一方そのころ、博麗神社の入り口。鳥居の前にある人物が。参拝客ではありません。
「……ううむ。やってきたはいいですけど。……はたして本当に会えるのでしょうかね?」
その人物は魅須丸でした。彼女は神奈子に言われて、霊夢にあうために神社を訪れていたのです。
「ふむ。ウワサ通り、人の気配が全くないですね。とても繁盛しているとは……」
と、そのときです。
「あれー? 誰ですか? もしかしてお客さまですか?」
彼女の前に額に角を生やした緑の髪の少女が、ひょっこり姿を現します。
「ん? アナタはたしか……。ここの狛犬でしたっけ」
「あ、はい。あうんって言います」
「そう、あうん。この神社の主は?」
「本殿にいますよ。何かご用ですか?」
「ちょっとお話がありましてね」
「そうですか。でも、あいにく霊夢さんは今取り込み中でして……」
「取り込み中って、どうせ、やけ酒でもあおってるのでしょう? 私はそれを説得しに来たんですよ」
「おやおや。なんとそうだったんですね。うーんどうしましょう……?」
「……いや、まてよ。ねえ、アナタ!」
「は、はい?」
「ねえ、私の代わりに彼女を説得してくれませんか? 『異変』を解決してくれって」
「わ、私がですか!?」
「ええ。パッと出の私なんかが行くより、常に神社で一緒にいるアナタの方が適任かと思いましてね」
「えー……。うーん、どうしよう……」
「おや、イヤなんですか?」
「……いえ、私としては、霊夢さんのやりたいようにやらせてあげたいと思ってまして……」
「……ふむ。そうですか。じゃあいいです。他の人に頼みますから」
「あうぅ。ごめんなさい……」
「いいんですよ。アナタはアナタのやり方で、あの子を支えてあげて下さいね」
そう言って、あうんに向かって微笑むと、魅須丸はきびすを返して神社をいったんあとにするのでした。
去って行く彼女を見送りながら、思わずあうんは、くびをかしげながらつぶやきます。
「……あの人、冷たいのか優しいのかよくわかりませんねえ……?」
□
穣子たちがレジスタンスのアジトへ着くとメンバーたちが待っていました。
二人はヤマメの手当を永琳にまかせ、慧音たちに事情を説明しました。
「……ふむ、そうなのか。聖のやつは一人で……」
「そうなの。私たちをかばって……!」
「早く助けに行かないと。……でも今のままでは戦力が足りないわ」
「……ああ。攻め込むにしても戦力を整える必要がある。それに今は一つ懸念事項があってな」
「懸念事項……? なによそれ?」
「……実は大きい声では言えないのだが……」
慧音は二人の耳元でぼそっと告げます。
「……え!? 裏切り者!?」
「穣子。声が大きいわよ」
「……あ、ごめんなさい。つい……」
「……すまない。くれぐれも内密にたのむぞ?」
「……それで、誰なのよ?」
「……ナズーリンだ」
「……え、ナズーリンって、あのネズミの……?」
「……ああ、そうだ。彼女がリバースと繋がっていたんだ。そして更には驚くべきことに……」
慧音は再び二人の耳元で告げます。
「えっ……!? ……お燐が……!?」
「まぁ……。なんてこと」
「マジで!? それ本当だったらかなりヤバくない!?」
「何か証拠はあるのかしら」
すると慧音は例のノートを二人に見せます。
「……彼女の家で見つかった、このノートにかかれていたんだ。その中に、私たちがさとりと協力体制を作ろうとしていることを、リバース側に漏らしている旨が書かれていてな。更にノートには、お燐の名前も何度も登場していた。……リバース側として」
「……ふむ。でもハクタクさん」
「なんだ……?」
「どうしてそのノートがわざわざ机の上に置いてあったのかしら。そんなトップシークレットな情報が書かれたものなんて、普通ならカギのかかる引き出しあたりに保管しておくものよ」
「……ああ、確かにな。だが、今はその理由を知るすべはないし、ここでそれについてあれこれ話しても、憶測の域は出ない」
「……直接本人から聞くのが一番ってことね」
「そういうことだ」
「ところでさぁ。そもそもの話、リバースって何なのよ?」
「そうね。それは私も知りたいところね」
「……リバースについてか。あくまでも、我々が今まで把握している情報になるが……」
と、前置きした上で彼女は、リバースについて語り出しました。
「リバースは幻想郷の転覆を目的とする組織で、
「……ずいぶん、そうそうたる顔ぶれね」
「ゲゲッ! 勇儀もなんだ……!? あいつ一時期仲間だったのに……!」
「そして、恐らく小さな賢将、ナズーリンと火車、火焔猫燐もそれに準じた地位である可能性が高い。更にいくつかの
「ふむ。なかなか大規模な組織のようね。……でも、果たして皆、同じ目的なのかしら」
「さあな。……だが、少なくとも、同志である可能性は高い。しかも厄介なことが一つあってな」
「厄介なことって? 何よ。もったいぶってないで言ってよ!」
「ああ。どうやらメンバーは何かしらの『マジックアイテム』を所持しており、その力で強くなっているらしい」
「……その『マジックアイテム』ってなんなのよ?」
「……簡単に言えば、この世界や外の世界などに存在する特殊な力を持ったアイテムだ。鬼や天人に伝わる秘宝だったり、高名な魔法使いや職人が技巧を凝らして造った魔具など出自は様々だが、総じて強力な能力を持っている」
「へえー。そんなものがあるんだ……?」
「穣子も紅魔館に侵入するときに使っただろう?」
「ああ、もしかしてあの葉っぱ?」
「そう。あれもれっきとした『マジックアイテム』なんだ」
「そっかー。あれは確かに便利だったわー。……私はイモになっちゃったけど……」
と、思わず穣子は顔をしかめます。ジゴウジトクです。
「……ふむ。と、いうことはハクタクさん。やつらと戦うには、こっちにもその『マジックアイテム』に対抗するものが必要になるってことじゃないかしら」
「ああ、そのとおり。今まさに、それを手配してもらっているとこさ」
「そっか! じゃあ、それが来れば反撃のノロシを上げられるってワケね!」
「……ああ。聖のことは確かに心配だが、彼女だってああ見えて高位の魔法使い。ただでやられることはないだろう」
「そーね。あの人なんかスゴイもんねー……」
と、そのときです。
「慧音さま! たっ大変です!!」
血相を変えてやってきたのは美宵でした。
「どうした。まさか敵襲か?」
「はい! 里が何者かに襲撃を!」
「なんですって! 里が!?」
「ううむ。恐らくリバースのメンバーだろう。まだアイテムは届いていないが……。致し方ない、すぐ向かわせる!」
「よし! 私たちも行くわよ!」
「そうね」
「それは助かる……! ぜひ頼む」
こうして、穣子と静葉、そしてリグルの三名はただちに里へと向かうのでした。