あれから家に戻った静葉は、穣子と一緒に家でくつろいでました。
穣子は廊下に寝そべって干し芋をかじっています。
一方、静葉は、囲炉裏のそばで険しい表情で何やら考え事をしていました。
「……あー。平和っていいわーねー。姉さん」
「ええ、そうね」
「今夜のご飯どーしよーかなー?」
「ええ、そうね」
「……どーしたのよ? さっきから難しい顔して」
「……ええ、ちょっと考え事をね」
「まったく、少しは休んだらどうよ? ずっと動いてると疲れちゃうわよ。ほらイモでも食べなよ。もう切れっ端しかないけど」
「……ねえ。穣子」
「何?」
「あなた、なんか違和感あったりしない?」
「違和感……? 別にないけど」
「どことなく居心地が悪いとか」
「居心地悪いって……。ここは私たちの家よ? 我が家が居心地悪いとか、もうそれ引っ越すしかないじゃん?」
「ふむ……」
と、その時です。
「……なんだなんだ。二人ともここにいたんですかー?」
「……ああっ、その声はっ……!?」
「ふふふ……。ごきげんよう。お二人さん」
二人の前に現れたのは典でした。何やらやたら笑顔ですが……。
「……何しに来たのよ」
「あなたたちに有益な情報を伝えに来ました」
「帰れ!」
「……あらあら、いいんですかー?」
「いいから帰れ! アンタなんかに用はない!」
穣子は台所から塩を持ってくると、彼女に向かってまこうとします。
「……おやおや。それは困りましたね。せっかくアナタの大事な友人がピンチであるコトを伝えようと思ったのに」
「え……?」
「いったいどういうことよ」
「ふふふ……。今、地底は大変なコトになってるんですよ。何しろリバースという組織が地霊殿を占領して、地底を征服してしまったんですから」
「なんですってー!?」
「地底を征服って、いったい何のためにそんなことを」
「ふふふ……。奴らは地霊殿を拠点にして、この幻想郷の転覆をはかるつもりです」
「はぁ!? カンベンしてよ。せっかくレミリア倒して平和になったというのにー」
「……いえ、むしろレミリアがいなくなったから動き出したということなのかしらね」
「さすが鋭い! ヤツらが地上侵攻するためには、強大な力を持つ彼女が邪魔だったんです。彼女がいなくなった今、ついに動き出したというコトです」
「ぬむむぅー。それにしても地底を征服……って! あっ! ヤマメ!?」
「あら、大変。そういえば地底に帰ったって言ってたわよね」
「ふふふ……。早く助けに行ってあげた方がいいと思いますよー?」
「うっさい!! アンタに言われなくても助けに行くわよ!? さあ、姉さん行くわよ! ヤマメを助けないと!」
「……ふむ、そうね。そのリバースって組織についても知りたいし。行きましょう」
「よし、そうと決まれば善は急げよー!!」
言うや否や、穣子は我先と家を飛び出していってしまいます。本当、鉄砲玉のようなイモです。
静葉も彼女を追いかけようとしますが、ふと、立ち止まって典にたずねました。
「……ところであなた。どうしてそれをわざわざ私たちに教えるのかしら。あなたはそのリバースって組織のメンバーではないの」
「……ふふふ。ほら、前も言ったじゃないですかー。私には」
「ある『壮大な計画』がある。……だったわね」
「ふふふ……。そのとおり。……ま、今は早くツチグモさんを救いに行ってあげてくださいよ?」
「……そうね。そうさせてもらうわ」
静葉は典を見やると、そのまま家を飛び出していきました。
「ふふふ……。期待してますよ。二人とも」
そう言って典はニヤリと意味深な笑みを浮かべつつ、二人を見つめるのでした。