「よっしゃー! これは勝ったわねー!」
「これは……。スゴいのきましたね!」
地下では巨大船を見た二人が、案の定、盛り上がっていました。一方フランドールは冷静に分析してました。
「……見たところ、機動力を犠牲にして防御力に特化した機体ってトコかしら。それ単体では壁にはなっても直接的な戦力にはなり得ない。……と、なると恐らく、誘導弾や特殊砲弾、あるいは格納されている兵器の展開など、機動力を補う武装が予測できる。実際、さっきの光線は、魔法壁を強制解除に追い込んだようだし……」
「ちょっとなーにブツブツ言ってんのよ! 覚悟しなさいよ! アンタの姉がやられるところ見るコトになるんだからね!?」
「……そうね。ま、それはそれで見物だわ」
と、言いながら彼女は涼しい顔で紅茶をカップに注ぎ、口を付けます。
どこまでも冷静な様子の彼女に、思わず穣子が言い放ちます。
「ったく、面白みがないわねー! 少しでも焦ってみたらどうなのよ? アンタ、自分の姉がやられちゃうかもしれないのよ!?」
「……ええ。そのときは、素直に負けを認めるのみよ。パチュリーや咲夜とともに粛々と後始末をするわ。ま、姉の尻拭いをするコトになるのは、正直心外ではあるけど……」
「ちぇっ! 面白くないわー!」
「ねえ、フランドールさん……」
「なあに?」
「……なんか、お姉さんよりもアナタの方が、よっぽど君主っぽいですよね……?」
「あら、ありがとう虫妖怪さん。そういえば、アナタの名前聞いてなかったわね」
「あ、わ、私はリグルです」
「そう。よろしくね? リグル」
「あ、はい……」
微笑を浮かべるフランドールに、リグルは思わずドキッとしながら頭を下げます。
「ちょっと! 何ノンキにあいさつなんかしてるのよ!? いよいよクライマックスだってのに!」
「……ねえ、イモ神さん。言っておくけど、姉を見くびらない方がいいわよ? なんと言ってもワタシの姉なんだからね。フフフ……」
「誰がイモ神よ!? 訂正しなさいよ!」
フランドールは穣子の抗議を無視して、映像を見つめながら、楽しそうに笑みを浮かべるのでした。
□
上空では一進一退の攻防が続けられています。
天狗と戦闘機の猛攻に加えて、空中船による援護射撃が雨あられと降り注ぐ中、レミリアは鬼神のごとき形相で、もはや攻撃をよけもせずに同盟軍に立ち向かっています。
彼女は天狗たちの一撃を食らおうが、砲弾の直撃を食らおうが、持ち前の回復力で、あっと言う間に傷を治します。いやはや吸血鬼恐るべし!
「くっ……。吸血鬼とは、ここまでも強大な力を持つものなのか。大軍勢相手にたった一人でここまでやるとは。同じ妖怪とは思えん……! 天狗といえど、このままでは……!」
龍は戦況が思わしくないコトに、思わず苦々しい表情を浮かべます。
それは神奈子たちも同様でした。
「……むぅ。予測はしていたが、吸血鬼というものは実に恐ろしい種族だな。間違いなく消耗しているハズだが、まだあんな力を保っていられるとは……」
「まったくだよ。神ならまだしも、生身の妖怪であの力。まさに怪物だわ」
「うむ……。戦闘機もだいぶおとされてしまったしな」
そのとおり、あれだけ空を真っ黒におおっていた戦闘機のほとんどはレミリアによって撃墜されてしまいました。
「……ところでアンタ、大丈夫? なんか顔色悪いけど」
「……ああ。うむ。……さすがに、少々キツくなってきたかもしれん」
そう言うと神奈子は、ツラそうに思わず目をつむります。それを見た諏訪子が耐えかねて言い放ちます。
「そりゃそーでしょーよ! 元々ムチャだったのよ! あの戦闘機や空中船の一つ一つに勾玉積ませて、アンタの力を分け与えるなんて!」
「……そうかもしれぬな。……だが、ここまで来て引くわけにはいかんだろう……?」
「なんで、はじめから河童たちをパイロットにしなかったのよ? その方がはるかに楽だったでしょうに。だって、アイツら今ごろ自分の住処でゲーム感覚でこの戦闘機を操作してるんでしょ? なんでアンタだけ色々背負わなきゃなんないのよ?」
神奈子は苦笑しながら答えます。
「……いやさあ。だってアイツら、例えこっちが作戦や計画を立てても、そのとおりに動こうとしないんだよ。以前のダム計画の時もそうだっただろう? それで過去の失敗も踏まえて、ヤツらには戦場ではなく、住処から自由に参加してもらうようにしたのさ」
「いや、だからって何もアンタが……」
「……それにな。いいか、諏訪子。確かに戦争には犠牲が付きものとは言う。だがな。その犠牲は少ないに越したコトはない。防げる犠牲は極力防ぐ。それを突き詰めた結果が、この作戦だったんだよ。別にいいじゃないか。離れたところからゲーム感覚で戦争に参加しても。戦争で重要なのは何も戦地におもむいて、わざわざ命を賭けるコトじゃない。戦争に勝つコトなんだよ。そして更に大事なのは、戦争が終わったあとの世界をどうしていくかなんだ。しかし、それはアイツらが決めるコトであって、私たちの出る幕ではない。私たちができるのはここまでさ。だからせめて道しるべを作ってやりたいんだよ。歴史のね」
諏訪子は呆然と神奈子を見ていましたが、やがてため息をついて告げます。
「ハァ……。まったく。軍神のアンタにそれ言われたら、私は何も言えないわ……」
「すまんな。私のわがままに付き合わせてしまって……」
「ま、いいってことよ。……そんじゃ私も、とことん付き合ってあげようじゃないの!」
「諏訪子……」
「いっしょにこの世界を導いてあげましょう! ……神としてねっ!」
諏訪子の帽子の目が妖しく光り、真っ黒いオーラが、あたり一面に広がり始めます。そして、そのオーラが天狗たちを包み込んでいきます。
「……む? これは……。 なんだ? 体が……。あつい……っ!? 力が……。みなぎってくる……!」
体の異変に気づいた龍があたりを見回すと、まわりの天狗たちも同じような状況になっています。
「……ふっふっふ。どうだい? オマエらに、ミシャグジさまの力を分け与えてやったぞ! さあ、天狗ども! 存分に暴れるがいい!」
「おい諏訪子……!? そんなコトしたらアイツらの体が持たないぞ!?」
諏訪子はニヤっと笑みを浮かべて告げます。
「……これが私のやり方だよ。それに天狗たちは、河童と違って、種族に対する誇りが高いんだ。自分の身は自分で守りたい性分なのさ。だからアイツらにはこれが正解なんだよ。……ホラ、見なよ? あのイキイキした様子を!」
そう言って諏訪子は口元を緩めると、龍の方を指さします。
ミシャグジさまの加護を受けた天狗たちは、龍に続いて雄叫びを上げながら一斉にレミリアに向かっていきます。
「今こそ我ら天狗の底力を! あの悪鬼に見せつけるとき!! さあ! 我に続けぇーー!」
レミリアも負けじと槍を更に巨大化させ、それを振り回しながら、天狗の群れに襲いかかります。
「来い! 皆、なぎ払ってやるわ!!」
力と力のぶつかり合い! 文字通りの総力戦です!
強化された天狗たちの総攻撃を真っ向から受け、さすがに重傷を負うレミリア。それでも彼女は、その傷を治しながら弾幕と槍の衝撃波で天狗たちを蹴散らしていきます。
「……むぅ。まだだ。まだ何か足りない。何か決め手となるものは……!」
と、神奈子が更なる策を練っていた、そのときです。突然、みとりから通信が入ります。
「どうした」
「長官! このままでは、らちがあきません! ……つきましては是非、この私に特攻命令を!」
「なっ……!?」
みとりからの提案に、思わず神奈子は絶句してしまうのでした。
次回で第2部終了となります