秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

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その12

さて所変わって、天狗の住処の奥屋敷では……。

 

 静葉と諏訪子が、応接の間で茶をシバいてました。おかかえ料理人特製のこだわり高級緑茶です。たぶん玉露あたりです。

 

「……あのムカデさんは、いったい何が目的だったのかしらね」

「それを今、龍が尋問しに行ってるトコさ」

 

 そう言いながら、諏訪子はまんじゅうを口に放り込みます。おかかえ料理人特製の栗まんじゅうです。

 

 そのとき、龍が姿を現します。

 

「……やれやれ。困ったモノだな。私にでさえ口を割らないとは……」

「あら、お疲れさま。まんじゅうはいかが?」

「……ああ、いただこう」

 

 龍は疲れた様子で、座り込むと、静葉からもらったまんじゅうを口に入れます。

 

「ああ、疲れたときは甘いものが身にしみるね……」

「それで、何も言わないって?」

「……ええ。本来、アイツは私と仲がいいんですけど、どうも誰かに何かを吹き込まれたようで……」

「ふーん。そうか。じゃあ……。ええと、百々世と言ったっけ。アイツから情報を得るのは難しいってことかー」

「ええ、そうなりますかねえ……」

「……ふむ。ちょっと私、その妖怪さんの様子見てきていいかしら」

「ええ、構いませんけど、気をつけてくださいね? なんせ大妖怪ですから」

「わかったわ。じゃあ、ちょっとここで休んでなさいな。お疲れでしょうし」

「ああ……。お気づかい感謝します……」

 

 静葉は地下に降りて牢屋の前に立ちます。

 

 オリの中には、ぶぜんとした表情の百々世の姿が。武器はすべて没収されています。

 

「あん……? なんだ?」

「ふむ……」

「なんだオメー。なんの用だ?」

「ちょっとあなたと話がしたくてね。大ムカデさん」

「オレはオメーと話すコトなんてねーぞ?」

「でしょうね」

「言っておくけどオレは何もしゃべらないからな?」

「ええ。いいわよ。私が一方的に話しましょう」

「……は?」

 

 目が点になっている彼女を尻目に、静葉は語り始めます。

 

「百々世だっけ。あなたは、龍と仲がいいらしいわね」

「ああ。まーな。あいつとは旧知の仲なんだよ。……ってしゃべっちまった。もうしゃべらないからな!?」

 

 そう言って百々世は手で口を塞ぎます。

 

「その龍にも言えない事情ってコトは、あなたは同盟軍に敵対する存在から何かを言われたのでしょう」

「……お、オレは、何も言わねーぞ!」

「ええ、別にいいわよ。私の独り言だから」

「ちっ……。メンドクセーヤツだな。オメー」

「現在、私が知ってる同盟軍に敵対する存在は一つ。それはレミリア・スカーレット率いる紅魔館組。でも、彼女らの仕業である可能性は薄いでしょうね」

「そもそもオレ、ソイツら知らねーしな。あ、またしゃべっちまったじゃねーか!」

「つまり、あなたは私の知らない敵対存在に、何かを言われたということになるわ。……でも、あなたのような大妖怪が、素直に話を聞く妖怪なんて、きっとそうはいないはず。それこそ龍クラスの妖怪か……。あるいは、よほど口の上手いやつか……。口の上手いやつなら、私、一人心当たりあるのよ。龍の部下だった管狐。たしか名前は……。菅牧典(くだまきつかさ)

 

 彼女の名を聞いた瞬間、百々世は一瞬だけ静葉の顔を見ます。

 構わず、静葉は話を続けます。

 

「……彼女は天狗と河童の親分を裏で操っていた張本人。あなたに何か言ったのが、もし彼女だとしたら……きっとまた何か企んでいるんでしょうね」

「……それはどうだろうな? アイツはアイツで色々考えあるよーだけどな。……知らねーが」

「……まあ、なんにしろ、彼女がいまだに裏で動いてるということは、また何か起きる可能性があるということ。それはもしかしたら紅魔館組に関することか、あるいは、全く別の方向から来るか……」

 

 百々世はキョトンとした様子で話を聞いています。

 

「……いずれにせよ。もし、あなたに言葉を吹き込んだのが彼女だったとしたら、それは恐らくあなたを利用するために、ウソを吹き込んだと思うから、忘れなさいな」

「……へっ。オレは何も言わねーからな?」

「ええ。私もそろそろ帰ることにするわ。独り言に付き合わせちゃってごめんなさいね。ムカデさん」

 

 そう言うと静葉は、オリから離れます。

 

(……ふむ。どうやら彼女に変なことを吹き込んだのは、典でほぼ間違いないようね。でも、いったい何のために……。ただ場をかきまわしたいだけか。それとも何か他に思惑があるのかしら……)

 

 ふと、静葉は典の言葉を思い出します。

 

――今のところ、すべては計画通りに動いてます。アナタたち同盟軍がこれから紅魔館を攻めようとしているコトも、そしてその後、この幻想郷がどうなるかというコトも……。

 

(ふむ、本当にレミリアを討伐するだけで、この世界は平和になるのかしらね……)

 

 思わず一抹の不安に駆られる静葉なのでした。

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