秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

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その6

 さて、そのころ、穣子はと言うと……。

 

「うーん。ここはドコだろ……?」

 

 河童の住処で迷子になっていました。

 

「まったく、にとりのヤツったらどこにいるのよ!? 日も傾いてきちゃったし、時間はないし!」

 

 穣子は通行人に片っぱしからにとりの居場所を聞きますが、返ってくるのは「お値段以上の家具屋なら町のはずれだよ」という返事ばかりで、ちーっとも彼女の情報は集まりやしません。

 

「まったくもう! 少しは真面目に答えてよ!?」

 

 彼女は、バザーへと足を伸ばしました。

 ここでは色々なガラクタ……。もとい、珍しいモノが露天で販売されていて沢山の河童でピースカギャースカにぎわっています。

 

「すごい人だかりね。これだけ大勢いるなら、にとりのヤツもいるかもしれないわ」

 

 と、そのとき、何者かが、彼女を呼び止めました。

 

「ヘイユー! そこのイモっぽい神さま! この全自動焼きイモ洗い機いらない? 今なら安くしておくよー」

「あら、それは素敵な装置じゃない。それじゃあ買おうかしら……? ア ナ タ を ね !」

 

 穣子はその河童をいきなりドカっバキっと、ブン殴ります。

 

 ……そう、この河童こそ穣子が探してた河童のにとりだったのです。

 

「ひえー! ぼ、暴力反対ー!?」

「おだまり! アンタには聞きたいことが山ほどあるのよ! アンタのせいで大変なコトになってるんだからね!?」

「わ、わかった。わかったから、とりあえず場所を変えようよ!?」

 

 二人の周りには騒ぎを聞きつけて沢山のギャラリーが集まっています。たしかにここは場所を変えた方がよさそうです。

 

 と、いうわけで、二人はさっきの池へとやってきました。

 って、おや? 待っているはずのヤマメたちの姿が見えません。ドコに行ったのでしょう? まさか逃げたとか?

 

「あれ? おかしいわね。ヤマメたちがここにいるはずなのに、まあいいわ。さあ、いったい何があったのか話してもらうわよ!」

 

 そう言って拳を振り上げる穣子を見て、にとりは渋々と語り始めました。

 

「……境界だよ。境界が狂っちゃったのさ。あの『季節操作マシ~ン』ってのは、実は境界を操る装置だったんだよ。まだ試作品だったけど、とりあえず季節の境界を操ることに成功したら、その後で改良を加えて更に、色々操作できるようにしていくつもりだったんだけどね。まあ、結果は見ての通り」

「見ての通り。じゃないわよ!? 最悪の状況じゃないのよ! なんとかしなさいよ!」

「そんなの無茶なコト言わないでよ!? こうなっちゃったらもう止めようがないよ! 第一、装置が行方不明なんだ。あのあと、アンタたちの家に行って、回収しようとしたらなくなってたし」

「……それってどういうコトよ?」

「うーん。暴走した際に境界のスキマに落ちちゃったか、誰かが持ち去ったか」

「持ち去ったって。誰が何のためによ!?」

「そんなのわかんないよ!?」

「わかんないで済むか! えい! この!」

 

 穣子の拳が、にとりの頭に次々とサクレツします。

 おーおー、こいつぁ痛そう。にとりは涙目になって訴えてきました。

 

「うえぇん! やめてよ。何でも言うコト聞くからさぁ」

「言ったわね!? よし! それじゃ、アンタも装置を一緒に探すの手伝いなさい!」

「えー!? 今さら!?」

「当たり前でしょ! この世界を元に戻すのよ!」

 

 と、そのときです。

 

「いや~まいったまいった。急にミルク飲みたいなんて……って、あれ?」

 

 ヤマメたちが帰ってきました。お空も一緒です。彼女は、哺乳ビンをくわえてミルクを飲んでいます。

 どうやらミルクを求めて出かけていただけのようです。

 なんだ、二人とも逃げたわけじゃなかったんですね。よかったよかった。

 

「あー!!? オマエはー!?」

「う、うにゅー!?」

 

 突然、お空とにとりはお互いの顔を見るなり、お互いを指差して叫びます。いったいなにゴト?

 

「お、お空!? な、なななななんでオマエがここにいるのさ!?」

「コイツ! お空を実験しようとしたヤツだ! うにゅー!」

「なんだってー!? おい、そこの河童! 私はツチグモ妖怪のヤマメだ。オマエのせいでお空は怖い目にあわされて、幼児退行してしまったんだぞ!? 責任取れ!」

「ひゅい!? せ、責任てったって……」

「にーとーりー!! 何から何までアンタが悪いんじゃないのよ!?」

「ひぇえー……!?」

 

 まさに四面楚歌になってしまったにとり、かわいそうですけど、でもこれって自業自得ですよね。

 

「うぇーん。だ、だってさぁ。……長官が天狗に対抗するには、この子の力を使えってさぁ……」

「長官って誰よ……?」

「技術局長官だよ。今の河童たちをまとめてるすごくエラーイお方さ。あの方のおかげで、よりはるかに高度な技術を確立することが出来たんだ。と、言っても、私も直接はあったコトないんだけどね。その長官からヤタガラスの力を持った地獄鴉、すなわちこの子をつかまえろっておふれが出てさ」

「それでつかまえて、変な実験をしようとしたんだな? お空に!」

「うにゅー! お空とーっても怖かったよぅー! もう死ぬかと思ったよぅー!」

「おいこら!! そのチョーカンとやらにあわせろ! このヤマメさまが直々に文句言ってやる!」

 

 ヤマメは怒り心頭といった様子で、にとりに詰め寄ります。結構、短気なようです。

 

「おいおい。無茶苦茶言わないでくれよ!? 言っただろ。私だってあったコトないって。それに長官は今、天狗たちに対抗しうるだけの力を整えるために動いてて忙しいんだ。行ったところで、門前払いが関の山だよ」

「……ねえ、にとり。アンタら本当に天狗とドンパチやらかすつもりなの?」

「何言ってんだよ!? 先に仕掛けてきたのはあっちなんだぞ。売られたケンカを買わないほど河童はお人よしじゃないよ!」

「って、言うけどさー。天狗と河童じゃ、どちらの力が上かは、言うまでもないでしょ? 負け戦をするようなモンなんじゃないの?」

 

 という穣子の言葉に対し、にとりは不敵な笑みを浮かべて答えます。

 

「……ふっふっふ。そう思うだろ? ところがどっこい。今回はこちらにも勝算はあるんだ! と、いうのも、長官が我々に授けてくださった技術を用いて作り上げた戦闘兵器で、天狗たちに反撃する事に成功したんだよ! これは河童の中では歴史的快挙さ! そう、今こそ、天狗たちに抑えられてきた、我々の誇りを取り戻すセンザイイチグウの機会なんだ! もしかしたら時代は変わるかもしれない! そう、我々河童の時代にね!」

 

 彼女は、コーフンした様子で嬉々とした表情を浮かべながら、目をらんらんと輝かせています。なかなかアブナイヤツです。

 

「……ふーん。ま、そんなの私にとってはどうでもいいの! 今のアンタは私の言うコトだけ聞いてればいいの! っていうか、それしか選択肢はない! 今のアンタの上司はこの私! 言うコト聞かないと……」

 

 と、言いながら穣子が、げんこつをにとりに向かって振り上げると……。

 

「ひぃー!? 言うコト聞くから殴らないでぇ!」

 

 さっきまでの狂気の表情はどこへやら。彼女はおびえた子犬のようになってしまいました。

 ……まぁ、なんと言うか、調教完了って感じですね。

 

「そ。それでいいの! アンタに拒否権はない! 私のために馬車馬のように働きなさい!」

「ひえぇ……」

 

 あわれ。にとり。

 

「……穣子ったら、どうしちゃったんだ。どっかの誰かさんみたいに、Sの波動にでも目覚めちゃった?」

「うにゅ、こわいよぅ。ヤマメぇ……」

「だ、大丈夫だよ。お空。根はいいヒトだから……。多分」

 

 その後、三人は日もすっかり暮れてしまったので、焚き木を囲んで作戦会議を始めました。ついでに、にとりが穣子に脅されて調達してきた、お酒とおつまみを片手に晩酌も。

 ゆらめく炎に照らし出されながら酒を酌み交わすと、いがみあってた同士でも、いつの間にか親睦も深まるというモノ。

 ちなみにお空はヤマメの脇で「うにゅうにゅ」と言いながら丸くなって眠りこけてます。子どもは寝る時間です。

 

「……んでさ。具体的にこれからどうするつもりなのさ?」

「どうするって決まってるでしょ! 『季節操作マシ~ン』をさがすのが先決よ!」

「……はぁ。本当にさがす気なのかい? さがすったって手がかりも何にもないんだよ?」

「だーいじょーぶ! 手がかりなんてのは、さがしてるうちに見つかるもんよ!」

「……まったくもう、クモをつかむような話とはこのコトだね」

「ふ~ん、クモねぇ? なんか、すぐそばにいる気がするけど……?」

「ああ、うん、確かにクモだよねぇ……?」

「……なんで、二人とも私を見てんのさ? 私をつかんでも何も良いことはないよ? ……それより、二人にお願いがあるんだけど」

「ん、何よ? ヤマメ」

「お空をさとりのとこに返してあげたいんだ……。ほら、この通りの状態だし……。それに、下手したらまたつかまっちゃうかもしれないし」

「……あぁ。そうだね。確かに、この子を連れて行動するのはキケンだよ。……いろんな意味で」

「よーし! そんじゃ、決まりねぇー。まず、この子をさとりんとこまで送り届けましょー。私の楽しみはそのあとよぉー……」

 

 と、言いながら、穣子は顔を真っ赤にしながらクラクラバタリと、その場に倒れてしまいました。

 

 ……そう言えば彼女、お酒に弱いんでしたっけ。そのまま穣子は夢の中へ旅立ちました。おいでませ夢の世界へ――

 

「……やれやれ、静かになったね。じゃ、私たちもそろそろ一休みしようか。……もう少しだけ飲んでからね」

「おー。いいよ! 付き合う付き合う。はー。やっと解放されたー……」

 

 夢の世界にいる穣子たちを尻目に二人は、再び朝まで酒盛りを始めるのでした。

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