一方、静葉たちとは、別ルートから地底に侵入した慧音とリグルは、旧地獄街道へ来ていました。
旧地獄街道はレミリアの襲撃で焼け野原となっていましたが、現在は復興中のようで、あちこちの建物が立て直し中、あるいは修復中となっています。その中を二人は歩いて進みます。
「……どうやら、見た感じ、復興は順調のようだな」
「たしか、レミリアの襲撃でやられたんでしたっけ……?」
「ああ、そう聞いている」
「なぜ、彼女はここを襲撃なんかしたんでしょうか……?」
「さあな……。それは彼女に直接聞いて――」
「ああ、それはだな。彼女は利用されていたのさ」
突然、何者かが会話に割り込んできます。
「誰!?」
「その声は、まさか……」
「やあ。久しぶりだね。慧音」
二人の目の前にニヤリと笑みを浮かべて姿を現したのは、ナズーリンでした。
「……何者かがテリトリーに侵入したと聞いてやってきたが、そうか。キミだったか」
「ナズーリン……! 本当に裏切ったのか?」
「……やれやれ、勘違いしないでくれたまえ。慧音」
「なに……?」
「……私は、はじめから誰の味方でもないよ?」
「……私たちをだましていたというのか!?」
「ま、利用はさせてもらったさ」
「なにっ……!」
思わず悔しそうに歯を食いしばる慧音をナズーリンは冷ややかな表情で見やります。
「……ナズーリンさん!」
「ん? キミは確か……」
「レジスタンス一員のリグルです! レミリアが利用されていたってのはどういう意味ですか!?」
「……ああ。知りたいのかい? いいだろう、教えてやろう。彼女は我々、リバースにとってジャマだったのさ。なんせあのケタ外れの力。敵に回したら恐ろしいコトこの上ないからね。それで彼女へ懐柔して協力者のフリをした。そして私がレジスタンスの一員として動いて、手に入れた情報を彼女に知らせていたのさ。逐一ね」
「……まて、ナズーリン! それでは彼女がこの旧地獄街道を襲撃したのは……!」
「そうさ。我々が仕向けさせたんだよ。その方が何かと都合がいいからね?」
「貴様。なんてことを……!」
「ああ、そうそう。ついでにもう一つ教えてやろう。彼女は一人で同盟軍に挑んできてただろう? あれも我々の入れ知恵さ。なぜだかわかるかい?」
「なに……!?」
「……ええと、両者を少しでも消耗させるため……ですか?」
「まあ、当たらずとも遠からずってとこか」
そう言うとナズーリンは、フトコロから鉄の板のようなものを取り出します。
「すまないが、ここを通すわけにはいかないのでね」
「そうかならば……。貴様を倒すまでだ! ナズーリン!」
「おやおや、怖いねぇ。言っておくが、キミたちがアビリティカードなるモノをもって強化していることは既に先刻承知だ。……なので、ここは私も助っ人を呼ばせてもらうよ」
「何……?」
ナズーリンは合図を送るように指をパチンとはじかせます。その合図とともに三人の目の前に姿を現したのは……。
「お前は……!」
「お燐さん……!?」
そう、お燐です。彼女はナズーリンに目配せをすると、ふっと笑みを浮かべます。
「よし、お燐。この二人を始末するぞ!」
「りょーかい」
「そんな! お燐さん!?」
「もしかして、操られているのか!?」
慧音の言葉にお燐は涼しい顔で答えます。
「……いや。あたいは正常だよ。あたいはあたいの意志で動いているのさ」
すかさずリグルが、お燐に言い放ちます。
「そんな……。見損ないましたよ。お燐さん! あの時、居酒屋で落ち込んでいた自分が立ち直れたのは、あなたの温かい言葉があったからだった……。あれは全部ウソだったんですか!?」
「……いいかい。リグル。世の中ってのはさ。一言では言い表せられないモンなんだよ。……それがわからないオマエさんは、まだまだ子どもってコトだよ」
彼女の言葉に思わずリグルは、
「さて、申し訳ないけど、キミたちには、ここで退場してもらうよ」
「そういうわけさ。悪く思わないでおくれよ」
「……やるしかないぞ。リグル」
「……わかりました!」
慧音の言葉で我に返ったリグルは、懐からアビリティカードを取り出し、二人を厳しい表情で見つめるのでした。