一方、そのころ萃香は自分の能力を使って、過去に神社に居候していた者だけを器用にあつめようとしていました。霊夢と関係が深い者に説得させるためです。
「……で、あつまったのはオマエだけかよ?」
「なによー。悪かったわね。私なんかで……」
しかし、あつまったのはどういうわけか紫苑だけでした。
「うーん。おかしいな。調子悪いのかな……?」
「いったいなんなのよー? 急に呼び出して」
「っていうか、オマエ、神社に居候してたコトあったっけ?」
「一応あったわよー。ごくごくわずかな期間だったけど」
「そうなのか。ま、この際、期間はどうでもいい! 頼む! 霊夢のヤツを説得してくれないか?『異変』の解決に動いてくれって」
「……ええ!? そんなのアンタがやればいいでしょ!?」
「それが、私じゃ説得できなかったんだよー」
「……アンタが説得できないヤツを私ができるわけないと思うけど……?」
「ええい。ダメ元でもいい! もし、やってくれたら、オマエ好みの新しい家作ってやるぞ!?」
「えっ! 本当!?」
「鬼はウソつかん」
「そりゃ助かるわ。今の家、そろそろ崩壊しそうだったのよ。……うーん。わかったやってみる! ……でも、期待はしないでね?」
「おう! 頼むよ!」
紫苑は萃香にけしかけられるようなカタチで博麗神社へと向かうのでした。
果たして彼女は霊夢を説得するコトができるのでしょうか……?
□
さて、一方レジスタンスのアジトに戻った穣子とリグルと静葉は、さっそく里での出来事を慧音に報告していました。
「……そうか。紅魔館組が……。それなら里はひとまず大丈夫そうだな」
「そうね! アイツらが守ってくれるなら里は天下太平よ!」
「……では、次はこっちが攻める番だな!」
そう言いながら二人の前に
「あ! 龍さん!」
「何そのカード……? スペルカードとは、なんか違うよーだけど……?」
「これはアビリティカードだ。これを使うとマジックアイテムと同等の力を発揮出来る」
「へえ、それはすごいわね」
「魅須丸と協力してできるだけ多く用意はした。しかし数にはどうしても限りがある。くれぐれも無駄遣いはしないでくれ」
「オッケー! ありがとー!」
さっそく三人はカードを手に取ります。
リグルはカードを見て自分が使えそうなヤツを選び、静葉はカードの効果を龍に一つ一つ聞きながら慎重に吟味し、そして穣子は片っ端から手当たり次第にカードをフトコロにしまい込みました。
……こういう所にも性格が出るモンです。
「よーし! それじゃ、いよいよ乗り込むのね!」
「うむ。私とリグル。そしてあなたたち姉妹の四人でいこうと思う」
「わかったわ。留守は私にまかせて」
「ああ、頼む。永琳」
四人は永琳と龍に見送られ、地霊殿を目指して出発するのでした。
□
さて、その地霊殿。
聖は勇儀たちとの戦いに敗れ、牢屋に閉じ込められてしまっていました。
「よっ!」
「……お前は!」
聖は牢屋越しに声をかけた人物をにらみつけます。
「クックック……。ったく、ザマァねえな。レジスタンスの親玉さんよぉ!」
そう言って、その人物――正邪は、彼女を見下すように笑みを浮かべます。
「しかしまぁ、呆れたモンだな。僧侶とはいえ、人間の分際で鬼とやり合うなんて」
「いますぐここから出しなさい!」
「バカか? 出すワケなんかねえだろ。その特殊なオリの中でずっと遊んでな。別に暴れてもいいんだぞ? どうせ、ちょっとやそっとじゃ壊れないようにしてあるからな」
思わず歯ぎしりをする聖を、正邪が見下すような表情で眺めていると、そこへお燐が現れます。
「正邪さま! ただいま戻りました!」
「お、どうだ? 地上の様子は。どうやら付喪神の二人は失敗したようだな?」
「ええ。どうも里は紅魔館組が守っているようで」
「おお、そりゃコエー。で、それ以外はどうだ?」
「はっ! 今のところ特に警戒されてる様子もなく」
「おーそうか。そんじゃ始めるとすっか。じゃあな! 僧侶サンよ!」
「お待ちなさい!」
「あん……?」
「……あなたにはいずれ罰が下ることでしょう! 覚悟しておきなさい!」
「おー。罰か。そりゃ楽しみにしておくぜ! クックックッ……」
正邪は、にらみつける聖を見やるとその場を離れ、地霊殿の奥の間へやってきます。
そこでは針妙丸がチョコンと座布団に座っており、その横にはパルスィの姿が。両者の後ろには、大きな鏡がまるでご神体のように鎮座しています。
「お待たせしました。針妙丸さま。お燐が偵察から帰ってまいりました」
「お。というコトはいよいよなのだな?」
「ええ。いよいよですよ。針妙丸さま。さて誰を地上へ送り込みますかな?」
「よし。ここはリーダーである私が決めてやるとしよう! おい、パルスィ! 勇儀と地上へ行って暴れてこい!」
「……了解したわ。フフ。面白いコトになりそうね」
そう言ってパルスィは笑みを浮かべると、その場から姿を消します。
「……正邪。いよいよだな」
「ええ。もうすぐですよ。針妙丸さま」
そう言って正邪は、立てかけてある大きな鏡に目を向けます。鏡は異様な雰囲気を放ちながら鎮座し続けていました。