さて、地上がまさかそんな状況になっているとはつゆ知らず、静葉は地底で典と対峙していました。ちなみに穣子はまだ倒れたままです。
「ふふふ……。よけられるモノならよけてみなさいな!」
そう言いながら典は、例の試験管のようなモノを指でつまんでフリフリさせます。
「ふむ、見たところ誘導弾のようね。たしかにこの狭い空間で、それをよけるのは至難の業でしょう。ならば……」
静葉はアビリティカードを取り出すとすぐに発動させます。すると彼女のまわりにいかにも固そうなシールドが展開しました。
「こうするまでよ」
「なるほど? よけられないなら防げばいいというわけですか。でも……」
典は次々と弾を放ちます。弾は次々とシールドに跳ね返されていきますが……。
「ほらほら、どうしましたかぁ? 防いでばかりでは反撃出来ませんよぉ?」
かまわず典は弾を放ち続けます。すると徐々にシールドにヒビが入ってきてしまいました。
「くっ……」
「ふふふ……。いくら防いだところでムダですよ。この弾は無限に出てきますから。果たしてソレどこまで持ちこたえられますかねぇ!?」
その後も典が弾を撃ち続けると、とうとうバリーンと音を立ててシールドは壊れてしまいました。
「ああ……っ!」
その衝撃で静葉は吹っ飛ばされてしまいます。
「ふふふ……。どうやらここまでのようですねぇ。秋静葉」
典はあきれたような笑みを浮かべながら彼女に告げます。
「……やれやれ、しょせんはその程度ですか。……アナタには失望しましたよ。私の計画の重要なピースとして、もう少しやってくれると思ってましたがねぇ?」
「……どういうことよ」
「……ふう。ま、いいでしょう。どうせ最後ですし、冥土の土産に教えてあげますよ。私の『壮大な計画』を」
典は倒れ込んでいる静葉に近づき、仰々しく腕を広げるとゆっくりと語り出しました。
「私の計画。……それは、この世界をあるべき姿に戻すコトです。そう、あるべき姿とは、すなわち、この幻想郷が幻想郷たる姿というコト。元の姿とも言うべきでしょうかねえ」
「なぜ、あなたがそんな大それたことをわざわざ……」
「……まあ、飽きてしまったんですよ。今のサツバツとした幻想郷……。この、弱肉強食で、強かな者だけが生き残れる世界ってヤツに」
「それって……」
「それで『ある人』と協力して、この世界をあるべき姿に戻す道筋を立てたのです。アナタたちは本来なら私の計画にはいない存在だった。言ってしまえばイレギュラー。しかし、予想に反してアナタたちはよく動いてくれました。本当、ご苦労様でした。まぁ、ここまでのようですがね」
「……そう。それが、あなたの言う『壮大な計画』ってやつなのね。たしかにやってることはこの世界のためになることかもしれないけど、そのために私たち。……いや、この幻想郷の多くの人々を巻き添えにしているのは、感心しないわね。その『ある人』ってのにも、そう伝えておきなさい」
「……ふふふ。さて。お話はこれで終わりですよ」
「待って。一つだけ教えてちょうだい」
「……なんですか。往生際が悪いですね」
「……大ムカデの妖怪に何かを吹き込んだのはあなたなのかしら」
「……大ムカデ……。ああ。彼女ですか?」
「やっぱりそうなのね」
「……彼女は私が言ったコトを勝手に違った解釈して勝手に暴走しちゃったんですよ。やっぱり彼女を利用しようとしたのは失敗でしたねえ。力は強いが、いかんせんオツムが……」
「……そう。納得したわ」
「それはよかった。それでは今度こそごきげんよう、秋静葉。永遠の刻を彷徨え!」
「……ふふ。それはどうかしら」
至近距離で弾幕を放とうとする典に対し、静葉はニヤっと笑みを浮かべるとすかさずアビリティカードを掲げます。するとおびただしい数の弾が即座に発射され、典に襲いかかりました!
「なっ!?」
慌てて典はよけますが、弾は軌道を曲げ、彼女めがけて向かってきます。
「こっこれはまさか……!? ぐあああっ!!」
被弾した典は、たまらず吹っ飛ばされてしまいました。
今度は静葉が倒れ込む彼女へと近づいていきます。
「……このアビリティカードは、受けた分の攻撃をそのまま蓄積させて、相手にはね返す力を持っているのよ。どうかしら。自分の弾幕を食らった感想は」
「ぐっ……。シールドのカードを展開したときに、そのカードも発動させていたのですね。これは、うかつでした」
「面白い話をしてくれてありがとう。……でもね。あなたに一つ言っておくわ。あなたが何を企んでいようと関係ない。私は私の道を進むだけよ。それじゃ……」
静葉が穣子を起こして先へ進もうとすると、すかさず典が呼び止めます。
「お待ちなさい……! 秋静葉」
「……何よ」
「忠告しておきますが……。あなたではこの『異変』は解決出来ませんよ……?」
「……どういうことよ」
「……ふふふ……。いずれわかりますよ。いずれね……!」
そう言いながら典はすっとその場から姿を消してしまいました。
「ほら、穣子。終わったわよ」
「ふぇ……? あれ? アイツは?」
「逃げたわ」
「そっか。次あったら絶対タダじゃおかないんだから!」
「ええ、そうね……。さて、それじゃ行きましょうか」
典を撃退した二人は、再び地霊殿を目指して進み始めるのでした。