二人は、ようやく森をぬけて、沢へ出ました。この沢をぬけて山を超えれば河童の住処です。
沢の様子もサマ変わりしていて、普段はキレイな川の水が赤黒く濁っています。
いや、それにしてもなんとも気持ち悪い色だこと。水銀 コバルト カドミウムでも流れているんでしょうかね?
「ふう、姉さん。疲れちゃったから、少し休みましょうよ」
「ええ、そうね。じゃあ、あそこにある切り株で、一休みしましょう」
二人は沢の脇の切り株に、腰を下ろしました。
「あー、喉かわいたわー」
「沢の水でも飲んできたら」
「嫌よ。あんな気持ち悪い水なんか」
「意外とおいしいかもしれないわよ」
「じゃあ、姉さんが飲んでみてよ?」
「嫌よ。私、喉かわいてないもの」
などと二人が、たわいもない話をしていると、沢の中から突然、何かがバシャンと飛び出してきます!
そして頭上の木の太い枝に頭をしこたまぶつけて「ギャーッ!」と叫んで、そのまま遠くの方に転げ落ちていきました。
「もう、今度はなんなのよ……!?」
「ふむ。ちょっと見てくるわね」
「気をつけてよ……?」
静葉が近づいてその何かの様子を調べてみると……。
あっ! なんと妖怪です!?
ツチグモの妖怪が倒れています!
「もしもし、生きてるかしら」
呼びかけるも返事はありません。どうやら完全に気を失ってるようです。
「……ふむ」
静葉は沢の赤黒い水を手のひらにくみ、妖怪の顔にバシャリッと浴びせました。
たまらず妖怪は「ギャッ!」と叫びながら、飛び起きます。
「もう、なにするのさ!? 人が気持ちよく気絶してたのに!?」
「夢見心地なところ悪かったわね。見たところ、あなたはツチグモの妖怪ね」
「そうだけど。……それがなにか?」
「私たちは河童の住処に用があってきたのよ。なにか知ってるかしら」
「知ってるは知ってるけど、あんなトコに何しに行くのさ?」
「この世界を元に戻してもらうのよ」
「え、本当に? それはありがたい!」
「あら、意外ね。ジャマしようと襲いかかってくると思っていたわ」
「だって、ある日、急に皆が勝手に暴れ始めたんだもん。今、この幻想郷は河童の勢力と天狗の勢力、吸血鬼の勢力の3つ巴状態。我々、地底の妖怪にとっては良い迷惑よ! 本当!」
「丁寧でわかりやすい状況説明ありがとう。助かったわ。ところで、あなたは何をしていたの」
「あ、うーん。実は一応、地上を支配してやるつもりで仲間と地底から出て来たんだけど、あっけなく全滅しちゃったんだ。もともと数が少なかったってのもあるけど……」
「ふむ。なんだか事態は思ったより大変なことになってるみたいね……」
腕組みをする静葉に、神妙そうにヤマメがたずねます。
「……ねえ、私もアンタたちについていっていいかな? 少しくらい不便でも、私は皆と平和に暮らしてる方がいいし。それに私の能力は案外、役に立てると思うよ?」
「あら。仲間が増えるのは大歓迎よ。私は静葉。つれに穣子ってのもいるわ」
「静葉に穣子か。私はヤマメ。よろしく!」
こうしてツチグモ妖怪の