さて、一方の穣子たちは、特に何事もなく河童の住処の長官(神奈子)の元にたどり着いていました。
「ほう。レジスタンスか。わざわざご苦労さまだね」
彼女は以前のように姿を隠しておらず、フツーに部屋の中で過ごしています。
どうやら、もう正体隠すのが、面倒になってしまったようです。……いやはやなんともテキトーなもんですね。
「我がリーダーからこの書簡を預かってまいりました。どうぞ」
「ふむ。受け取ろう」
神奈子はリグルから書簡をもらうと、さっそく開けて中の手紙を読みます。
「ほう……。なるほどね。オマエたちレジスタンスは、我々同盟軍との共闘を望むというコトか」
「えっ!? そーなの!?」
「初耳なんだけど!? リグル、オマエは知ってたの?」
「うん、まぁ……。チラっとは」
「言ってくれよー!?」
「まあ、賢明な選択だと思うね。……オマエらのとこのボスは、確か、聖だったか」
「はい。そうです」
「……なるほど。まあ……。アイツらしいね。しかし、悪いが返事はすぐには出せぬ。私らだけでなく、天狗側の意見も聞かないといけないからな」
「あー……。同盟組んでる以上、相手の方の意見を無視するワケにはいかないってコトね」
「そうさ。同盟を組むというのはそういうコトなんだよ。穣子」
「大変ねー。色々めんどくさそーで」
「……ま、なるべく近いうちに返事を出すようにするさ。そういうコトで聖に伝えておいてくれ」
「わかりました。それでは、本日はこれにて失礼します」
「うむ。ご苦労さん」
無事、書簡を神奈子に渡せた三人は建物を出ます。
「よーし。コレで用事はおわりだね!」
「うん! あとはアジトに帰って報告すれば任務完了だよ」
「あ、そうだ! せっかくだからどこかで一休みしない? 喫茶店とかさ」
「あ、いいね!」
「私も緊張したから、のどカラカラだよ」
などと言っていたそのとき!
突然何者かが、走って三人に近づき、体当たりしてきました!
「うわぁ!?」
「なに!?」
「ひゃあ!?」
三人は突き飛ばされ、尻もちをついてしまいます。相手はそのまま走り去って行ってしまいました。
「……あーおどろいた。二人とも大丈夫?」
「まったく、なにしやがるんだ! アイツめ!」
「……あ、あれ?」
リグルは慌てた表情で、ポケットやらに手を突っ込んでます。
「どうしたんだ。リグル」
「ああ、やっぱり! サイフがないっ!」
「えっ?」
「あぁ!? 私もだ!! ない!」
「え!? まさか……。 ああ!? 私も焼きイモがない!?」
「なんでそんなモン、フトコロに入れてんだよ!?」
「いいでしょ! 別に!」
「ねえ、それより……!」
「ああ、追いかけないと!」
三人はすぐに空を飛んで、上空からひったくりを探します。すると。
「あ! いた! 森の方に逃げてってる!」
「よし!おいかけて、とっつかまえるぞ!」
三人はひったくりを追いかけて、一緒に森の中へと入っていきます。
「コラー! 待てー!!」
「イモかえせー!」
「私のサイフかえしてー!」
ひったくりは振り返って三人を確認すると、更に逃げるスピードを上げます。
三人も速度を上げようとしたそのとき、ひったくりがコチラむかって何かを投げてきます。
それは穣子の顔面にバチコーンっと当たりました。
「ふぉげぇーっと!?」
「ああ、穣子!?」
「だいじょうぶ?」
「……ったく、なんなのよー!?」
よく見たらそれは穣子の焼きイモでした。どうやら、いらなかったようです。
「こ、コノヤロー!? 私の焼きイモを投げるとは、ゆるさん千万!!」
怒った穣子は、まるで焼きイモのように真っ赤になって、再びひったくりを追いかけます。慌てて二人も追いかけます。しかし突然、目の前で網が広げられ、三人はブザマにその網につかまってしまいました。
「うぉえあえっ!?」
「なんだぁ!?」
「ひゃあっ!?」
更に三人は、網につかまったまま、そのまま宙づりになってしまいます。
「ちょっと! なにすんのよ!!?」
「ちょ! なんだよこれー!?」
「もしかして、つかまっちゃった……!?」
三人のまわりに一斉に武器を装備した者たちがワラワラと。そしてひったくりは、ゆっくり近づくと、三人に言い放ちます。
「バカなヤツめ! まんまとひっかかったな!」
「だれよ!? アンタは!」
「私は山城たかね! 山童だ!」
そう。なんと、ひったくりの正体は、たかねだったのです。……と、言っても穣子たちは初対面ですが。
「山童! ……って、なんだっけ?」
「さあ……? 聞いたコトないわね! きっと、どマイナーな妖怪よ!」
「ねえ、ここから出してよー!」
「う、うるさい! とにかくオマエらは、このまま生けどりだ! おい、コイツらを持って帰るぞ!」
と、いうわけで、穣子たちは、そのまま山童の住処まで連行されてしまいました。
山童の住処は、森のはずれのガケの近くにありました。そこには何やら河童の姿もチラホラと見えます。
三人は、小屋の中のオリに閉じ込められてしまいました。
「くっそー! これじゃ身動き取れないじゃないかよ!」
「いったい私たちを、どうするつもりなのかしら?」
「まさか、鍋で煮込んで食べるとか……?」
「なんだと!? なんて野蛮なヤツらなんだ!?」
「もしかして、髪の毛むしって服でもつくる気かもよ!?」
「うわ。なにそれ、引いちゃうんだけど……!」
「んなわけあるか!? 勝手に人の種族のイメージをねつ造すな!」
そうツッコミながら、やってきたのはたかねでした。
彼女はオリ越しに三人に話しかけます。
「三人とも気分はどうだい?」
「いいわけあるかよ!?」
「アンタねぇー。私をこんな目にして、タダですむと思わないでよ? いったい何が目的なのよ!」
穣子の問いにたかねは、平然と言い放ちます。
「目的か? そんなものはない!」
「ハァ!?」
「ハァアア!?」
「……目的がないってどういうコト?」
「私たちは河童のジャマが、出来ればそれでいいのさ!」
「なんだと!?」
「ふざけんなー! 私たちは大事な任務に関わってるのよ!?」
「知ったコトかよ! ……ああ、そういえば河童と天狗が同盟結んだとか言ってたな。おかげでこっちも仲間が増えたよ」
「え。それって……?」
「同盟に反対の河童どもが、私たちに合流してくれたのさ!」
「なんですって! だからここに河童もいたのね!?」
「そういうコトだ! ザマーミロ! 河童どもの思う通りにはさせないよ! あっはっはっはっは!」
そう言って高笑いするたかねにリグルが言います。
「……でもさ、それによってアナタたちも被害を受けたらどうするの?」
「……え?」
「天狗と河童が手を組んだのは、レミリアの脅威から身を守るためだよ。もし、彼女をそのまま放置していたら、ここも彼女の支配になっちゃうかもしれないんだよ。アナタはそれでもいいの……?」
「うーん。……いや、それはちょっと、困るかもなぁ……?」
「私たちはそれを防ぐために動いてるんだよ。こんなトコロで足止め食ってる場合じゃないんだよ」
「そーだ! そーだ!」
「私たちはとても大変な任務をまかされてんのよ! わかったか!」
「ううむ。……そうか。……よし、わかったよ。オマエらは特別に自由にしてやる! 本当の本当に特別だからな! みんなにはナイショだよ?」
そういうとたかねは、三人をあっさりと解放します。
「あのー……。それでサイフは?」
「あ、サイフはかえさん! アレは我々の軍資金だからな!」
「ハァ!? ふざけんなよ!?」
「じゃあな! 幻想郷の平和のために、せいぜい頑張ってくれよ!」
と言いながらたかねは、姿を消してしまいます。どうやら、にとりと同じ光学迷彩のようです。
「あんにゃろめー! 今度あったらただじゃおかないわ!」
「まあまあ、自由になれただけよしとしないとね」
「いや、それはそうなんだけどさ。私のサイフが……」
と、思わず落ち込むヤマメに、リグルが告げます。
「よし、落ち込んでるヒマはないよ。それじゃ、次はサイフを探そうよ!」