秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

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その3

 

 静葉が街中を歩いてると急に声をかけられます。

 

「あ、いつかの秋神さまじゃなーい!」

「あら、誰かしら」

「私よ私! もしかして忘れちゃったー?」

「……ああ、あなたはたしか、はたてね」

「だいせいかーい!」

 

 そう言って満面の笑みを見せるはたて。手提げカバンを持ってどこかにお出かけしていたようです。

 

「ねえねえ。どうしたの? こんなトコロで。もしかして観光とか?」

「ええ。……まあ、そんなところね」

「ここ、いいトコだもんねー。旅行したくなる気持ちわかるわー」

「ええ、そうね。ところで、そういえばあなたのこと探してたのよ」

「え!? そうなの?」

「ええ。そうなのよ。せっかくだから、立ち話もなんだし、どこかでゆっくり座って話しましょうか」

「あ、それなら私んち、来るー?」

「あら、いいの」

「いいよいいよー。もてなせるようなモノは何もないけどねー?」

「別にいいわ。じゃあ、せっかくだからお邪魔させてもらおうかしら」

「やったー! じゃ、ついてきてー!」

 

 と、いうわけで静葉は、はたての家に案内されるのでした。……それにしても相変わらずノリの軽い子です。

 

 彼女の家は、少し路地に入ったところにありました。

 

「それじゃ、お邪魔させてもらうわね……」

 

 静葉が中に入ると、薄桃色の壁紙とファンシーな家具に囲まれた空間が待っていました。

 いかにもイマドキの。と、いった感じです。部屋中キレイに掃除されています。秋ハウスの時といい、やはり彼女はキレイ好きなようですね。

 静葉が部屋中を見渡しながら、白い流線型のかわいらしいイスに座ると、奥の部屋、おそらく台所でしょうか、そこからはたてが姿をあらわしました。

 

「あんまキレイじゃないけどゴメンねー?」

 

 と、言いながら彼女は、湯飲みとお茶菓子をテーブルに置きます。クッキーと赤いお茶です。紅茶でしょうか。それにしては赤過ぎるので、もしかしたらシソ茶とかかな?

 

「あら、ありがとう。そんなおもてなしなんて」

「いやいや、神さまだし……。一応ね?」

「お気づかい感謝するわ」

「それで話って?」

「ええ、あなたのおかげで戦争を止めることができたから、お礼を言いたかったのよ」

「え!? ウソでしょ!?」

「本当よ。あなたのその念写ってのが凄く役に立ったの」

「そうなんだ!? それは嬉しいわー」

「ありがとう。はたて。あなたは、かくれた英雄よ」

「いやいやいや、そんなー。まさか神さまにそんなこと言われるなんてー」

 

 彼女はよほど気恥ずかしかったのか、真っ赤になった顔を両手でパタパタとあおいでいます。

 

「あ、そうそう! 忘れてた! 私も神さまにお礼しなくちゃいけなかったんだっけ!」

「あら、何かしら」

「実はねー。アナタの妹さんにすごくお世話になってさー……」

 

 はたては静葉にコトの経緯を説明しました。

 

「なんですって。あなた、今まで私たちの家にいたの」

「そーそー。助けてもらったのよ。妹さんに」

「へえ。穣子がそんなことをねぇ……」

 

 思わず静葉は驚いたように、ため息をつき、ティーカップに口を付けます。

 たちまち酸っぱいフレーバーが、口中に広がり、静葉は思わず顔をしかめてしまいました。

 

 お茶の正体はローズヒップティーでした。

 

 □

 

 その後、静葉は思うコトもあって、ふと、秋ハウスへとやってきました。すると。

 

「あらまあ……」

 

 なんということでしょう!

 家は、以前の廃屋一歩手前のような状況とは、まるで見違えるようなたたずまいで、夕日に照らされていました。

 静葉が家の戸を引きますと、大して力入れなくともスッと開きます。もう、以前の立て付けの悪さはまったく感じられません。

 

「……ふむ。中もだいぶ様変わりしてるようね」

 

 家の中も、かび臭さや湿気はほとんど感じられず、窓から差し込んでくる夕日によって、ほんのりと幻想的に照らし出されています。

 一部くさっていた廊下は、さすがに元のようにとまではいきませんが、板材を上手く使って補強されていました。まるで匠の技です。

 

「……ふむ。これ本当にあの子が全部一人でやったというの。すごいわね」

 

 静葉が思わず感心して、ため息をもらしたそのときです。

 

「ふふふ……。ずいぶんとキレイになりましたねえ。これなら私も住んでみたいくらいですよ」

「その声は……」

「やあ、お久しぶりですね」

 

 そう言って、気さくそうに、手をあげて静葉にあいさつしてきたのは……。

 

「……菅牧典。何しに来たのよ」

「あらあら、そんな邪険にしないでくださいよ。悲しいじゃないですか」

「……よく言うわよ」

「ふふふ……。しかし、あの状況を上手くまとめるなんて、さすがですねえ。アナタにまかせた甲斐がありましたよ」

「ほめられてもうれしくないわね」

「やれやれ、すっかり嫌われてしまったようで」

 

 そう言って彼女は、ふっと息をついて床に腰を下ろします。

 

「ところで、あなたに聞きたいことが二つあるんだけど」

「おや、なんですか? 二つもとは」

「まず一つ。早苗から、あなたがあの子をかくまっていたって聞いたけど、それは本当なのかしら」

「……ああ、そういえば、そんなコトもありましたね。ま、あの神さまの命令でしたので不本意ながらもですが……」

「そう……」

「で、二つ目の質問とは?」

「……あなたの言う『壮大な計画(プロジェクト)』ってなんなのよ。もしかして、この世界を乗っ取るつもりでもあるの」

「ふふふ……」

「答えなさい」

「……ま、今のところ、すべては計画通りに動いてますよ。アナタたち同盟軍がこれから紅魔館を攻めようとしているコトも、そしてその後、この幻想郷がどうなるかというコトも……」

「……それはどういうことよ」

「ふふふ……。いずれわかりますよ。いずれね。じゃ、今日はこのへんで」

「ちょっと、待ちなさい」

 

 しかし彼女は、こーんこーんと去って行ってしまい、その場には静葉だけが取り残されてしまうのでした。

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