秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

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その28

 四人は、天狗の住処の正門の近くまでやってきました。

 お燐が様子をうかがうと、正門やその横の塀の上も白狼天狗に加えて一部の鴉天狗まで見張りに入っており、文字通りの厳戒態勢です。

 

「おうおう。さすがに相手さんカッチカチだねぇ」

「……そりゃ、こっちに鬼がいるってわかったらこうなるって」

「ま、そりゃそうだろうなあ」

「先に言っとくけど、勇儀。暴れるにしてもほどほどにしてくれよ? あまり被害を大きくすると後が大変なんでねえ」

「……ま、極力努力するさ」

「よし、それじゃ……。作戦開始だ!!」

 

 お燐の号令とともに、四人は見張り達に向かって一斉に威嚇の弾幕を放ちます。そしてその弾幕による砂煙に紛れて突撃しました。

 

「来たぞ! 相手には鬼がいる! 総員総力戦を覚悟しろ!」

 

 椛が他の天狗に指令を出します。

 どうやら彼女がこの場のまとめ役のようです。

 

「……どれ。いっちょやってるか!」

 

 勇儀は(さかずき)の酒をグイッと飲むと、ドンっと大地を踏みしめます。

 それだけでズンっと、地面が揺れ、その振動が天狗たちに襲いかかります。しかし天狗たちも、それに怯むコトなく弾幕を放って応戦します。

 

「なんとしても中には入れるな! 命をかけてでも死守しろ!」

 

 分厚い弾幕があたりを覆います。相手も必死です。

 

「……ふむ、指揮官はアイツみたいだな! そらぁ!」

 

 勇儀が大きく飛び跳ね、そのまま椛の前に着地すると、その衝撃でまわりの天狗が吹っ飛びました。

 

「よし! 今がチャンスだよ!」

 

 その吹っ飛んだ天狗たちに、お燐たちが次々と追い打ちをかけて倒していきます。

 

「よお。指揮官さん。ちょっと私と遊んでくれないか……?」

「キサマ……!」

 

 椛は険しい表情で勇儀に斬りかかりますが、彼女は余裕で攻撃を避けます。

 

「まあまあ。せっかくの祭りだ。どうせなら派手にやろうじゃないか?」

 

 そう言って勇儀は手招きしながら上空へ。

 

「受けて立とう!」

 

 椛も空へと飛び上がります。

 

「よし! 今のうちだ! 門を狙って!」

 

 三人は手薄になった門に向けて弾幕を放ちます。……が、門はビクともしません!

 

「あれ!?」

「なんか、ずいぶん頑丈みたいね……」

「術か何かで強化してあるのかねこりゃ。……しかたない! 上から行くよ!」

 

 三人は正面突破をあきらめて、上空へ飛び上がります。

 

「行かせるか!」

 

 天狗たちも、三人の追撃にかかります。

 そして、そのまま上空で激しい空中戦となってしまいました。

 

「ギャー!! やられるー!?」

「おっと! 危ない神さま!」

「……うへぇー。助かったわ。お燐!」

 

 直撃を食らいそうになる穣子をお燐がかばい、応戦します。しかし、相手の分厚い弾幕は、いっこうに止む気配がありません。

 

「……むむむ。こんなところで二人を消耗させるわけにはいかないな。ならば……!」

 

 ヤマメは、奥の手とばかりに紐状の弾幕を構築し、ブン回し始めました。

 

「とっておきだ! 食らえ! カンダタロープ!」

「な、なんだ!?」

「うわっ!? いったん引け!」

 

 その弾幕の不規則な動きに天狗たちは思わずひるんで後退してしまいます。今がチャンスです!

 

「よし! 今だ! 二人とも! 中へ!」

「あいさ! ありがとうヤマメ!」

「そんじゃ、一発かましてくるわね!」

 

 そのスキに穣子とお燐は、天狗の住処へと侵入するのでした。

 

 □

 

 そのころ、大広場では大勢の見物人に囲まれ、カメラのフラッシュがたかれる中、文の処刑が今行われようとしていました。

 彼女は処刑執行人の龍によって、はりつけから下ろされ、斬首台に移動させられます。

 

(……まさか執行人が龍さまとは……)

 

 文は平静を装っていましたが、内心は動揺を隠せませんでした。

 一方の龍は厳しい表情で、文を斬首台に登らせます。

 龍は厳しい表情を崩さず、文にたずねました。

 

「……罪人射名丸文。謀反の罪で我が天狗の掟にのっとり、斬首に刑に処す。……最後に何か言い残したい言葉はあるか?」

 

 文は龍の方を向くと、彼女の目を見つめながら静かに告げました。

 

「……龍さま。私は自分の最期を見届けるのが、龍さまで本当によかったですよ。……だって、アナタは私の上司ですから……」

 

 龍は険しい表情のままです。

 かまわず文は続けます。

 

「……龍さま。今まで本当にお世話になりました。……最後まで迷惑をかけてしまってすいません。……あの世に行っても私は、アナタのコトは忘れませんよ」

 

 そう言って文は龍に向けて、ふっと笑みを浮かべます。

 それを見た龍は、思わず顔をそむけてうつむいてしまいます。

 

「……龍さま?」

 

 龍は、うつむいたまま、声を絞り出すように告げます。

 

「……文。……ずるいぞ。私は、本当は……」

 

 と、そのときです!

 

 突然、上空から広場にリング状の弾幕が落ちてきました!

 上空でドンパチやってるヤツらの弾幕が流れてきたのです!

 

 ヒュルルルルル……ドォーーン!!と、弾幕は広場に落ちて、たちまちあたりはパニックとなってしまいます。

 更に、間髪入れず、今度は別な方向から再び弾幕が飛んできます。そしてそれは、そのまま絞首台の方へ向かっていき……。

 

「…………えっ!?」

 

 なんと、弾幕は絞首台に命中し、絞首台は粉々になってしまいます。

 爆風に吹き飛ばされた文は、受け身を取って起き上がると思わず龍の方を向きます。

 龍は文を見やると、目を閉じて静かに首を横に振りました。

 

「……龍さま。……すいません!」

 

 文は龍に一礼すると、その場を飛び去ります。

 龍は、ただその場に立ち尽くしていました。

 

「……ふふふ」

 

 広場の様子を眺めていた典は、文が飛び去るのを見届けると、思わずふっと笑みを浮かべます。その手にはスペルカードが……。

 

「……さて、それでは、私もそろそろ動きましょうか」

 

 そう言い残すと彼女は、こーんこーんと姿を消すのでした。

 

 □

 

 一方、そのころ、静葉とにとりは、交渉のために天狗の住処へと向かっていました。

 

「さて。もうすぐ天狗の住処に着くけど……」

「なにやら様子がおかしいわね。なんか弾幕の音も聞こえるし」

「もしかして襲撃されてる……?」

「かもしれないわね」

 

 二人が急いで天狗の住処のそばまで近づくと、上空で激しい弾幕合戦が繰り広げられているのが見えました。

 

「……うわー。なんか大変なことになってるぞ……!?」

「にとり。この混乱に乗じて中に入るわよ」

 

 そう言って静葉は、にやりと笑みを浮かべます。

 

「よしきた!」

 

 にとりも同じように笑みを浮かべ返します。

 二人は塀に近づくと、気づかれないようにそのまま素早く中へ入り込みます。

 

「静葉さん、ラッキーだね!」

「ええ、うまくいったわ」

 

 こうして二人は、やすやすと天狗の住処に、忍び込むことに成功するのでした。まさか交戦相手が穣子組とは知らずに……。

 

 □

 

 さて、静葉とにとりが天狗の住処に侵入したころ、一足先に侵入していた穣子とお燐は、奥の屋敷に向かっているところでした。実にめまぐるしい展開です!

 

「……ところで、お燐。道は分かるの?」

「ああ、大体の地形なら頭に入れてあるさ! なんせ、昔、来たコトがあるからね」

「さすが、ぬかりないわね!」

 

 中は思ったより混乱はしておらず、存外落ち着いています。

 せいぜい行き交う天狗が、物珍しそうに二人を写真に収めるくらいです。

 そのまま二人は、奥の屋敷へと侵入します。

 屋敷の敷地内も驚くほど人がいません。これは一体……?

 

「なんだいなんだい。いくら何でも手薄すぎやしないかい?」

「そーね! ちょっと拍子抜けなんだけど……」

「ひょっとして、ワナかなにかかね?」

 

 二人は、カレサンスイの庭園まで入り込みます。その奥には奥屋敷が。と、そのときです。

 突然ゴゴゴゴゴと、轟音とともにあたりが揺れたかと思うと、なんと、地面がどんどん隆起していきます!

 そしてそのまま大きな山になってしまいました。

 

「ちょっとなによこれ!?」

「庭が山に……!?」

 

 思わず戸惑う二人。そのとき、どこからともなく声が響いてきます。

 

――いったい何の用だ。

 

「誰よ……っ!?」

 

――私は天狗の総大将。

 

「なるほど、アンタがそうなのか! あたいの名は……」

 

――知っている。火焔猫燐。秋穣子。ここをどこと思っている。早々に立ち去れ!

 

「待ってくれ! あたいたちはアンタと話が……」

 

 と、そのときゴゴゴゴ……と、いう音とともに、再び地面が隆起し始めます。そしてそのまま奥屋敷を巻き込んで、あっという間に山になってしまいました。その山のてっぺんに奥屋敷が見えます。

 

「あ! 屋敷が逃げた!?」

「待って穣子。何か聞こえないかい……?」

「へ……?」

 

 耳をすますと遠くから何やらドドドドという音が……。

 

「うわあ、こりゃまずいよ!?」

 

 音の正体に気づいたお燐たちが逃げようとする間もなく、山と山の隙間から濁流が溢れ出てきました!

 

「ギャーーーー!!」

「ホゲェーーーーー!?」

 

 あっという間に濁流は流れ込み、そのまま二人を飲み込んでしまうのでした。

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