所変わって紅魔館に二階のテラス。そこには月に照らされ二つのかげが、ぼんやりと浮かび上がっていました。一人はレミリア。そしてもう一人は……。
「……ふーん。共闘ですって?」
「ええ。そうです。アナタを倒すためにね」
「……クックック。面白い。それじゃ私もあいさつに行ってこようかしらね」
「おやおや。もう動くんですか?」
「ええ。降りかかる火の粉は払わないとね! それじゃ教えてくれてありがとう。キツネさん!」
そう言うなりレミリアは、らんらんと目を光らせながら夜空へと飛び上がって行ってしまいました。
「やれやれ、まだその火の粉すらも上がってないというのに……。本当に困ったお方ですねえ」
典は呆れた表情でレミリアが、去って行った方向を眺めていましたが、ニヤッと笑みを浮かべてつぶやきます。
「ふふふ……。さて。それじゃ私も動きましょうか」
そして彼女は、こーんこーんと姿を消すのでした。
□
さてそのころ、天狗の住処では。
「だからさー! ぜったい物量作戦の方がいいって言ってるでしょ! 数の暴力でブンなぐるのよ!」
「いや! 私はあえて頭をねらう戦法でいこうと思うね! ムダな兵力は極力使わない! これが戦の鉄則だと何度言ったらわかるんだい!」
「……とりあえず、二人とも落ち着きましょうか」
あいもかわらず諏訪子と神奈子が、軍事会議とは名だけの、ただの口ゲンカ大会をひらいていました。
「このわからず屋のヘンクツヤロー! オマエなんかオンバシラに潰されてペッタンコになっちまえ!」
「なにを! この時代遅れの土神が! キサマなんぞカエルらしく地面の中で永遠に冬眠でもしてろ!」
と、また不毛な悪口合戦になってしまうそうだったので、すかさず静葉は手で机をバンッ! と、強く叩きます。
その音を聞いた二人が、思わず黙ったのを確認すると、彼女は告げました。
「……お願いだから、いいかげん二人とも私の話を聞いてちょうだいね」
「……あ、ハイ」
「……う、うむ」
「まず、神奈子。あなたは真っ先にレミリアを強襲するという戦法を取りたいというわけよね」
「ああ、そうだとも」
「強襲戦法のメリットは」
「まず相手の意表を突くコトが出来る。上手くいけば少ない兵力で遂行出来るのでムダな兵力を使わずにすむ。それにおそらくレミリア以外はそこまでの脅威ではないだろうと思われるので、レミリアのみを狙ってしまおうというコトだ」
「ふむ。じゃあ、逆にデメリットは」
「……万が一、強襲に失敗したら一気に劣勢になるコトだな。そのための二の矢、三の矢は用意しておく必要はある。もちろんそのプランも既にあたためてあるがな」
「……なるほどね。じゃあ次に諏訪子。あなたの作戦についてだけど……」
「私の作戦のメリットかい? そうだね。大軍隊だから数と見た目で相手を威圧できるってコトだね。ちょっとやそっとじゃ負けないよ。逆にデメリットはー。……もし、万が一にでも劣勢になったときの損害が大きいコトだね。何しろそのときは軍隊のほとんどがやれちゃってるってワケだからね」
「……ふむ。なるほどね。二人の意見よく分かったわ。それじゃ、それを踏まえた上での、私の意見として、二人の案を折衷したものを提言するわ」
「ほう。折衷案か」
「具体的には?」
「まず、最初に強襲組がレミリアを狙う。そして強襲が成功しようとしまいと、次に大軍隊を突撃させ……」
と、そのときです。
三人の目の前に突然、小さい幽霊みたいなモノがボワッと姿を現します。
「これは……」
「およよ……?」
「オマエはたしか……。お燐とかいう妖怪の……なんだったかな。バンビ……」
「ゾンビフェアリーだよ。神奈子」
「ああ、それだ!」
フェアリーは焦った様子で三人に告げます。
「あ、あの、地底が大変なんです! 誰でもいいので早く助けて下さい!」
「なに、地底が……?」
「……てか、アンタしゃべれたのね」
「ふむ。いったい何があったのかしら」
「とにかく! 誰か、助けてください……!」
フェアリーは、そう言い残してボフンっと消えてしまいました。
「……ねえ、神奈子」
「……ああ、そうだな。どうやらただゴトじゃないようだ」
さっそく三人は緊急で協議を行い、地底に使者を送るコトにしました。
協議の末、今後の展望も見据えて、天狗と河童、それぞれの陣営から一人ずつ送るコトになり、天狗側からは龍、河童側からはみとりが選ばれました。そして選ばれた二人は、ただちに地底へと向かったのでした。