さてそのころ、魅須丸は自分のかわりに霊夢を説得できる人物を探してアテもなく、さまよっていました。
「……さて、困りましたね。あの神社とつながりのある者……。他に誰がいましたっけ。一番頼りになりそうな、あの人間の魔法使いは何やらお取り込み中のようですし……。風祝になんか頼んだら、それこそ、あの二柱に何言われるかわかったもんじゃないし……。そもそもなんで私が動かなきゃならないんですか……。まったく、私も龍に頼まれてるコトあるというのに……」
と、ブツブツ言いながら往来を歩いていたそのとき。反対側から、仏頂面でふらふらと歩いてくる者が。
「あら、あなたは……」
「あん……? なんだ、私に用事あるのか? この萃香さまに!」
萃香は魅須丸をにらみつけます。どうやらすこぶる機嫌が悪いようですが、構わず魅須丸は続けます。
「……えーと。あなたは確か、前に博麗神社に居候してましたよね?」
「そうだが、それがどうかしたのかよ?」
「実は頼みたいことがありまして。あ、申し遅れました。私はですね……」
魅須丸が自己紹介をすると萃香は、態度を改めました。
「……ああ、そうか! オマエが霊夢の陰陽玉を作った神さまってヤツかい。前にアイツから聞いたコトあるよ」
「ええ。どうぞ、お見知りおきを!」
「……で、私に頼みって何だよ?」
「ええ。実はですね。彼女を説得してこの『異変』の解決に動いて欲しいんです」
「『異変』だと?」
「ええ。そうです。山の神が言うには、この一連の出来事はすべて『異変』だというのです」
「…………あぁ。……そういうコトか! こりゃケッサクだ! あっはっはっは!」
と、思わず大笑いする萃香。
「あの、何か面白いことでも……?」
「ああ、いやぁ、こっちのコトさ。……なるほどねえ! いいよいいよ! 乗ってやるよ。……ちょうど今のつまらない幻想郷に飽き飽きしていたトコロだからな!」
「おお! それならば話が早い! それじゃあとはアナタに丸投げしてもいいですかね?」
「ああ、まかせとけ! そのかわり今度、飲みに付き合ってくれよ。オマエ、見たところなかなか飲めそうなタマだし」
「おやおや、まあまあ。鬼と酒宴ですか? ……まぁ、いいでしょう。コトが済んだらですけど。それじゃ、あとはお願いしますね」
そう言うなり、魅須丸は忙しそうに姿を消してしまいます。
さっそく萃香は、霊夢を説得するために神社に訪れますが……。
「おい! そこの酔いどれ巫女!」
「ん……? あれ、萃香じゃない。どうしたの? アンタも一緒に飲む?」
「いい加減、目を覚ませ!」
「へ……? 何怒ってんのよ?」
「オマエがしっかりしてくれないから、幻想郷がめちゃくちゃになってしまったんだぞ!? もう少し自覚持てよ!」
「……そんなの知んないわよ! だって、なんか、ある日いきなり妖怪が強くなって暴れ出して、私でも勝てないんだもん! 知ってる? 今の私、ザコ妖怪にも勝てないのよ!? こうなったら、もう放っておくしかないじゃん!」
「おいおい、博麗の巫女としてそれでいいのかよ!?」
「だって、本当に私の力でもどうしようもないんだもん! やってらんないわよ! 博麗の巫女はもう引退よ! 引退!」
「まったく、あきれたもんだな……。紫のヤツはなにやってんだ?」
「さあー? もうずーっと姿見てないし……。どうせ眠ってるか、アイツもヤケ酒あおってんじゃないのー」
そう言うと霊夢は再び一升瓶をぐびぐびとラッパ飲みして飲み干すと、そのまま縁側にごろりと寝っ転がります。完全にヨッパライのソレです。
「……はぁ。ダメだこりゃ。思ったより重症だぞ。これは……」
あきれ果てた萃香は、こりゃ自分だけで説得するのは難しいと判断し、仕方なく一度神社を離れるのでした。