「ごめんなさいね。急に呼び出したりして」
「……なんだい静葉さん。話って……」
静葉とにとりの二人は、誰もいない会議室にいます。
「……この世界のことについてよ」
「……この世界のコト? ……ああ、そういえば、前に私に
「ええ。まだ仮説の域だけどね」
「ぜひ聞かせてくれよ……!」
「私は最初この世界は、私たちがいたより未来の幻想郷だと仮説を立てていた。でも、どうやら違うみたいね」
「……って、いうと?」
「まず、あなたに教えてもらった暦。それは私たちが『季節操作マシ~ン』を起動させた日から数えて矛盾がなかったわ。そして更に、早苗も歳を重ねていなかった。この二つを照らし合わせると、ここは未来の幻想郷じゃないということになる」
「……なるほどね。……って、アレ……? ちょっと待ってくれよ?」
「どうしたの」
にとりは首をかしげながら一人でつぶやきます。
「……うーん。ええと? 突如『あの日』が起きて、地上の妖怪たちの力が急に強くなったんだよね? そして河童と天狗がケンカし始めて、それでレミリアも色々し始めて、なんか色々大変なコトになったのは覚えているんだ……。でも、静葉さんと『季節操作マシ~ン』を動かした記憶も確かにあるんだよね……」
「……どういうこと」
「うーん……? なんだろう、な、なんか、自分でも急によくわからなくなってきた……あれ。私って今まで何をしてたんだっけ」
頭を抱えて不安そうになるにとりに、静葉が声かけます。
「……わかったわ。今、私が言ったことは忘れてちょうだい。余計なこと言って混乱させちゃってごめんなさいね」
「……ああ、うん。大丈夫。……じゃあ、私、持ち場に戻るね?」
そう言って、にとりは、フラフラと去って行きます。
静葉は心配そうに彼女を見送りました。
(ふむ……。あの子に二つの記憶が混在している可能性があるということかしら……。これはいったい……)
□
静葉とにとりが話をしていた同じころ、神奈子は魅須丸とあっていました。
「……はい。約束通り、勾玉三百個作り終えましたよ。これが現物です」
魅須丸は大きな箱を神奈子に渡します。その中身を確認した神奈子は満足そうにうなずきます。
「よし、ご苦労だったね。魅須丸」
「……して、いったいコレをどうする気なんですか?」
「うむ。神器にするんだよ」
「はあ……?」
「今つくってる兵器のエネルギー源にするのさ」
「……神の力の依り代にですか?」
「うむ。その通り」
「……まさかとは思いますけど、アナタの神通力を? さすがに三百個の勾玉に詰め込むのは無茶なのではないですか?」
「確かにな。だがそれは質の悪い大量生産モノの場合だ。粗悪品はどうしても力が上手く込められないからな。だが、精巧に作られたモノなら大丈夫だ。だから、オマエに頼んだんだよ。魅須丸。勾玉職人のオマエなら、きわめて精度の高い勾玉を精製できるだろうからね」
「……お褒めいただき光栄ですが、それはそれとして……」
魅須丸はコホンと咳払いをすると神奈子に言い放ちます。
「龍珠を採掘しすぎですよ! もし龍珠が枯渇したら幻想郷に危機が訪れてしまいますよ。そもそも龍珠ってモノは……」
すると神奈子が言葉をさえぎります。
「オマエは何を言ってるんだ?」
「え……?」
「危機なら今、まさに訪れているじゃないか。今が危機じゃなかったら、何を危機と言うんだ?」
「いや、確かにそうかもしれないですけど……」
「そもそもの話だぞ。オマエの陰陽玉の継承者は何をやっているんだ。アイツが動いてくれないコトには、根本的な解決は望めないんだよ」
「いや、まあ、今回は戦ですからね。『異変』ならまだしも、さすがに戦はあの子に関係はないでしょう」
「いや。違うぞ。魅須丸」
「へ……?」
あぜんとする魅須丸に神奈子は、はっきりと言い放ちました。
「これはれっきとした『異変』だ。『あの日』は人為的に仕組まれたモノなんだ。巫女のヤツにはこれを解決してもらわないといかん! 魅須丸。手が空き次第、巫女のヤツを説得しに行ってきてくれ!」