秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

44 / 85
その10

 

 そのころ、同盟軍は。

 

「……ふむ。どうやら順調のようだね」

 

 ここは河童の住処の工場。

 何やら巨大な兵器を製造中の模様。その様子を部屋のモニターから神奈子と静葉が見守っています。

 

「しかし、まさかオマエが、あの設計図を持っていたとはねえ?」

「私も驚いたわ……。まさかあれがそんな重要なものだったとはね」

 

――あの設計図。

 

 もうとっくにお忘れかもしれませんが、静葉が一番はじめの森で酒クサい妖精に襲われたときに回収した、あの設計図です。

 

 彼女自身も、あれからしばらくの間、存在自体を忘れていたのですが、実は諏訪子に書簡を渡した際に間違って、設計図が入った方の書簡を渡してしまっていたのです。

 そのコトを彼女に指摘されてようやく発見に至ったというワケです。

 

「……アレは実はな。私が特別なルートで外の世界から持ち込んだ設計図なんだ。設計担当から紛失したと聞いたときは正直焦ったよ。なにしろ手に入れるのに結構苦労したからな」

「……と、いうことは、よほど戦況に影響を与えかねないものなのね」

「ああ、あの兵器があるとないとでは雲泥の差だね。……ここだけの話だが、あの設計図を無くしたと知って、仕方なくお空の力を借りようとしたくらいだ」

「ああ、なるほど。……そういうことだったのね」

「もちろん、ヤタガラスの力をうまく使えば、あの兵器に匹敵するものは作れる。だが、そういう問題じゃないんだ。なにしろあの兵器は……」

 

 と、そのときです。部屋の装置から何やらブザーが鳴りはじめます。

「む、通信だ」

 

 神奈子は通信機の受話器を取ります。

 

「こちら技術局。……なに!? わかった。すぐ使いを送る!」

 

 受話器を置くと神奈子は静葉に告げます。

 

「採掘現場でトラブルが発生したらしい! 総員直ちに出動せよ! ……と、言いたいところだが……」

「みとりも龍も、まだ地底から帰ってきていないわね」

「……仕方ない。オマエがかわりに行ってきてくれるか? と言っても、一人では心細いだろうから、他に誰か一人好きなヤツを連れて行ってくれ」

「ふむ……。わかったわ」

 

 さっそく静葉は、仲間を連れて採掘現場の虹龍洞へと向かったのですが……。

 

「……それで、私が選ばれたってワケなのねー?」

「ええ、そうよ。頼んだわよ。はたて」

 

 選ばれたのは、はたてでした。と、いうのも本当は文を連れて行こうとしたのですが、あいにく彼女は忙しくて手が離せない様子。それではたてに、白羽の矢を立ったというワケです。

 

「……むうー。正直、アイツのかわりってのはちょっと気に入らないけど、神さまの頼みってんなら、ま、いーわ!」

 

 そう言ってはたては、おさげを手でハラリと払うと、フトコロから例のカメラを取り出します。

 

「じゃ、さっそく行きましょー!」

「ええ。急ぎましょう」

 

 二人はさっそく洞窟の中に入ります。

 中は薄暗く、ジメジメしています。

 

「ふむ、ちょっと薄暗いわね」

「大丈夫大丈夫。このカメラにはこんな機能もあるのよー!」

 

 そう言って、はたてがカメラをシャカシャカ振ると、なんとカメラからまばゆいライトがピカッと放たれます。文明のリキってヤツですね。

 

「あら、すごい」

「でしょでしょー? 自慢の多機能カメラよー!」

「これで奥に進めるわ」

「さー! どんどんいきましょー!」

 

 二人は、どんどん奥へと入っていきます。

 

「……ところで、アナタはここに来たことあるの」

「うん。前に文と一緒に肝試しでねー」

「へえ。そうなの」

「そーそー。特に何もなかったけどねー。お化けの一匹でも出るかなーって思ったけどねー。残念だわ」

「……ふむ。ところで、はたて。あなたさっきから分かれ道とか気にせず、ひたすら進んでるけど大丈夫なの」

「大丈夫大丈夫! こう見えてもブランチマイニングは得意だからね! なんなら毎晩やってるし」

「……へえ、そうなの」

 

 などと話しながら奥へ進んでいくと、何やら弾幕が飛び交う音が聞こえてきます。どうやら奥で誰かが戦闘中の様子です。

 

「いくわよ。はたて」

「アイアイサー!」

 

 二人が急いで奥へ行くとそこでは、勾玉をあしらった服を着た神さま――玉造魅須丸(たまつくりみすまる)と、スコップとツルハシを持って武装した妖怪が戦っています。

 

「……まったく厄介な! いったい誰にナニを吹き込まれたんですか!? アナタは!」

「うるさいうるさいっ! 俺は聞いたぞ! オメーら、俺の大好物の龍珠(りゅうじゅ)を全部横取りしようとしてるんだろ!? そんなコトはこの俺が絶対させないからな!」

「だからそれはデマだって……」

「ウソつけっ! ダマそうったって、そうはいかねーぞ!」

 

 すかさず静葉が呼びかけます。

 

「魅須丸。アナタこんなところで何を」

「おや、誰かと思えば……。秋神!?」

「ふむ、今はのんきに話してる暇はなさそうね。行くわよ。はたて」

「アイアイサ-! とりあえず、まずは足止めくらいでいいよねー?」

 

 そう言ってはたては、妖怪に弾幕を放ちます。

 

「へっ! そんなヘナチョコ攻撃食らうかよ!」

 

 しかし妖怪は、手のスコップでその弾幕を、軽々とはじきとばしてしまいます。

 

「わっ! コイツなかなかやるわ!?」

「ったりめーだろ!? 天下の大ムカデ、姫虫百々世(ひめむしももよ)さまがそんな攻撃食らうかよ!?」

「ええ!? 大ムカデ!? ねえ、神さま大変! コイツ大妖怪よー!」

「ええ。どうやらそのようね」

「うわー……。これは予想外! まさか大妖怪に出くわすなんて-!」

 

 思わずはたては、アワアワとうろたえてしまいます。それを見た魅須丸が一言。

 

「……おいおい、静葉。もう少し、頼れそうなヤツ連れてこれなかったの……?」

 

 すると静葉は、平然と言い返します。

 

「あら、大丈夫よ。彼女は十分強いもの」

「……うーん。とてもそうは、見えないけど……?」

「さあ、はたてやっちゃいなさい」

「はーい! よ、よーし……!」

「ふん! よけられるモンならよけてみやがれ!!」

 

 百々世は、先手必勝とばかりにドシャーンと弾幕をまき散らします。ものすごい密度です!

 

「なんの!」

 

 すかさずはたては。カメラを構えシャッターをパシャリ!

 

「えーい! 念写!」

 

 すると、たちまち弾幕が消えました。

 

「なに……? くそう、もういっかい!!」

 

 百々世は再びドガーンバゴーンと弾幕を放ちますが、はたては再びパシャリとカメラで打ち消してしまいます。

 

「どーよ!」

「ハァ……!? なんだよソレ! 反則じゃねーかよ!?」

 

 様子を見守っていた静葉は、つぶやくように魅須丸に告げます。

 

「……ほら、強いでしょ」

「いや、強いは強いが……。これでは、こちらの攻撃が……」

「そこは、あなたがやればいいじゃない。敵の弾幕が無効化している今なら当て放題よ」

「……ああ、なるほど! それもそうだ。それではさっきのお返しに」

 

 すかさず魅須丸が、色とりどりの陰陽玉状の弾幕をあたり一面にまき散らします。

 

「こんなんでいいかな?」

「ええ、上出来」

「うわぁ!? なんじゃこりゃ!? くそっ! 打ち返してや……。グワァーーー!!?」

 

 百々世はスコップとツルハシをバットがわりにして弾幕を弾き飛ばそうとしますが、数が多すぎて、さばききれず次々に被弾していきます。

 

「ちょっとちょっと!? 私にも当たっちゃうってばー!?」

 

 はたては慌てながらも、持ち前の旋回力で、なんとかよけきります。こう見えても、やはり彼女は天狗なのです。

 

「く、くそー……!! この俺が……」

「いい加減にしなさい! オマエは勘違いをしている! 私たちは龍珠を独り占めしようとなんてしていない! いったい誰に吹き込まれたの!? 言いなさい!」

「……誰が言うか! くそっ! 話が違うじゃねーか! アイツめー!」

「……うーん。まるで話が通じないわね」

「見た目どおり野蛮なヤツみたいねー!」

 

 と、そのときです。

 

「……やれやれ、いったい何の騒ぎなんだ?」

「あ……!?」

「あら」

「おやおや、これは大天狗さま!」

 

 皆の前に龍が現れます。どうやら地底から帰ってきたばかりのようで、さすがに少しお疲れの様子。

 

「……まったく、山の神さまから聞いたぞ? オマエが暴れていると」

「いやいや、聞いてくれよ龍……。実はな……」

「話はいったん落ち着いてから聞くとしよう。とりあえず、まずは……」

 

 そう言うと彼女は、手に持っている三脚を振りかぶると、勢いよく振り下ろします。

 

「この大バカものが!」

「ウギャアァーーーーー!?」

 

 三脚が百々世のおしりにスマッシュヒーット!

 

「お! これはいい画! チャーンス!」

 

 はたては、シャッターチャンスとばかりに、そのお仕置きの様子をカメラで撮りまくっています。

 

 ……やはりこうみえても彼女は天狗なのです。

 

「……さて、ここを出ようか。それじゃ魅須丸、あとはまかせたよ」

「……ああ、ちょっと待って! 龍!」

「何だ?」

「ついでに、神奈子のヤツに伝えておいてくださいよ。龍珠を採り過ぎるなって。本当にいつか枯渇しますよ? もし、龍珠がなくなりでもしたら、この幻想郷はですね……」

「ああ、わかった。伝えておくよ。それじゃ、引き続き勾玉(まがたま)の生成まかせたぞ?」

 

 こうして三人は、魅須丸のグチが始まる前に、百々世を引き連れてさっさと虹龍洞をあとにするのでした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。