ! どこで!?」

「ここでよ。もしかしたら今もいるかもしれないわ。探してみましょうか」

「うん! ぜひあいたいよ!」

 

 こうして二人は、天狗の住処に行く前にみとり探しを始めるのでした。

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