一方、激しい攻防が続く空中では……。
「どうしたどうした! オマエの力はそんなもんか?」
「ぐぅっ……!」
勇儀と相対している椛でしたが、実力の差は明白。もはや彼女は、既に
「おいおい。もう終わりなのか? 全然物足りないぞ……?」
「なんの……。まだまだぁーーー……!!」
椛は
「お、いい気迫だねぇ! それじゃ私もコイツでいこうか!」
勇儀もそれに応えるように弾幕を放ちます。
「さあ、よけれるものならよけてみな! 四天王奥義!
勇儀のまわりにおびただしい数の弾幕がつくられ、椛に向かって一斉に襲いかかってきます。
「うぉおおぉーーー!!」
椛は力を振り絞り、それらの弾幕をなんとかしのぎきります。努力と根性のたまものです。
「よし! やったぞ! 鬼の奥義をかわしきった……!! これで私も……!」
再び椛は、剣を構え攻撃態勢に入ります。ところが。
「おい、そこは危ないぞ?」
次の瞬間、まわりが真っ白になるほどの弾幕がドォーンと展開し、彼女は巻き込まれてしまいました。
「うわぁーーーーー!?」
被弾した椛は、
(……ああ、やっぱり私じゃダメなのか。……私の力では鬼には……)
と、その時、急に落下が止まり……。
「え……?」
彼女が驚いて見回すと、なんとそこには……。
「い、飯縄丸さま……?」
そう、龍が落下する彼女を受け止めていたのです。
「……よし、ご苦労だったな。椛。……後は私にまかせて、早く救護班の所へ行きなさい」
龍は彼女を下ろし、勇儀の方を見ると、言い放ちます。
「おい! そこの鬼! よく聞け! 我こそは飯縄丸龍! いざ尋常に勝負といこう!」
「ほう、いいねぇ! 大天狗か! ようやく歯ごたえのありそうなヤツが来たな!」
勇儀は、盃に口を付けると、思わずニヤッと笑みを浮かべました。
□
そのころ、静葉とにとりは、ひたすら奥屋敷を目指して進んでいました。すると……。
「静葉さーん! にとりー!」
「ん? その声は……」
二人の前に文が姿を現します。
「文。無事だったのね。心配したわよ」
「いやはや、ま、まあ、色々ありましたけど……。なんとかこの通り!」
「よかった! じゃあ、急いで……」
と、その時、何やら前方からゴゴゴゴと言う音が……。
「……ん、なんだ?」
「あややや!? 大変です! 濁流がこっちに!」
「二人とも上よ」
三人は急いで上空へ避難します。
濁流は建物を巻き込みながら、大広場まで来て、ようやく収まりました。
「なんとか収まったようね」
「あー。びっくりした。なんだったんだ?」
「……あっ! 誰か倒れていますよ!?」
三人が近づいて確かめてみると。
「あら、誰かと思えば穣子じゃない」
「それと、お燐も……!?」
「どうやら二人とも今の濁流にのまれたみたいですね。 ……もしもし、大丈夫ですか?」
文がお燐をゆすると、彼女は水をぷーっとふきだし、意識を取り戻します。
「……う゛ぁー……ひ゛と゛い゛め゛に゛あ゛っ た゛ー !」
「お燐! 大丈夫? 私だよ!?」
「……にとり……!? それに……」
「いったい何があったの。妖怪猫さん」
「……あ、もしかしてアナタが、穣子の姉の静葉さん?」
「ええ、そうだけど……」
「はじめまして。あたいは地霊殿の住人、火焔猫燐っていいます。お燐って呼んでください。色々あって、アナタの妹さんと一緒に行動していたんです」
「あら、そう。それは穣子が、お世話になったわね」
「……ところでいったい、何があったのです?」
「ああ……」
お燐は経緯を三人に話しました。
ちなみに穣子は、まだ気絶したままです。
「……ふむ、なるほど。そういうことだったのね。ちょうど私たちも天狗の親分さんに交渉しに行くところだったのよ」
「そうそう。河童側の正式な使いとしてね!」
「おお、それは好都合だ! あたいたちは門前払いだったけど、それなら総大将さんも、きっと受け入れてくれるはずだ!」
「……それにしても、二人とも無謀なコトしますねえ。私でさえ総大将には直々にあったことないというのに……?」
「いやー。上手くいくと思ったんだけどねえ……」
呆れ気味の文に、お燐は思わず苦笑を浮かべます。
「さてと……」
静葉は一息つくと、ゆっくりと立ち上がって、お燐に告げます。
「……ま、あとは私たちにまかせてちょうだい。……ここからは、私たちのステージよ」
にとりと文も続きます。
「よし! お燐たちの無念、晴らしてきてやるよ!」
「……ええ、この世界の未来を変えましょう!」
そう言い残すと、三人はさっそうと屋敷の方へと飛び立っていきます。
「たのんだよー! 三人ともー!」
お燐は手を振りながら三人を見送るのでした。
そして三人の姿が見えなくなったころ。
「……あ、あれ? ここは……?」
ようやく穣子が、目を覚まします。
お燐は苦笑しながら彼女に告げます。
「お、やーっとお目覚めかい? 今、静葉さんが総大将のトコに向かっていったよ」
「……ふえ? そうなの……? ……え? 姉さん?」
またしても何も知らない穣子は、目をパチクリさせながら、きょとんとして思わず屋敷の方を眺めるのでした。
□
「あやぁ……? おかしいですね。屋敷の周りは、こんな地形じゃなかったはずでは……」
三人の目の前には、木々の生い茂った山が見えます。
更にその山腹からは、水も流れています。
まるで以前からそうであったかのような雰囲気すら醸し出しています。
静葉はその様子を見渡すと、ぽつりとつぶやきます。
「……ふむ。恐らく総大将さんの仕業でしょうね」
「うぇ!? マジで……!? 凄ぇ力だなぁ」
「……ま、総大将というくらいですもの、これくらいはきっと余裕なのでしょう。きっとね」
そう言って静葉は、不敵な笑みを浮かべます。
「どうやら総大将のお屋敷は、この山の頂上にあるようですね」
「そう。それじゃ、行きましょうか」
「あー……。ドキドキするなぁ」
三人は山の頂上のお屋敷を目指して、進み始めるのでした。
そのころ、ここは河童の技術局長官の部屋。
レリーフが光り、長官の声が部屋に響き渡ります。
その部屋にはある人物が。
その人物に向かって長官は話しかけます。
「……くくく。待ちわびたぞ」
「いや、遅くなってすいませんでした。ちょっと雑用が入ってしまいましてね……」
そう言うと、その人物はニヤリと笑みを浮かべ、その大きなふさふさの尻尾をゆらゆらと揺らします。そう、その正体は。
「雑用か。ずいぶんマメなことだな。菅牧典」
「ふふふ……。なにぶん、ゲセンなキツネなものですので、なにとぞお許しを……」
「……今、こちらから話し合いの交渉への使者を送らせているところだ」
「ええ、存じておりますとも。すべてはあなたの目論見どおりに動いてますよ……。技術局長官さま」
そう言って彼女は、ニヤリと笑みを浮かべるのでした。