秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

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第二章 レミリア攻略戦
その1


 さてさて、すったもんだのあげくの果てに、同盟にこぎ着けた河童と天狗でしたが、当然、すぐに紅魔館へ攻め入るというワケにもいかず……。

 

「……だから言ってるでしょ! せっかく大量の兵がいるんだからそれを利用しない手はないって!」

「いや、それは違うよ。諏訪子。オマエは戦争ってものをわかってない。戦というのは、いかに兵力を残しておくかなんだよ。故に私は強襲してレミリア本人を叩く作戦を推すね!」

「とりあえず二人とも、少し落ち着きましょうか」

 

 会議室でギャーギャーワーワー騒いでいるのは、天狗の総大将と河童の技術局長官。言うまでもなく諏訪子と神奈子です。

その横で二人を見守っているのが、特別顧問の秋静葉。

 三人は極秘で紅魔館攻略に向けた作戦会議を行っているのですが、二人の意見がまるで食い違っていて、会議はいっこうに進みません。

 

「ふん。しょせんは旧時代の土着神だね。ここはこの新しき時代の神に黙ってまかせとけばいいんだよ」

「何よ! 軍神の異名持つからって偉ぶっちゃって! 本当は大したことないグータラ神のくせに!」

「はいはい。二人とも。とりあえず落ち着きましょうか」

 

 このまま放っといたら、二人ともこの場で諏訪大戦をおっぱじめかねないので、そのたび静葉が二人をなだめています。

 もはや特別顧問ではなく、これじゃただの保護者です。

 結局この日は大して進展がなく、会議は明日へ持ち越しとなってしまいました。やれやれ、先が思いやられるコト……。

 

 □

 

 会議が終わったあと静葉は、その足でとある場所へと向かいました。その場所は……。

 

「もしもし。いるかしら」

「おや、その声は静葉さん!」

 

 彼女が向かったのは文の事務所でした。

 こざっぱりとした事務所のテーブルの上には、大量の新聞が置かれています。

 静葉がその新聞に目を通すと、見出しにはこう書かれていました。

 

『号外! 天狗と河童同盟結成! 幻想郷の歴史にまた1ページ!』

 

 同盟を結んだことをセンセーショナルかつポジティブシンキングに知らせる新聞です。

 更にそれには、目線を隠した匿名希望河童のインタビュー写真も掲載されており……

 

――ひゅい!? これは歴史的事件だよ! 今こそ、妖怪の誇りを取り戻す絶好の機会なんだ! 時代が変わるよ! そう、我々、河童と天狗の同盟時代にね!

 

 なんてコトをのたまってまいます。……いったい、どこの河城なんとかさんなんでしょうかね。

 

「……ふむ。どうやらこっちは上手くいってるようね」

「ええ。おかげさまでなんとか」

「あなたのこの新聞のおかげで、天狗側には今のところ大きな反発は生まれてないわ」

「ええ、素晴らしいコトです。やはりあのインタビューが効いたのでしょうね」

「ええ。にとりは本当いい仕事をしてくれたものだわ」

 

 上機嫌そうに新聞を眺めている文に、ふと静葉がたずねます。

 

「ところで……。あなたは平気なの。また新聞がこうやって利用されてしまっているけど……」

「ああ、全然、気にしてませんよ?」

「あら、どうして」

「……だって、ウソは何一つ書いてませんもの。全部真実ですから! 真実をそのまま伝えるのが新聞の本来の役割ですからね!」

「……ああ、なるほどね。たしかに」

「……そういえば、さっき天狗側はと言いましたけど、河童側はどうなんですか?」

「ふむ。それが、河童は天狗と違って、新聞を読むという習慣がないので、個々の意志にまかせるしかないというのが現状よ」

「なるほど。それは、ちょっとやっかいですね」

「ええ、天狗ほど一枚岩というわけにはいかなそうね」

「まあ、でも、おかげさまで、この天狗の住処にも河童の姿がちらほら見られるようになりましたし、案外大丈夫なんじゃないですかね?」

「……そうね。そうであることを願うわ」

 

 静葉が、窓から外を眺めると、そこには、話をしながら楽しそうに歩いている天狗と河童の姿が見えます。

 それを見た静葉は思わずふっと笑みを浮かべさせるのでした。

 

 □

 

 一方、レジスタンスと接触するために穣子、ヤマメ、お燐の三人は命蓮寺へと来ていました。レジスタンスのリーダーはこの寺の住職である聖なのです。

 三人が寺の入り口に着くと、山門は開かれており、誰でもウェルカムな状態。ずいぶん不用心だなと、思いながら三人が中に入ると待ち受けていたのは、三毛猫の妖怪でした。ええと、確か名前は……。

 

「おろ。ミケじゃないか」

「あれ? お燐?」

 

 どうやら二人は知り合いのようです。

 猫妖怪同士のよしみというヤツでしょうかね。

 

「なんだ。オマエさんもここにいたのかい」

「そうだよ。外はキケンだからね。ここは結界で守られてるから安全なんだって」

「そうかい。と、いうコトは他の妖怪もここにいるってワケかい」

「そう。ここは妖怪たちの避難所なのよ」

「ふーん。聖のヤツもよくやるわねー。こんなに妖怪集めて……」

「おい、お燐。それでジストニアってヤツはどこにいるんだよ?」

「レジスタンスね。ああ、そうだ。ミケ。寺の者はどこにいるんだい?」

「んー。たぶん奥の本堂の方にいると思うけど……?」

「そうかい。ありがとう」

「本堂だな。よし! 行くぞー!」

「だからアンタが仕切るなっての! ヤマメ!」

「いいだろ別に!」

 

 さっそく三人が本堂の中へお邪魔すると、そこには床にゴロンと寝て団子をむさぼっている兎の妖怪や、暗闇の中でふよふよしている妖怪やら、とにかく避難してきた妖怪たちであふれかえっています。すし詰めです。ごった煮です。にこごりです。

 

「なんじゃこりゃ!? ずいぶんとまたひどい有様だねえ」

 

 三人が、それらをかき分けながら、たまに踏みつけつつ奥へ進むと、ケモ耳姿の緑の髪の小柄な妖怪がいました。

 

 彼女は仏像の方を向いて、何やら、ぎゃーてーぎゃーてーと大声で念仏を唱えています。

 どうやら彼女はこの寺の妖怪のようですが……。

 

「やあ。響子!」

 

 お燐が声をかけると、彼女は驚いて振り返ります。

 

「あれ!! お燐さん!?」

「相変わらず元気そうだね」

「ええ!! おかげさまで!!」

 

 そう言って響子は笑顔を見せます。それにしても声がでかいコト……。

 

「いやあ。なかなかユカイな状況になっているようじゃないかい」

「全然ユカイじゃないですよ!! このままじゃ寺が壊されちゃいますよ!!」

「ははは。で、(しょう)はどこだい?」

「あれ!? いませんでした!?」

「……うーん。あたいが見た限りいなかったね」

 「おかしいなぁ! さっきまでいたんですけど、どこか出かけてしまったみたいですね!!」

「そうかい。……それにしても、オマエさん。相変わらず声が大きいねえ」

「そうですか!? これでも普通の声ですよ!?」

「うんうん。……十分、大きいと思うよ?」

「あれー!? おかしいなぁ!?」

 

 そう言って首をかしげる響子。

 ちなみにヤマメと穣子は、うるささのあまりに耳を塞いでいます。

 今の二人に悪口を言っても多分聞こえません。やーい、クロマメー。イモ神ー。

 

 お燐は気を取り直して、彼女にたずねます。

 

「……ところで響子。(ひじり)はどこだい?」

「それは言えません!!」

「……あたいにでも?」

「ダメです!!!」

「……ナイショで教えてくれないかい?」

「ダメですっ!!!!」

「そこをなんとか……」

「ダメったらダメです!! 聖さまに誰にも教えちゃダメ!!! って言われてるので、ダメなモノはダメーーーっ!!!!」

「うわぁーーー!?」

 

 耳元で大声を出されたモンで、お燐は思わず尻もちをついてしまいました。

 それにしてもすごい声だこと。これは寝た子も起きてしまいますねえ。

 

「……んー。こりゃダメだ。仕方ない。他をあたるとするか」

 

 仕方なく三人は、耳をおさえながら寺を飛び出ると、別なところへ向かうのでした。

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