秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

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その3

 

 二人が急いで地底へと向かうと、暗闇の中でボロボロになったヤマメが倒れていました。

 

「ヤマメ! しっかりして!?」

「あ、あれ? どうして二人が……」

「アンタがピンチって聞いて駆けつけたのよ!」

「ヤマメ。いったい誰にやられたの」

「うう……。二人とも気をつけて、まだ近くに……」

 

 と、そのときです。二人の前に何者かが姿を現します。

 

「……あら、連れがいたのね?」

「アンタはっ!?」

 

 金髪に、らんらんと光るような碧眼。そう、その正体はパルスィでした。彼女が一人でヤマメをやったのでしょうか?

 

「ねえ。アナタたち。地底は我々リバースの統治下よ? 勝手に侵入されては困るね」

「よくもヤマメをやってくれたわね!?」

「橋姫さん。あの子は元々地底の妖怪よ。どうして攻撃したのよ」

「あら、コイツはリバースのメンバーじゃないもの。それに私のせっかくの勧誘を断りやがったからね」

「だからって……! 許さないわ! 神の名において裁きを下してやる!」

「あら、怖いわね……?」

「ふふん。2対1よ。言っとくけどアンタに勝ち目はない!」

「それはどうかしら……?」

 

 パルスィはおもむろに懐から横笛を取り出すと吹き始めます。ピロリロリィー!

 

「何よ? ……笛?」

 

 すると上空からドォオオンと何かが力強く地面に着地します。大柄な体にその長い金髪。そう、その正体はマ◯マ大使! ……じゃなくて。

 

「……アンタは勇儀……!?」

「よぉ。お二方。久しぶりだな」

「アンタ何してんのよ!?」

「……おいおいパルスィ。マジか? コイツらなのか?」

 

 二人を見て、怪訝そうな様子の勇儀にパルスィはさらりと答えました。

 

「そうよ。いつものようにおやり」

「……ちっ、しゃーねえな」

 

 そう言って勇儀は、ドスンと、四股(しこ)を踏みます。

 

「え……!? ちょっと勇儀!?」

「わりぃな。お二方、パルスィの命令には、従わなくちゃいけなくてな」

「はぁ!? なによそれ!?」

「……穣子。ここはひとまず逃げるわよ」

「わかった!」

「おっと逃がさないわよ!」

 

 すかさずパルスィが、ピロリロリィーと笛を吹くと、頭上から何ら大きな桶が落ちてきて、そのまま穣子の脳天にクリーンヒットしました。

 

「ギャーーーーー!?」

 

 たまらず穣子は地面に突っ伏してしまいます。

 桶はまたそのまま上空へ姿を消してしまいました。何やら緑髪の妖怪が中から顔を出していたような……。

 

「ふふ……。あの時、私を無視した報いを受けなさい」

「イタタタ……。って、あの時?」

「そうよ。アンタ、橋を渡らず飛び越えていったでしょ!」

「んーと。そんなコトあったっけ……?」

「アンタは忘れてても私は覚えているわ! 妬ましいわね!」

「え? ええ!? 何よそれ!?」

「……というわけで、オマエさんたちに恨みはないが、やらせてもらうぞ」

 

 そう言って勇儀が穣子たちを見据え、拳を構えたそのときです。

 

「その二人から離れなさい!」

「む、何やつ!?」

 

 突如、二人の間に猛スピードで何者かが割り込んできます。その正体を見た穣子は思わず目を丸くさせました。

 

「あ、アンタは寺の……!?」

 

 そう、現れたのはレジスタンスの総まとめ役にして妙蓮寺住職、聖白蓮でした。

 彼女は二人をにらみつけると、拳を構えます。その肉体には強化魔法を施してあるようで、全身から並々ならぬオーラがあふれ出ています。

 

「……お坊さんごときが何の用よ!」

「あなたたちの親分のところに案内しなさい!」

「……へえ、イヤだと言ったら?」

「そのときは力づくでいかせてもらいます!」

「……アンタさあ、目の前にいる相手が誰だかわかってるの? 泣く子も黙る鬼よ? しかも山の四天王と呼ばれた」

「そんなの百も承知です!」

「ぐっ……!」

 

 彼女のまっすぐな眼差とオーラに、パルスィと勇儀は、思わずたじろいでしまいました。そのスキに聖は穣子と静葉に告げます。

 

「二人とも! ここは私にまかせて、あなたたちはヤマメを連れてアジトに向かいなさい! 慧音たちが待っているわ!」

「え? でも……」

「よし、穣子。行くわよ」

「う、わ、わかったわ!」

 

 穣子と静葉は、言われるままにヤマメを連れてその場を離れました。

「フン。ずいぶんと殊勝だな! あの二人がそんなに大事なのかい?」

「ええ。あの二人は私たちの貴重なピースですから」

「……ふーん。そうかい! じゃあ、手加減無しでいかせてもらうぜ?」

「望むところです! 怪力乱神を操る山の四天王、星熊童子。我が相手にとって不足無し!」

 

 二人は拳を構えお互いを見据えます。そして。

 

「鬼の力とくと味わえ!」

「いざ、尋常に南無三――!!」

 

 二人の拳が交わり、あたりに大きな衝撃が轟くころ、穣子と静葉は重傷のヤマメを背負って、急いで出口に向かっていました。

 

「……聖さん、大丈夫かなあ」

「……恐らく厳しいでしょうね」

「え!?」

「……考えてごらんなさい。相手は鬼。しかも山の四天王の一人。いくら彼女が強者といえども、本気の鬼が相手では太刀打ち出来ないでしょう」

「そんな!! じゃあ戻って加勢しないと!」

「……それはだめよ。穣子」

「なんでよ!? あの人を見殺しにする気!?」

「彼女は私たちを逃がすためにあの二人の相手をしてくれているのよ。今戻ったら彼女の行動が無駄になってしまうわ」

「う……。そ、そっか」

「今は、彼女の言うとおりレジスタンスのアジトへ行きましょう」

「……うん!」

 

 と、そのときです。突然二人の前方に何かが落ちてきます。

 

「うわっ!?」

「危ない」

 

 二人は間一髪でそれをよけます。

 その正体はさっきの桶でした。そしてその桶の中には白装束を着た緑髪の妖怪の姿が。その妖怪が二人に告げます。

 

「その子を置いてけ!」

「え!?」

「その子は私の親友だ! 返せ!」

「そんなの誰が信じるかって……」

「待ちなさい。穣子」

 

 静葉は、その桶の妖怪に笑みを浮かべて話しかけます。

 

「桶妖怪さん。私たちは今までずっとこの子と行動してきていたのよ。今はこの子のケガを治すために、地上の医者のところに行こうとしてるの。私たちはこの子の味方よ」

 

 桶の妖怪は黙っています。静葉は更に話を続けます。

 

「ケガが治ったらまた地底に返すわ。……私たちを信じて」

 

 桶妖怪はしばらく二人を見つめてましたが、やがて何も言わず上空へと姿を消してしまいました。

 

「……さすが姉さんね。あんな得体の知れないヤツを説得するなんて」

「……さ、穣子。行くわよ」

 

 二人は、聖の身を案じつつも地底を脱出し、レジスタンスのアジトへと向かうのでした。

 

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