さて、山童の住処にいる穣子一行は……。
「よし、じゃあ、サイフをさがそう」
「でも、探すったって。どうすんのよ? 何かココ広そうだし。……手分けでもする?」
「いや、大体、どこにあるかは想像ついてるよ」
「え? なんで?」
「連れられてるときに、なんとなくココのつくりを把握したから」
「へー? やるじゃん」
「……で、どこなんだよ?」
「あっちだよ」
リグルに連れられて穣子とヤマメは、住処の奥の家の方までやってきます。
丸太でつくられたログハウスです。
「この建物だよ」
「本当かよー?」
「どれどれ……」
穣子は、窓からちょいと中をのぞいてみます。
「……どうだ? 穣子。どうせないだろ」
「あった……!」
「え……!?」
「机の上に置いてある」
「マジで……!?」
あわててヤマメも中をのぞいてみると、確かに二人のサイフは部屋の中のテーブルの上に。
ただし、きっちり見張りもいるので、三人はいったん建物から離れることにしました。
「……リグル。アンタ、なんでわかったのよ?」
「ふふん。カンだよ」
「ウソつくな! オマエにそんな力あるかよ! ちゃんと言え!」
「……わかったよ。種明かしするよ。……実は、私、虫を操れるんだ」
「へえ! 虫を!? スゴイじゃん!」
「いや、そんなのは知ってるよ? 一緒に地上に攻め込むとき、お互いの能力を確認したじゃん。どうやったのかって話だよ!」
「最後まで話聞いてよ。サイフにあらかじめ羽虫を一匹忍ばせておいたんだよ。それで外に出たとき、その羽虫を呼んだら、この建物の方から来たから……」
「へー。それでわかったってコトね。アンタやるじゃない!」
「でも、アレどうやってとりかえすんだよ……? 見張りもいるし」
「……うーん。ここはいったん朝になるまで待とうよ。そうすればきっとチャンスがあると思うから」
「え? 朝まで待つのか……?」
「まーまー、ちょうど日も暮れるし、別にいいでしょ。あわてない、あわてない、ひとやすみ、ひとやすみ」
「ま、別にいいけどさ。私も一休みしたかったしね……」
と、いうわけで、三人は木陰でそのまま仮眠を取りつつ、朝が来るのを待ちました。ようこそおいでませ夢の世界へ……。
そしてチュンチュンという、小鳥の鳴き声で目をさまします。おはようございます。
「うん……。朝になったみたいだね。二人とも起きて」
「ふぁー……。本日もお日柄良く……」
「おはよ……って、まだ薄暗いじゃん?」
「これくらいの時間がいいんだ。よし、それじゃ行動開始しようよ」
あたりを見まわすと、明らかに人の数が減っています。人じゃなくて妖怪ですが。
「……今はちょうど夜型と昼型の妖怪が交代する時間。だから数も減ってるんだよ」
「あ、なーるほどねー」
三人は、再び例のログハウスへ向かいます。窓から中をのぞくと、依然として見張りはいますが……
「あれ、なんだ、まだ見張りがいるじゃないか」
「でも、見て。なんか様子が変だよ」
リグルが言うとおり、見張りは、コックリコックリと船をこいでます。とても眠そうです。
どうやらずっと見張ってた様子。……交代制じゃないんでしょうかね?
「……さて、あの見張りどうするよ? リグル」
「いっそ寝るまで待つとか? なんか、ほっときゃそのうち寝そうだし」
「いや、それだと、昼型の人たちが起きて来ちゃうよ」
「あ、それもそーか」
「うーん、どうすれば……?」
「……よし、私にまかせて」
そう言うと、リグルはサッと手をあげます。
すると、なにやらザザザザザ……という音が。
「ん? なにこの音……?」
「うわ!? 穣子! 地面見ろよ!?」
「え? わあっ!?」
二人が驚くのも無理ありません。
なんと、地面にアリの大群が! 軍隊アリです!
そして、そのままログハウスの中に……。
「アリだー!!?」
見張りは慌ててハウスから飛び出ると、そのまま一目散に逃げていってしまいました。
「よし! いまのうち!」
すかさずリグルがハウスへ侵入し、サイフを持ってきます。
「ありがとう。オマエたち。もう戻っていいよ」
彼女の合図で、アリはあっという間に去って行きました。
「やったー! サイフが戻ったー! やるじゃん! リグル!」
「さ、誰か来る前にここを出よう!」
三人は急いで、山童の住処から抜け出します。
「……よし、サイフの中身も無事だね」
「やれやれ。よかったわねー」
「……リグル。正直、見直したよ。やるじゃん! オマエ。ゴメンよ弱虫なんて言って」
ヤマメにほめられたリグルは思わず、顔をそむけてしまいます。
「ん? どうしたんだよ。顔赤くなんかして」
「……いや、そのさ。私が、レジスタンス入った理由って、私みたいな弱虫でも、やれば出来るってコトを証明してみたかったからなんだ」
「……あ、もしかして、オマエ、私が言ったコトずっと気にしてたのか……?」
「……見返してやろうと思って……」
「あー……。そうだったのか。……ゴメンな。でも本当、見直したよ。もうオマエのこと弱虫なんて言わないよ!」
「ありがとう……。ヤマメ」
「こちらこそ。ありがとう。リグル」
そう言って二人は、朝日に照らされながら、ガッチリと握手をかわすのでした。
「……うう、いい話だわー」
穣子は微笑ましそうにイモをかじりながら、二人を見守っていました。めでたしめでたし。