さて、紅魔館に侵入したものの置いてけぼりを食らってしまったイモりこ、じゃなくて穣子は……。
「……うーん。このままイモみたいにしてても仕方ないし、私も中に入りましょう!」
いや、どう見てもイモなんですが。
ともかく穣子(イモ)は建物の中に侵入しました。
するとさっそく、メイド妖精にでくわします。
「……やばっ! イモのマネ、イモのマネ……!」
穣子(イモ)はイモのようにごろんと床に転がります。
いや、イモですが。
そのメイド妖精は「……あれ? こんなところにイモなんかあったっけ?」と、不思議そうな顔をしつつ去っていきました。
「あーあぶなかった……」
その後もイモ(穣子)は、何度もメイド妖精とすれ違いつつも、そのたびにイモのマネをしてやりすごしました。
案外、誰も気にしてないようです。さすがはメイド妖精。テキトーです。
「……なんだ。意外といけるもんね。このまま更に奥まで行きましょっと。リグルはどこいったのかしら?」
と、そのとき突然、後方から誰かに抱きかかえられてしまいます。
「おイモつかまえた!」
「……っ!?」
どうやら不意打ちでメイド妖精につかまってしまった様子。しかもこのメイド妖精どこかで見たコトあるような……?
「ルナー! スター! おっきなイモみつけたよー!」
「えっ……!?」
「まあ、おイモ!」
なんと、三月精です。なぜか彼女らが、メイド妖精に紛れていたのです。ちゃんとメイド服着てるので、もしかして、ここで働いているのでしょうか?
「ねえ、ヒマだし、庭で焼いて食べない?」
「……サニー。勝手にそんなことしたら、またメイド長さんに怒られちゃうよ?」
「そうそう。つい最近も怒られたばかりだというのに……」
と、あきれ気味の二人ですが、サニーは「いいのいいの!」と、構わずイモりこをかかえて庭の方へ。すると二人もしぶしぶ庭の方へ。
どうやら決定権はサニーにある様子です。
(……まずい。このままじゃ食べられちゃうわ! 神さまなんて食べても美味しくないのに……! だからって声出すわけにもいかないし……どうしよう!?)
「よし! ルナ、音を消して! スターは見張りよろしく! それじゃ私は光を屈折させてっと」
三人は、テキパキとイモを焼く準備を進めていきます。
こういうときばかり手際のいい彼女らです。そして火打ち石で火をおこしイモに当てると……。
「うぉおおおー! あっちぃーー!?」
たまらず穣子(イモ)が声を上げると、三人は「ウワァー! シャベッタアァー!?」と、叫びながら一目散に逃げて行ってしまいました。
……いったい何だったんでしょうか?
「……ったく、もう! なんてコトすんのよ!? 焼くのはイモだけにしてよね!? これだから妖精ってのは……」
穣子(イモ)が今、自分がイモであるコトを忘れてグチグチ言っていると……。
「……あら、珍しいわね。しゃべるイモなんて」
と、言いながら彼女の前にメイド長の咲夜が姿を現します。
(ゲゲッ! 咲夜! コレはヤバい!?)
穣子(イモの姿)は逃げようとしますが、気がついたら彼女の腕に抱きかかえられていました。
どうやら時間を止められて、つかまってしまった模様。これは万事休す。こうなってしまっては、もうどうしようもありません。
そのまま台所に連れていかれると、無造作に机の上のまな板に置かれます。
「……さて、どうやって調理しましょうかね」
そう言いながら彼女は、包丁を取り出してきます。穣子(イモりこ)はイチかバチか、イモっぽい口調で彼女に告げます。
「ア、アノ、ワタシ、オイシクナイヨ……?」
「それは食べてみなくちゃわからないわよね」
「……ア、アノ、ワタシニハ、腹ヲ空カセタ家族ガ、家デ待ッテ……」
「はいはい。そういうのいいから」
「ア、ハイ……」
コレは何を言ってもダメな様子。この完全無欠なメイド長に何かスキはないのでしょうか?
「……それにしてもしゃべるイモね。いったいどんな品種なのかしら。そうだわ。念のため、パチュリーさまに聞いてみましょう」
と、言って咲夜は、あろうことかイモ(穣子)を置いたままその場から去ってしまいます。……案外、ヌケてました。
今がチャンスとばかりに穣子は、台所から一目散に逃げ出します。
「あーあぶなかったー! さて、リグルを探さないと……!」
再び穣子(イモ)は館内を練り歩くのでした。