秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

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その26

 

 そのころ、穣子、ヤマメ、お燐の三人は、天狗の住処へと夜通しで向かっていました。

 

 もちろん、これから一緒に殴り込みにいくためです。ヤーヤーヤー!

 

「はぁ……。結局、ロクな打ち合わせも出来ずに乗り込むコトになってしまうとはね。トホホ……」

 

 お燐はイマイチ気が乗らない様子。しかし反対に二人はヤル気満々です!

 

「大丈夫よ。お燐! こういうのは勢いが大事なのよ!」

「そうそう! それに夜が明ける前に襲撃した方が、こっち側に有利だろ?」

「……もう、あとは神にでも祈るしかないね……」

「あら、それなら心配ないわよ?」

「どうしてだい」

「だって、私が神だもの……!」

「……ああ、そういえばそうだったねえ」

 

 胸を張る穣子の様子を見て、余計うなだれるお燐。

 そのときです。

 

「なんだオマエらは!?」

 

 三人の前に下っ端白狼天狗が現れます。

 どうやらグダグダやっているうちにいつの間にか、天狗の領地に侵入していたようです。

 

「よーし! 手始めにコイツで、肩慣らしと行くか!」

「よっしゃー! やるわよー!」

「……やれやれ、仕方ないね」

「な、なんだ? オマエらは……!?」

 

 ヤル気満々な三人の様子に、下っ端白狼天狗は思わずたじろいでしまいます。

 その後、三人の集中攻撃を受けて、彼女はのされてしまいました。あわれー。

 

「よし! 最初の勝利だな!」

「この調子でいくわよー!」

「まったく、先が思いやられるよ……」

 

 と、三人の前に、騒ぎを聞きつけた下っ端白狼天狗達が次々と姿を現します。

 

「ほーら。団体さんのお出ましよ!」

「よーし! やってやるよ!」

 

 その後も三人は、下っ端の白狼天狗達を次々と蹴散らしていきます。

 

「なんだなんだ。案外たわいもないもんだな!」

「そうよ! 私たちのコンビネーションの前に敵はいないのよ!」

「おいおい二人とも、そんな調子に乗っていると……」

 

 そのとき、三人の目の前にいきなり弾幕が放たれました。

 

「うお!?」

「ひゃあっ!」

「……ほーら。おいでなすった!」

「……この先はぜったい通さん!!」

 

 そう言って三人の目の前に立ちはだかったのは、またしても椛でした。

 

「出たな! よーしこの勢いで、こないだの借りを返してやる!」

「……ねえ、なんかアイツ、目元はれてない?」

「……そういや確かに。もしかして泣いてたのかねえ?」

「うるさい! うるさい! 今、私は非常にキゲンが悪いんだ!」

 

 椛は剣と盾を構えると、いきなり斬撃をメチャクチャ放ってきます。

 

「うわっ! やべっコイツ、なんかしらんけど怒ってる!?」

「ちょっと!? アンタ、手加減しなさいよ!?」

「するわけないだろう……。あたいたちは敵なんだから」

 

 三人は椛の怒涛(どとう)の攻撃に避けるので精一杯です。

 

「フン! このまま我が刀のサビにしてくれる!」

 

 椛は弾幕を放ちながら、剣を構えて素早く襲いかかってきました。

 

「ちょっ!? タンマ!? ギャーー!?」

 

 穣子は弾幕を避けきれず吹っ飛んでしまいます。

 

「あっ! 穣子が!?」

「ヤマメ! ここはいったん退却した方が……」

「逃げられると思うなよ!」

「え……!?」

 

 二人が気がつくと、あたりは白狼天狗たちに取り囲まれていました。

 

「……ゲゲッ。いつのまに!?」

「……これは、もはや、これまでかねぇ……」

「フン! この場で斬り捨ててやる! 覚悟しろ!」

 

 と、椛が刀を構えて斬りかかったそのときです。

 

 突然あたりにドドド-ンと爆音が鳴り響いたかと思うと、まわりの白狼天狗が一撃で吹き飛んでしまいました。これはいったい!?

 

「む!? な、何だ……!?」

「……ふー。やれやれ、ようやく追いつけたか……!」

 

 そう言いながら、砂煙の中から姿を現した者の姿を見て、ヤマメは思わずギョッと目を丸くさせます。

 それもそのはず、現れたのは、なんと……!

 

「……よぉ! 久しぶりだな! ツチグモ!」

「おっ……オマエは……!! ほ、星熊勇儀!?」

「……やれやれ、勇儀。遅かったじゃないかい。……まったく肝を冷やしたよ」

 

 彼女の姿を見たお燐は、ホッとしたように息をつきます。

 

「どどどど、どういうことだよお燐!? なんでコイツがここに!?」

「ほら、言っただろ? 助っ人を手配したって……」

「えっ!? まさか助っ人って……」

「……ああ、そうさ! そのまさかだよ」

「はああぁー!? ウソだろー!?」

 

 勇儀は「はっはっはっはっは!」と、豪快に笑うと、二人に告げます。

 

「遅くなってすまないな。古明地さとりの命を受けて、山の四天王一角、星熊童子こと、この星熊勇儀、助太刀に参った!」

 

 勇儀は盃を構えたまま、悠然と構えています。まさに強者の風格です!

 

「なっ……!? なぜだっ!? な、なぜ鬼がコイツらの助っ人なんかに……!?」

 

 さすがの椛も動揺を隠せず、思わず後ずさりしてしまいます。

 

「さあ。かかってこいよ?」

「ぐぬぬぬぬぬっ……!! ええいっ! ……覚えてろっ!」

 

 捨てゼリフとともに、彼女は歯ぎしりをしながらその場を去って行ってしまいました。

 

「……なんだ。敵前逃亡とは、面白みのないヤツめ」

「ふー。やれやれ、なんとか助かったようだね……」

「ああ、本気で死ぬかと思ったよ」

「まったくだよ」

「……でだ。お燐」

「あい」

「事情。説明して」

「ああ、いいとも。実はね……」

「あ、ちょっと待って!」

「なにさ?」

「穣子起こしてくる」

「あ、はいはい」

 

 ヤマメは、穣子をたたき起こすと皆のところへ連れてきます。ところが……。

 

「ぎゃあああああああ!? 鬼が出たぁーーー!?」

 

 彼女は勇儀の姿を見て再び気絶してしまいました。

 

「ああっ! 穣子ー!?」

「……そりゃそーなるねえ。顔に水でもかけてやって起こしてやっとくれ」

「はっはっはっは! まったく賑やかでいいコトだ!」

 

 その後、改めて復活した穣子を交えて、お燐の事情説明が始まりました。

 

「……どうして鬼の協力を得られたか知りたいんだろう? 簡単な理由だよ。勇儀はさとりさまに色んな負債があるんだ。それで今回、それをチャラにするってのを条件で、助っ人に借り出されたってワケさ。だろう?」

「……ああ。概ねそんな感じだな。まあ、故意ではないんだが、お恥ずかしながら、どうもうっかり家を壊してしまったり、地面に大穴開けてしまったりするコトが多くてな……。そのたびに、さとりのヤツに都合つけてもらってるんだ」

 

 そう言って、目を閉じて、ふっと笑みを浮かべる勇儀。

 ……いくらカッコつけても、言ってる内容で台無しですが。

 

「……まあ、確かにアンタ、見るからに力強そうだもんねえ。でも、どうしてそれがさとりに関係あるワケ……?」

「……なんだ。そこまで説明する必要があるのか。実はな。あの旧地獄街道一帯は、さとりの所有地なんだよ。私たち鬼はアイツに土地を借りて、そこに家を建てて住んだり、店を開いて商売したりして生活しているのさ。当然、ショバ代はアイツに払っているよ」

「なるほど! そりゃ、さとりに頭上がらないわけね!」

「しかし、それにしても鬼が……。それも山の四天王の一人が味方につくなんて、こんなに心強いコトはないよ! 凄いや! お燐!」

「いやいやー。まさか上手くいくとは思わなかったので、正直あたいが一番驚いてるよ」

 

 そう言いながら思わず、照れ笑いを浮かべるお燐。

 そこへ勇儀が三人に告げます。

 

「……さて。お三方。間もなく夜明けとなるぞ。これからどうするつもりなんだ?」

「……ああ、そうだね。せっかく勇儀も加わったことだし、改めて作戦の計画を立て直そうじゃないか」

「そうだね! 鬼の力を得られたなら百人力だ!」

「よーし! 天狗どもにギャフンと言わせてやりましょう!」

 

 こうして、強力な助っ人を味方に加えた穣子一行は、殴り込み作戦の練り直しにかかるのでした。

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