秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

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その15

 戻って、上空の二人はというと……。

 

「……なんだ。オマエの力はその程度か?」

「ちっ……。見かけによらずトリッキーなヤツね」

 

 自称、森の守り神(マミゾウ)は余裕そうな様子で、パルスィを見下ろしています。片や大妖怪、一方はヒラの妖怪。力の差は歴然です。

 

「くっ。しゃらくさいわ! こうなれば奥の手よ!」

 

 パルスィは例の笛を取り出すと軽やかに吹き始めます。

 

 ピロリロリィー

 

「……ん? 笛?」

 

 するとどこからともなく、桶に乗った妖怪が!

 

「やれ! キスメ!」

 

 キスメが乗った桶が、そのまま守り神(マミゾウ)のテンプルに直撃します。

 

「うぐぉっ……!?」

 

 たまらずマミゾウは正体をあかしてしまいました。

 

 

「……あ! 誰かと思えばオマエは化けダヌキ!? ……なーんだ。驚いて損したわ! よくもダマしてくれたわね!」

「くっ……。ぬかったわい!」

「フン! 正体さえわかれば、もう怖くなんかないわ! いくわよ!」

 

 彼女が再び笛を吹くとそれに呼応するようにキスメは、一直線にマミゾウへ襲いかかります。

 形勢逆転! 激しい攻撃に彼女は防戦一方となってしまいます。

 

「むむう!? なんじゃこれは。もしかして、あの笛で操っておるのか……!?」

 

「……ああ、あれが例の笛ですか。なるほど。あれで対象者を自由に使役してるのですね」

 

 様子を見ていた星は、彼女の笛に気づくと、フトコロから宝塔を取り出します。

 

「……ならばあの笛をなんとかすれば」

 

 彼女が宝塔を高々掲げると、まばゆい光とともに光線が発射されました。

 

「さあ、ゆけ!」

 

 彼女の号令で、光線はグネグネと曲がりながら、パルスィへと向かっていき、そのまま彼女の笛に命中します。素晴らしいコントロールです!

 

「きゃああ!? 今度は何よ!?」

 

 光線の直撃を受けた笛は、バァーンと音を立てて、真っ二つに割れてしまいました。

 

「ああ……!? 『ソロモンの笛』が! せっかく正邪からもらったのに!」

 

 笛が割れると、キスメはどこかへ飛んでいってしまいました。やはり笛に操られていたようです。

 星は満を持してとばかりに、パルスィの目の前に姿を現します。

 

「……手荒なマネしてすいませんね。パルスィ」

「……あ、アンタは命蓮寺の……!? さっきのはアンタの仕業ね!」

「許してくださいね。こうするしか手がなかったので……」

「よくも……っ!」

「さて、頼りの笛はもうないぞ! 橋姫よ!」

「水橋パルスィ。あなたのマジックアイテムは力を失いました。大人しく手を引きなさい」

 

 マミゾウと星がパルスィを見据えると、彼女は緑の目をらんらんと光らせながら二人を、にらみます。

 

「おのれっ……! かくなるうえは!」

「む? この期に及んでなにをする気じゃ!?」

 

 二人が身構えた瞬間、彼女は下に向かって大声で呼びかけます。

 

「おーーーーいっ! 勇儀ぃ!! こっちに来なさーーい!! 私を助けなさーーーい!!」

 

 するとほどなくして

 

「……なんだ。お呼びか?」

 

 地上からぬっと彼女が現れます。その姿を見た二人は思わずギョッと目を丸くしてしまいます。

 

「お、おぬしは……!?」

「……フフ! さあ、あのにっくき化けダヌキと毘沙門天をやっちゃいなさい!」

「……了解した!」

 

 彼女は拳を握ると、輪っか状の弾幕を作り出します。そしてそれをパルスィに向かって放ちました。

 

「ちょっと!? 私じゃないわよ!! アイツらよ!? ちょっと勇儀!?」

 

 慌てるパルスィに彼女は言い放ちます。

 

「……ひっかかったな! バーカ!」

「なっ!?」

「あははははっ! 私は泣く子も黙る大妖怪、封獣ぬえさまだよっ!」

 

 そう、彼女は勇儀ではなくぬえでした。

 彼女の正体不明の種の力で、パルスィには彼女のコトが勇儀に見えていたのです。

 

「ぐっ……!!」

 

 更にそのとき、どこからともなく放たれた白い糸が、パルスィの体をぐるぐる巻きにしてしまいます。

 

「う、この糸は……。まさか!」

「おい! いい加減にしろ! パルスィ! もう戯れは終わりだ!」

 

 糸が放たれた先には、彼女をにらみつけるヤマメの姿がありました。その脇にはキスメも寄り添っています。

 

「……さあ、橋姫よ。もう観念するがよい」

「……うぅ」

 

 四面楚歌(しめんそか)状態となってしまったパルスィは、ついに戦意喪失して、うなだれてしまいました。

 

 □

 

 

「……お、上が静かになったようだな……。どうやら決着がついたみたいだ」

「……あー。そのようだな。そんじゃこっちもそろそろケリつけるとするか! 萃香!」

「ああ、いいぜー! と、その前にだ……」

「なんだよ……?」

「おい、教えろ! オマエなんで橋姫なんかに従ってんだよ?」

「……ソレ、この場面で聞くか? フツー」

「ああ。知りたいな。見たところ、ただ笛に操られてただけじゃないんだろ?」

「……つまらん理由だぞ」

「へえ、どんなだ?」

「結局、聞くのかよ。……ま、アイツもなかなかかわいそうなヤツなんでな。ちょっと付き合ってやってるだけだよ」

「はーん。情にほだされたってヤツか。ま、オマエらしいな」

 

 萃香の言葉を聞かずに、勇儀は無言で杯の酒を全部飲み干します。

 

「ぷはーっ……! そんじゃいくぜぇっ!! 萃香! 次の一撃が我ら最後の別れとなるだろうよ!!」

 

 そう言い放つと盃を投げ捨てます。

 

「おう! その言葉そっくり返してやる!! 勇儀!!」

 

 負けじと萃香も、ひょうたんの酒を一気にあおると、勢いまかせに巨大化します。

 

「うぉおおおおおおおおおああああーー!!」

「うおりゃああああああああああーー!!」

 

 お互いの渾身の一撃が放たれ、ぶつかり合うと、あたりは一瞬、昼かというくらい、まばゆい光に包まれ、雷鳴のような轟音がとどろきます。

 

 その衝撃で周辺の土がめくれあがり、大量の砂煙が舞い上がり、上空のマミゾウたちに直撃しました。

 まごうことなき天変地異です!

 

「ぶわぁー!? なんじゃこの砂ほこりはーーーっ!?」

「ゲホッゲホッ……。どうやら鬼たちのせいのようですね」

「おい! 星! マミゾウ! 砂煙で何も見えないぞ! なんとかしろ!」

「はいはい。ぬえ。……少々お待ちを」

 

 目に涙を浮かべながら星が宝塔を掲げると、まばゆい光とともに砂煙が消え、視界が戻ってきます。そして星たちが地上を確認すると、そこにはクレーターのようにえぐれた地面の上で、ボロぞうきんのようになってブッ倒れている二匹の鬼の姿がありました。

 

「……や、やるな。萃香ぁ……」

「……オ、オマエ……こそ。勇儀ぃ……」

 

 そう言って二人とも気絶してしまいます。

 

「やれやれ……。なんともひどい有りさまじゃないか。全くあきれたもんじゃわい……」

 

 あまりの惨状にマミゾウは、ため息をつきながら思わずつぶやくのでした。

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